Chaos;child 短編   作:たぬきんぐ

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ニュージェネレーションの再来から結構な時間が経ったある日、有村雛絵と久野里澪の二人はお互い伝えたい想いを抱えたままの状態が続いていた。そんな中たまたま訪れた二人だけの時間


brillante sky

  どうして空には雲がないのに雨が降るのだろう。

 有村雛絵は濡れたスカートの裾を生地を傷めないよう絞ると、水垢のついた長いこと掃除されていない鏡でこれまた湿った髪を整えながら考える。

「うえー汚ねぇ鏡」

  地方に旅行で来てる今だからこそ通り雨に襲われたといえ、見るからに古い建築の無人停留所に駆け込むことができたのは幸運だった。都会ならすぐ側にコンビニエンスストアがあったりしてここまで豪雨に晒されることも無かっただろうが。

  長く綺麗な髪だが、こういう時後の手入れが大変だなと億劫になってるいる久野里澪が、いつも通りの、いやそれよりも少し憎しみのこもった声で愚痴をこぼす。

  「くそっ、今日の予報では雨が降るなんて言っていなかっただろう」

  「降水確率0でしたよねー……」

  二人して外から聞こえる大粒の雨の音をこれでもかと聞かされる。幸い気温に関しては少し熱いくらいだったので風邪の心配はなさそうで安心していた。

  落ち着いてくると視野が広くなってくるもので、有村は腰を落ち着かせながらある事に気づく。思わずニヤリと口角が上がるのを感じると同時に日々の鬱憤を晴らすことを思いついた。

  「久野里先輩って下着はピンクなんですね〜、てっきり黒系で攻めてるものだと思ってました」

  「なっ」

  キャハッ、と語尾に付いているのではないかと錯覚するほどのぶりっ子口調に加え煽りを含む物言いに久野里は体温が上がるのを感じた。雨に濡れてシャツが少しばかり透けてきていたのを見逃しはしなかった。いくら同性とはいえ普段隠しているものが見られるというのは当然恥ずかしいことだし、彼女にとって下着の色の好みに関して多少なりともコンプレックスを抱いていたのが仇となった。

  普段の冷静さを微塵も持ち合わせていない今の彼女はさらに失言を上乗せすることになる。

  「失礼なやつだな、下はちゃんと黒だ」

  恥ずかしさのあまり冷静さを装うのに必死だった久野里は言い切ってからやってしまったと、こめかみに指を当てる。

  「むふっ、下は黒?上はピンクで下は黒ですか……いい趣味してますな〜これは」

  「嫌違う、これはっ」

  いまさら弁明してもそれは遅く、ゲラゲラと腹を抱えて笑う有村を目にしていると羞恥がさらに増していき、もはや理性では行動を抑えられなくなっていた。

  「うわあ、なんです急に」

  勢いよく有村の胸ぐらを掴みそのまま椅子に押し倒すと少し上ずった声を上げた。

  「ふっ私は見せたんだ、お前も下着のひとつやふたつくらいみせてみろ!」

  「いやっ、ちょっと久野里さん!?やめ」

  抵抗する間もなく上着、シャツとボタンを無造作に開けられていく。

  「ほう随分と可愛らしいブラジャーじゃないか」

  「うぅ、こんな酷い……」

  久野里の暴走とも呼べるその行為は留まることを知らず、激しい息遣いと共に続いていく。

  顕になったその布は赤と白のグラデーションに苺柄のようなレース付きで普段からは少し想像し難いなんとも乙女な品だった。先程の言動を考えると有村は合わせているのだろうと、考えるまでもなく予想できた彼女はさらに手を伸ばしていく。

  「やぁっ」

  力で勝てるわけもなく差し迫る魔の手から逃れる術はなかった。有村の膝裏を掴んで少しばかり持ち上げる。スカートから覗く太股の全体が顕になる、と同時に、

  「ちっ、苺柄が拝めると思ったんだがな」

  涙目になりながらもスカートの裾を抑え体育座りをする有村だったが、久野里の目には既に全てが映っていた。

  「久野里先輩がこんなににくしょくけいだったなんて……うぅもうお嫁に行けない」

  少しやりすぎてしまったか?と思えるほどショックを受けていたせいで一気に熱が冷め少し後ろめたさを感じていた久野里だったが、いつも通りの明るい物言いを聞き、表には出さないが安堵し落ち着きを取り戻していく。

