ヒカルの友人やってたら何故か俺が佐為に取り付かれたんだが   作:数独

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プロローグ〜何で俺に取り付いたんだよ〜

 薄暗い中移動していく中、一つの碁盤を見つけて疑問に思う。……何で見えるんだ?碁盤には血の跡みたいのが点々としている。だが、これは俺には見えない筈なんだ。

 隣に居るヒカルに聞いてみるも何も見えないと言う返事が来る。どういう事だ?

 そう疑問に思っていると何処からか聞いた事がある声が聞こえて来た。

 

『このシミが見えるのですか?』

 

「見えるな……」

 

訳の分からない事態に内心パニックになりながらもそう呟く。

 

「どうしたんだ急に」

「どうしたの?何が見えるの?」

 

 疑問を持ったのかそう聞いてきた二人に何でもないと答えてから。背後に視線をやる。……居るし……

 

『私の姿が見えるのですか?』

 

 ……ああ

 

『私の声が聞こえるのですか?』

 

 いやまあ聞こえるけど……

 

『そうですか!!あまねく神よ感謝します……』

 

 ……これって原作。どうなるんだろう。

 

 それが気を失う前に俺が思った最後の事だった。

 

 

 

 俺には前世の記憶と言うものがある。いや、前世と言うのは正しくない。正確に言うと数年後の未来の記憶と言った方がいいだろう。

 死ぬ前の俺は普通の高校生だった。特に変わった事の無い普通の家庭で育ち、特別な事故や事件に巻き込まれることも無いまま極一般的な生活を送っていた。

 

 転機が起きたのは高校三年生の夏休みの時だ。その日は偶々両親が知人の葬式に出かけていたので、夕飯を自分で用意しなければならなかったのだ。

 自分で作るのをめんどくさがった俺は適当な店で済ませようと自転車で出掛け事故にあった。

 

 で、次に目が覚めた時に目に入ったのは妙に若くなって見える両親の姿だ。しかも自分が縮んでいると言うおまけつきだ。

 その時はパニックって思わず叫んじゃったなぁ……まあ当時俺は一歳だったから言葉足らずで何を言ってるか分からなかっただろうけど。

 それから数年は何事もなく過ぎて行った。どうして過去に戻ってるのだとか、死んだはずじゃ無いのかとか、色々疑問に思いはしたけど、それも数年もすれば割とどうでも良くなってくる。

 

 多少他の子より子供っぽくは無かったと思うけど、両親にとって俺は初めての子供だからかこんなものかと流された。これには俺に似て適当だと思わず苦笑してしまったよ。

 

 まあ過去に戻ったとして特にやりたい事も無かった俺は適当に過ごしていた。時間があるからと一日中アニメを見たり、漫画を読んだりと割とやりたい放題していた。

 それに幼稚園に通うと言うのも最初面倒だとは思いはしたけど、通ってみると割と悪く無い物だった。周りが子供過ぎるので下手に取り繕う事もせず、遊びほうけてればいいだけだったからな。

 

 小学生になった時、俺は初めてこの世界が自分の過去の世界では無い事に気が付いた。通う学校自体が違ったのだ。

 幼稚園は同じ場所に通っていたのでどうせ小学校も同じだろうと思っていた俺は正直驚いた。が、まあどうでもいいかと了承した。

 高校の時で小学校の知り合いと会ってたのは数人程度だったしそもそも再び仲良くなる保証も無い。今まで通り適当に過ごしていればいいんだと思ったんだ。

 

 

 で、入学した俺がクラスに入って見つけたのが髪の一部分を金に染めてる(ように見えた)子供だったのだ。その時は凄い子供もいるもんだなぁ~って流してたのだけど自己紹介の時に進藤ヒカルって名乗ったのには正直びびった。

 

 進藤ヒカル。ヒカルの碁と言う漫画の主人公の名前だ。内容はやんちゃな子供だったヒカルが碁盤に宿っていた幽霊と出会い。囲碁の魅力に引かれていく。そんな漫画だったはずだ。最初に読んだのは中学生くらいの時だったけど面白くって結構ハマったな~、それが切っ掛けで囲碁を始めたこともあったのだけど、周りに囲碁が出来る奴が少な過ぎて数年したら辞めたけど。

 

 まあヒカルだけなら偶然で済んだのだけど、同じクラスに藤崎あかりがいたのと調べてみたら塔矢名人なんかの他の登場人物の名前も出て来て、ここがヒカルの碁の世界だと何となく理解した。

 

 でもそれが分かったからと言って特に大きな変化がある訳でも無い。佐為と言う存在以外特にファンタジーな世界でも無いので何も変わらないと思ったからだ。

 変わったとこと言ったら囲碁を再び始めたくらいか?前は対戦相手がいなかったから辞めてしまったが、原作通りに進めば少なくとも葉瀬川中には囲碁部が存在するだろうし。

 

 両親は俺が囲碁を始める事には賛成だった。漫画やゲームばっかりよりはよっぽど健全だし反対する理由も無かったんだろう。

 

 で、そのまま小学六年生を迎えた。棋力はどれくらいだろう?対戦は殆どネット碁でやってたからよく分からん。勝率は結構いいからそれなりに強いんじゃ無いかとは思ってるが……

 

