生命の唄~Beast Roar~   作:一本歯下駄

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『もしかしてそのあすとらるふぁみりあ? とやらをどうにかしたいのか? ならワシが皆殺しにしてやろうか』

『え?』

『なぁに、正義なんぞ掲げた糞にも劣る集団なんじゃろ? 切り捨てられた所で問題はあるまい』

『何を言ってるさネッ!?』

『……? オヌシこそ何を言っている? ()()じゃぞ? 滅ぼさねば碌な事になるまいて、ほれ早くオラリオとやらに案内せえ……正義なんぞ掲げとる奴らは抹殺あるのみじゃて』

『やめっ! やめるさネッ!! ちょっ!? 止まるさネッ!! やばッ!? ツツジーッ!! キキョウーッ!! ヒヅチを止めてくれさネーッ!! アチキじゃ止められないさネーッ?!?!』


『鎖』

 ダンジョン十階層、薄霧に包まれた草原を彷彿とさせる草の茂ったフロア。

 

 アレクトルの繰り出した『斬首刑の大斧(ギロチン・アックス)』の一撃を槍でいなしてから、即座に相手の腕を狙って槍を突き出すも、陶器の砕ける音と共にフィンの槍が弾かれてしまう。

 フィンは舌打ちと共に後ろに下がりアレクトルを睨む。

 

「ちっ……厄介だね。その魔法」

「『凶刃は我が身に触れず『失攻刃』』」

「……あぁ、本当に厄介だ」

 

 攻撃に対する自動防御を付与する魔法。発動すると陶器の砕ける音と共に魔法効果を消失して敵の攻撃を弾くと言うシンプルで解りやすい魔法だ。

 先程からフィンはアレクトルと一対一で戦っているが、非常に厄介な魔法がどうにも突破できない。

 

 相手は一撃貰うの覚悟で斬りかかってくるが、此方はあんな大斧が直撃すれば一撃で致命傷を貰いかねないが、フィンの槍の一撃は魔法で必ず防がれてダメージにならない。

 

「流石【勇者(ブレイバー)】と呼ばれるだけはあるな」

「ははっ、嫌味にしか聞こえないよ【老兵(パレマコス)】」

「…………貴様、その名で呼ぶ事は許さんぞ」

 

 【老兵(パレマコス)

 【処刑人(ディミオス)】アレクトルが密かに呼ばれている蔑称である。

 アレクトルは既に老いた老人である。現役冒険者の中で最年長なのは現在アレクトルなのである。

 実力はそこまで高く無く、レベル6と言う場所に辿り着いたのも80歳を超えてからと言う人物だ。

 

 いくら神の恩恵(ファルナ)を授かった冒険者と言えど、ずっと冒険者を続けられるわけでは無い。

 

 普通の冒険者、エルフでも無ければ基本的に60歳か70歳程度で引退し、後世の育成に回るのが普通だが。アレクトルは、80歳を超えてから器の昇格(ランクアップ)を果たした長寿種のエルフを除いた最年長ランクアップ記録を持つ人物である。

 しかもそれ以降も闘い続け現在においては100歳に到達目前とされており、牛人(カウズ)所か長寿種であるエルフを除いたすべての種族であれば冒険者を引退して然るべき段階にありながら、未だ牛歩の歩みではあるが成長を続ける驚異的人物でもある。

 

 そんな老兵とも言えるアレクトルだが、その戦術はアマゾネスとよく似た脳筋的戦術を使用してくる。

 

 被弾(ダメージ)覚悟での攻撃は非常に厄介であり、何より被弾(ダメージ)を一度だけ無効にしてしまう【失攻刃】と言う魔法によって単純な戦闘であってもまともに打ち合う事も出来ない事が多い。

 

 そんなアレクトルが呼ばれると激怒するのが【老兵(パレマコス)】と言う蔑称である。

 これは引退すべき年齢に達していながらダンジョンに潜り続ける年老いた冒険者に贈られる言葉であり、要するに『そろそろくたばれ糞ジジイ』と言う意味を持つ言葉である。

 

 フィンの倍の年数は戦っているアレクトルと言う男はまさに驚異だろう。

 

