なにもみえない   作:百花 蓮

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成長、ひとり、優先順位

 かくれんぼだった。

 イタチと私、そしてサスケで()()ノ神社の近くの森に遊びに来ている。

 そこで提案された遊びがかくれんぼだった。

 

 ちなみに私は審判である。

 よくわからないが、サスケがそう言っていた。なるほど、よく考えているとも思った。

 

 対サスケの私のかくれんぼ戦歴は全戦全勝。

 隠れても私が一瞬で見つけられるのをサスケはたぶんわかっている。

 立場を逆にして私が隠れる番になれば、なかなか見つけられないサスケを後ろから脅かしたりするものだから、イタチには大人気ないと見つめられる始末だ。

 だから審判なのだろう。

 

 そういえばあの組み手から、やや、イタチとはわだかまりを感じないでもないが、普段通りだ。

 いや、違う。なにかイタチが私に対して少しよそよそしいような態度な気がする。

 

 少しだけ、この距離感には覚えがある。

 確か、忍者学校(アカデミー)の頃のことだ。私が影分身を覚えたあたりからあの事件まで、こんな感じだった。

 思いにふけて、少しだけ懐かしいような気分になる。楽しい時期の思い出のような気がする。どこか少しだけ違うような気もする。

 

 それはそうとして、今はサスケのターンだ。

 イタチが隠れて、サスケが探す。イタチも、私ほどではないが、隠れるのは得意だった。あのイタチだもん。

 

 イタチが本気で隠れてしまえば、見つけるのは、普通の今のサスケと同い年の子には難しいだろう。

 けれども、サスケは日々頑張ってるんだ。見つけられたっておかしくはない。きっとできる。

 

「どこに行ったんだ、兄さんは……」

 

 そう言って探しているが、全くの真逆の方向だった。

 少しだけ私はオロオロする。

 

 教えてあげたい気持ちもあるが、たぶん、きっと、それは違う。

 公正、公平を重んじる、審判という立場を任されたのだ。どちらかに肩入れするなどもってのほかだろう。

 そのために、サスケは私に審判という立場を任せたのだ。

 

 ややあって、サスケは私の表情を確認してくる。

 少しだけ私はオロオロする。

 

 そうすると、サスケはまた別のところを探し始めた。

 心の中で応援する。

 簡単には諦めない心が備わっている。さすがサスケだ。

 

 一通り草むらをかき分け、草の根を分けるように探し、イタチの姿がないことがわかると、またサスケは私の表情をじっと見つめた。

 

「ね、姉さん……」

 

 心なしか、涙目で、涙声な気がした。

 私は最大級にオロオロした。

 

 ――ねぇ、イタチ。私はどうしたらいい?

 

 その瞬間、チャクラの乱れを感じる。

 私の心の声に応じるがごとく、イタチは自らのチャクラを少し漏らしていた。

 

 ハッとサスケはその方向に向き直った。

 気が付いたのだろう。

 

 確かな足取りでその方向に歩いていく。

 一歩一歩、私の助けを借りずに、軽やかに。

 

 落ち葉を踏んでいるはずなのに足音はしない。

 忍としての技術を身につけていることには間違いなく。嬉しくもあり、寂しくもあることだった。

 

 正直に言えば、サスケに危険なことをしてほしくないという想いが強い。それでも、サスケが選ぶなら、私は決して反対できない。

 

「見つけた!」

 

 一人で物事に対処しようとするその姿は、壮観でもあった。

 

「残念だったな……」

 

 無論、それは罠であったが……。

 特有の音を立てて、サスケの見つけたイタチは煙と共に消える。

 

 必ずしも与えられたヒントが正しいとは限らない。

 イタチらしい厳しさだった。

 ちなみに、本物のイタチはサスケの真上、木の上にいる。

 

「あぁ! 卑怯だぞ、兄さんは!」

 

 不平を漏らして、不条理にサスケは空を仰いだ。

 

「あっ……」

 

 そしてサスケは、木の上にいるイタチを見つけた。

 

