生命の唄~Beast Roar~ 作:一本歯下駄
『……何処でも良いだろ。まっ、もう潰れちまったファミリアなんてどうでもいいさ』
『潰れた?』
『【ロキ・ファミリア】に潰されたのさ』
『そこって……確か胸がぺちゃんこな神様が主神やってる所だろ?』
『アンタ、それ神ロキの前で絶対に口にすんじゃないよ』
『……? なんか不味いのか?』
『死にたく無かったら、神ロキの前で胸に関する話題は避けな』
ダンジョンの十三階層、周囲を囲む壁も床も天井も岩盤で構成されており、どこか湿った空気が漂っている通路を歩きながらアリソンが小首を傾げた。
「カエデさんは群れでの狩りは未経験なのですか?」
「はい、師と狩りの経験はありますが三人以上での行動は初めてです」
その様子を見ていたエルフのヴェネディクトスが肩を竦めて呟いた。
「気を抜くのは悪い事とは言わないけど、あまり緊張感を無くすのはやめてくれよ」
「あ、ごめんなさいヴェトスさん」
先頭を歩いていたグレースが肩越しに振り返り呆れ顔を浮かべて後ろの三人を見やってこれ見よがしに溜息を零した。
「一応、
「うっ……」
「ごめんなさい」
呻いて口を閉ざすアリソンに素直に謝罪の言葉を口にしたカエデにグレースが眉を顰める。別に怒っていると言う程じゃないし謝られても反応に困るとそっぽを向いて正面を見据えた。
ダンジョン侵入直後から何度も戦闘は行っているモノの、やはり初めて組んだメンバーが半数であり動きはぎこちなさが勝り、更に言うなればカエデの動きが一番悪くなっている。そんな感想を抱きつつ大きなバックパックを背負ったラウルは腰の剣の柄を何度か握り直してメンバーの様子を確認する。
まずアリソン、特に気負う訳でも無く割と気楽そうな表情で狭い通路でも平気そうにグレイブを振り回して遠心力でモンスターを叩き斬りつつも牽制を行ったり敵を挑発する様にぴょんぴょん跳んだりして注意を集めて
そしてアリソンの決定打に欠ける部分を補っているのがグレースだ。怒りっぽいと言う言葉に嘘は無く攻撃を回避しようともしないで体で体当たりしていきその負傷で怒りを貯めて更に攻撃性を増すと言うアマゾネスを彷彿とさせる戦い方をしているグレースの攻撃能力はその暴れっぷりからも察しが付くほどにかなり強い。しかし暴走気味になってパーティを置いて先走りかける事が多いが、そこをアリソンが制御している。不必要にグレースがダメージを負わない様にアリソンが敵の動きを上手くコントロールする事で暴走寸前を維持して高い攻撃力を発揮しつつもギリギリで理性を失わないライン上をグレースに走らせている。ある意味で相性の良い二人組だ。
そしてカエデとヴェネディクトス、この二人は二人でなかなか相性が良い。いや、カエデは多分だが誰と組ませても上手く動けるのだろう。
指揮方面の才覚は微塵も無いカエデだが、能力は非常に高く指揮される側であれば万全の活躍を保障できるぐらいだ。
そしてこの面子で最も良かった点は索敵範囲の異常な広さだろう。カエデの『嫌な予感』とアリソンの『耳』が合わさって凄まじい索敵能力となっているのだ。
「……アリソンさん、右の通路、嫌な感じがします」
「そうですね……これは、ヘルハウンドが数匹……数は20近く、多いですね」
各々の面子はしっかりと
ラウルがカエデの様子をちらりと確認する。
「……焦げた臭いがします」
「……右は避けよう。直進しようと思うけど、皆はどう思う?」
ヘルハウンドに対して脅えると言うよりは他の事を気にしている様子のカエデにラウルは右の通路の奥を少し見てから、他のメンバーの様子を確認するラウルを余所にヴェネディクトスが右の通路を避けようとしていた。
