無色の世界   作:Hiramii

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やっと書けた〜…
早いもので次から話数が二桁ですよ〜




第九話 疑問と疑念と

昼食のあとラケル博士の研究室を借りて、シエルと話をすることになった。

 

「では副隊長、早速ですが質問をさせてください。ブラッドとして作戦を行なった回数はどのくらいですか?」

『数回…かな』

「なるほど。つまりほとんど経験がない、ということですね。では今後は、お互い戦術面での連携を意識していく必要がありますね」

『ふんふん』

「連携を意識した訓練メニューを組んでおくので後日お伝えします。それと、これはこれまでの戦闘データを基にした各メンバーの個人訓練メニューです。

1日24時間の内任務に4時間、食事その他雑事2時間、睡眠に8時間として、残りの時間は訓練に4時間、座学に6時間分配します」

『…ん?』

 

時間配分おかしくないか?

 

「どうされました?」

『…いや、さすがに時間配分がカツカツじゃない?休憩が1分もないし…』

「ああ、忘れてました。そうですよね、効率的に訓練を行うには適度な休息も必要ですよね。…10分程度でよろしいですね?あと、副隊長には特別な訓練メニューを組んでおきました。驚きました…神機使いになったばかりなのに、同じ時期に入隊したナナさんに比べて成績がとても良かったので…もしかしたら物足りないくらいかもしれませんが…」

 

シエルに見せられたメニューを見る。

小型50体討伐のタイムアタックから、ブラッドアーツの精度と威力を高めるための…大型種との模擬戦闘まで入ってる。

いやいやいや、まだ私も新人だし。これはハードじゃないか?

 

『…私はこれをやるの?』

「ええ、いずれは。今はまだ筋力や耐久力が追いついてないかと思いますので、初めのうちは皆さんと同じメニューでやっていただきます。あ、でもブラッドアーツの精度を高める訓練だけは欠かさず行なってください」

『大型と戦うの!?いや、さすがに無理だって。任務でもまだ出くわした事ないし…』

「では、中型種から始めましょう。慣れてきたら大型種に切り替えるという事で」

『そうしてもらえると助かるよ…』

 

訓練なのにボコボコにされて死にかけたのでは話にならない。

 

その後もいくつか話をして、話題はシエルのことに移った。

 

『そういえばシエルもマグノリア・コンパスの出身なんだっけ?』

「ええ、そうです」

『ジュリウス隊長が、知り合いだって言ってたけど…』

「私たちがまだ孤児院にいた頃、私が隊長の身辺警護にあたっていたことがあるんです。対人戦の格闘術、暗殺術、諜報活動などに関して一通り学んでおりましたので」

『へ、へぇ〜…すごいんだねぇ…』

「すでに第一線で活躍している皆さんに対して誇れるほどのものはありません」

 

暗殺術だなんて、子供が学ぶには物騒すぎやしないか?

ラケル博士はシエルをどうしたいのだろう。

 

「…あの、私からも質問、よろしいですか?」

『なに?』

「入隊する前、ブラッドのメンバーについて一通りの資料をいただいた際に見たのですが…副隊長は、サテライト拠点の出身なんですね」

『…そうだけど。それが?』

「ネモス・ディアナを基にサテライト拠点は建造されているわけですが…サテライト拠点の建造が始まったのはほんの数年前からです。

それまで、どこにいらしたんですか?」

 

シエルの目が険しくなる。

 

