2074年フェンリル極東支部入隊。
同年フェンリル極致化技術開発局転属。
出生:4月10日 身長:165cm
特殊部隊「ブラッド」副隊長。サテライト拠点出身の神機使い。
入隊当初より卓越したセンスを発揮し続けていること、隊長であるジュリウスに次いで2人目の血の力の覚醒者であることから、副隊長に任命された。
彼女の血の力の効果は未だ不明。
シアンが目を覚ましたのは翌日の夕方だった。
部屋を照らす蛍光灯の眩しさに、ゆっくり目を開ける。
『……う…』
「あ、気がついた?」
横から聞こえた声に顔を向けると、そこにナナがいた。
「シアン、丸一日寝てたんだよ〜」
『ここは…?』
「病室だよ。あのあとシアンが倒れちゃって、ここにエミールさんと運ばれたんだよ」
はっ、としてシアンが飛び起きる。
「わぁっ!そんな急に起きちゃダメだよ!」
『エミールさんは…!?』
「だ、大丈夫だったよ、エミールさんの怪我は大したことなくて、昨日のうちに目を覚ましたから…」
『…よかった……』
その時病室の扉が開く音がして、誰かが入ってきた。
「誰だ、また病室で騒いでんのは…」
「ナナ、シアンの様子は〜?」
『ギル、ロミオ…』
「目ぇ覚めたんだな。起きてて平気なのか?」
『…はい、ご心配おかけしました……』
「それを言うならエミールさんに言えよ。あいつが一番騒いでたからな」
「そうそう、"私のせいでシアン君が〜!"って、病室だってのに大騒ぎしてさ。落ち着けるの大変だったんだぜ?
あ、目ぇ覚めたんならラケル先生呼んで来なきゃ!おれちょっと行ってくる!」
「じゃあ私も〜!ギル、シアンのことよろしくねっ」
「おい2人もいらないだろ?ナナは待ってろよ」
「ロミオ先輩ばっかりラケル先生とお話なんてずるいよ!そんなの許さないんだからね!」
「しょうがないなぁまったく…」
ロミオとナナはラケル博士を呼んでくるために連れ立って病室を出て行った。
「慕われてるんだな、ラケル博士…」
『ラケル博士の孤児院で育ったって言ってましたから』
ズキ、と頭に痛みが走ったシアンは頭を抱える。
『う…』
「大丈夫か、シアン?もう少し寝てろよ」
『…そうします』
シアンが再びベッドへ横になると、徐にギルがシアンの頭を撫で始めた。
『ちょ、何するんですか』
慌ててギルの手を払おうとするが、逆に阻止される。
「いいから、ケガ人は大人しくしてろ」
『…子供扱いしないでください……』
「こういう時くらい気を楽にしたらどうだ?変に気ィ張ってると疲れるぞ」
『…ギルさんには関係ありません』
今度こそギルの手を払ったシアンは、ギルに背を向けるように寝返りをうった。
「…可愛くねぇやつ」
『可愛くなくて結構です』
しばらくしてナナとロミオがラケル博士を連れてきた。
それに気づいてシアンが体を起こす。
「目を覚ましたようですね、シアン。具合はどうですか?」
『体調は概ね良好です』
「そう…それはよかった。でも念の為メディカルチェックを受けてもらいますよ」
『…わかりました』
ラケル博士はシアンの頭を撫でながら言った。
「そうそう、ジュリウスから聞きましたよ…血の力の発現が認められた、と。よくやりましたね、シアン。流石、私の子供たち…」
『……』
「あなたの力がどんな作用をもたらすのかはまだ分かっていませんが、焦ることはありません…血の力の発現は、ブラッドアーツが使えるようになった、ということでもあります。
あなたがブラッドアーツを使いこなせるようになった頃には、判明しているでしょう。…では検査室に行きましょう」
検査結果は良好、怪我の程度も大したことはなく、今日はまだ休みを取り、任務に出るのは明日から。
血の力の作用は追って調べる事になった。
シアンが撃退したアラガミ、マルドゥークは、感応種と呼ばれるアラガミだった。
感応種は特別な感応波で他のアラガミに影響を与え、時には操る事ができる。
神機もまた、人工的ではあるがアラガミであるため、その感応波に影響されて、通常の偏食因子を投与された神機使いの神機は動かなくなってしまう。
しかしブラッドならば感応種に対抗できる、という仮説をラケル博士は立てており、今回シアンが意図せずその仮説を立証したというわけだ。
本を読む為庭園に向かう途中、包帯の巻かれた腕を見やる。
あれだけ強い衝撃だったにも関わらず、骨折したわけでもなく軽い打ち身と擦り傷で済んでいる。
流石は偏食因子、といったところか。
エレベーターが庭園のある階でとまった。
相変わらずここの景色は綺麗だった。
ふと庭園の中央に誰かが立っているのが見えた。