 くすりとイタチは笑った。

 素っ頓狂な顔をした、サスケのことを見てだろう。

 つられて私も少しだけ笑顔になる。

 

「ふふ、サスケの勝ちだね」

 

 これぞ、審判の仕事である。

 まだ、唖然としていたサスケを後ろからギュッと抱きしめる。

 それでも、なにか納得がいかないような表情のサスケだ。

 そっと頬を撫でる。

 

「偉いよ、サスケ。よく頑張ったね」

 

 褒めて伸ばす方針である。

 偶然でも勝ちは勝ち。このかくれんぼに於いて、トラップには引っかかったものの、そこから助けを借りずにイタチを見つけたことは間違いない。

 称賛に値するのは間違いない。

 

 スタッとイタチは木の上から降りてきた。

 

「見つかったか」

 

 そう声をかけられ、サスケはすぐさま素に戻った。

 

「か、影分身なんて卑怯じゃないか!」

 

 そう口を尖らせて拗ねたように、イタチに不満を投げかける。

 

「ふふ、じゃあ、影分身かどうか、見分けられなくちゃね」

 

 卑怯だろうがなんだろうが、使える相手は躊躇なく使ってくる。

 それが忍の世界である。

 だからこそ、そうなっておかなくてはならない。そして、きっとそれもサスケならできるだろう。

 

「えぇ……」

 

 少しだけ、サスケは困惑したようだった。

 

「よくチャクラに気づいたな」

 

「もうすぐ忍者学校(アカデミー)に入るんだ。そのくらいできて当たり前さ」

 

 確かに、私もイタチも忍者学校(アカデミー)に入るくらいにはそのくらいできていたような気がする。

 でも、こんな私でも優秀ということになっていた。標準はもう少し低かったような覚えがある。

 

「そうか、当たり前か」

 

「うん!」

 

 イタチは大して指摘をしなかった。

 当たり前というのが私の中で少しだけよくわかなくなった。

 

「そろそろ帰るぞ」

 

 そういえば、時間も時間だ。

 ここは少しだけ遠い。早く帰らないと、夕ご飯に間に合わなくなる。

 たまにはと言われて、今日はミコトさんに任せてきていた。私に気遣って、頭の上がらない思いである。

 

「えぇ……。もう一回隠れてよ」

 

「許せサスケ」

 

 そう言って、イタチはサスケの額を小突いた。

 

「いてっ」

 

 それは、よく見る光景である。なにかサスケがせがむごとに、イタチが急な任務で約束を反故にするごとに見られる光景である。

 見ていてサスケが少し、ほんの少し可哀想だった。羨ましくもあった。

 どうしようもなく。二人の触れ合いを眺めていた。

 

「帰るぞ、サスケ」

 

 夕暮れの中、帰路に就く。兄妹一緒、姉弟一緒、兄弟一緒。

 家までの道のりは、遠ければ遠いほどよかった。

 

 

 ***

 

 

 会合があった。

 また、あった。

 一族の会合があるたびに、イタチとフガクさんとの距離が遠くなっているような気がする。

 

 一応、額当てを持つ私だが、所属が現在宙ぶらりん。ときどき砂にお使いに行く程度で、それ以外の任務はやっていない。

 私が忍としての活動を行っていることは周囲には認知されていないようだった。

 

 十歳、それが私の今の年齢である。普通の子供が下忍になる年齢よりは低いし、そう認知されないことは当然なのかもしれない。

 そして、フガクさんには会合には出るなと言われた。

 

 排他的な、良くない空気が漂っているのを感じる。

 昔からそれは変わらないが、最近は特にそんな気がした。

 

「ねぇ、イタチ。クーデターでもやろうとするの?」

 

 食事を終え、片付けを終え、やや憔悴気味だったイタチの部屋に押しかける。

 

 最近になって、兄妹といえど他人の部屋に押しかけるのはマナーが悪いと知ったのだが、別に仲が悪いわけでもないのだからいいだろう。

 ちなみにそれは、ミコトさんが教えてくれた。なぜ今になってなのか、少しだけ疑問だった。

 

「聞いていたのか……」

 

「ううん……。なんとなく、そう思ったから」

 