  やはり、彼女は居心地がいい。宮代拓留の一件以来価値観がまるっきり、という程でもないが今までよりは確実に変わっていた久野里。普段は見せないような面も有村に対しては見せるようになっていた。

  「あー、その悪かったな。少し頭に血が上っていたようだ」

  少しではないだろう、と口に出さなかった。それよりもその発言に驚きを隠せなかった。

  「え?今なんて」

  「だから頭に血が上ってしまったと」

  「その前です!」

  「ん?えとすまなかったな、と」

  「久野里先輩もしかして、変なものでも食べました?」

  「まったく馬鹿なのか、お前は」

  「えへへ」

  久野里が他人に対して思いやりの気持ちが少ない、いや皆無というのは周知の事実で当然有村も分かっていた。分かっていたのだがその大多数から抜けて自分は特別に扱ってくれているというのを理解する頃には鼓動が早くなっていたが気づいてはいなかった。

  「久野里先輩が私に優しくしてくれるなんて……もしかして変な気にでもなっちゃいましたかあ?」

  「なんだと?」

  「これだけお互いの恥ずかしい所を見せあったんですからぁ、おかしくはないですよね〜キスとかしたくなっちゃいました?」

  ニヤニヤしながらも、雛絵ちゃんの体には指1本触れさせませんからね、なんて両腕を抱き抱えながら言うものだから言い返すのも馬鹿らしくなってくる。

  「ったく、ふざけるな誰がお前なんかと」

  「嫌なんですか?私は結構いいと思ったんですけどねえ」

  「おいお前冗談は休み休み……」

  「冗談なんかじゃないです」

  ピシャリと、強く言い放った訳ではないのだがそのトーンからか停留所内の音が静かに感じられるようになった。

  久野里は確かに友情以上の何かを有村に対して抱き始めていたし、それを有村は少なからず感じ取っていた。

  しかし、初めて生まれる心の動きに戸惑い迷い、もともと自分を出すのが苦手だったのがさらに殻にこもるようになっていた。本心ではないのに口では真逆のことを言ってしまう。

  それに対し有村は一歩を踏み出そうとしていた。CC症候群の一件からせっかく仲の深まった関係を壊してしまうかもしれない、そんな価値があると思ったのだ。

 

 

  これまで有村は同性との恋愛なんて考えたこともなかったし、まして初対面した時にはこれでもかと嫌悪していた人が相手だなんて想像もしなかった。

  能力がなくなってしまった今言っていることの真偽が確実にわかる訳では無いが、それでもなんとなく察しがついてしまう。

  宮代拓留と物理的にも精神的にも寄り添えない存在と分かってしまった彼女にとって、彼と同等かそれ以上に相性のいい、居心地のいい人物がいるとは思えなかった。

  そんな時、思いもよらない人物と交流を持つことができた。それが今目の前にいる人物、久野里澪だ。

  宮代の現状や今後について色々と聞くためにフリージアへ足を運んでいたのがはじめだった。騒動が終わり精神的にも安定した状態で改めて会話をしてみると、久野里の普段から冷たい突き放すような発言を除けば基本本当の事しか話さない。同じクラスの女子達のようにひとつふたつクッションを挟み挙句本心を言わないそれと違い、なんとも心地がよかった。そこに気がついた後はもう久野里澪に対する興味が尽きることはなかった。日に日にフリージアへ行く回数も増していき話す内容といえば久野里澪に関することばかりになっていった。

  百瀬克子に「有村ちゃん、また来たのね……」と呆れられる頃には2人で買い物に行くほどになっていた。といっても依然キツい発言なのは変わらずだったが。

 

 

  「……っ!」

  有村があまりにも真剣に言い返してきたので言葉に詰まる。久野里にとってその目はどこまでも澄んでいてそれは羨ましくもあった。

  初めて出会った時久野里は彼女の事を委員会を釣り上げる為のCC症候群患者でそれ以上でも以下でもなく強いていうならば真偽がバレてしまう厄介な人物、という評価しかなかった。

