無色の世界   作:Hiramii

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今回は久々にあの人が登場!
そしてついに話数が二桁!こんなに続くと思わなかった!


第十話 シアンの焦燥

シエルが来てしばらく経った。

 

ロビーのモニター前でブラッド全員が集まり今後の訓練内容の見直しなどを話し合っていると、突如館内に通信が入った。

 

〔オープンチャンネルに救援要請!こちら、第三サテライト拠点!北東50キロ地点に感応種と思しきアラガミを発見!至急、救援を求む!〕

 

続いてフランの声が聞こえた。

 

〔フライアより北へおよそ80キロ地点にアラガミの反応を確認、先ほどの通信にあったポイントとほぼ一致。至急、討伐願います〕

 

「感応種…!」

「早く助けに行かないと!みんな、感応種とはまともに戦えないんだろ!?」

 

感応種と聞いて表情を強張らせるナナとロミオ。

ジュリウスはああ、と答えて言った。

 

「俺たちの真価が試される時が来たな。ブラッド、出るぞ!」

「「「了解!!」」」

 

皆速やかに神機を手に移送ヘリに乗り込んだ。

 

(第三サテライト拠点……っ)

 

シアンは内心、焦っていた。

第三サテライト拠点には、自分の仲間がいる。

感応種に襲われたら、いくら手馴れている彼らでも少なからず犠牲は免れないかもしれない。

隊長がサテライト拠点の神機使いと連絡を取り合っているのを聞きながら、現場に着くのを待っていた。

 

「…了解した、そのままサテライト拠点周辺で警戒態勢を続けてくれ。感応種はこちらで対処する。…ああ、任せてくれ」

 

通信を切ったのを見て、シアンは口を開く。

 

『…状況は?』

「住民は全員シェルターに避難させたそうだ。防衛についている神機使いが拠点周辺に展開し警戒態勢にあたっている」

『じゃあ、みんな無事なんですね』

「…ああ、今のところはな」

 

それを聞いてふぅ、と息をついた。

 

「じゃ、あとはオレ達が感応種を倒すだけだな!」

「でもロミオ先輩、もしかしたらすごい強力な感応種かもよ…?」

「大丈夫大丈夫、オレ達が力を合わせれば楽勝だって!」

 

ロミオが緊張感のない様子でそう言った。…軽く考えられるこいつの頭が恨めしい。

 

「もうすぐポイントに到着します!」

 

操縦士の声に、シアンはヘリの窓から外を見た。

隣でナナも同じように外を見る。

 

「あ!もしかして感応種ってアレじゃない!?」

 

鮮やかな水色のアラガミが、荒野に立っている。少しずつだが、サテライト拠点に近づいているようだった。

 

「なぁアレ、サテライト拠点に近づいてないか…?」

 

シアンは神機を担いで、すぐに乗り降り可能なように開け放たれている扉の前に立った。

 

「えっ、ちょっ副隊長何やってんの!?危ないよ!!」

 

ロミオが驚いて声をあげる。

 

『降下ポイントに着くまでの時間が惜しいので先に降ります!』

「え!?」

 

皆が止める間も無くシアンはヘリから飛び降りて直下にあった廃ビルの屋上に降り立った。

真下にヤツが見える。

シアンは銃形態にして銃口をあのアラガミに定めた。

 

『…消えろ!』

 

アラガミに降り注ぐオラクルの雨。

用意しておいたアンプルを全て使い切るまで、銃声は鳴り止まなかった。

 

『……どうだっ!?』

 

土煙の中のアラガミを確認する。

右目にかけられたスカウターは、未だアラガミが死んでいないことを示していた。

銃撃でシアンの存在に気付いたアラガミが咆哮をあげる。

シアンは自分の周囲に現れた紫色の光に驚いた。

 

『…なにこれ?』

〔副隊長、もう戦闘状態なんですか!?気をつけて!アラガミの狙いが副隊長に集中します!〕

『!?』

 

アラガミの周りに新たな小型のアラガミが地面から湧いたように現れる。

身体の色からして、どうやら小型の方はあの感応種の眷属らしい。

 

『ハ、上等…!』

 

シアンは神機を近接形態に戻すと、ビルから飛び降りた。

一方、飛び出した副隊長を見てヘリに残されたロミオ達は焦っていた。

 