「くっ……」

 

 らしくもないミスだった。

 カマをかけた質問ともとれたはずだが、それにイタチは乗ってしまった。いつもなら、〝どうだろうな〟とはぐらかすはずなのに。

 

「冗談。聞いたんだ」

 

 ――風の噂に。〝クーデターを行う〟と、今日フガクさんが言ったことを。

 そう言っておいたが、イタチは顰めっ面のままだった。

 

「お前は一族のこと、どう思ってる?」

 

 うちは一族。誇り高き一族。古くから里に因縁を、確執を持った一族。

 

「ううん……考えたこともなかったかな。私は家族が一番大事だから――( )

 

 ――それ以外は知らない。

 

 里も、()()()も、窮屈な思いをするという点では同じだ。私は家族の中でしか居場所がない。結局はそうなのだ。

 

「父上……と、オレ……が、もし、対立したらどうする」

 

 仮定の話だ。

 家族の中での優先順位。それをイタチは問いかける。

 これを曖昧にしておいたままではいけない。許されない。

 

 迷いなく、私は答えた。

 

「その中でも、イタチは特別。それは昔から変わらないから」

 

「そうか……」

 

 フッと、イタチの表情が緩んだ。

 なにを思ったのかはわからない。ただ私には、安心をして気が緩んだように思えた。

 

 なんとなく、イタチの手をとる。

 

「どんなことがあろうと、たとえ貴方がなにをしようと、私は貴方の味方です。それだけは変わらないから」

 

 だからもっと頼ってほしい。

 それなのに、拒絶される。イタチは私の知らないことを、知らないところで抱え込もうとする。

 今だって、そうなのだろう。

 

 遠い。すごく遠い。

 こんなにも近くにいるのに、なにをしようとしているのかが私にはわからない。隠されて、私には見えない。

 そのせいで、いや、そのおかげで、そのイタチの配慮のおかげで、私はすごく不安だった。

 

 ――ひとりだった。私も。イタチも。

 

「ミズナ……。すまない」

 

 謝罪だった。

 そんな私にかけられた言葉は謝罪だった。

 なぜかその謝罪に、心の距離をまざまざと見せつけられたような気がした。

 

 昔はこんなことなかったと思う。もっと近かったと思う。

 辛い。どうしてかはわからないけど、辛い。こんなにも辛かったことは今までなかったと、心が訴えている。

 

「ねえ、今日はずっと一緒にいてもいい?」

 

 だから、近くに居たかった。痛くても、居たかった。

 なにも癒えることがないことくらいわかっている。それでも一人にすることなんてできない。一人になることなんてできない。

 

「かまわない」

 

 そうやって許可が得られる。

 優しいイタチは私の独り善がりに付き合ってくれる。

 

「ねえ、明日はやっぱり早いかな?」

 

「ああ、修行の約束が……いや」

 

 口ごもった。

 おそらく私とシスイの奴とを天秤にかけているのだろう。

 だから私は微笑んだ。

 

「ふふ、遊ぼ? 二人で」

 

 ときどき忘れてしまうが、私もイタチもまだ子供だった。そう、まだ子供だ。

 年相応に、やんちゃで、むじゃきに、遊んだって構わない。罰は当たらないはずだろう。

 

 

 ***

 

 

 結局、私たちは夜通し遊んでしまった。

 イタチの部屋に泊まり込んだ。

 

 なにをして遊んだかといえば、カードゲームだったり、サイコロと紙を使った領土の奪い合いゲームだったりだ。

 

 シャッフルでカードの位置を操作できるようになったり、自由な出目を出せるようになったあたりから、お互い、つまらなくなった。

 たぶん最初に、勝てない私がイタチの手札を最弱カードにするべく頑張ったのが原因だろう。もっと、バレないようにやるべきだった。

 

 ちなみに私は印刷された文字が見えないから、カードゲームの最後にはそれを指摘された。初期位置を覚えて、それを追っていることをだ。シャッフルで操っていることをだ。言い逃れはできなかった。

 