  自分の性格に難があるのはわかっている。それはかつて大切だった子供達を失ってから形成されたもので変えようとも思っていなかった。その為同世代はおろか年が離れている人にも恐れられ嫌がられ離れていく人が大多数なのにも慣れていて、渋谷での一件が落ち着いた後宮代の周りにいた彼女達も去っていくのだろうと、そう考えていた。別にそれは普通のことであるし長く付き合う義理も無いはずでそこに負の感情など生まれもしない取るに足らない事のひとつであったのだが、1人だけ長く自分の周りにとどまり続けた者がいた。

  「宮代先輩の調子どんな感じですかあ」

  それが彼女との一日が始まる決まり文句になっていた。そこから、何を考えていたらそんなに出るのかというほどどうでもいい質問やらか飛んでくる。邪険に扱うと不機嫌になって面倒くさくなる為、適当に流して答えていただけだったのだが、それが百瀬の目には新鮮に見えていたのか、「あなた達最近仲いいわねぇ」と言わる始末。

  久野里自身驚いていた、自分を求められると意外にも心地がいいということに。友人と呼べる間柄の人間がいないに等しい彼女にとって自分の事を興味深く聞いてくる有村は輝いて見えた。私もこんなふうであったら何か変わっていたかもしれない。そんなことを考えなかったわけではなかったが今更過去のことを嘆いてもしょうがない。

  うるさい、帰れ、などの言葉よりも相槌を打つことの方が多くなってきた頃には、自然と極偶にだが笑顔がこぼれている時もあった。本人自身気づいてはいなかったが。

 

 

 

  「…………」

  「…………」

  それほど長い沈黙ではなかった。お互い気まづいというものはなかったし比較的落ち着いていた。二人共昨日今日で考えていたことではなかったからだ。

  「……しで、いいのか?」

  未だ容赦なく叩きつける雨音にかき消されてしまいそうなほど弱々しい声だった。普段のことを考えるとそれはあまりにも珍しく、また愛おしいと感じさせるには充分だった。

  「有村は、その……相手が私でいいのか?」

  「私は久野里先輩が好きです。先輩はどうしたいんです?」

  「私は……」

  そこに普段の仮面を被る有村はいなかった。心の奥をそのまま出してくれているそんな感じだ。それに魅せられた久野里もすべてではないが心をさらけ出すことができた。

  「私はお前の側に居たいし、いてくれたら……嬉しい」

  「ようやく素直になってくれましたね先輩」

  言い切るまでなかった羞恥心が有村の優しい笑顔に寄って徐々に溢れ出てきた。と同時に有村も同じように悩んでいた事実を図らずも理解してしまい申し訳なさに包まれる。

  「あぁすまなかったな、こういうことは初めてで……どうしていいか分からなかったんだ」

  「あー!それダウトです」

  いつもと少し違う空気だったのが気になっていた所だったので有村のいつも通りの口調に戻っていたのは久野里にとって有難かった。

  「本当はもっとはやくから打ち明けたかったのに恥ずかしいのと怖いのでできなかったんでしょう?」

  「有村には敵わないな」

  何を言うでもなくお互いの手を絡めとる。人がいないのは幸いだった。こんなにも大切な時間を作り出してくれた。二人が体重を預け合うその姿を雨上がりの日と共に、綺麗にそして暖かく反射していた鏡はとても輝いていた。




カオスチャイルドらぶchu☆chu!!終わりました。大変いい出来で感動しています。もともと好きだったカオチャ本編二人のcp短編を発売前に書こうと思っていたのですが間に合わず……。本文自体は出来上がっていたのにいい感じのタイトルが思いつかなかったんですけど、有村さんの「あでぃおすぐらっしぁ〜」なんかで使われてるスペイン語と有村さんルートである「DARK SKY END」の対比である輝くような意味を持つワードを組み合わせてみようかなーといったかんじでラブちゅっちゅをプレイしながら思いました。カオチャ本編好きにはほんとたまらないものになっていましたねこの作品は。ネタバレになるのであまり言いませんが涙脆い自分には色々と堪えました……。これからはシンフォギア以外にカオチャのものなんかも書いていきたいですね。
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