 ステイタス的な差は殆ど無い。才能あるフィンと違い、凡人以下でしかなかったアレクトルはフィンと同じレベル6に達するのに倍の時間をかけてしまっている。しかし戦闘に対する経験はフィンの倍以上。

 

 残念な事にアレクトルに才能は無かった。だがそれを補って有り余る程の向上心を以てして神ハデスに仕えるべく己を鍛え上げ、今までの数多の戦場における経験がソレをさらに昇華させている。

 

 能力的才能は無く、効率的な戦い方を考え付き実行できる程の頭脳も無い。ならば自らにあった力をただ極めるのみ。

 

 その極まった脳筋戦術は、下手な戦略を砕き潰していくだろう。

 体格的不利、能力は同等、そして何よりフィンとの相性が最悪である。

 

 目にも止まらぬ程の連続突きを叩き込もうとするも一撃目で盛大に弾かれて後ろに飛び退く羽目になる。危うく目の前を轟音を立てて振り抜かれる『斬首刑の大斧(ギロチン・アックス)』によって頭を切断される所だった。

 あまりの厄介さに舌打ちを繰り返し、アレクトルを此方に引きつける。

 

 アレクトルがラウルやジョゼットの方に向かえば一瞬で片づけられてしまう上、カエデは『丹田の呼氣』のおかげで威圧感で気絶せずにアレクトルに立ち向かえるが能力的にどう足掻こうが勝てる訳も無い。

 

 出来る事は時間を稼いでアレクトルを三人から引き剥がしておいて、三人が敵を片付け終わって地上へと向かう様に指示を出す事。後序にガレス辺りを呼んでもらえば余裕だろう。

 

 

 

 

 

「でぇやっ」

「ラウル、下がってください『射手隊よ、弓を持て、矢を放て『一斉射』』」

 

 カエデは相手が投げてきたスローイングダガーを弾き、ジョゼットの背後から近づいてくる冒険者に唸り声をあげながら斬りかかる素振りを見せれば、襲撃者の白装束は直ぐに後退して距離をとる。

 ジョゼットが『妖精弓』を引き絞り、天井に向かって射る。

 

 『妖精弓』がたった一射で砕け散り、消え去るも放たれた矢が薄霧の中、朝靄の様な光を放っている天井に突き刺さり、炸裂した。

 一度に数十を超える追尾性の魔法矢が放たれ、白装束へ降り注いでいく。

 

「ぐぁっ!?」「何だこの魔法はっ!?」「魔剣っ!?」

 

 しかも一度では無く、着弾地点より数度に分れて追尾性の魔法矢が放たれ、ラウルが降り注ぐ魔法矢に注意を逸らして隙を晒した駆け出し(レベル1)冒険者を二人、蹴り飛ばして気絶させてジョゼットとカエデの傍に戻る。

 

「流石ジョゼット、この調子で頼むッス」

「任せてください、カエデさん、もう少し近くへ」

 

 ジョゼットから少し離れた為、慌ててジョゼットの近くへ戻れば何本かのスローイングダガーが飛来する。

 落ち着いてダガーでソレを払い落として相手を睨む。

 

 現在、ラウル、ジョゼット、カエデの三人は七人の冒険者に囲まれているさ中である。

 

 前衛がラウル、後衛がジョゼットで、ジョゼットの防御にカエデがついていると言った陣形をとっている。

 本来なら防御対象はカエデであるが、相手は厄介な対象であるジョゼットから排除すべくジョゼットに対して飛び道具のスローイングダガーを使ってジョゼットの詠唱妨害を企んでいるが、上手くいっていない。

 飛んでくるスローイングダガーをカエデが払い落とす事でジョゼットが安全に詠唱でき、ラウルは二人に接近を許さない様に二級(レベル3)一人と三級(レベル2)二人を上手くいなしている。

 

 と言うよりラウル一人で二級(レベル3)三級(レベル2)二人を完全に封じ込めているのだ。

 

 【超凡夫(ハイ・ノービス)】ラウル・ノールド。

 特筆した特化点が存在しない代わりに、特筆した弱点も存在しない。

 地味な戦い方ばかりしているラウルだが、相手の挑発に決して乗らず。自分のペースを貫き続けるだけの忍耐力を持っている。

 