 ヒカル達との仲はボチボチよいった感じだ。会ったらそれなりに話す。遊びにも結構誘われる。藤崎も一緒の時は気を使って断るが。

 それにしてもあの二人一緒に居る事多いよな……ヒカルは邪険に扱う事が多いけど。まあ小学生なら異性と一緒に居る奴はからかわれるから仕方が無いっちゃあ仕方が無いが。

 

 そんな俺だが十一月のとある日。ヒカルに遊びに誘われた。じいちゃん家の蔵に行くらしい。原作のあの日か……藤崎と一緒だからいつもなら断るんだが確かこの日はヒカルが倒れる筈だ。原作通りなら大丈夫な筈だが小学生が目の前で人が倒れるのは大変だろうと思い。ついていく事にした。救急車を呼んだりする位は出来るだろうと思っての事だ。

 

 で、冒頭に戻ると。

 

 

 目を覚ますと心配そうに俺を見る両親の姿が見える。それに烏帽子を被った幽霊の姿も。どうしてこうなったと思いつつも両親に大丈夫だと笑いかける。その後検査を受けたが、急に意識を失ったものの身体自体はいたって健康だと言われた。それでも念のため一日入院するよう言われたので言われた通りにする。少し落ち着いて考える時間も欲しいし、お化けに取り付かれただけだと言っても頭がどうにかしたと思われてしまうかと思ったからだ。

 

 しばらくして両親も家に帰ってから改めて烏帽子の幽霊……佐為に対して話しかける。

 

 聞いた話はどうやら原作と大きくは変わらないように感じる。平安の都で大君の指南役をしていた事。もう一人の指南役が指南役は一人でいいと言い出し対局した事。相手の不正に気付き声を掛けようとした所、逆に不正をしたと言われた事。動揺したまま負け、不正をしたと言う汚名を着たまま入水自殺をした事。その後幽霊として虎次郎……本因坊秀作に取り付き、囲碁を打っていたことなど。

 

 

 それを聞いての俺の答えはこれだ。ある程度は協力するけど表舞台で打たせるのは無理。

 

 まず、俺にはプロになる気は無いし、実力的にも不可能だろうと思ってる。それなりの強さは持っていると思うが独学でしかも趣味の範疇だ。プロを目指すなんて片腹痛いだろう。

 表舞台で打たせるのが無理なのは当然だろう。俺の実力じゃあプロになるのは無理だろうし、佐為に打たせて俺がその評価を得るなんて考えたくはない。人間分不相応な評価を貰っても破滅するだけだ。

 

 そう説明した後、ネット碁の事を教える。正面切っては無理だけどパソコンを使って世界中の人と対局する事は出来ると。ネット碁でsaiとしてなら打たせてやることが出来ると。幸いな事に家にはパソコンがある。父親が仕事で使っていたもののお古だがまあ、ネット碁をするのに困らない程度の性能はある。

 ついでに俺にも囲碁を教えてくれるように頼んだ。趣味レベルだがそれなりの強さはある筈だ。佐為に教えて貰えればもっと強くなれるかも知れない。

 囲碁は趣味だが、趣味は全力でやるからこそ面白い。適当なのは普段の生活だけで十分だ。

 

 

『ありがとうございます。私も全力で指導に当たらせてもらいます!!』

 

 まあ、よろしく。

 

 

 

 次の日、登校の合間に今の常識を佐為に教えながら歩いていく。その反応はほんとに江戸時代からタイムスリップした人みたいで中々面白い。

 学校に着きみんなに挨拶をしながら席に着く。俺の席は窓際の一番後ろ。我ながらベストポジションだと思ってる。

 ヒカルや藤崎に昨日の事を心配されたが大丈夫だと返す。正直、少し頭が重いけどそれでも大したことは無い。少し休めば治るだろう。

 

 

「先日の社会のテストが皆さんあまり成績が良くありませんでした。ので!今日もテストを行います」

 

 先生のその言葉を聞いて、確か原作でも同じような事があったな~と感慨に耽る。佐為が俺に取りついた事で原作通りにはいかないだろうけどどうなるんだろう?まずヒカルが囲碁に興味を持つことが無くなって、塔矢が佐為の影を追ってヒカルを付け回すようなことが無くなる……別に問題はないな。

 

 誰かが死ぬわけでも無いし、原作より強くなれないかも知れないから特に困るような事は無い。強いて言うなら碁界の未来の強者が一人いなくなるくらいか?

 まあだからと言って世界から見れば小さな変化だろうし、そもそもどうしようもない問題だ。

 考え事をしている内にテストの回答も埋め終わったので時計を見る。……まだ半分以上残ってるな。仮にも前は受験中の高校生だったのだ。今更小学生の歴史の問題で躓くほど馬鹿では無い。

 

 

 

 暇だし囲碁の話でもするか?

 

『ええ!勿論構いません!!』

 

 

 そんな分かりやすい佐為の反応に苦笑しつつも現代の囲碁のルールについて説明していく。ついでに現代の定石についても俺が知ってて分かる範囲で話す。

 それに対し佐為は一々大袈裟に反応してくれるので話して居て楽しい。見た目二十代なのに反応は子供みたいだ。原作でヒカルが犬みたいな奴だと言っていたのも分からなくは無い。

 時間になりテストが回収されていく。あ、見直ししてなかった。まあいいか、多分八割位は解けたと思うし。

 

 

 全ての授業を終えた俺は早速家に向かって歩き出す。囲碁について色々話して居たら打ちたくなってきたのだ。

 

 

 

 

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