エミールだった。
エミールはこちらに気づくと駆け寄ってきた。
「おお、シアン君!やっと目を覚ましたんだね、実に良かった!」
『エミールさん、元気そうですね』
「ああ、君が助けてくれたおかげだ。礼を言わせてくれ、ありがとう!そうだ、掃討作戦が終わったので極東支部へ帰る事になった。帰る前に君に礼を言いたかったから、間に合ってよかった…」
『いつ戻るんです?』
「もう少しで迎えが来るそうだ。なぁに見送りはいらんさ、君はゆっくり休んでいたまえ」
その時、フランがエレベーターから出てきた。
「あ、エミールさん。ここにいらっしゃったんですか。迎えが到着しましたよ」
「もう来たのか?せっかく我がライバルと話をしていたというのに…」
『ライバル?』
「実に惜しいが友よ、私は行かねばならんようだ。また会える日を楽しみにしているよ」
そう言ってエミールはフランと一緒にエレベーターの中へ消えていった。
「面白い人だな、彼は」
『!?隊長、いつからそこに…』
ジュリウスがいつの間にか横に立っていた。
「もう起きられるんだな」
『あ、はい…心配をおかけしました』
ジュリウスはシアンの頭を撫でた。
「言うのが遅れたな。…血の力の覚醒、おめでとう」
『…ありがとうございます』
「これで正式なブラッド隊の隊員だ。2人目のな」
『2人目……(そうか、私より先にいたロミオ先輩は、まだ血の力に目覚めていないから候補生のままなのか…)』
「お前が目覚めたということは、他の奴らの覚醒も近いかもしれんな。楽しみだ」
『…そうですね。…あの、それはいいんですけど』
「?」
『いつまで撫で続けるんですか…?』
「すまん、嫌だったか?」
ジュリウスは手を離した。
そういえば、今日はよく撫でられる。
『あ、いえ…そうではないですけど、流石に恥ずかしいというか…』
「…今日はいつもより素直らしいな。病み上がりだからか?」
ジュリウスは目を細め微笑んだ。
『…そういうつもりはないです』
「そうか。でも、このままでいてくれ。今のお前の方がいつもより可愛いからな」
『か、かわ…?!』
少し頰を染めるシアンに、ジュリウスは面白そうに笑う。
「なるほど、お前の弱点が一つわかった」
『な……』
「"こういうの"に弱いんだろう?」
ジュリウスはサッとシアンを引き寄せると、思い切り抱きしめた。
『た、隊長!いい加減に…』
「初めてお前にあった日も、手を握っただけで顔を赤らめていたな」
『っ…ほんと、やめてくださいって…』
耳元で囁くように言われ、思わず身体が強張る。
『いくら隊長相手でも、怒りますよ…!』
「…随分と心臓の鼓動が早いな」
『あ、当たり前じゃないですかこんなことされたら…!』
「意外に乙女なんだな?」
やっとの事で解放されたシアンはジュリウスと距離を取る。
『何考えてるんですかまったく…!』
「どうすれば猫が警戒心を解くか、だな」
『余計に警戒しました』
「フ…これからもその調子でな」
どうやらジュリウス隊長は、自分をからかうのが相当面白いらしい。
今後悪用されるのは容易に想像がついた。
『…あ。あの、隊長』
「ん?」
『…ラケル博士って、孤児院では余程慕われてるんですか?』
「ああ、そうだ。ラケル先生は孤児院のやつらにとって育ての親のようなものだから…。でも何で急にそんなことを聞くんだ?」
『深い意味はないです…ただ、ナナとロミオがラケル博士にくっついてるのを見たので、隊長も同じなのかと思って…』
「…まぁ、そうだな。俺は特に目をかけてもらっていたから…いくら恩を返しても足りないよ」
『そうですか…』
ラケル博士を初めて見た時、柔和な笑みの奥に何かが隠れているような感じがした。
穏やかだけど、どこかちぐはぐな…そんな気配。
ああそうだ、とジュリウスは思い出したように言った。
「そういえば、ラケル先生から新たにブラッドに新メンバーが加わるという連絡を受けた。…あいつのこともよろしく頼む」
『知り合いなんですか?』
「まぁな…俺やナナと同じ、マグノリア・コンパスの出身だ」
『なんていう人です?』
「フッ…そう急くな。どうせ会えるんだ、それまでの楽しみにとっておけよ」
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シエル・アランソンが来たのは、それから3日後のことだった。
ラケル博士の研究室にブラッド全員が呼ばれ、シエルと顔合わせをした。
シエルは規律正しい軍人のように背筋を伸ばし敬礼した。
「新しくブラッドに入隊することになった、シエル・アランソンです。
