━━トロイという町があった。総人口500人程の小さな町で観光名所や特産物も無く、外から来る人も少なく、この町で育った若者の多くはバルバッドという大きな国に出稼ぎに行き、町には老いた人が大半を占めていた。そんな中でも、町の人たちは活気があり豊かではないが苦しい生活をしている者はいない。
そんな町に一人の少年と父親が暮らしていた。少年の名は”ソラ=キサラギ”
年はちょうど10を迎えたばかりで好奇心旺盛で興味のあることには首を突っ込んでしまう少し危ない少年がいた。現在も少年は町外れの小さな森で父親と行動していたところに、偶然野生のウサギを見つけ一目散に駆け出して逃げ出したウサギを追いかけた。
「親父!!遅いぞ!!はやくはやく!!」
少年━━ソラは追いかけて行くうちに、ウサギが巣に逃げ込んだところで追いかけるのを止め、ソラの父親<シロウ=キサラギ>を待っていた。
「ったくお前はいつもいつも何か見つけるたびに走りやがって……。追いかける俺の身にもなってみろっつの」
「親父の体力が全くないのが悪いんだよ、って痛い!」
ソラが反抗すると、シロウはげんこつをした。
げんこつを食らったソラは頭を押さえながらその場にうずくまった。よほど痛かったのだろうか目には涙を浮かべていた。
シロウはその様子を見て少し笑みを浮かべながら、逃げたであろうウサギの巣に近寄った。
「さて、問題だ。逃げたウサギが巣に入り狩ることができません。狩らなければ今晩の飯は無しだ。それでは俺たちが餓えてしまう……お前ならどうする?」
うずくまっていたソラだが、シロウからの質問により痛みを忘れ元気に勢いよく……。
「ウサギの巣を掘り返す!!」
というバカげた答えを言い放つ。
シロウは飽きれて肩を落とし顔を地面に向けるがすぐに上げ、腰に下げている剣を取り出し、ウサギの巣に向かって構えた。
「こういう場合は……こうするんだよ!」
するとシロウの剣の先から炎が現れた。炎といってもとても小さな炎であり、森全体を燃やすほどの火力は備えていないものだった
シロウは剣を振ると小さな炎はウサギの巣に向かって入っていった。それに気づいたのか、慌てながらウサギが巣から飛び出し、シロウの目の前に出てきてしまった。
シロウは笑みを浮かべ、ウサギは恐怖の顔になる。この瞬間にウサギの運命は決まった。
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ソラとシロウは町の端にある小さな家に帰ってき、先ほど取ったウサギの肉入りスープとパンを食べていた。食事はシロウがいつも作っている。キサラギ家はシロウの幼いころに母親<ナミ=キサラギ>を病で亡くしており、男で一つでシロウを育てていた。ソラはナミのことを覚えてはおらず、シロウの言葉から聞かされている程度だったが、やはり母親が恋しいときがあるのか、他の家族を羨ましそうに見ているときがある。そんな中でも父親であるシロウはソラと向き合い長いこと二人で暮らしている。
「やっぱ親父はすげーよな」
ソラはパンを食べながら、先ほど魔法を放ったシロウを思い出していた。シロウは昔、どこかの国の兵士であり魔法戦士として戦場を駆け巡っていた。今は退役し、退役したときの報奨金でやりくりしている。
そんなシロウを息子であるソラは羨ましそうな顔で見ていた。
「お前な……。まだ諦めていないのか?」
ソラは一度、シロウに魔法の教えを請いていたが、才能が全くなく魔法を発動することもできなかった。それでもソラは魔法という未知の領域に子供ながらも興味があり諦めきれないでいた。
「だってさ~」
「仕方ないだろ。お前は母さん似だ。母さんも魔法が使えずに嘆いていたよ」
魔法が使えない代わりに剣術は狂戦士(バーサーカー)並みだったが……。と呟くシロウは遠い目をしていた。母親であるナミは魔法が使えない代わりにシロウ以上の剣術を持っており周囲からはバーサーカーと呼ばれていた。
ソラは落ち込み溜息を漏らしていたが
「ま、お前は母さんだけでなく俺の血も入ってるんだ。なんかしらの魔法は使えるだろうよ」
と、哀れみなのか慰めなのかどちらとも取れない返事をしたシロウであった。
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食事を終え、ソラとシロウは寝るためにベッドに入りこんでいた。
ソラは昼でのことや、食事を取り今すぐにでも眠り込んでしまうような程、顔をうつらうつらしていた。
その様子をシロウは眺めながら口元を緩ませながらソラに話しかけた。
「ソラは母親がほしいか?」
眠気が来ていたソラだが、意外な問いをされ、目を大きく見開きシロウの方へ顔を向けた。
「いきなりどうしたの?」
当然の返答である。今までそのような問いは全くなく、口を開けば母親のナミであることばかり話して挙句には知人との酒の場では泣きながら昔話しをするほど未練でいっぱいなこの男からの問いである。疑問に思わないほうがおかしい。そんなこともかまわずにシロウは話続ける。
「いや、お前はどう思っているのかなと思って……な。」
しんみりとするシロウにソラは反対を向き、笑わずに答えた。
━━そりゃ、ほしいよ。と
この言葉が己の運命を決める始まりにして、終わりへと続いていくことを知らずに