織斑一夏になったがオリ兄がいたので丸投げしたい 作:XYZ+
「大丈夫なのか、一夏の奴?」
箒がそう聞いてくるが、それは俺‐織斑一秋‐が尋ねたい台詞だ。
勉強面に関しては電話帳と間違えて捨てたという原作通りの事もなく、
教科書と向き合っているようだが問題は戦闘面にある。
正直に言って、弟である織斑一夏の戦闘力は極めて低い。
この時点での<原作>一夏よりも圧倒的に低いのではなかろうか。
幼年期においての剣道の経験すらろくすっぽ持っていないのだから当然と言う話もあるが。
現に、クラス代表決定戦に一夏が参加する事になって(この辺は想定の範囲内でもある)、
実際に剣を振らせてみたが結果は散々たる有様だった(分かっていた事だが)。
それでもまぁ、今の一夏に必要なのは戦うためのテクニックだの鈍った勘を取り戻すだの
そう言う話以前の問題………言わば<気迫>である。
無気力が絵を描いている状態のアイツに戦えと言うのが無茶だ。
結局どうにもならなかったんだが。
本人がやる気ないんだからどうしょうもない。
マジでどうすりゃいいんだこれ?
(仮にこの織斑一夏が転生者だとして)アイツからすれば「原作は俺に任せた!」って
事なのかもしれないが、アイツは俺が不慮の事故(例:亡国のテロ)やら想定外の出来事
(例:原作から逸脱した流れ)で行動不能になった時の事とか考えてるのか?
多分何も考えてないだろうアイツ。
いかん、何か無性に腹立ってきた。
箒や鈴が一夏にイラつく気持ちがよく分かる。
「どうすりゃよかったんだろうな。」
「一秋………。」
ぼそっと呟いた俺のため息まじりの言葉に、心配そうな目を向ける箒。
いや本当にどうすりゃよかったんだ?
幼年期からフルメタ式でビシビシに鍛えてやるべきだったんだろうか?
<来たる将来のため>とか言って。
あるいはお互い腹割って話し合っておけばよかったか?
実際、兄弟仲はそこまでいいわけじゃない………と言うと語弊はあるが、
必要最小限度以外は俺を避けている節がある。
「あなたには関わる気もありませんよ」と言う事なんだろうか。
今更どうしょうもない話でもあるんだよな。
俺が必死に頑張るしかないのか。
「どうやら試合が始まるみたいだぞ?」
「さっき千冬姉が来て言ってたじゃないか、一夏の機体の方が先に到着したから
試合先にするって。」
それは分かってる!一夏の奴がゲートから出て来たと言いたかっただけだ!!と言う箒を他所に
ふらふらとゲートから出て来た一夏を見る。
装備しているISは<白式>。
見た感じ、一次移行も終わっていないっぽい。
………ダメだ、勝てる図が思い浮かばん。
いや、勝つ必要は別にないんだが善戦すら無理だろこれ。
一次移行が完了していたり、他の機体なら善戦できるのか?と言う話はあるが。
IS自体に明確な自意識が存在してたり、アイツに凶暴な第二人格が存在してて
本人の身体を乗っ取って周囲ドン引きの大暴れでもおっぱじめたら話は変わってくるが。
『あら、逃げずに来ましたのね?』
『本当は逃げたかったんだけどね、一秋兄さんに引っ張ってこられたんだ。』
観客席からの笑い声がここまで聞こえてくる。
「本当なのか?」
「残念ながら本当だ。」
箒の何とも言えない声に、俺も同じような声で返していたと思う。
迎えに行かなかったら一夏の奴、間違いなくバックれるつもりだったみたいだしな。
『貴方にチャンスを上げますわ。』
『はぁ。』
一夏の気の抜けた返事に鼻白んだオルコットであったが、気を取り直して続ける。
『ここで貴方と戦っても、私が一方的に勝利をするのは自明の理。
ですから、みじめな姿を晒したくないと言うのならば………。』
どう言うつもりだったのか。
<原作>じゃ「許してやる」であったのだが、それは当てはまらないだろうし。
どっちにしろ言い切る前に一夏が即答したのである。
『あ、それじゃあ降伏します。』
と。
ご丁寧に両手を挙げて。
「何を考えているんだあの馬鹿一夏はっ!!」
自分の事のように怒鳴りだす箒。
何だかんだ言って、気には掛けてるんだよなぁ一夏の事。
俺の弟だからと言う理由もあるんだろうけども。
『あ、あなたにはプライドがないんですの!?』
『<武士は食わねど爪楊枝>って言うけどさ、プライドだけじゃどうにもならないんだよね。
こっちから言い出す前にそっちから言ってくれて助かったよ、ありがとう。』
キレるオルコットにマイペースに返す一夏。
そんなやり取りに観客席は騒めいてるし。
そりゃそうだろう、戦う前から降伏するなんて話は聞いた事もないだろうからな。
千冬姉は頭抱えてるんじゃなかろうか。
俺も頭抱えたい。
後、爪楊枝じゃなくて高楊枝な。
と言うか、別にオルコットは「降伏なさい」とか提案は一言もしてないからな?
試合結果?
一夏の「降伏します」が通ってオルコットの勝ちになったよ!!それ以外ないだろ!!
仮に無理矢理戦わせたとして、彼女は最初から全力全開でぶっ潰しにかかるだろうし、
(何しろ、オルコットの一夏を見る目がゴミを見るような目になってるし。)
一夏は一夏でとっととエネルギー切れになって負けるつもりだろうし。
「何も試験の時と同じことをやらなくてもよかったろうに………。」
「同じことをやったのか!?」
正確には、試験中動かなかっただけだ。
一切攻撃反撃無し!ただ突っ立ってるだけ!!
無抵抗非暴力と言えばインドの偉人のようだが、何考えてるんだこいつと思ったものだ。
「いや、人に対して銃を向けるとか怖くて。」なんて言ってたが。
試験と言っても名目上の物で、どうやっても落第する事が無いと分かってないと
出来ないぞあんなの。
「なぁ、箒。」
「どうした?」
俺の機体がまだ届かないので、色んな感情がないまぜになった感じの表情のまま
一端ピットに引っこんでいくオルコットをモニターの映像で見ながら箒に話しかける。
「俺、この空気であのオルコットと戦わないと行けないのかよ………。」
「………か、一秋なら大丈夫だ!お前ならきっと勝てる!!」
そう言う問題じゃないんだけどなぁ。
試合が始まる前から精神的に辛くて黄昏てしまう俺と、そんな俺を奮い立たせようとする箒。
そんな光景は専用機が到着した五分後まで続くことになったのである。