生命の唄~Beast Roar~   作:一本歯下駄

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 父上が死んだ

 押し寄せる怪物の波を押し留める為に自ら身を張って最前線に立ち、そして命を落とした

 母上が代わりに戦場に立つ事になった

 最強の剣士と名高い父上に代り、最強の妖術師である母上が戦場に赴くのは必然だった

 姉上と少女は無事を祈った

 その祈りが届く場所等ありはしないのに


『更新』

 カエデ・ハバリは上着を脱いでロキに背を向けながら部屋を見回していた。

 

 ステイタスの更新

 

 風呂上がり、食事より前に直ぐに更新するとロキに伝えられていた為、お風呂を上がって直ぐにロキの私室を訪ねれば、ロキはにこやかに出迎えてくれた。

 

 それからステイタスの更新の為にロキに背を向けて椅子に腰かけたのだが、最初の更新の時と同じく、やはり更新には時間がかかるらしい。

 

 それとも、カエデ自身が急ぎ過ぎているのだろうか?

 

 背中を撫でる指先を意識しつつも、部屋を見回している。

 

 相も変わらず。溢れる酒瓶や酒、【魔術的骨董品(アンティーク)】や【古代の遺物(アーティファクト)】が溢れかえっている。

 

 ……あの部屋の隅の方にそっと置いてある薄っぺらい本は何だろうか? やけに肌色が多い絵が見えるが。後は白っぽい液体の様な何か? なんだろう。画集か何かだろうか?

 

 そんな風に部屋の中を見回すカエデの視線が見覚えのある木箱に固定された。

 

 あの木箱……どこかで見た様な? そんな既視感を覚え、何処で見たのか頭の中でころころ転がして探してみると、直ぐにぴったりと一致する形状、大きさの木箱をワンコさんが背負っていたのを思い出した。

 

 旅装束に大き目のバックパック、左腰に鉈、右腰に戦爪(バトルクロー)、お酒の入った酒瓶を紐でぶら下げ、フードを被り、覗き穴の存在しない顔の上半分を覆う奇妙な仮面を付けて、けらけら笑うお酒臭い商人の人。

 

 そのバックパックの上に似た様な、と言うか全く同じ形状、大きさの木箱が縄で括り付けられていたはずだ。

 

 ワンコさんにその木箱は何か尋ねたら

 

 『この木箱さネ? お酒専用に改造してもらったホオ……ワンコさんのお気に入りの木箱さネッ!』

 

 と答えていた。お酒専用の木箱なのだろう。

 

 ロキ様も部屋に酒瓶や酒が沢山転がっている所から、お酒好きなのはわかる。ロキ様も同じお酒専用の木箱を持っているのだろう……

 前の更新の時には見当たらなかった気がするが、薄い本と同じく見逃していたのだろうか? あれだけ大きい物を見逃すだろうか? 相当、焦っていたのだろう。気をつけなくてはいけない。

 

 ふと、ワンコさんの事を思い出していたら、大事な事を思い出して思わず声が漏れた。

 

「あ」

「うぇあっ!!?? なななななななんやカエデたん、どしたったん?」

 

 思わず声をあげれば、こちらが驚いてしまう程動揺したロキの声が聞こえて、尻尾が跳ねてロキの手をはたいてしまった。

 

「ごめんなさい。えっと、一つ思い出した事がありまして」

「……ステイタスについてやのうて?」

「? ステイタスの更新は終わりました?」

「あー、ごめんなー、もうちょいかかるわ」

 

 何故か焦った様な声だったロキは、直ぐにいつも通りの声色に戻る。どうしたのだろうか?

 

「ワタシのステイタス、どこかおかしいですか?」

「え? いや、別におかしい所は無いでー」

 

 おかしな所は無い。じゃあなんで慌てていたのだろう?