「サテライト拠点の方々は、フェンリルに対していい感情は持っていないと聞きました。あなたは何故、神機使いになったんです?」

『……何か尋問でもされてるみたいだ』

「あ、すいません…そんなつもりはないんです。ただ、どうしても不可解だったので」

『簡単だよ、外に居たんだ。フェンリルの保護下から外れた所に』

「…?保護下から外れた所?ネモス・ディアナではないんですよね?」

『外は外だ、それ以外に何かある?』

「…すみません、私の理解力が及ばないようです。つまり、どういうことですか?」

『…本当にわからないの?アラガミが闊歩してる中で、誰にも守られることなく生きてきた、って事だよ』

「そんな…でもなんで。フェンリルは人々を助けるために」

『フェンリルが助けるのは神機使いになれる人と、そのごく近しい、血の繋がった家族だけ。それ以外は悉く切り捨ててきた。

よく覚えておきな、それでサテライト拠点の住民は命を危険に晒されてきたって事を…私は、そんな彼らと、私の仲間を守るためにここにいる。さてこれから任務だ、行こう』

 

呆然とするシエルを置いて、シアンは研究室を出た。

 

その日の任務は、ブラッドを2チームに分けて行動する事になった。

アラガミの数が多く、1チームでは手が足りないためだ。

 

シアンと組んだのはシエルとギル。

ブラッドβとして鉄塔の森へ降り立った。

 

〔こちらブラッドα。作戦開始ポイントに到達。ブラッドβ、そちらはどうだ〕

『ブラッドβ、こちらも問題なく作戦開始ポイントに着きました、いつでも始められます』

〔ブラッドα、了解した。そちらのタイミングで始めてくれ〕

『了解』

〔待ってください!ブラッドβ、そちらの作戦エリアにヤクシャが進入!〕

 

フランからの通信に、周囲を見渡す。

ヤクシャは作戦地域のちょうど反対側に見えた。

 

『…ブラッドβ、ヤクシャを目視で確認した』

「こっちから片づけにいくぞ」

「待ってください。ヤクシャが接近した場合、一時退避…そういう内容の作戦だったはずです」

 

シエルとギルの意見が割れた。

 

「俺たちの仕事はアラガミの討伐だ」

「ギル、作戦通りに動けないようではより強力なアラガミと戦えません」

「状況に応じて、臨機応変に対応すべき局面もある…!」

〔ギル、シエル、2人とも落ち着け。…ブラッドβの指揮官は副隊長にある〕

 

ジュリウスに諌められて黙り込む2人。

 

〔副隊長、どうする?必要なら応援に向かうが…〕

『いえ、必要ありません。こちらで対処します』

〔そうか、わかった。くれぐれも無理はするなよ〕

 

通信を切り、シアンは少し考えると、2人に言った。

 

『このまま任務は続行。少し作戦を変える』

「え…」

「…フン、わかってるじゃねえか」

『元々の標的はオウガテイル数体、そこにヤクシャが1匹紛れ込んだだけ。私とシエルでオウガテイルを速やかに一掃、ギルさんは戦闘音を聞いて近づいてくるであろうヤクシャの足止めをお願いします』

「わかった」

「…了解しました」

 

シエルは納得いっていない表情だったが、渋々といった様子で頷いた。

そこからは特に問題なく、スムーズにアラガミを掃討する事が出来た。

ブラッドαのジュリウス隊長、ロミオ、ナナと合流して帰投する。

 

フライアに戻ってから、私はシエルに呼び出されて庭園に向かった。

案の定、今回の作戦内容に対しての不満であった。

 

「想定外の事態に陥った場合は立て直しを図る…そう教わってきました。私は…間違っているのでしょうか?」

 

確かに、作戦に忠実であろうとすることは間違いじゃない。

しかし、アラガミがこちらの思うように動いてくれるわけじゃない。

今回のように乱入だってされる場合もある。

 

『…間違いではないよ』

「そうですか…しかし釈然としません…少し考えてみます…」

 

そっとしておこう、そう考えたシアンは庭園から去ることにした。

隊長から任された仕事もなかったので、シアンは久々に時間を持て余した。

今日はライブラリーで本を読もう、とエレベーターのボタンを押す。

途中、エレベーターがある階で止まってギルが乗り込んできた。

 

「あ、副隊長…」

『何階ですか?』

「…いや、そのままでいい」

 