 白装束側、【ハデス・ファミリア】側からすれば、前衛のラウルをどうにかしてジョゼットとカエデから引き剥がしたいのだが。二人の傍から一定距離離れた途端にラウルは追撃をやめて二人の傍に戻ると言うのを繰り返している。

 

 何よりうっとおしいのはラウルの牽制力とジョゼットとの息の合った連携である。

 

 ラウルは迷わず【ハデス・ファミリア】の二級(レベル3)冒険者に圧力をかけつつも、他の冒険者がジョゼットとカエデに近づこうとすればソレの牽制も行う。

 同時に仕掛けようとすれば必ずジョゼットの邪魔が入り、ジョゼットの詠唱中に投擲武装で妨害しようにも白い狼人、カエデがそれを妨害してしまい、上手く連携を崩せない。

 

 カエデをどうにかして連れ去ってしまえば【ハデス・ファミリア】側の勝利ではあるが、本来の計画通りに行っていない。もっとも厄介な【勇者(ブレイバー)】を抑えて後は数で押せば余裕だろうと高を括っていた結果だろう。

 

 特に【超凡夫(ハイ・ノービス)】の二つ名から大した事は無かろうと油断しきった結果だろうか。

 

 ラウルの牽制力が凄まじく手出しが出来ない。【魔弓の射手】の援護能力は馬鹿にならない所か、『妖精弓』の装備解放(アリスィア)の効果が凄まじく直ぐに立て直されてしまうのだ。

 

 装備解放(アリスィア)とは、装備魔法と言う習得者の少ない魔法における特殊な効果の事である。

 装備魔法の基本は『誰が使っても同じ効果が発動する』と言うモノ。詰る所魔剣と同等の効力を持っているが、その装備を生み出した人物、つまり装備魔法の習得者が追加詠唱を行う事で更に別の効果を発動する。それが装備解放(アリスィア)

 本来ならば隠匿されているソレを躊躇せずにぶっ放してジョゼットは数の不利を完全に無き物にしている。

 

 ジョゼットの装備魔法『妖精弓の打ち手』の装備解放(アリスィア)の効力は、

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言うモノ。

 

「『誇り高き妖精の射手へと贈ろう。非力な我が身が打つ妖精弓を、十二矢の矢束を六つ、七十二矢の矢を添えて『妖精弓の打ち手』』」

 

 ジョゼットの詠唱と共に、ジョゼットの手の中に妖精弓が生み出され、ジョゼットは迷わず弓引くと追加詠唱を唱える。

 

「『射手隊よ、弓を持て、矢を放て『一斉射』』」

 

 矢が放たれた瞬間に、弓は砕け散る。放たれた矢は天井に突き刺さり炸裂すると同時にその場に光球を残す。

 十二矢の矢束、六つ。

 十二の矢が一度に放たれ、続けて六度。合計七十二本の魔法の矢が天井から敵対者へと降り注ぐ。

 

 一つの矢束に束ねられた矢を同時に放ち、矢束の数だけ回数が放たれると言うシンプルな『装備解放(アリスィア)』。

 ジョゼット一人で複数の白装束が倒れ伏し。気付けば7人居た冒険者が既に3人に減っている。

 

「案外余裕ッスね」

「……はぁ、油断大敵。残っているのは二級(レベル3)三級(レベル2)ですよ……」

 

 ジョゼットが新たな妖精弓を完成させながらラウルに釘を刺す。ジョゼットの言葉にラウルは眉を顰めて相手の出方を窺う。

 

「わかってるッスよ」

 

 フィンが迷わず一級(レベル6)冒険者の【処刑人(ディミオス)】アレクトルを抑えてくれたおかげでどうにか勝てそうだが……相手の編成に違和感を感じた。

 

 【ハデス・ファミリア】は30人規模のファミリア。団長の【処刑人(ディミオス)】が唯一一級(レベル6)であり、それ以外は二級(レベル3)が二人、三級(レベル2)が3人、それ以外が駆け出し(レベル1)と言う編成だったはずだ。

 

 あと一人ずつ、二級(レベル3)三級(レベル2)が何処かに潜んでいる……。

 

「……ラウル。【ハデス・ファミリア】の二級(レベル3)、もう一人は【縛鎖(ばくさ)】です。ここに居るのは【監視者】ですね」

「うわ、マジッスか……」

 

