無色の世界   作:Hiramii

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先に謝っておきます。

今回、いつもの2倍、長いです。
2倍です。
普段4000字前後なんですが、今回7500字超えです。
四捨五入したら8000字です。
長いのが苦手な方には申し訳ありません。

もう一度言います、今回はいつもの2倍長いので、それをわかった上で読んでいただければ幸いです。
申し訳ありませんでした。m(__)m
(あとがきにて本文中の補足してます)


第十五話 だいじなもの

ブラッド隊は、ラケル博士に言われて共に局長室にいた。

レア博士も一緒だったが、肝心の局長はいない。

 

ロミオが欠伸をした。

 

「いつまで待たせるんだよ…」

「まぁまぁ、気長に待とうよロミオ先輩」

 

ナナがロミオをなだめる。

そのすぐ後に、局長室の外から野太い怒声が近づいてくるのが聞こえた。

勢いよく扉を開け放って入ってきたのは、フライアを統括するグレム局長その人だった。

その後ろから、いかにも不健康そうな顔をしたやせ細った男性が弱々しくついてくる。

利ザヤがどうとか、競合など潰せとか、言葉から察するに金儲けの話をしているらしかった。

 

局長はブラッドとラケル、レア博士に気付くと、局長は1つ咳払いをしてラケル博士に顔を向けた。

ラケル博士は軽くお辞儀と挨拶を済ませる。

 

「ご足労いただき、感謝いたします」

「とっとと話を聞かせろ。なぜこのフライアをアラガミ討伐の最前線である極東へ向かわせるのだ?」

 

局長の言葉を聞いて、シアン達は顔を見合わせた。

そんな話は初耳だった。

 

「極東支部において、神機兵とブラッドの運用実績が欲しいのです」

「そんなもの、この辺りのアラガミで十分だろう。何もわざわざ、アラガミの動物園のような前線に行く必要はない」

 

アラガミの動物園、なるほど的を射ている…シアンはぼんやりそう思った。

難色を示す局長に、ラケル博士は説明を続ける。

 

「神機兵の安定した運用を目指すなら、もっと様々なアラガミのデータがないと、本部も認めてくれません」

「しかしだな…」

「極東支部には葦原ユノ様がいらっしゃいます。本部に対して強い発言力のある彼女への助力なら、決して無駄な投資にはならないかと…」

 

レア博士の言葉に、同意を示した局長は少し考えるそぶりを見せ、ラケル博士に問うた。

 

「ラケル博士。神機兵とブラッド、どちらにも本当に損害を出さずに済むんだろうな」

「ええ、信頼を裏切ることはありませんわ…」

「…わかった、後で稟議書を提出しておいてくれ。レア君だけ残りたまえ、あとは下がっていいぞ」

「…では、失礼します」

 

ラケル博士に続き、ブラッドも局長室を出ようとした。

その時、局長がああそうだ、とブラッドを呼び止める。

 

「ブラッドの副隊長はどいつだ?」

「…私ですが」

 

シアンが一歩進みでて敬礼する。

 

「ああ、お前か…サテライト拠点出身とかいう。伝えるのが遅れたが副隊長就任にあたり、お前の階級を上等兵から曹長に格上げする。…まぁ、与えられた階級に恥じぬ行いをすることだ」

「…は。ありがとうございます」

 

シアンが敬礼すると、さっさと出ていけと追い払うような仕草をされた。

お辞儀をして局長室をでると、ロミオがすげえ!と騒いだ。

 

「大出世じゃんシアン!」

「…本部の思惑が透けて見えるな」

 

反してギルバートは冷めた反応だ。

 

「おいギル、なんでお前はそういうこと言うかなぁ」

「…私もそんな気はしたんだよね…」

「えっ?」

 

ギルバートに同意するシアンに、ロミオとナナが驚く。

 

「副隊長に就任しただけで大げさだよ…ミッションリーダーは軍曹からなれるもの。そうですよね、ギルさん」

「ああ…副隊長として何か権限を与えられるのなら軍曹で十分事足りる」

「…せっかくの昇進を素直に喜ばないのは相変わらずだな、シアン」

 

そう言うジュリウスに、シアンは首を横に振る。

 

「もちろん嬉しいですよ。思ったより期待してくれているようですし。いずれフェンリルとサテライト拠点の住民達との間に立つ事になりそうですし、そうなればそれなりの地位が無いと、本部も私の話なんて聞いてくれないでしょうし」

 

サテライト拠点の住民が、フェンリルに良いイメージを持っていない、むしろ反抗的である事はフェンリル本部も承知済み。

そのサテライト拠点からクレイドルを通じて神機使いになった者がいると聞けば、利用しない手はないはずだ。

シアンを利用してサテライト拠点との関わりを強め、いずれはクレイドルに横槍を入れるつもりなのだろう。

そして、建前上では独立支援部隊を名乗るクレイドルを設立した、極東支部にも…。

噂では本部は極東支部に目をつけていると聞いた。

シアン自身も、フライアに来てから既に本部の他の神機使い達の好奇の目に晒されている。

 