 

「それより、思い出した事って何や?」

「えっとですね、ワンコさんについてなんですが」

「……ワンコさんっちゅーと、商人の事か」

「はい」

 

 確か、ワタシが村を出た日より二日後にワンコさんが訪ねてくる事になっていたはずだ。大雨の所為で遅れる可能性はあったが、それでもワンコさんに何の連絡もせずにオラリオに出てきてしまった。

 ワンコさんは心配性でモンスター退治の際等に凄く心配していたし、ちょっとした怪我でも大騒ぎしたりする人だった。

 もしかしたら心配をかけてしまっているかもしれない。

 

 そんな事をロキに話せば、ロキは大丈夫やろと笑った。

 

「それについては大丈夫やろ、ワンコっちゅうんが商人なら【恵比寿・ファミリア】が知っとるやろうし、知らんかったとしてもセオロの密林まで足を運ぶ商人なら間違いなくオラリオにも顔出しとるやろうし、調べよう思えば調べられる思うで」

「そうなのですか?」

「せやせや……っと、ステイタスの更新終わったでー」

 

 ロキはそう言うと、カエデにステイタスの書かれた紙を手渡した。

 

 

 

 

 力:I64 → H189

 耐久:I89 → E490

 魔力:I0 → I0

 敏捷:H106 → G222

 器用:G259 → E443

 

 『偉業の証』☆

 『偉業の欠片』★☆

 

 

 

 

……偉業の欠片だ。

 

 偉業の欠片!

 

「ロキ様ッ!! 偉業の欠片ですッ! 欠片ッ!」

「せやでカエデたん、おめでとうや」

「はいっ」

 

 偉業の欠片。

 

 冒険者の半数が心の底から渇望しても得られる事の少ない偉業の欠片だ。

 

 それを、初日に手に入れた。これは大きい。

 

 かの【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインはランクアップギリギリまで『偉業の証』を手にできなかったみたいだが、ワタシの場合は初日に『偉業の欠片』である。

 

 これなら半年以内のランクアップも不可能ではないのでは?

 

 先に見えた光に思わず飛び上がって喜びを表せば、ロキが飛びついてきて抱きしめられた。

 

「よう頑張ったわ、めっちゃ頑張った、せや、カエデたんはよう頑張ったで、トータル1200オーバーなんて初めて見たわ」

「はい、頑張りましたッ!」

 

 そのまま二人で喜んでいたら、リヴェリアがやってきて怒られてしまった。

 

 服も着ずに何をしているのかと。

 

 その後、『偉業の欠片』については他の団員に黙っておく事を言い含められてからロキの部屋を後にした。

 

 嬉しさから足取りも軽くなり一度自分の部屋に戻ろうと廊下を歩いていると、ジョゼットが廊下の片隅に立っているのが見えた。

 

窓から、夕焼けに染まる街を眺めながら、妖精弓の弦を弾いてもの哀しい旋律を刻んでいる。

 

「ジョゼットさん、こんばんは」

「……あ、カエデさん。こんばんは」

 

 窓から外を眺めていたジョゼットは軽く溜息をついてから、カエデに振り返って頭を下げた。

 

「重ね重ね、今日は申し訳なかったです」

「……あの、その……謝る必要は無いです」

 

 【ロキ・ファミリア】の本拠に戻ってから、戻る前もそうだが、ジョゼットは何度もカエデに謝っていた。

 

 護衛として付いていたのに護衛の任務を全うできなかった事を謝罪してきた。

 

 だが、それについてカエデはジョゼットを責めるつもりはないし、謝られるいわれも無いと思っていた。

 

 師の言葉

 

『選択したのなら責められるは己自身じゃ。オヌシはワシと共にモンスター退治に同行したいと申し出た。ワシはそれを承諾した。モンスターからの攻撃でオヌシが怪我をするのはオヌシ自身の責任じゃし、オヌシの不注意でワシが怪我をしたとしてもオヌシの同行を赦したワシ自身の責任じゃ』

 

『選択した覚えなんて無い? そんな事は有り得ん。選択せずに流される事を()()()じゃろ? 流される事も選択の一つじゃからな。もしくは()()()()()()()()()()とかな。自身で選択肢を探さずに居れば選択肢を選ぶ間も無く問題に直面するじゃろうしな』

 

 迷宮は危険な所である。

 

 数多の冒険者が富を名声を求めてその穴に潜って行った。

 

 そして、数多の冒険者が命を落としてきた。

 

 モンスターは冒険者に対して殺意を抱き、冒険者の命を奪わんと襲ってくる。

 

