無色の世界   作:Hiramii

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神河シアン(かみかわしあん)
赤茶色の髪をした真面目で責任感の強い少女。18歳。
フェンリルに見捨てられた人々で構成された"希望の団"と名付けられたグループ内で生まれ育った。
とある理由で孤児だらけになった希望の団のリーダー的存在。

久住ハルト(くずみはると)
シアンの幼馴染みで気が短く、喧嘩っ早い。18歳。
何かと誰かに突っかかり、その度にシアンに怒られている。

エイダ・エインズワース(えいだ・えいんずわーす)
希望の団の姉御的存在。20歳。
愛称は"エイダ姉さん"。
某ホラゲーとは無関係。




第一話 神河シアン

力を持たない自分を呪いながら生きてきた。

 

弱い者を見捨てた者を憎んできた。

 

それでも必死に足掻いてきた。

 

 

 

この荒廃したアラガミだらけの世界で。

 

 

 

でも、それもここで終わりのようだ。

 

 

 

オウガテイルが5〜6体、群れをなして私を見据えている。

他の仲間たちを逃すのに必死で足元の瓦礫に気づかず、派手に転んで脚を怪我してしまった。

背後には廃墟の壁。

囮になるため走り回っていたのもあって、これ以上動き回れるだけの体力はもう残っていなかった。

 

手元には手製の爆弾が一つ。

これを爆発させ廃墟を破壊し倒壊させて、私ごとアラガミを巻き込めばあるいは…。

 

紐を引っ張れば簡単に爆発するそれに手をかける。

 

『…サヨナラ世界』

 

そう呟いた時だった。

 

突如銃声が鳴り響き、オウガテイルたちが次々と倒れていく。

 

舞い上がった土煙の向こうには、何か大きなものを抱える人影が。

その人影がこちらに近づき、土煙が収まった頃、ようやく姿をハッキリと視認することが出来た。

 

「おー、生きてたか。手遅れかとも思ったが、お前さん結構しぶとかったんだなぁ」

片目を隠した黒い髪に白いロングコートを着たその男は「立てるか?」と私に手を差し伸べる。

 

私はその男の抱えるものを見て思わず睨みつけた。

 

『…ゴッドイーター……』

 

男は困ったような顔をして頭をがしがしとかいた。

 

「あー…お前さんもか…。まぁとにかく、お前さんの仲間はこっちで保護してるから、一緒に仲間んとこ帰ろう」

 

な?と再度手を差し伸べる男。

仲間が気がかりなのは確かだったので、渋々男の手をとり立ち上がった。

 

「おれは"独立支援部隊クレイドル"の雨宮リンドウってモンだ。たまたま極東支部へ向かってる最中にお前さん達が襲撃受けてるとこに出くわしてな。それで助けに来た」

 

聞いても無いのに勝手に自己紹介を始め、お前さんの名前は?とこちらにも自己紹介を促すリンドウ。

 

『フェンリルの人間と馴れ合う気はありません。それより仲間達は全員無事でしょうね』

「…ああ、もちろんだ」

 

こんな態度を取られるのは慣れているのだろう、リンドウは自己紹介を催促する事なく、こっちだ、と仲間がいるらしい方へ歩き出した。

 

「しっかし神機使いでも無いのに無茶するなぁ。生身でアラガミに対抗しようなんて。今までもああやって囮になって来たのか?」

『力ある者の言い分ですね。私たちにはああするしか方法がなかった』

「ん…ああ、そうだな。お前さんは本当に勇敢だ」

 

フェンリルは、アラガミだらけのこの世において人類の最後の砦とも呼べる機関だ。

アラガミを討伐する"ゴッドイーター"を擁しており、世界中に支部が展開されている。

アラガミ出現前はしがない企業の一つだったというが、オラクル技術を開発してからというもの、その恩恵にあずかろうと集まった人々により大きく成長し今に至る。

しかしフェンリルは神機―アラガミに対抗する唯一の手段―を扱える者―適合者―とその家族だけを保護し、それ以外の力なき者達を排外するという暴挙に出た。

…もちろん、金を積んで守られている貴族などの例外もいるが。

それ故にフェンリルに見捨てられた者達は身を寄せ合い自衛するしかなく、私達のように日々アラガミの脅威に怯えながら生活している。

その中には自分たちを見捨てたフェンリルをよく思わない、憎む者も少なく無い。

私こと"神河(かみかわ)シアン"もその中の1人で、一緒にいる仲間達の殆どがそういう人たちだった。

 

