くう…
シエルは悩んでいる。
自身が所属する特殊部隊ブラッドの隊員たちとの軋轢である。
作戦も規律もない、雑な部隊に、シエルは頭を悩ませていた。
これをどうにかして、規律ある部隊にしなければならない。
シエルは早速、抱えている悩みと疑問を、副隊長に打ち明けた。
「今現在は規律のない連携でも機能はしていますが、今後さらに強力なアラガミと対峙する事を考えると、今のままでいいとは思いません」
任務後のロビー。
淡々と告げるシエルに、副隊長は困った様に頬を掻く。
「うーん……シエルはさ、もう少し柔らかく考えてみない?」
「柔らかく考える、とは?」
「えーと…例えばさ、シエルが戦闘中に、同行中の他のメンバーが別の地点で想定外のアラガミに接触してピンチになったら、どうする?」
「…可能な状況であれば、救助に向かいます」
「うんうん、そうだよね。じゃあ、大型種の討伐中に小型種が乱入してきて、仲間のすぐ背後に居たら?」
「小型種を先に排除するべきです」
「"大型種を最優先に討伐しろ”って作戦でも?」
「?はい。当然だと思うのですが…一体何のつもりでそんな話を」
「…任務は一人でやるもの?」
「…任務の内容によりますが、複数人で行くのが最も望ましいです」
なぜ副隊長はそんな問いかけをしてくるのだろうか。
今の問答に、大事なことが含まれているのか?
疑問符を浮かべたままのシエルに、副隊長は言った。
「うーん、そういうことじゃないんだよなぁ…」
副隊長は困った顔で笑った。
「どう言えば伝わるかな…」と肩を落としている。
「え?」
「…大事なものはもっと他にあるんだよ、シエル」
副隊長はシエルの頭をぽんぽん、と撫でた。
「大事な、もの…?」
シエルはその言葉の意味を考える。
「…状況に応じて臨機応変に対応するべきというギルの言うことは、理解しています。ですが、いかなる不測の事態にも対処できるように上意下達を遵守するべきだと…。私の考えは間違っているのでしょうか」
「その姿勢は間違いじゃない。その考え方も大事だと思う」
「…それだけでは足りない、ということですか?」
「神機使いは戦いの道具なの?」
「っ、そんなことは思ってません!私はただ……!」
シエルは言いかけた言葉を止めた。
道具でなければ、何か。
「…仲間…」
副隊長は黙って見ている。
「……仲間の事を考え…戦況に応じて協力して戦うことが大事だと…そういうことですか?」
「うーん…ちょっと足りない気もするけど…。まぁ、及第点って事で」
「…わかりました。仲間と協力して戦うこと…経験はありませんが…修正し、努力してみようと思います」
―――――――――
シアンside
シエルがひとまず一つの結論を出した。
それと同時に、私は安堵した。
シエルが自分自身を、ひいては神機使いを「チェスの駒」のように考えていたらどうしようかと思っていたのだ。
そうなると、話はもっと難航していただろう。最悪、匙を投げたかもしれない。
しかし、シエルの出した結論には何かが欠けている。
でも、それをうまく伝えられるだけの話術が私にはなかった。
それに、私にもわからないのだ。
こんなにバラバラなメンバーが、何故今まで無事に任務を遂行出来ているのか。
「今のブラッド隊員達の連携には規律がないのに、機能はしている」とシエルに言われて気付いた。
気持ちがバラバラなメンバー同士では、普通、任務で何かしらトラブルを起こしたり、連携がうまくいかなかったりするものなのに。
ギルとシエルは現在進行形で仲が悪いし、
ギルはロミオともよく喧嘩するし、
比較的皆と仲良くしてるナナはマイペースだし。
(ほんとに、なんでなんだろ?)
今まで全く気にしていなかった。
シエルと一緒に考えれば、見えてくるだろうか。
聞こえて来たロミオとギルの声に、私はため息をつきながらその方へ歩き出した。
ーーーーーーーーーー
数日後、シエルはシアンを庭園に呼び出した。
「お忙しいところ、お呼びたてしてすみません。どうしても伝えたいことがあるんです」
「どうしたの?」
「ブラッドは皆、正直私が考えていた以上の、高い汎用性と戦闘能力を兼ね備えています。さらに驚いたのは、決して戦術理解度が高いわけでも、規律正しく連携しているわけでもない点です」
「…?」
いまいち、シエルの言いたいことが見えてこないシアン。
「私の理解度をはるかに超えて、ブラッドというチームは高度に有機的に機能している。それはおそらく…」
シエルは一度言葉を切り、シアンを真っ直ぐ見た。
「副隊長…きっと、貴方がみんなを繋いでいるからなんです」
「私が…?」
シエルは静かに頷いた。
「この数日、私は方針を修正し、仲間のことを考えるよう意識してきました。そうしたら、皆が何を考えているのかがよく分かりました…皆が、貴方の周りにいたんです。貴方が皆を思いやるように、皆もまた、貴方を思いやって…。
私は戸惑っています…今まで蓄積してきたものを全て否定されている気分です」
「えっ、いや、そういうつもりは…」
「あ、誤解しないでください!嫌な気持ちではないんです。それどころか、なんというか…」
シエルはええと…と言葉を探しているようだった。
少しして、シエルはシアンに改めて向き直った。
「折り入って、お願いがあります。私と、友達になってください!」
まるで告白でもするかのように勢いよく頭を下げたシエルに、シアンは驚いて目を見開いた。
(このタイミングでそれ言うか…!?)