 そも、そんな危険な所に自ら潜る選択をしたのはカエデ・ハバリ自身であり、ジョゼットではない。

 

 確かに護衛をするという選択をジョゼットがしたのはわかる。

 

 だが同時にカエデ自身が危険に身を投じる事を選択したのだから、他者に責められるべきではない。

 

 馬鹿にされ、嗤われ、侮辱されるのは構わない。

 

 自ら選んでおきながら無様を晒したのは己自身である。

 

 だが、責を責められるのは違うのだ。

 

 『己を責められるのは己自身以外に居ない』

 

 己の失態を己に問えぬのであれば、それは愚かな事である。

 

「ソレを赦す赦さないを決めるのはワタシではなくジョゼットさん自身だと思います。ワタシがどれだけ赦しの言葉を紡いでも、ジョゼットさん自身が赦せなくては意味が無いですし」

「……それも、そうですね。すいません。カエデさんに謝罪し続けても迷惑なだけですね。これっきり謝罪はしないとこの場で誓います。ですが最後に、ごめんなさい」

 

 真面目な表情を一瞬だけ歪ませ、困った表情を浮かべ、それから笑みを浮かべて謝罪の言葉を紡いだ後、ジョゼットは顔を上げて口を開いた。

 

「もし、カエデさんが何か困った事があれば是非声をかけてください。微力ながら力添え致しましょう」

「……はい、困った事があったら頼りにします」

 

 ジョゼットの悩みはカエデの悩みと似ているのだろう。

 

 カエデ自身も、師が川に落ちた原因が自分にあると思っている。

 

 師はソレを認めないだろう。カエデの同行を認めた己にこそ非があり、カエデを責め立てる事はありえない。

 だが、カエデ自身はカエデを責める。アレは己の失態故起きた出来事だと。

 

 ソレの無意味さを理解しつつも、それでも己を責め立てるのをやめられない。そういうモノだ。

 

 だからこそ、謝罪の言葉の応酬に意味は無い。

 

 己を責めるべきは己自身でなくてはならない。

 

「……ここで、話し続けていても仕方が無いですね。食堂に向かいましょうか」

「はい」

 

 

 

 

 

「それで? ステイタスの方はどうだったんだい?」

「最悪」

 

 フィンの質問に一言だけ答えてから、ロキは深々と溜息を吐いた。

 

「まず第一に、『偉業の証』やのうて『偉業の欠片』やった」

 

 駆け出し冒険者が、最初の迷宮探索において特殊装備無しでヘルハウンドを討伐した。

 

 『偉業の証』を手に入れたのは間違いない、そう確信していた事が裏切られた。

 

 正直信じられないが、少なくともカエデのステイタスに於いて、かの出来事は『偉業の欠片』相当に分類されてしまった様子だった。

 

「……信じられんな、ヘルハウンド討伐だぞ?」

「何がダメだったんだろうね」

 

 リヴェリアもフィンも、ガレスすらも『偉業の証』を疑っていなかった。現実は『偉業の欠片』である。

 

 とはいえ、初日に『偉業の欠片』を入手する冒険者なんて居ないと断言できる以上、カエデの『偉業の欠片』入手は凄い事ではあるのだが……

 

「んでもう一つ、基礎アビリティについてなんやけど……ある意味では予想通りなんよなぁ」

 

 カエデに渡したモノとは別のステイタスを記した紙を広げて溜息を吐いた。

 

 

 力:I64 → E489

 耐久:I89 → B760

 魔力:I0 → I0

 敏捷:H106 → D522

 器用:G259 → C643

 

 

 トータル上昇値1800オーバー

 

 普通の冒険者が一日で上昇させるステイタスはどれだけ頑張ってもトータル20~40程度が限界だ。

 

 初期値がオール10前後の駆け出し冒険者が、初回冒険で色濃い冒険をし、潤沢な経験値(エクセリア)を得たとしてもトータル100~150ぐらいが関の山だろう。

 

 ソレを考えればスキルによる上昇値が恐ろしい程高いのが分る。

 

 問題はこのステイタスの伸びは【師想追想(レミニセンス)】によるモノなのか、【死相狂想(ルナティック)】によるモノなのかが完全に不明であると言う点。

 