 どんなゲームも、まずイタチが勝って、次に私が少し卑怯な必勝法を使ってから、最後には引き分けになる。勝敗は五分五分、と言いたいところだが、数回分、私の負けが多かったりした。

 

 そんな楽しい時間を過ごしたわけだが、その後が問題だった。

 

 今、目の前にフガクさんとミコトさんが、並んで二人で座っている。そして、私たちはその前に座らされていた。

 

「イタチは今、大事な時期にある。それはわかっているはずだ」

 

 フガクさんだ。非難の声色だった。

 咎められているのは私だけではない。わかってはいたが、少しだけ苦しい。

 

「はい……」

 

「……ごめんなさい」

 

 返事をするイタチと、無条件に謝罪をする私だった。

 できれば、家族みんなでうまくやっていきたい私だ。不和を生むようなことは避けたい。

 

「二人だけで寝るのはよくないと思うのよ……」

 

 続いて、これはミコトさんだった。

 私とイタチはキョトンとした。フガクさんは微動だにしてはいないが、微動だにしなさすぎるために少し動揺しているように思えた。

 

 二人で布団もかけずに無雑作に寝ているところを見つかってのこの展開だった。

 

「ミズナ……。あなたの身体のことを心配しているのよ……?」

 

 深刻な表情だった。

 ちなみに、普段の私の体調管理は万全である。

 徹夜はよくなかったことはわかる。だが、なぜ私だけ心配されているのか不思議であった。

 

「イタチも、しっかりしているといっても、男の子でしょう? 女の子が無防備な姿を見せたら、なにをされるかわからないわよ?」

 

「へ……?」

 

 悪戯っぽいミコトさんのそのセリフに、私は少し心がざわめく。なんだか変な気分になる。

 

 私はイタチの方を向いた。

 イタチもこちらを向いている。

 なんだか、今までにないくらい、気まずい空気が流れる。

 

「わ、私は! イタチになら、なにをされても大丈夫だよ!」

 

 だから、そう必死に言い繕った。

 

「…………」

 

「…………」

 

 空気が凍った。

 

「……少し、二人だけで話をしましょう」

 

 今までになく、ミコトさんが怖く感じられる。どうやら私は台詞の選択を間違えたらしい。

 

 顔を向け、他の二人に助けを求める。

 

「そうだな……オレたちは出て行こう。行くぞ、イタチ」

 

「わかりました……」

 

「えっ……?」

 

 孤立無援だった。

 部屋に二人、ミコトさんと私だけで残される。

 

「さあ、話をしましょうか……」

 

 

 ***

 

 

「お前は、あいつのことをどう思っているんだ?」

 

 二人の残った部屋を離れ、父――うちはフガクはそう尋ねる。

 父とミズナとの接点を、感じたことは今までになかった。そうして尋ねられ、それにより生じた僅かばかりの苛立ちを抑え、答える。

 

「感謝しています」

 

 それは確かだった。

 無条件に好いてくれる彼女の存在はありがたかった。心の機敏を鋭く察して、気を遣う彼女の存在はかけがえがなかった。

 昨夜もそうだった。

 

 それ故に、怖くもある。

 彼女の人生を自らが握ってしまっているような、自らの行動のしわ寄せが彼女に押し付けられてしまっているような、そんな怖さだった。

 

「感謝……か……」

 

 父は、感じ入るように言葉を飲み込む。

 どこか予想した答えと違うものが帰ってきて、それがどこか納得のできるものであったかのような、そんな反応だった。

 

「ああ、あんなふうに自らのことを想ってくれる他人というのは滅多にいない。もし、手を離したら、後悔することになる」

 

 実感がこもっていた。

 忍の世界には常に死がつきまとう。

 大切な者との別離は珍しいことではない。

 

「わかっています」

 

 忍の命は儚い。明日、任務で殺されてしまうかもしれない。

 同じ班員だった、仮面の男に殺された、テンマのことが頭をよぎった。

 

「流石、オレの子だ」

 

 父の賞賛の言葉は、いつもこれだった。

 

「家事に、サスケの世話も――( )母さんから聞いている。あの歳でだ。正直、オレは申し分ないと思っている」

 