「ふ、副隊長、1人で行っちゃったぞ!?しかもあんなビルの上に飛び降りたりして…!」

「どうしよう…!ねぇ隊長!」

「……焦っているな」

 

ジュリウスがふと呟いた。

 

「当たり前だろ!?1人で感応種と戦おうとしてるんだぞ副隊長は!」

「そうじゃない、焦っているのは副隊長だと言ってるんだ」

「どういうことでしょうか」

「…実は、彼女から口止めされていたことがあるんだが…」

 

ジュリウスは静かに話し始めた。

 

「…彼女の、仲間がいるんだ。第三サテライト拠点には」

「仲間?」

「彼女はサテライト拠点出身の神機使いなんだ。だからアイツは焦ってる…一刻も早くアラガミを倒さなければ、と」

 

一瞬、ヘリの中が静まり返った。

ギルバートが口を開く。

 

「つまりアイツは"外"にいたのか?サテライト拠点で保護されるまで…フェンリルからの保護が何もない状態で」

「ああ……それゆえに多くの犠牲も見てきたようだ。フェンリルを憎んでいる。神機使いになれない者たちを全て見捨ててきたフェンリルなど、信用できない…と」

 

降下ポイントに着いた、と操縦士の声が響く。

ジュリウスは扉の前に立ち、皆に言った。

 

「それでもあいつは戦うことを選んだ。なら、助けて支えてやるのが仲間だと、俺は思う。例え信用されていなかったてしてもな…協力してくれるか。俺はシアンを助けたい」

「よっしゃ、みなぎってきたぁ!」

 

ロミオが勢いよく立ち上がった。

 

「そうとわかれば助けない理由なんかないよな!オレは行くぜ、ジュリウス!」

「私も行くよ!隊長!」

「ええ。サテライト拠点を襲わせはしません」

 

ナナとシエルがロミオに応えるように言った。

 

「…仕方ねえな。付き合ってやるよ」

 

スピアを担ぎながらギルバートが言った。

ジュリウスはそれを見て微笑む。

 

「よし、いくぞお前ら」

 

ジュリウスを先頭に、次々とヘリから飛び出した。

 

 

 

その頃、先に戦闘に入っていたシアンは苦戦を強いられていた。

それも当然だろう、多勢に無勢とはこの事だった。

感応種…イェン・ツィーを狙おうにも、小型のチョウワンの群れの攻撃に邪魔をされて防戦一方だった。

 

『くそ、鬱陶しい…!』

 

ブラッドアーツを発動してチョウワンを一掃するが、またすぐに湧いてくる。

こうなったらイェン・ツィーだけを狙うのみ、とチョウワンの攻撃を巧みに避けてイェン・ツィーに接近する。

 

『おらぁ!』

 

同じシユウ種なら頭が弱点だろうとしつこく狙う。

しかし流石は感応種というべきか、通常種と違い弱点を守る術を覚えているようで防がれる。

自分のスタミナが削られるばかりで、シアンは早くも息切れを起こしていた。

 

『ハァ…ハァ…ハァ……』

〔!副隊長、上です!避けて!!〕

『!?』

 

上を見ると、イェン・ツィーがまさにこちらに飛びかかろうとしていた。

 

 

 

"死ぬな。死にそうになったら逃げろ"

 

 

『あ……』

 

ふいにあの人の言葉を思いだした。

焦っていて、普段出来ていることが全く出来ていなかったうえ、いつも任務前に心の中で呟いていたあの言葉がすっかり頭から消えていた。

 

(ああ、死んだなぁ…これ)

 

目の前の光景がスローモーションで見える。

 

(ごめんリンドウさん、肝心な時に大事なこと、忘れてた…)

『…っ、はは。ダメだなぁ私…』

 

諦めて膝をついた、その時。

 

 

「シアン!!!」

 

目の前を誰かが通り過ぎ、そこまで来ていたはずのイェン・ツィーが視界から消えるまで、一瞬だった。

 

通り過ぎていった方向を見ると、そこに倒れ伏すイェン・ツィーと、神機を構えるジュリウスがいた。

 

『ジュリウス、隊長…』

 

ジュリウスはシアンに駆け寄るとがばっ、と抱きしめた。

 

「バカな奴だ…もう少しで死んでしまうかと思ったぞ」

 