 ジョゼットの苦虫を噛み潰した様な苦々しげな表情に、ラウルは引き攣った笑みを浮かべた。

 

 【縛鎖(ばくさ)】イサルコ・ロッキ

 

 ジョゼットと同じくオラリオに数少ない装備魔法を使える冒険者の一人。

 使用できる装備魔法は『捕縛の鎖』。単純に投げると対象に向かって勝手に巻きついて拘束すると言う地味に面倒な効果を持った装備魔法である。

 装備解放(アリスィア)の効力は不明である。と言うかそもそも装備魔法すべてに装備解放(アリスィア)があると確定している訳ではない。

 【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインの使用する付与魔法(エンチャント)にはエアリエルには追加詠唱が存在するが、他の冒険者の付与魔法(エンチャント)には追加詠唱が存在しないモノも多い。

 その関係から、全ての装備魔法に装備解放がある訳ではないと推測されているが。

 習得者が少ないが故に情報が少ないが、警戒するに越したことはないだろう。そう判断したラウルが警戒しつつも目の前の三人を片付けるべく剣を向け直す。相手も構えなおすが既に息切れ寸前。

 対する此方はカエデが若干息を切らしているぐらいで無傷。

 

「とりあえず目の前の三人を――「避けるんだっ!!」――ッ!? カエデちゃんっ!!」「ッ!?」「カエデさんッ!?」

 

 フィンの大声が聞こえた次の瞬間には、『斬首刑の大斧(ギロチン・アックス)』がカエデとラウルの間に凄まじい轟音と共に突き立つ。

 衝撃で吹き飛び、転がりながらなんとかカエデが体勢を整えて立ち上がるのと、残っていた白装束三人がラウルに殺到するのはほぼ同時だった。

 

「カエデさんッ!! 怪我はッ!?」

「大丈夫です」

 

 ラウルの援護より先にカエデの元に駆けつけたジョゼットに起き上がりながら答えると、ジョゼットが妖精弓を引き、詠唱をしようとした瞬間に、カエデは鎖の擦れる音を聞いた気がした。

 

「鎖……?」

「カエデさん?」

「鎖の音が聞こえます」

 

 霧の向う側、ラウルが三人相手に上手く立ち回っている姿が見えるが、あのままではジリ貧でラウルがやられる。だがカエデの言う()()()も気になる。

 警戒心を高め、ラウルの背後から攻撃しようとしていた白装束を妖精弓で射抜き。続けて矢を放とうとしたジョゼットは足元で何かが動いているのに気付いた。

 

 これは――鎖?

 

 地面から鎖が生えている。まるで蛇の様にゆらゆらと先端のカギ爪が揺れており、地面との接地面は不自然に水面を思わせるかのように揺らめいている。

 

「……カエデさん、気を――ッ!? 避けてくださいッ!!」

「ッ!? 鎖が地面から――

 

 瞬く間に、地面から生えた鎖がカエデの脚に絡みついた。

 瞬間、ドポリとまるで地面が水面になったかのように鎖の絡みついた脚の部分が地面に沈む。

 

「これはっ!? カエデさんっ!!」

「ッ!?!?」

 

 驚愕と共に慌てて剣で鎖を断ち切ろうと振るうも、地面に当たると鈍い音を響かせて弾かれてしまう。

 ずぶずぶと足が沈みついには腰の辺りまで沈み込み、カエデが必死に抜け出そうともがくも沈む速度が緩まる事は無い。

 ジョゼットが慌ててカエデの体を抱いてそれ以上沈むのを止めようとする。

 

「団長ッ!! ラウルッ!!」

 

 フィンとラウルに助けを求めようとするも、一級(レベル6)同士で激しく戦いを繰り広げているフィンはこちらに反応する余裕は無く。ラウルは同格一人と援護に二人も居る状態で此方に構っている余裕は無い。むしろ援護しなくてはラウルはいずれやられる。

 そう考えながらもどうするか考えている間に更に数本の鎖が地面から生えてきてジョゼットの体も含めてカエデを雁字搦めにして沈む速度が速まった。

 

「ジョゼットさんっ!!」

「しまッ!? くッ!」

 

