ご注文は“さそり”ですか?   作:鯛焼きマン

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今回の戦闘シーン、ダレないようにできるだけ簡潔にしたつもりでしたがそれでも文章量が二倍ぐらいになってしまいました……。


最近サブタイトル詐欺じゃね? とか思いつつも一応時系列が原作アニメの二話ぐらいだから(震え声)と言い訳して最新話どうぞ。


ツンデレの妹を持つ姉とツンドラの弟を持つ姉 3

 前回、自分の間違いを教えて貰ったお礼にジンの“人捜し”を手伝おうと思ったココア。 最初は断っていた彼だったが再三の申し出の(のち)に(渋々)了承してくれた。

 

 そして現在、ジンがその“探し人”の心当たりがある場所に向かうため彼に同行していた。

 

「ああ、こっちです。この道を通ると近道になるんですよ」

 

 彼女は言うとおりに道を進む。

 近道というだけあって大通りを外れ、道を曲がるごとに人の気配が薄くなる。

 

 等々完全に人の目がない、日の光さえ満足に届いていない小道に踏み込んだ所で目の前の少年の足が止まる。

 狭い路地のため必然的に彼女も足を止めることになる。

 

「どうしたの?」

 

 彼の唐突な行動に疑問を感じるココアだが、振り返ったジンはそれを無視して彼女の隣に歩み寄る。

 彼女は自然と壁を背にする形になる。

 

「・・・・・・こんな人目に付かない薄暗い場所にホイホイついてくるなんて、危機管理意識が足りませんね。知らない人についていったらいけませんって教えて貰わなかったんですか?」

「ふぇ?」

 

 状況を理解してないのか間の抜けた声を出すココアの顔の横の壁面に、彼女の行動を制限するように腕を伸ばす。

 

「そんな風に無防備じゃあ、何をされたって文句は言えませんよ?」

 

 体格差のある男性に逃げ道を塞がれ、助けを呼んでも誰も来ない状況。

 少女は正しく檻に囚われた兎同然だった。

 

 絶体絶命のココア。哀れ、心優しく純粋な少女は残酷にもここで穢されてしまうのか。

 このままではそりゃもうきっとR15なんてもんじゃない大変な目に遭わされてしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんで指伸ばしてまで壁に触れてるの?」

「・・・・・・なに冷静に観察してるんですか」

 

 ただし二人の距離が不自然に開けていなければ、の話だが。

 肝が据わりすぎだよ、と真顔で目を反らしながら吐息を漏らすジン。

 

「ま、相手が僕で良かったですね。そうじゃなかったら今頃きっと身の毛もよだつ酷い目に遭わされていましたよ」

 

 次に腕を退け「入学前の良い社会勉強になったでしょう?」と言い残して、路地から光指す表通りに去っていく。

 

「あ! 待って!」

 

 数秒間、脳の処理落ちで惚けていたココアがそれを追って裏路地から出た頃には彼の姿は影も形もなくなっていた。

 

「どこ行っちゃたんだろう?」

 

 表通りから橋を通って向こう岸に渡り、尚も周りを見渡す彼女の目にあるものが映った。

 

「っ! あれは・・・・・・噂に聞く・・・・・・」

 

 ココアに電撃走る。

 その衝撃は()の少年のことを一時的に忘失するほどだった。

 惹きつけられるかのように一歩、また一歩と少女は近づいていく。

 

 それほどまで彼女の心が囚われるもの、それは・・・・・・

 

 

 

 

「野良うさぎ!」

 

 

 

 

 この木組みの街の特色とも言える野良うさぎだった。

 三度の飯よりモフモフ好きなココアは溜まらず一匹の野良うさぎに近寄ると、その体を優しく抱き上げる。

 

「ほわぁ~モフモフ天国だぁ~」

 

 うさぎの体躯の快さを堪能する彼女の頭からはジンのことなど、とっくにどこかへ飛び去っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『日常』の中で見つけた小さな幸せを当たり前のように楽しむ少女(ココア)を、さっきまで少女がいた路地の影からジッと見つめる者がいた。

 

 川で隔たれた橋の向こう側にいる少女と影に身を隠してそれを観察する存在。

 その両者の姿は異常なまでに同じだった。

 顔も体格も服も装飾品など、細かな持ち物に至るまで全てが同一。

 

 否、姿形だけに非ず。その存在は少女の記憶さえ擬態(コピー)していた。

 