ジュリウスは体を離す。

 

「怪我はないな。まだ、戦えるか」

『あ、ハイ…』

「ジュリウス〜!副隊長〜!無事かぁ〜!?」

 

ロミオの声がして、その方を見ると、皆がこちらにむかって走ってきていた。

ここまでたどり着くと、ロミオとナナがぜえはあと息を切らした。

 

「ジュリウスお前…足速っ…!!追いつくの大変なんだぞ…!」

「ち、ちょっとだけ休憩〜…」

「お前ら体力ねえなぁ」

「ギルはゴリラだからだろ…!オレは、お前とは違うの!」

「シエルちゃんも、そんなに疲れてないんだね…」

「…ええ、訓練で鍛えてますので」

『………』

 

ロミオが呼吸を整えると、呆然とするシアンに向かって言った。

 

「シアン、何で最初に言ってくれなかったんだよ!水臭いじゃねえか、オレ達仲間だろ!?」

『何を?』

「ジュリウス隊長から、ぜ〜んぶ聞いたんだからね!」

 

ナナのその言葉で察したシアンはジュリウスを見やる。

 

「お前がここまで暴走しては、黙っているのも無理があるだろう?」

 

ジュリウスは笑ってそう言うと、シアンに手を差し伸べた。

 

「さぁ、立つんだ。みんなで守ろう」

『…はい……あの、勝手な行動してすみませんでした…』

「いいさ。お前の気持ちを考えれば、な」

 

その時、ジュリウスにぶっ飛ばされていたイェン・ツィーが瓦礫の中から出てきた。

そしてチョウワンを召喚する。その数は先ほどの倍だった。

 

『召喚数を増やした…!!』

「どうやら俺の一撃で相当頭にきたらしいな」

『面倒を増やさないでください、隊長』

「やり甲斐がでたろう?」

『そんなことを言ってる場合じゃ…』

「安心しろ、今度は皆がいる」

『……そうですね』

 

そこからのジュリウスとシアンの連携は、今までにないほどの完成度を見せた。

他の皆にチョウワンを任せて、2人はイェン・ツィーを倒すことに集中した。

 

「挟撃するぞ」

『了解!』

 

二手に分かれてイェン・ツィーに接近、ジュリウスが先手を打って斬りかかるも避けられる。

避けた際の隙を狙いシアンが翼手を斬りつけた。

同時にその翼手にヒビがはいる。

 

〔アラガミに結合崩壊発生!バイタルは未だ安定しています〕

『よし!』

 

結合崩壊を起こした翼手を気にするそぶりを見せるイェン・ツィー。

狙いをシアンに向け、再びチョウワンを召喚した。

その端からギルやロミオ達がそれを次々と倒していく。

 

シアンは頭の中で同じ言葉を反芻していた。

 

(死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そして隠れろ、隙があったらぶっ殺せ。それから…)

 

『生きることから、逃げるな…』

 

先程から何度も召喚されるチョウワンを難なく倒してはいるが、少しずつスタミナが削られているのが見てとれた。

一気に勝負をつけなくては。イェン・ツィーを倒せば召喚されたチョウワンも消えるはずだ。

 

(けど、どうすれば…)

 

その時、大きな咆哮がきこえた。

聞こえた方を見やれば、ヴァジュラが数体こちらに向かって来ていた。

 

「な…!?」

「こんなにたくさん相手なんて出来ないよ!!」

 

絶望的な状況。

 

にも関わらず、シアンはむしろ笑みをこぼす。

身体の中から熱いものがこみ上げる感覚がしていた。

 

『…何ヶ月ぶりかなぁこの感覚……』

 

神機使いになると決めるキッカケとなったあの日。

あの時の、「自分がやらなくては」という感覚とよく似ていた。

 

シアンはブラッドアーツの発動態勢に入る。

目を閉じ身体中に力を込め、より強い力を、と念じた。

 

「一旦退がるぞ、シアン!…おい、聞いているのか!?」

 

叫ぶジュリウスの声を無視して、神機を構える。

 

『…結構です。これが私の役目ですから』

「シアン!?」

『ここで退いたら、私が神機使いになった意味がない……!はぁぁぁっ!!』

 