「これは……恐ろしいね」

「…………」

「……まさか、ここまで伸びるとは」

 

 カエデ自身に教えたモノは大分低めにしておいた。

 

 それでもトータル1000以上

 

 カエデは、非常に頭が良い。とはいえ発想力が低いのか与えられた知識の中から答えを見つけ出すのは得意だが、全く知らない方程式等が組み込まれると途端に答えを見つけられなくなる。

 今のカエデには【師想追想(レミニセンス)】のスキルによる『早熟する』と言う効果によってステイタスの伸びが非常に良いと教えてある為、もう一つの成長系スキルの存在について思い付く事はないはずだ。

 

 だが、もし本当のステイタスを教えていた場合、今後の更新の際に感づかれる可能性がある。

 

 最初の更新でトータル1800オーバーをたたき出し、今後の冒険に於いて上昇値が少なくなった場合等、カエデは数少ない情報から答えを導き出す可能性がある。

 逆に言えば現在与えている情報を間違ったモノにすり替えられてしまうとカエデは永遠に答えに辿り着けない。

 

 己の知識に当てはめて対処しようとするのは悪い事ではないが、ソレに囚われると足元を掬われる事になる。矯正しておくべき点だが、今はそのままにしておくべきだろう。

 

 変に【死相狂想(ルナティック)】に感づかれれば面倒事になりかねない。

 

「……しかし、これは不味いね」

「せやな、完全に超面白い玩具やで」

「他に神に知られれば放っておかれる事は無い」

「それも美の女神が知った日には……」

 

 カエデは『偉業の欠片』を入手した事、『基礎アビリティD以上』を達成した事で凄く嬉しそうにしていたが、カエデが知らないだけで足元には大穴が開いている。

 

 このまま順調に器の昇格の機会を得たとしてもその大穴に落ちる危険性が減る訳ではない。

 

「……厳重に秘匿しないといけないね」

「他の子らにも影響がでそうやしな」

「……羨望や嫉妬で足元を掬われればそれまでだからな、今まで以上に注意しないとまずいぞ」

「そうだな……どうするんだ? ワシらが四六時中付いている訳にもいくまい。いずれはパーティーを組ませなければならんし」

 

 ガレスの言う通りだ。

 

 カエデに四六時中誰かが付いている事は難しい。それにダンジョンに於いても三日に一度、幹部の誰かを一名随伴でダンジョンに潜るという事を続ける事も難しい。

 今の時点でも団長や副団長、ガレスが目を付けているという情報だけで羨ましがる団員も居るぐらいだ。

 これから先、カエデへの優遇が過ぎれば他団員からの不満が爆発しかねない。

 

 如何すべきか話し合うべき事は沢山あるが、ロキは一つ考えを導き出す。

 

 もういっそ【師想追想(レミニセンス)】について最初から公開して、そのスキルのおかげで急激に強くなっていく少女と言うカバーストーリーを組み立てて、【死相狂想(ルナティック)】のスキルから皆の視線を引きはがすのはどうかと言うモノ。

 

 どちらにせよカエデ・ハバリへの注目は避けられまい。

 

 ならば目立つ方向を此方で完全に定めて本命は隠しておくのが良いのではないか?

 

 レアスキルやレア魔法(マジック)がある冒険者を優遇するのは何処のファミリアに於いても普通の事だ。

 

 【ロキ・ファミリア】に於いても【魔弓射手】ジョゼット・ミザンナはかなり優遇している。

 

 ダンジョンの深層攻略用に魔剣を多数用意しようとすると、本来なら数億から数十億ヴァリスが吹っ飛ぶ。

 だが、ジョゼットはマインドさえ回復してしまえばいくらでも魔剣に相当する妖精弓を作る事が出来る。

 本格的な迷宮探索を行う際に一週間ほどの準備期間が有り、その準備期間中ジョゼットはマインドが切れるまで弓を作り続け、マインドが切れたら部屋で寝る。起きたらまた弓作りと言った労働をする事で迷宮探索用の魔剣代わりの妖精弓作成を行っている。つまりジョゼット一人で数億から数十億ヴァリスの価値があると言える。