グレースがケペシュの刃を擦り合わせて火花を散らして苛立たしげに足元の石を睨みつけ、アリソンは困った様に眉根を寄せて頷く。カエデは何度か右の通路を見てから頷いた。
皆の同意を得たヴェネディクトスが頷いてラウルの方を見た。
「では、直進してこのまま十四階層まで下りたいのですが、よろしいですか?」
「うん? どこまで行くかはそっちに任せるッスよ。俺はあくまでサポーターッス」
ラウルは心の中で付け加えておく。引き際を誤ったり不必要な危険に飛び込む真似をしたら、容赦なく減点するだけだと。
「わかりました。では十四階層で少し戦闘を行ってから戻ると言う形で……」
ヴェネディクトスの言葉に三人が頷いて肯定を示す。その様子を見ながらラウルは満足げに頷いた。
アレックスが居ないだけで順調である。アレックスをどうにか参加させなくてはならないのだという事から、目を逸らしつつラウルは今回の『遠征合宿』のさ中に
『
「いやぁ、最初はどうなるかと思ったッスけどカエデちゃんも馴染めて良かったッス」
人懐っこいと言うよりは分け隔てなく仲良く接するアリソンが潤滑剤として機能してくれているのだろう。カエデの口下手な部分をアリソンが上手く補っている。
「カエデちゃんってヘルハウンドを
「えっと……まぁ、偶然と言うか……」
「ま、本当に凄いんだし威張れば良いんじゃない? アレックスみたいにされたらムカつくけどアンタは逆に謙遜が過ぎるわ。ムカつく」
「グレース、君は少し言い方を考えた方が良いよ」
女三人男一人と言う偏った席ではあるのだが、元々エルフと言う種族が美男美女が多いと言う特色があり、なおかつヴェネディクトスはさらさらとした髪に優しげな風貌をしており女三人の中に交じっても違和感を感じない。ラウルが交じっていたら一人浮く事間違いなしであるのにごく自然に交じっている辺りこなれている。と言うよりは男女区別無くおおらかに接する事が出来る常識人……正直性格に難有りだったり癖の強い【ロキ・ファミリア】の面子中ではラウルに似て普通のエルフの男性団員である。
「【ロキ・ファミリア】ラウル・ノールド様、査定が終了致しました。24,800ヴァリスとなります」
「お、了解ッス」
中層に潜ったにしては少ない方の金額ではあるが、半日程度の時間と言う事ともう一つ挙げるとするならば今回はあくまで様子見であり積極的にモンスターを討伐しなかったと言うのも大きいだろう。
ヴァリスの入った袋を受け取って皆の待つ待合席の方へ足を向けて、ラウルは足を止めた。
目を擦って現状を確認してラウルは深々と溜息を零した。
「なんでアレックスが居るッスかねぇ」
ラウルの視線の先、待合席に座った四人を睨みつけているアレックスの後ろ姿があり、睨まれている側の四人の内グレースは既に苛立ちを隠しもせずアレックスを射殺さん視線を向けているし、ヴェネディクトスも軽蔑の視線を投げかけている。カエデは困惑の表情を浮かべてアリソンは間に割って入ってどうにかしようとしている。しかし険悪な雰囲気は一切隠せておらず周囲の冒険者があからさまにその席を避けているのが見える。
雑談と言うよりは主にアリソンが潤滑剤として積極的に口を開いて各々の、と言うよりは口下手なきらいのあるカエデと、口を開くのも億劫だと気だるげな雰囲気のグレースの二人に質問を投げかけて雰囲気を柔らかくしつつも各々の口を開かせて仲良くさせようと努力しており、唯一の男のヴェネディクトスは過度に口出しをせずに雰囲気を壊さない範囲で微笑みを浮かべて他メンバーと友好関係を築こうとしていた。