目を見開き、迫り来るヴァジュラの群れに向かって駆ける。

シアンの身体はブラッドアーツの効果か、いつものバースト状態より強く輝く光で包まれていた。

そして驚異的なスピードで、驚異的な威力をもって一体残らず一撃で沈めていく。

そして、最後に残ったイェン・ツィーも瞬く間に倒された。

 

〔…出現したアラガミの全反応が消失…ほかにアラガミの反応はみられません…〕

 

フランの通信を呆然とした表情で聞くジュリウス達。

痛恨の一撃を与えたシアンは、その光が霧散すると同時にその場に倒れこんだ。

それを見て我に返ったジュリウス達が慌てて駆けつける。

 

「おい、シアン、しっかりしろ!」

『…すいません、ちょっと力使いすぎたみたいです……頭に響くんであんまり大声出さないでください、隊長』

 

疲労の色を見せている以外は無事らしいシアンの様子に、一行は胸をなでおろした。

心配が必要なくなったからか、ナナが興奮気味に話しだした。

 

「もう、びっくりしたぁ〜。でもさっきのすごかったなぁ、シアンが光に包まれて、アラガミを次々にズバババーンって!」

「あれ、どうやったんだ?それもブラッドアーツの効果なのか?」

『…さぁ…どうやったんだろう。夢中だったから覚えてないや』

 

騒ぐナナとロミオの声に、『うるさいなぁ…』と両手で耳を塞ぐシアン。

しかしその表情は柔らかかった。

 

そこへ近づく人影。

それに気付いたシアンは身を起こした。

 

『…誰か来る』

「あの、大型種が現れたって聞いて救援に来たのですが…」

「ああ、それならもう大丈夫!みーんな片付けちまったからさ!」

 

自分がやったわけではないのに、ロミオが得意げに言った。

 

「え、もうですか!?それに、あなた方は一体…」

「フェンリル極致化技術開発局、ブラッド隊隊長、ジュリウス・ヴィスコンティです。オープンチャンネルに救援要請が入ったため参りました」

『…?』

 

聞き覚えのある声。

しかし、前に進み出たジュリウスの陰になって、相手の顔がよくみえない。

 

「フェンリル極東支部独立支援部隊クレイドルのアリサ・イリーニチナ・アミエーラです。救援要請へのご対応ありがとうございます」

『え、アリサさん!?』

「その声…シアンさん?」

 

シアンは慌てて立ち上がって声の主の顔を確認する。

確かにアリサさんだった。

 

「やっぱりシアンさんだ!そっか、本部の方に呼ばれたんでしたよね。フライアに居たんですか」

『え、ええまぁ…』

「シアン、この人と知り合いなの?」

 

ナナの問いに頷くシアン。

 

『…私と仲間達をサテライト拠点で保護してくれたのは、アリサさんなんだ』

 

アラガミに拠点を襲われて、あてもなく逃げ出したあの日。

皆を逃がすために自分の命を諦めようとして、リンドウさんに救われた。

反発する私の仲間達を助けたいと、アリサさんは必死に説得していた。

あの運命の日から、数ヶ月経った。

短い間に色んなことがあった。でも、あの日のことだけは昨日のことのように思い出せる。

 

「そうだったんだ…」

「…あ、そうだ」

 

不意にアリサが何かを思い出して言った。

 

「エイダさんから聞きましたよ、シアンさん、このところ一切連絡とってないらしいじゃないですか。いくらメールを送っても全然返信がこないって、心配してましたよ!?」

『う…それは、その…』

「この際ですから、サテライト拠点に寄って、顔見せに行ってあげてください。立派な神機使いになったシアンさんの姿、見てもらいましょう」

『ぅええ!?いや、でも』

「いいですよね、隊長さん。シアンさんをお借りしても」

「ええ、構いません」

『ちょ、隊長!!』

「ものはついでだ、全員で行こう。住民達の安否確認もしたい」

 

な、副隊長?と言うジュリウスの笑みには、嫌とは言わせない、そんな雰囲気が漂っていた。

 

 




すみません、前回あんなこと言ったのにシエルはまだ血の力に目覚めないようです…。
あと数話かなぁ、と思うんですが。

今回、戦闘シーンを入れたかったので書くのにすごく時間がかかりました。
元々戦闘シーンは書くのが苦手で…状況とか、うまく伝わっていればいいんですが。
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