 故にもし少女と“擬態(コピー)”がある日突然入れ替わったとしても、きっと親しい友人や家族でさえ気付かないだろう。

 ()()()()()()()()()世界でも我が者顔で存在し続けるだろう。

 

 そんな“存在”が今、少女の元に向かうため影から一歩踏み出す。

 理由は、言わずもがな。

 少女がこれから生きて体験するであろう幸せを、青春を、人生を、そしてかけ替えのない未来を奪うために・・・・・・

 

 

 

「待て」

 

 

 

 背後から発せられた一声によって、踏み出そうとした二歩目が止められる。

 “擬態”は、元にした少女とは似てもにつかない無機質な壊れた人形のような動作で振り返る。

 そこにいる一人の少年を見る。

 

「やっと姿を現したか・・・・・・絶好のタイミングだから当然だけど。ランデブーをセッティングしてやった甲斐はあったよ」

 

 よっぽど彼女にご執心だったようだからね、と少年・天々座刃は不気味な“人の皮を被った怪物(ドッペルゲンガー)”を恐れることもなく皮肉る。

 どうして彼がここにいるのか。

 それは彼の言葉から察することができるように、この状況は彼が意図して仕組んだことだからだ。

 つまりココアのことを囮として使ったわけだ。

 

「でも、会わせるつもりはない」

 

 しかし垂らした餌を食わすつもりなど彼には毛頭無かった。

 ジンは制服を着てくる上で一緒に持ってきていた学生鞄の中から竹刀袋を取り出し左手で握ると、それを腰の側に打刀を帯びるがごとく構える。

 “擬態”も仮初めの姿を捨て本来の姿・・・・・・蜘蛛に似た異形を晒け出す。

 その時、彼の頭上からその異形と同じ型の新たな異形が襲いかかる。

 

「っ・・・・・・!」

 

 ジンは流れるような動きで前方に回避。

 しかし前と後ろを二体の異形に挟まれる形になってしまう。

 

 ふと見ると少女(ココア)は今、まさか自分が怪物の標的になっていることなど知る(よし)もなく偶然会って意気投合したであろう同年代の女の子と談笑している。

 

「なるほど。僕を殺した後はあそこにいる二人をお前らで仲良く山分けする、というわけか」

 

 異形二体は何も答えず、地球上のどの生物のものとも言えぬ独特の鳴き声を発するばかり。

 だがそれに混じる歪んだ愉悦の感情が肯定の意となっていた。

 

 何にしてもこの『前門の虎、後門の狼』のことわざを体現したかのような構図。

 狭い路地の前後を押さえられ逃げ場はどこにもない。

 このままではジンは一方的に袋叩きにされ惨殺されてしまうだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で? まさか『逆に追い詰めてやった』とか考えてないよね?」

 

 ただしそれは彼がただの一般人であったならば、の話だ。

 

 ジンは左手で掴んでいた竹刀袋を地面に落とす。

 代わりに中に入れてあった得物がその手には握られていた。

 そしてメタリックパ-プルの柄に取り付けられたトリガーを引く。

 

【Stand by】

 

 ジンの得物『サソードヤイバー』から発せられた電子音声と連動するように、背後にいた異形の足下が爆発。

 正確には地面を勢いよく突き破ってサソリ型の機械が異形に襲いかかり、牽制したのだ。

 

(身元不明の『制服姿』の『未成年女性』の変死体・・・・・・を生み出すことに()()()()()“ワーム”)

 

 サソリ型の機械『サソードゼクター』はその尾にある毒針で何度も異形の顔面を刺した所で異形の反撃を許さずに反転。ジンの元に飛ぶ。

 

「お前達の未来・・・・・・」

 

 彼はそのゼクターを一瞥もせずに、掌を後ろに向けた右手で掴み取る。

 

「・・・・・・僕が、奪う」

 

 左手で握り、腰に携えたヤイバーの鍔に当たる部分にゼクターをセット。

 同時にその身を戦士に変える意味を持つ言葉を放ち、刀を引き抜くような所作でヤイバーを正中に構える。

 

「変身」

【HENSHIN】

 

 電子音声と共に変身プロセスが開始され六角形状に全身を包む重厚な鎧(ライダースーツ)を形成していく。

 上半身をオレンジ色のチューブで覆われ、頭部にバイザーが装着された物々しい姿と成る。

 この姿こそがマスクドライダーシステム第四号たる『仮面ライダーサソード』。

 その『マスクドフォーム』だ。

 