ギルは点灯している階数ランプを一瞥して首を横に振った。

 

『ふーん…ギルさんも本読むんですね』

「当たり前だ。…なぁ副隊長」

『はい』

「悪意はないが戦場に持ち込みたくないんで今のうちに言っておく。今の所、シエルとはやりづらさを感じている…。あいつにはあいつのやり方があるんだろうが、俺にも、俺のやり方がある。…まぁもう少し様子は見てみるが、シエルは作戦を第一に考えすぎじゃないか」

『…実は先ほどシエルと話をしてきたんですが、彼女は彼女で今日の任務について色々考えているようでしたから、いずれは理解してくれると思います』

「その"いずれ"はいつ来るんだ」

『そんなの知りませんよ。彼女次第です。…あの様子では、こちらからもアプローチしてあげないといけませんが』

「やけにシエルの肩を持つんだな、普段のお前ならこういうことは面倒くさがりそうだが」

『必要なので、副隊長としてやるべきことをしてるだけです。あなたとロミオの喧嘩とは訳が違います』

「…そうか」

 

ポーン、と音が鳴って目的の階に着いた事を知らせた。

エレベーターを降りて、シアンは一言呟いた。

 

『…肩を持っているように見えるのなら、そうかもしれませんね』

「?」

 

シエルと普段の関係をどう築くかはナナとロミオが一生懸命考えているから、私が手を出さなくてもどうにかなると思っている。

ただ任務に関する事は私でないとダメらしい。2人共何も思い浮かばなかったか、失敗に終わっているようだった。

 

『ギルさん、もう少しシエルに優しくしてあげてください。そういうのは面倒なので。ケンカの仲裁とか』

「……努力はする」

『あとこれは個人的に思った事ですけど、シエルとの年の差考えてくださいね。ギルさんの方が6つも歳上なんですから、もう少し大人になってください』

「お前のそういう一言余計な所は嫌いだ」

『ありがとうございます』

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

ギルside

 

昼間隊長が言っていた、副隊長に対する見立ては間違っていないらしい。

シエルが隊内で浮いている事を面倒だとか言いながら、しっかり気にかけている。

やはり元々人がいいのだろう。俺がロミオと喧嘩した時も、結局仲裁をかって出ていた。

 

だけど副隊長は、任務や任務に関する事以外でメンバーと深く関わろうとしない。

彼女が極東から来たということ以外、よく知らない。

データベースで検索をかけても詳細がないのはさすがにおかしいだろう。

生年月日も、年齢すらも書かれていなかった。

ただ、極東支部へ入隊したこととフライアへ転属したこと、

そして"P66偏食因子への高い適合率が認められた為ブラッドに選出"

という一文が添えられているのみだった。

そういえば、さっき改めて見たら副隊長になった事が追加されてたな。

 

彼女は何か特別な事情があるのか?

新人なのに副隊長になった事だって、普通に考えたら異例中の異例だ。

だが実力は確かにあるのだ、不正をしてるとも思えない。

彼女の正体がなんなのか探るために、こうして今本を読むふりをしながら横目で見ているが…本を読んでるのを見てるだけで何がわかるというんだ。

むしろこれは変態行為に値しないだろうか…。

 

ふと彼女がこちらに顔を向けたので、俺は慌てて視線を本に落とした。

 

『何ですかさっきからジロジロ見て…集中出来ないんですけど』

「気のせいだろ」

『今慌てて視線戻したくせに』

「だから、気のせいだ」

『…ふうん。ならいいですけど?』

 

副隊長はそう言うと、座る位置を俺の隣から向かい側に変えた。

……やり方を考えた方がよさそうだ。

 

 




データベースにはシアンの事は殆ど書かれてません!
今まで前書きに書いてたやつはこの作品中のデータベースには載ってないです。
一体誰が情報規制してるんでしょうね…?(大方見当つくと思いますが)
次、シエルが血の力にめざめる…といいなぁ。
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