パーティとして今回の『遠征合宿』で一晩ダンジョン内で過ごす事に成る。それだけじゃなく大規模遠征時にサポーターのパーティとして一軍メンバーや二軍メンバーの補助に入るのだ。そうなったときにパーティ内部の雰囲気が悪くて失敗しましたなんて笑い事じゃすまないのだ。
「それにしても……カエデちゃんの髪、白くて綺麗ですよね」
美味しい料理、ケーキの店、服や装飾品、可愛い人形、使う防具の形状、自慢の兎耳についてなど、多種多様な話題を次から次へと投入してカエデとグレースから少ないとは言え会話を成立させていたアリソンの言葉にカエデが不思議そうな表情を浮かべた。
「綺麗……ですか?」
「
「ないです」
「世間知らずね、白兎って有名じゃない。幸運の白兎って」
グレースの小馬鹿にした様な発言にカエデは頷く。自身が世間知らずであると言うのはオラリオに来てから痛感している。何をするにしろ何処に行くにしろ知らない事ばかりなのだから。そんな態度にグレースは申し訳なさと言い過ぎたと言う反省の色の混じった微妙な表情を浮かべてそっぽを向く。
「僕も初耳だね、【
「白い兎って珍しくない所か
「そうなんですか?」
「
「そうですか……」
嬉しそうに頬を緩めるカエデににっこり微笑みかけるアリソン。そんな二人の横でグレースが思いっきり苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべてギルドの入口に視線を向けており、ヴェネディクトスが首を傾げつつグレースの視線を追って其方に視線を向ける。
其処には顔が倍近くに膨れ上がって鼻血を垂らしながらふらふらと入口から此方に向けて歩いてくるアレックス・ガードルの姿があった。
目を見開いて驚いたヴェネディクトスが腰を浮かし待合席のテーブルが音を立て、アリソンとカエデもヴェネディクトスの様子に気が付いて首を傾げた。
「どうしました?」
「大丈夫ですか?」
膝をぶつけた事を心配するカエデに大丈夫だと答えたヴェネディクトスはテーブルの近くに立ってボコボコにされた顔のまま此方を見下ろすアレックスに軽蔑の視線を向けた。
「何の用だいアレックス。此処に君の居場所は無いよ」
「そうね、アンタみたいなのは邪魔だし来なくて良いわ」
「アレックスさんっ!? その顔どうしたんですかっ!」
「怪我……えっと、
軽蔑の視線を向けるヴェネディクトス、しかめっ面しつつもアレックスを睨むグレース、慌てて立ち上がって心配するアリソン、ポーチから
「なんで…………った」
あまりにも聞き取り辛い言葉にグレースの額に青筋が浮かび、ヴェネディクトスは眉を顰めつつも一応聞く姿勢をとり、アリソンはカエデが取り出していたポーションをハンカチに染み込ませてアレックスの腫れた頬に優しく当てる。カエデはそわそわとその様子を見ているさ中、アレックスが再度口を開いた。
「なんで……置いていきやがった」
「声小さいんだけど、聞こえないわ。何が言いたい訳?」
苛立ちが限界を迎えそうなのか腰のケペシュの柄に手をかけて今すぐにでも飛び掛からんばかりの姿勢をとったグレースに慌ててカエデが抱き付く形でどうにかとどめようとし、アリソンも間に身を割り込ませて落ち着かせようとする。
「待ってくださいグレースさんっ! ギルドっ! 此処ギルドですっ!」
「ギルドで武器抜くのは不味いですよグレースさんっ!?」
そんな二人の様子を見て吐息を零したヴェネディクトスがアレックスの方を見て口を開いた。