 当然ながら、ジョゼットを他の団員と同じ様に扱う事は無い。ファミリアに対してそれだけの利益を上げている団員に何もなし等と言う事はありえないからだ。

 

 そして、カエデの成長系スキルも、短期間での成長による補助期間の短さ等を理由に優遇する事を皆に伝えれば理解はしてもらえるだろう。納得するかは別だが。

 

 考えを纏めてから、フィンに相談すれば、フィンは悩ましげな表情を浮かべてから呟く。

 

「【フレイヤ・ファミリア】の動向が気になるかな。このままなら問題らしい問題は見当たらないと思うよ。ファミリア内部の事については僕達でなんとかできる範囲だと思う」

「そうだな、あのファミリアがどう動くか次第だ。少なくともカエデはほぼ間違いなく目をつけられているだろうしな」

 

 リヴェリアの言葉にロキは眉根を寄せてから、溜息を吐く。

 

「フレイヤ、フレイヤなぁ、アイツはほんまになぁ……」

 

 気に入った団員が居ればどんな手段を講じてでも奪おうとする美の女神を頭に思い浮かべてから、ロキは二度目の溜息を吐いた。

 

「……ここで悩んでおっても仕方があるまい。カエデにはステイタスを他の者等に教えない様に言い含めておいたのだろう? ならばカエデがランクアップするまでは現状のままで良いのではないか?」

 

 ガレスの言葉に三人が唸り、フィンが頷いた。

 

「少なくとも、カエデがランクアップするまでまだ期間が有る事が分っただけでも大きい……と言いたいけど、カエデの様子を見るに次の『試練』もそう遠くない。最悪【フレイヤ・ファミリア】が『試練』を用意する可能性だってある。そうなれば『偉業の欠片』を入手するのもそう遠くは無いだろう。それまでの間にカエデを守る手段や方法を模索しておく必要があると思う」

 

 少なくとも、他のファミリアに奪われた場合、お気に入りの眷属を奪われてむかつく程度で済めばいいが、他ファミリアで大成して、手が付けられない程に強大な敵としてカエデが立ち塞がる事があれば、非常に面倒だ。

 【ロキ・ファミリア】内部で大成して、【ロキ・ファミリア】を家、家族と認識すればカエデは必死に【ロキ・ファミリア】を守ろうとするだろう。

 それは【ロキ・ファミリア】にとってかなりの利益となり得る。

 

 この調子で成長すれば最強(レベル7)も夢ではないのでは? そう考えるフィンの言葉にロキが眉根を寄せた。

 

「フィン、あまり言いたくはないが「わかってるよ。損得で考えすぎだって言いたいんだろう?」……」

 

 リヴェリアの苦言にフィンは肩を竦める。

 

「どちらにせよ、カエデを守る手段は必要だと思う。今のままだと他のファミリアのちょっかいでカエデの迷宮探索に支障が出る可能性があるからね」

「そうだな」「うむ」

「まぁ、その通りやな……最悪、ファイたんにも協力仰ぐか」

 

 女神ヘファイストスがカエデの事を気にしている。

 少なくとも、自分の作成した武具を言い訳を要して無料で提供する程度には。

 

 探索系ファミリア最強の片割れ【ロキ・ファミリア】の加護だけでなく、鍛冶系ファミリア最高峰の【ヘファイストス・ファミリア】の加護もあれば他ファミリアからカエデに対するちょっかいはかなり減らせるだろう。

 

 とはいえ、情報を若干隠しているヘファイストスを完全に信用する事も難しい。

 

 どうするか悩みながら、ロキは時計を見て時間を確認してから呟く。

 

「あ、もうすぐ夕食の時間やな……このまま悩んどっても始まらんし、とりあえずこの件はいったん保留にしとこや」

 

 時間を見ればそろそろ夕食の時間である。食堂に向かわなければ皆を待たせる事になってしまうだろう。

 

「……そうだね、当然の事だけどカエデのステイタスについては内密にね」

「わかってる」「無論だな」「当然やろ」




上昇値高すぎ? 高くない?

『『瀕死』状態時、効果超々向上』は伊達じゃないです。

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