「…あの、どうでしょう?」
こちらの様子を伺うように、頭を下げたまま顔を少しこちらに向けるシエル。
「えーっと…」
「すみません…そうですよね…。昔から訓練ばかりで、あまりこういうことには慣れていなくて…」
戸惑うシアンの声に、シエルは申し訳なさそうに言った。
シアンは自分まで申し訳なくなった。
「あー、うん、よし。友達になろう」
「…いいんですか?」
「もちろん」
シアンがそう返すと、シエルの表情がぱぁぁっと明るくなった。
「ありがとうございます…憧れていたんです…。仲間とか…信頼とか…命令じゃない、皆を思いやる関係性に…」
シエルは何か思い出したようで、あ…と付け足した。
「もう一つ、不躾なお願いがあるんですけど…」
「なに?」
「…貴方を呼ぶとき、"シアン"、って呼んでいいですか?」
「なんだそんな事か、全然OKだよ。ナナもロミオも、私のこと"副隊長"なんて呼ばないしね」
「ありがとうございます…シアンが…私にとって初めての…友達です…。少しだけ、皆と仲良くなる自信がついた気がします…」
「力になれたようで嬉しいよ」
「あの、それでですね…」
10分後、いつもの訓練のためブラッドは訓練室にいた。
突然頭を下げたシエルに、シアン以外の面々は驚く。
「私、ずっと教わったことばかりにこだわって、気を取られて…私の意見を押し付けてしまって、本当にすみませんでした!」
少し呆然としていた一同だったが、我に返ったナナがシエルをフォローした。
「そんなに謝らなくても私たちは気にしてないよ〜。ねえ、ロミオ先輩?」
「そうだよ、シエルが真面目に考えてくれてたのは、ちゃ〜んと分かってるからさ!なぁギル!」
「……」
ギルは無言のまま、目を伏せて視線を床に落とした。
ロミオが慌てたように耳打ちする。
「おい、何か言えよ!そうだなって言うだけでもいいからさ!」
「……ああ」
ようやく答えたギルに、ロミオは安堵の息を漏らす。
ギルはシアンを見る。その視線に気づいたシアンは、笑って肩をすくめてみせた。
「ほらシエル、そろそろ頭上げなよ。皆大丈夫って言ってくれたんだからさ」
「…はい」
よしよし、とシエルの頭を撫でるシアン。
まるで姉妹だ、とギルはぼんやり思った。
(あれをよく手懐けたな、あいつ…。急に謝るなんて、何があったんだ?)
何かとシエルの頭を撫でるシアンを横目で眺めつつ、ギルは訓練を淡々とこなした。
訓練後、ギルがいつものように庭園を訪れると、手前の東屋ではなく奥の方に見える木の根元に、彼女はいた。
ギルは黙ってその隣に座り込んだ。
「やぁ、ギル」
「何かあったのか?シエルが急に謝るなんて…」
「何もなかったら謝らないと思います」
視線を本に向けたまま、シアンはギルの疑問に即答した。
少しだけトゲがあるように感じたのは気のせいではないだろう。
何せギル自身はシエルの件に関してはほとんど何もしてないのだ。
「…悪かった、俺が大人気なかったよ」
「別に気にしてませんよ。貴方が何もしてなくても、現にどうにかなりましたから」
シアンは一瞬だけギルに目をやると、再び本に視線を戻して言った。
「…今更そんなこと言いにくるなんて。貴方のせいで隊長に叱られたんですから」
「悪かったって…メシ奢るから、それで勘弁してくれ」
「…私わりと高級嗜好ですよ?」
「分かった分かった」
やれやれ、と肩をすくめるギル。
「そういえば、シエルと友達になりました」
「は?」
「シエルと友達になったんですよ、私が」
「…だからどうした」
「もう、もっと他に反応ないんですか?」
「どう返せって言うんだよ…」
「…分かりました、この手の話は貴方には期待しないことにします」
シエルとギルは無事和解出来たようです。
そしてシアンとギルも仲直りしました。
連携が云々とか、規律が云々とか、私にはさっぱりなのでその辺は各自想像で補完していただくか、スルーしてくださいスミマセンm(__)m
完全に自己満足で書いてるやつなので、どうしても粗が…。