「置いて行った? 僕達が? 君を? 集合時間に現れなかったのは君だろう? 置いて行かれても仕方が無い様な事をしでかしておいてどういう積りなんだい?」
ヴェネディクトスの言葉に
「糞っ、なんで俺がこんな雑魚共と……」
「アレックス、お前が言う雑魚って何なんスかね?」
苛立ち交じりに悪態を吐いたアレックスに対し後ろからラウルが肩を掴んで止める。今にも殴りかかりそうに見えた為なのだがそれより前にグレースが鼻息荒く飛び掛かりそうになっているのが見えてラウルは溜息を零しかける。
カエデに苛立つだのなんだの言い触らしたりしている所為でカエデとの相性が悪そうではあったが、カエデが余り気にしない性質、と言うより耐性が高いのか変に噛みつかなかった影響でグレースからカエデに対する当たりが柔らかくなりかけていた、それなのに油を注いでパーティでの交流を台無しにしようとしているアレックスの余りの態度に流石に庇い用もないと言うかもう庇う気も起きない。
「決まってんだろ、
俺よりも
「アレックス、この子を見て欲しい」
「ほら、こいつを見なよ」
「ふぇ?」
グレースを抑え込もうとしていたカエデを逆に後ろから押さえつけてアレックスの前に突き出すグレース。そしてそれを指し示して嘲笑の笑みを浮かべたヴェネディクトス。ラウルはとりあえずアレックスの肩を力強く掴んでおく。ここで暴れられたら洒落にならない。
「この子……カエデ・ハバリは
「あんた何か月だっけ……あぁ、十五ヵ月
小馬鹿にすると言うか完全に馬鹿にした表情でアレックスに言い放つ二人に対し、アレックスが身を乗り出そうとするがラウルが肩をがっしりと掴んでいるので動けずにいて苛立ちからかラウルを睨みつけるアレックス。ラウルは溜息を零した。
「ほら、アンタの言う
「それで、君はどうするんだい?
重なる挑発に対してアレックスが体を震わせる。グレースに押さえつけられていたカエデがびくりと震えてグレースの手から抜け出してアリソンの後ろに隠れた。
その様子を見ながらアレックスがぼそりと呟いた。
「し…………る」
小さく、か細く聞こえた言葉にラウルとヴェネディクトスが首を傾げ、グレースが苛立ち交じりに舌打ちをした。困り顔でカエデを庇う様に片手でカエデを撫でるアリソン。
「従ってやる」
小さかったが先程よりも大きい宣言にラウルとヴェネディクトスが目を見開いてグレースがぽかんと口を半口を空け、アリソンが困惑の表情を浮かべてカエデが首を傾げている。
「
アリソンの背に隠れたカエデを指差して言い切ったアレックス。
「うわ、上から目線、うっざ」
「「「「……………」」」」
グレースが脊椎反射の様に皮肉を吐き、ラウル、ヴェネディクトス、アリソン、カエデが惚けた様な表情を浮かべている。
あのアレックスが、『勝てたら』とは言え
ベート、ラウル、フィン、リヴェリア、ガレス、ティオナ、アイズ……数えるだけでも億劫になる程にボコボコにされてきたのにフィンの指示に嫌々従う以外には誰の命令も聞こうとせず、フィンの指示にだって『皆といざこざを起こすな』と言う指示には従わなかったアレックスが、条件付きとは言え
ラウルはゆっくりとアレックスの肩から手を離してアレックスの額に手を当てる。
「アレックス、大丈夫ッスか? 風邪ッスか? 冒険者とは言え弱ってたりすると風邪引いたりするッス。今日はとりあえずゆっくり休むッスよ」
「風邪ですか? 冒険者用の
「ラウルさん、カエデ、落ち着いて……アレックス、君……何があったんだい?」
「あのアレックスさんが指示に従う?