しばらく歩き続けると、前方に仲間達を見つけた。

その近くには神機使いも何人かいる。

しかし様子が変だった。

仲間の1人が彼らにつかみかかっている。

 

「お前らに守られなくても俺たちは生きていける!!これ以上俺たちに関わるんじゃねぇ!さっさと失せろ!」

「これだけ大勢の人たちを見捨てるなんて出来ませんよ!お願いします、私達を信じていただけませんか!?」

 

どうやらその相手は女性のようだった。

高く澄んだ声が遠くにいてもよく聞こえる。

 

『……あのバカ…』

 

怒鳴っているのは仲間内でも喧嘩っ早い事で有名なヤツだった。

今まで女性相手に喧嘩なんかしなかったから分からなかったけど、ホントに相手が誰だろうと見境ないらしい。

 

「どうした、アリサ?」

「あっ、リンドウさん!…よかった、これで襲われていた人たちは全員無事ですね」

「ああ?…!シ、シアン!!お前無事だったのか!!」

『おかげさまで』

「ケガは!?」

『脚をちょっとね…それ以外は平気。で、なんでこんなことになってんの、ハルト?』

「ああ、それが…」

「この人たち、新しくサテライト拠点を作ったから、そこに移住しないかって」

 

ハルトの言葉を遮って、エイダが言う。

 

『サテライト拠点、ねぇ…』

「で、うちらのリーダーはシアンだから黙ってろってハルトに言ったんだけど…」

 

この調子、と呆れたように首をふった。

 

「お前だってフェンリルのヤツの言うことなんか聞きたかねぇだろ!?」

 

ハルトが詰め寄る。

 

「俺たちを見捨てた奴らだぞ、信用出来るかよ!」

 

ハルトの言うことは尤もだ。

アリサと呼ばれた銀の長い髪の女性が言う。

 

「…確かに皆さんからすれば、皆さんを見捨てたフェンリルに属する私たちを信用する事は難しいと思います。恨む気持ちも理解出来ます。だから私達はこうして独立支援部隊として、フェンリルに見捨てられた人たちを守る活動をしているんです。

…ですからお願いします、少しでも多くの人たちを守りたい、その気持ちに嘘偽りはありません。私たちに皆さんの命…預けてくれませんか!?」

 

アリサが深々と頭を下げる。

 

『独立支援部隊だろうがフェンリルの人間には変わらない、信用はできない』

 

うんうん、と隣で頷くハルト。

 

『けど自分たちだけで全員を守りきる事は難しいのも事実』

 

仲間のほとんどが10〜20代と若者ばかりで、生まれたばかりの赤子や10歳に満たない子供も多くいる。

いくら囮を使って逃げてもいずれは誰かが死ぬだろう。

 

『…分かりました、サテライト拠点へ案内してもらえますか』

「!!?おい、マジかよ」

『いずれはこの中の誰かが死ぬよ、このままじゃ。…それに()()()の二の舞にはしたくないでしょ?』

「………」

 

言葉に詰まるハルト。

 

『幼い子も多い。今回みたいにうまく逃げられる保証もない。命には代えられない。…他のみんなも、異論は無いね?』

 

静かに頷く仲間達。

アリサの表情が明るくなる。

 

「…!ありがとうございます!ではこちらの車に乗ってください!」

 

二台あった車の荷台に分かれて乗り込む。

後ろからの襲撃を警戒して、リンドウともう1人の金髪の神機使いが荷台に乗り込んだ。

道中、リンドウが疑問を口にする。

 

「しっかし随分若いヤツばっかりだなぁ。もっと歳上の大人がいてもいいようなもんだが」

『元々"希望の団(ホープ・ホーム)"はこの倍の規模でした』

 

リンドウはその一言で察したらしい。

 

「まさか…」

『はい、ここにいる人達は私含めて、ほとんど孤児です。大人達はみんなアラガミにやられました。それ以来、生き残った私たちの中で比較的歳上の仲間達で話し合って班を作ったりしてなんとかやってきてたんです』