ジュリウス隊長と同じく、マグノリア・コンパスにてラケル先生から薫陶を賜りました。今後は私が学んできた戦術面で、みなさんのサポートをしていくつもりです、よろしくお願いします」
そこまで言うとシエルは、ふぅ、と息を吐いた。
「…以上、です」
「シエル、そう堅くならなくていいのよ」
ラケル博士がシエルに微笑みかける。
「さて、これでメンバーが揃いましたね。…ジュリウス」
「…はい。今後、一部隊として活動していく上で命令系統の一本化をはかりたい。そのために、副隊長を任命することにした」
「おお!だれだれ?」
「ここまでの任務成績と、早くも血の力に目覚めたこと…」
ジュリウスがそこまで言うと、全員の視線がとある1人に集まった。
「お前が適任だと判断した。やってくれるな、シアン?」
『…私が、副隊長……』
「わぁ、副隊長!よろしくね〜」
「妥当だろ。ナナはアレだし、ロミオは頼りないしな」
「お前に言われたくねーよ、バーカ!」
目を丸くするシアンの横で好き放題騒ぐ3人に、ジュリウスはため息をつきつつもシアンに目を向ける。
「…思う所は色々あるだろうが、お前には期待しているんだ。これから、よろしく頼む。シエル、これからのブラッドの方針について、副隊長とコンセンサスを重ねるように」
「了解しました」
「…お前らもそのくらいにしておけ」
シエルがシアンに一歩歩み寄る。
「では、副隊長。後ほど、よろしくお願いします」
『あ、うん……』
一応その場で解散という事になったが、ちょうど昼どきということもあり、ロミオの発案でシエルも交えて昼食会をする事になった。
ロミオとナナはシエルの両隣を占拠して、シエルを巻き込み賑やかに話している。
一方ジュリウスとシアン、ギルはそれに反して静かなものだった。
向かいに座っている上司に、シアンは疑問を投げかけた。
『なんで私なんですか?』
「不満か?」
『隊長はご存じでしょ、私がどういう人間か』
「そうだな…真面目で責任感が強くてお人好し、何か頼まれたらNOとは言えない性格だ」
そうだろ?とジュリウスは言った。
「それと迫られると弱い」
『与えられた責任を放棄する、が抜けてます』
「でも結局放っておけずに最後まで付き合う、というのも忘れずにな」
ムッとするシアンに、ジュリウスは苦笑する。
「そうカッカするな。別にお前を力で抑えつけたいわけじゃない」
『だったら外してください』
「それは出来ない相談だ。お前ほどの適任者は他にいないのだから」
『………』
「不満や不安なら、俺にいくらでもぶつけてくれて構わない。だから…頼む、シアン」
上司にここまで言われては、これ以上反発すれば悪人は自分だ。
シアンは仕方なく頷いた。
『…手に負えなくなったら逃げますから』
「ああ、責任は俺がとろう」
隊長はズルい。
そこまで私の性格も感情も理解しておきながら、私の退路を遮るようにそこに立っているのだ。
そうして前に進むしかない状況を作り出して、今度は責任感を煽る。
逃げられない状況だと分かっているのに「逃げてもいい」だなんて言ってのけるのだ。
私が真面目でなければ、責任感を持っていなければ、もっと捻くれた性格だったら、こんなこと気にもしないでここから逃げ出していただろう。
ギルとロミオの喧嘩だって、あのまま放置していたはずだ。
けれど、神機使いになると決意したのは紛れもなく自分で。
自分で選んだ事に責任を持てるのも自分だけで。
流れでここまで来てしまったとはいえ、ここで放棄すれば自分は自分に負ける。
反対を押し切ってきた仲間に合わせる顔もない。
結局、やるしかないのだ。
一種の諦めなのかもしれないが、覚悟は出来た。
ここで、ブラッドの副隊長として、アラガミと戦い続けてやる。
何で新人の主人公がいきなり副隊長なのかって考えたけど、
多分ジュリウスから見て一番問題が無かったのが主人公だったから、っていう消去法だったんじゃなかろうかという推測…。
だってギルとロミオはケンカするし、ナナは知識が乏しいし…。
シアンの場合はもっと悪くて「この中で一番マシだった」っていうあっても無くても変わらないような細かい設定です笑
ていうかギル、「妥当だろ」って何様だ。笑
ロミオがつっかかりたがるのが何と無く分かります。
一応ここまでで序章的な扱いにしようと思います。
(まぁこんな区切りしなくても何も変わらないから気にしなくていいです、気分です気分)
次回から副隊長としてシアンの振る舞いに変化はあるのか!?
(主人公の名前をシアンにしたことでシエルと名前の音が被ってしまっている事に少し後悔してます…)