驚き過ぎてボケをかますラウルに、ラウルのボケを真に受けて心配の声を上げるカエデ。冷静に二人にツッコミを入れつつどうしたのか質問するヴェネディクトスに、何が起きたのか未だに理解しきれずに目を白黒させるアリソン。
「……離せっ! 触んなっ!」
アレックスはラウルの手を払い退けてカエデを見下ろして口を開いた。
「
唐突な宣言にカエデは困惑の表情を浮かべ、ラウルは必死に考える、何があったのかを。
「ヘックシッ……なんや、誰か噂でもしてるんか?」
「いつもの事じゃないか」
【ロキ・ファミリア】本拠、フィンの自室の執務机に腰かけて唐突にくしゃみをしたロキに対してフィンが苦笑を浮かべて口を開いた。
「それにしてもロキ、アレックスに
反発心ばかりが強くなったアレックスに言う事を聞かせたと言ったロキに投げかけた質問に対し、ロキは笑みを浮かべたままフィンを見下ろして口を開いた。
「決まっとるやん? アレックスが見下すんは
ロキの言う事は一理ある。だがアレックスは過去にアイズ・ヴァレンシュタインに決闘を挑みボコボコにされていた事もある。その時アイズはアレックスが鍛錬を頼んできたのだと勘違いして剣の鞘で相手取りボコボコにしたのでアレックスは
「さっき鍛錬場で他の者を侮辱していたからな。締めておいたが……」
「あぁ、その時にちょっとアレックスに言っておいたんよ」
ガレスの手でボコボコにされてなおガレスに悪態を吐いて立ち上がろうとする姿は、増長さえしていなければ間違いなく【ロキ・ファミリア】内部でも有能なタフネスさと向上心を持ち合わせる素晴らしい団員だったのだが……その増長を今回の『遠征合宿』でどうにかできなかった場合は追放を決定したロキはとある事をアレックスに伝えておいた。
「
「……ベート?」
「今ベートが認めとるんはアイズたんか……
顎に手を当てて考え込むフィンを余所にガレスが肩を竦めた。
「ベートに憧れてベートの様に振る舞ったらベートに叩き潰されて……まあベートをよく理解もせずに真似事なんてしようとしたからだが哀れだのう」
【強襲虎爪】アレックス・ガードルは【
アレックスの抱くベート像は若干所か大分間違った印象で固まっているのだがそこらに気付けないのはいっそ哀れだろう。本人も増長してしまう程に才能に満ちていたのも相まって手の付けられない状態になってしまったのは不幸とも言える。
「せやからとどめに言ったんよ……カエデたんに勝てへんのなら
「それで? それだけだと今すぐにでもカエデに殴りかかりそうなんだけど」
「ん? あぁ、不意打ちなんて真似したら誇り高い
ま、カエデを打倒した所でベートがアレックスを視界に納める事は
打倒カエデ? フィンやガレスですら『殺すのは簡単だけど
「技術も何もかも全部桁違いやしな」
才覚だけで
「今回の『遠征合宿』中にカエデを見て自分の今までを振り返って……出来るなら身の振り方を直して欲しいわ」
初めて会ったとき。初めてアレックスを見た時。まだ少年だった彼の目にはギラギラと思わず目を細めてしまう程に眩い向上心が灯っていた。今も同じ様に向上心はある。しかし初めて入団試験の時にただ強くなりたいと喰らい付くだけの強い意志は雑念に塗れて眩かったその向上心が汚れてしまった。
出来るならば、可能であるならば……カエデの真っ直ぐさを見て、あの頃を思い出して欲しい。それが出来れば……。
追放はしたくない。せっかく眷属として迎え入れたのだ。だと言うのに追い出さなければならないと言うのは主神として余りやりたくない。
「確かに、他のファミリアに入団されるのは困るしね」
フィンやガレスもアレックスに対して相応の評価はしている。向上心と才能に溢れた彼はやはり有望な人材なのだ。他のファミリアで大成して敵対すると言うのは避けたい。
願わくば、ベート辺りが手足を潰して冒険者として再起不能にしてくれた方がフィンとしては助かるのだが。
「フィン」
「わかってるよ……僕からは手出ししないよ」
ロキの半眼に苦笑を浮かべてフィンは返事を返す。フィンから手出しはしない。だがもしアレックスが冒険者としての死を迎えるその場面に出くわしても、フィンはきっと止めないだろう。
次回『カエデVSアレックス』
武器持ちと徒手空拳が戦う場合は、徒手空拳の方が三段以上、上の実力がないと勝負にならないって何処かで聞いた記憶があります。