「そうか…悪い、イヤなこと聞いちまったな。で、お前さんがリーダーか」

『自分から名乗った覚えはないですよ。いつの間にか祭り上げられてたんで、仕方なく引き受けてるだけですから』

「…やっぱ慕われるヤツってのは似たような目をしてるもんなのかね」

『?』

「おれの後輩に、お前さんと似たような目をしたヤツがいてなぁ。そういや雰囲気もなんとなく似てるな。まぁそれでそいつは神機使いになって間もないのにアナグラの色んな奴に好かれてて、実力も新人にしちゃあ抜き出るものがあったな。今は遠征に出っぱなしでこっちに戻ってくる事は滅多にないんだが…今頃何してるんだろうなぁアイツ…」

 

今更ながら何故私はこの人とこんな話をしてるんだろうか。

馴れ合う気は無いとさっき言ったばかりなのに。

この人の後輩の話なんてどうでもいい。

ただ、この人はこの人で何かカリスマ性のようなものを感じる。

つい喋りすぎたのもそのせいだろうか。

 

 

〜〜〜〜〜〜〜

 

1時間ほど車を走らせ、ようやくサテライト拠点に着いた。

そこにはすでに住民がいるらしく、新たに来た私たちを遠目から物珍しそうに見ている人だかりがある。

別に悪いことをしたわけでは無いけど、落ち着かない。

車から全員降りたのを確認すると、リンドウが呼びかける。

 

「とりあえず、全員適合検査を受けてくれ」

「テキゴウケンサ?」

 

ハルトが首をかしげた。

 

「ああ、神機使いになれるかどうかの適合検査だ。あ、適合したからって絶対に神機使いにならなきゃいけないわけじゃないぞ。俺たちと違って義務じゃないが一応、な」

 

一同は大きなテントに案内され、試薬を受け取った。

 

「アルコールのパッチテストみたいなもんだ。こいつを利き腕に貼って、1分たったら剥がしてくれ。適合者なら試薬が赤く、適合しないなら青くなってるハズだ」

 

各々言われた通りにシールのような試薬を腕に貼る。

1分が経ち、私は恐る恐る試薬を剥がした。

 

 

 

 

 

『あ……』

 

見えた色は赤だった。

 

 

 

隣のエイダの結果を見る。

 

「私は青さ。…アンタは赤、かい」

「俺も青だ」

 

ハルトも自分の結果を見せた。

 

「…赤だった奴はこっちで名前書いてくれ。希望する奴は神機使いになれるようにこっちで手配する」

 

私の他にも数人「赤だ」と呟く声が聞こえたが、私以外にそれに応じる者はいない。

 

「…他にもいるだろ?何人か聞こえたと思ったがなぁ…」

「希望制だとか言って、名前書いたらどうせ強制的に連れて行くんだろ!?誰が書くかよ!」

 

誰かが言った。

 

「自分から命捨てに行くようなもんだ」

「そうよ、アラガミから逃げて来たのに神機使いにされたんじゃ、何のためにここまで来たのか…」

 

仲間達は次々と不満と不安を口にした。

 

「そんな事しません…!」

 

アリサが説得を試みるが聞く耳を持つ者はいなかった。

 

『無駄ですよ、信用ないって言ったじゃないですか』

 

私は名前を書きながら淡々と告げた。

 

『それに幼い弟や妹がいる人がその子を置いて神機使いになんてなるわけない。…もちろん私もなる気はありません』

「っ……。分かりました、では次にそれぞれの家族構成を確認させてください。住居を割り当てます」

 

その後淡々と事務的な確認作業が続き、漸く住居が与えられ解放されたのは夕暮れだった。

今までならこの時間帯は子供達には各々部屋に帰れと言いつけていたが、サテライト拠点内にアラガミはいない。

今も自由に遊びまわり、自分たちより前からここにいる子達とすっかり仲良くなっていた。

この調子ならすぐに他の住民達とも打ち解けられるだろう。

ハルトには「絶対に喧嘩を起こすな」と厳命しておいた。

 




見ての通り文字数が結構多いです。
国語とか作文は得意なつもりですがもし読みにくいと感じたら気軽に言ってください。
1ページ1話なので色々詰め込みたくなるんですよね。
色々試行錯誤していこうと思います。

まだシアンはリンドウさんがどれだけすごい人かわかってません。外にいたからね。
いずれ知る機会もあるでしょう…笑
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