 ジョゼットがどうにか鎖を破壊しようと短剣を振るうも、鎖に傷一つつけられない。

 

「魔法の産物……装備魔法ッ!! ラウル、団長ッ!!」

「ジョゼットッ!?」

「なッ!? そう言う事か【処刑人(ディミオス)】ッ!!」

 

 グイグイと地面に引き摺り込まれながら、何とかフィンとラウルに現状を伝えたが、もう既にカエデが胸の辺りまで沈み込み、ジョゼットも腰まで沈んでしまっている。

 

「くっ、カエデさんしっかりしがみついてくださいっ!!」

「はいっ!!」

 

 カエデは縛られて動けない。ジョゼットは何とかカエデを抱きしめて離さない様に耐える。

 

 

 

 

 

 いつも通り、安定した戦い方こそ、最も生存率が高い。

 その戦い方は地味だろう。けれども冒険者として、安定した戦い方をしているからこそ、ラウルはこれまで死なずに冒険者を続けているのだ。

 だが、今はそんな事を考えている余裕は無い。

 

 ジョゼットの焦った声に三人に対応しながら其方を確認すれば、鎖に絡みつかれたカエデとジョゼットが身動きが取れなくなっている状態であった。

 それだけならまだよかったが、二人の体が地面に沈んで行っていたのだ。

 

 先程までは安定して距離を詰めさせない様な立ち回りをしていたラウルは唐突に相手の剣を左手で受け止める。

 左腕にブスリと剣が突き刺さるが、ラウルはそのまま相手に接近して右手で持った剣の柄で相手をぶん殴る。

 

「あぁ、うっとおしいッス!!」

 

 今まで安定した、地味な戦い方をしていたラウルの唐突な戦闘方法(バトルスタンス)の変更についていけなかった白装束は困惑し足を止めてしまう。

 ラウルは殴り飛ばした方とは別の白装束、三級(レベル2)の一人を切り伏せてから、二級(レベル3)の懐へともぐりこむと同時に腹に肘打ちをかまして吹き飛んだのを尻目に、既に頭まで地面に沈み見えなくなったカエデと首の辺りまで沈みこんだジョゼットの元へ駆ける。

 

「ジョゼットッ!! カエデちゃんッ!!」

 

 だが、一歩遅くジョゼットの頭まで地面に沈み込んでしまい、ラウルが辿り着いた頃には朝霧の中にカエデのダガーが転がっているだけであった。

 

「畜生ッ!!」

 

 地面に拳を振り下すも、不自然な揺らめきも何もない。普通の地面である。

 カエデとジョゼットが地面に沈んで行ったのは【縛鎖】の使う装備魔法の効果だったのだろう。

 

 ラウルはカエデのダガーを拾い上げて剣を残っていた立ち上がってきた白装束に向けた。

 

「ちょっと、今、機嫌が悪いッスから……加減しないッスけど、文句言わないでくださいッス」




 感想ありがてぇ……

 ドワーフって原作においても強いのね。下級モンスターなら恩恵無しでも倒せるとかどうとか。スゲェ。


『ドワーフ』
 酒樽、等と揶揄される事もある種族。
 種族的特徴は何と言ってもその()()()()である。
 成人したドワーフであれば男女問わずに酒樽一つを余裕で空にできると言われており、酒樽等と揶揄される原因ともなっている。

 基本的にお気楽な種族とも言われており、酒盛りが何よりも好きだとも言われている。種族総じて職人気質な部分もあり、手先も器用である。

 『力』と『耐久』に優れており『器用』も相応に高くなる種族。
 反面『魔力』は絶望的であり魔法を覚える事は殆どなく、『俊敏』も他種族に比べて低い傾向にある。

 古代において『蓋』の作成に全面協力し、種族総じて『蓋』の建造に関わった事も有り、神に良い印象を抱いていない……かと言えばそんな事は無く。
 自らの力で死ぬ気で建造した『蓋』より神々が指先一つで建造した『バベル』の方が立派である事に素直な称賛をし。神々を許す心の広さも持っていた種族。

 だが『蓋』の建造に反対し、全く協力しなかった『エルフ』の事を毛嫌いしており。顔を見ただけで吐き気がする等と口にする事も多い。

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