「―――――――――ッ!!」

 

 変身後の隙を狙ったか、間髪入れずに正面の異形・ワームが飛びかかる。

 しかしサソードはそれを上段の構えから力づくで叩き落とす。

 続いて先のゼクターの牽制から復帰したワームも背後から強襲するが振り向く彼の胴抜きが決まり脇腹を切り裂かれ、怯んだところを肩口から袈裟斬りにされる。

 

 その後もそれぞれが挑むがマスクドフォームのパワーと装甲を活かす彼の剣技に為す術が無く、全て力業で切り伏せられる。

 

 流石に無策に戦っても埒が明かないと気付いたのかワーム達は再びサソードを挟む形で布陣を組んで好機を窺う。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 だがしかし、黙して油断無く剣を構える彼に隙など存在せず、どころかその身に纏う闘志よりも深く鋭い()()は時が経つごとに膨れあがっていく。

 沈黙に耐えられなくなったワームは後ろから羽交い締めにし、前から爪を振り下ろし殺傷する波状攻撃によって挟撃した。

 

「キャストオフ」

 

 しかしそれを先読みし、後の先を取ったのはサソードだった。

 

【Cast off】

 

 ゼクターの尾をヤイバーに押し込むことで再び鳴る電子音声。

 それに呼応して上半身を覆っていた装甲が飛散(パージ)

 秒速2000mの硬質な金属塊がワームらを吹き飛ばす。

 

 それは連鎖的に装甲の下に隠されたサソードのもう一つの姿を解放した。

 

【Change Scorpion】

 

 蠍の意匠を頭部や体に施された『ライダーフォーム』への変身が完了する。

 

 そして無様に吹き飛ばされたことで晒された隙。

 それを見逃す彼では無かった。

 

 まずその剣を目の前で起き上がろうと膝立ちをしているワームの腹に突き立て、腰を入れてさらに深く刺す。

 続けて躊躇無く蹴り倒すことによって無理矢理引き抜く。

 

「うぅ・・・・・・や、やめて・・・・・・たすあがっ! ・・・・・・ア」

 

 倒れて少女(ココア)に擬態したワームの胸に追い打ちの振り下ろし。

 逆手で持ったサソードヤイバーの黒い刀身が吹き上げられた噴水によって染まる。

 その噴水は始めは赤だったがすぐ緑に変わり、最後には元の異形に戻ったワームの体が爆散した。

 

 その光景を見て勝機は無いと判断したのか、もう一匹のワームが表通りに駆けだした。

 おそらく当初標的にしていた少女達を人質にするためだろう。

 

「あ――――

 

 常人を遙かに超えるスピードを持つ異形の魔の手が今まさに少女に伸びようとして

 

「クロックアップ」

【Clock up】

 

「ここから先は通行止めだよ」

 

 首に当てられた黒刃によって止められる。

 

 クロックアップによって別の時間流に乗ったサソードは通常の何十、何百倍のスピードで行動ができる。

 普通の人にとって一瞬一秒に満たない時間の中で繰り広げられる戦いが始まった。

 

 ライダーフォームに成ったことでパワーと装甲を失ったサソードだが、逆にこのフォームは行動を制限していた装甲が無くなったことでスピードと手数に物を言わした戦法を得意とする。

 それを証明するように袈裟斬り、逆袈裟、胴薙ぎと続く怒濤の連撃が橋の上で展開される。

 最後の切り上げはワームを橋から落とし、戦闘の舞台は橋下の小川の浅瀬に移る。

 

 さらなる斬撃の舞いの締めたる刺突で転がるワームにトドメを刺すため、ゼクターの尾を一度持ち上げ再度押し込む。

 

「ライダースラッシュ」

【Rider Slash】

 

 ゼクターからヤイバーに注入された猛毒が光子に変換されスパークを鳴らす。

 黒刃は必殺の毒刃へと変わる。

 

「スゥー・・・・・・」

 

 剣を上段に構え、息を深く吸う。

 

「ハッ!」

 

 最後の足掻きで我武者羅に爪を振るうワームの横を擦り抜け様に、胴への一閃。

 振り返り、切っ先を向け残心をとるサソードの前でその身は爆発四散。

 

【Clock over】

 

――――れ? いま後ろに誰かいた気がしたけど。気のせいかな?」

 

 残るは、一陣の風のみ。




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