 なぜか父はそんなことを言っていた。

 いつも感情を表に出さない父であったが、心なしか喜びがその表情に浮かんでいるように思える。

 

「父上……」

 

「ああ、だからこそだ……。だからこそ、お前たちの世代や、お前たちの子どもの世代。その為だ」

 

 ――やめろ……。

 

 父は語る。

 別に酒を飲んでいたわけではない。だが、どこか、その姿は酔っているようにも見えた。

 

「今、()()()は立ち上がらなければならないのだ。()()()の怒りを里に知らしめなければならない。知らしめることこそ、我らが大義――( )成功か失敗かは問題ではないのだ」

 

 ――やめてくれ……。

 

 クーデター。

 一族の若者たちの熱に酔い、道を失っている。

 

 父の語るその形には未来があるとは思えなかった。

 血が流れ、よりいっそう、一族が疎まれ、そしてその結果、()()()という一族が里から消えてなくなってしまうような未来が容易に想像できてしまう。

 

「その為のお前の暗部入りだ。わかってはいると思うが、しっかりこなせ」

 

「…………」

 

 一対一。

 周りに気遣う必要もない。だからこそ、返事はできなかった。

 

 反対はできない。

 ここで反感を表に出しても、不信を買うだけで、利点はない。最悪、暗部入りが、父の一存でなくなる可能性もあった。

 火影に己の実力を見せつけ、そして功績を積み上げることができなくなるかもしれなかった。

 

 ――無力だった。

 

 何度この無力さを痛感したかはわからない。

 争いを無くすと心に決めておきながら、まるでなにもできていない。身近な人間さえ守れない。

 

「どうした? イタチ……」

 

 心の機微を悟られる。

 ――未熟。

 鍛錬の必要がある。

 後にこの失態が尾を引かぬよう、繕い方を即座に思考し――( )

 

「ねぇ、ねぇ。私たち、ずっと家族だよねぇ」

 

 背中に重みを感じる。肩の後ろから、腕が回される。

 ミズナだった。気配はなかった。

 

 唐突に現れた彼女に、驚き、そして背筋が冷える。

 うちはフガクは呆然と彼女を見つめていた。

 

 彼女のこの神出鬼没さに対しては、わずかながらの慣れのおかげか、父より反応が早い。

 

「話はもうよかったのか?」

 

「うん。終わったよ。……それで、イタチ。イタチは子ども……欲しい?」

 

 問いかけに息が詰まる。

 ここでしていた話の文脈からは乖離なく、父が興味を示していることがわかった。

 

「考えるのは、一族が落ち着いてからだ……。お前は……?」

 

「……ごめん。ちょっと想像つかないんだ」

 

 意外だった。

 彼女のその性質から、家族を第一に重んじる在り方から、無条件に肯定するものだと思ってしまっていた。

 

「どうしてだ?」

 

「ふふ、私一人だと自信ないからかなぁ……。イタチは、手伝ってくれる?」

 

「…………」

 

 易々と答えられるような問いかけではなかった。その言葉の意味することが、痛く心に突き刺さってくる。

 なぜ、苦しいのかはわからない。だが、まるで自分が卑怯者であるかのような気になり、罪悪感が募っていく。

 

 父が見ている。

 そんな中、明確な答えを出してしまうことは控えられる。

 そして、母が、渋い顔をしながら、ミズナに遅れてやって来ていた。話していたことは全て、聞こえていただろう。

 

 だから、答えは決まっていた。

 

「……お前なら、大丈夫だ」

 

「そうかなぁ?」

 

 身にならない答えに対して、彼女はなんの屈託もなく笑う。

 少なくとも、そうであるように見えた。

 

 間違えていない。

 ――なにも間違えてはいないはずだ。




 最近、更新ボタンを押したくないです。一週間、二週間で八割書いて、そこからダラダラ書き直すワケでもなく一週間に百字ずつ追加してるとか、そんな感じです。本当にすみません。

 はっ!? そうだ、これもダンゾウって奴が悪いんだ! 全てはダンゾウの所為……!

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