「もし、隊長が本部に同調するのなら…相応の対応をさせていただきますよ」

「そんなつもりはない。…少し肩の力を抜けと言ったんだ。俺たちと一緒にいる時くらいは、楽にしろ」

「そうそう!お前って気付くといっつも眉間に皺が寄ってるもん。もっと気楽にいこうぜー」

「……そう、ですね。努力します」

 

ジュリウスとロミオに言われて、シアンは苦笑した。

 

それから数日後、ジュリウスとシアンそしてシエルの3人は改めて局長室にいた。

そこには局長と、先日も会ったあの不健康そうな男がいた。

名は九条ソウヘイという。

 

話をまとめると、神機兵の運用テストをしたいので、その護衛をしてほしいということだった。

 

「できるだけ一対一の状況で戦わせ、データを取りたいのです」

「…つまり、露払いをしろ、と」

 

ジュリウスがそう言うと、局長は頷いた。

 

「あくまで今回の主役は神機兵だ。それを忘れるなよ」

「…承知しました」

「よし、あとは現場で話を詰めてくれ。クジョウ君、あとは任せる」

「は、はい。…えー、ではジュリウスさん、また後ほど詳しく…」

 

局長室から戻ったシアン達は、ブラッド区画の共有リビングで他のメンバーにこの事を伝えた。

 

「えぇ?何それ。神機兵は人を守るために作ってるんだろ?」

「人間が人形のお守りか…」

「なーんか、フクザツー」

「まぁみんな言いたいことはあるだろうけど…成功さえすればいいんだし」

「だが、何でこのタイミングで…極東に向かい始めてもう数日経ってる。もし任務中に赤い雨に遭遇でもしたら…」

 

ギルバートの言う事は最もだ。

それにジュリウスが答える。

 

「聞こえた話では、神機兵の開発プロジェクトそのものが縮小されるかもしれないとグレム局長は言っていたな。何かしら成果を上げなければ、と焦っているのだろう。…なに、流石にグレム局長も赤い雨の中戦えと言うほど鬼じゃないはずだ」

「だといいがな。どうにもあの男は気に入らねえ…」

「そういえば、神機兵の開発ってレア博士がやってるんじゃなかったんですか?なぜクジョウ博士が…」

 

シアンは疑問を口にした。

神機兵開発は、レア博士が亡き父親から引き継いだものだとデータベースにあったはず。

 

「…ああ、レア博士が開発しているのは、パイロットが必要な有人神機兵だ。対してクジョウ博士は、パイロットの要らない無人神機兵の開発をしている。今回護衛するのはその無人神機兵だ」

「へえ…でも何でそんな回りくどい事を?無人の方が明らかに安全そうなのに…」

「そこは色々と事情があるのだろう。…2人の関係も良くないと聞いている」

「オトナの事情ってやつですか…めんどくさ。まぁ私たちには関係ない話か…」

 

その時、館内アラームが鳴り響き放送が流れた。

 

〔これより赤乱雲発生地域である極東地域に入ります。今後、赤い雨が降る可能性があります。それに伴い、赤い雨が降っている間の外出を禁止し、窓の開閉などに注意してください。繰り返します…〕

「はーい…良い子は雨の日、外に出ちゃいけないもんね〜」

「"赤乱雲"ね…希望の団(ホープ・ホーム)にいた頃は"悪魔の雲"、"呪いの雨"とか呼んでたっけ」

 

シアンの話に、ロミオが笑う。

 

「何だそれ。変なの」

「当時は黒蛛病とか赤乱雲なんて呼び方知らないからね。赤い雨が降るようになって、その雨に当たった人が次々倒れるのを見て、すごくみんな怯えてたよ。治し方もわからないし、看病していた人まで発病したりして…」

 

赤い雨にあたる事で起こる病、黒蛛病。

発病すると身体に蜘蛛のような黒い文様が現れ徐々に体力を奪われて、その致死率は100%…。

患部に触れる事で接触感染を起こすため、設備が不十分な環境では最悪の場合バイオハザードも免れない。

 

「それで幼い子供だけは守らなきゃと思って、どうしたら言いつけを守るか考えた末に思いついたのが、悪魔とか呪いってつける事だったの」

「え〜?それで言う事聞いたの?」

「勿論、効果バツグンだったよ」

「意外と子供はそれだけで怖がるモンだぜ。お前だってそうだったんじゃないのか、ロミオ?」

 

ギルバートがロミオをからかう。

 

「そ、そんなわけねーだろ!このロミオ様に怖いものなんかねーっての!」

「…わっ!」

「うわーーっ!!…って何すんだよナナ!ビビったじゃねーか!」

「あれ?怖いものなんかないんじゃなかったの、ロミオ先輩?」

「うっ…。お、おいギルのせいだぞ!このゴリラ!」

「俺は何もしてねえ。お前が余計な見栄を張ったからだ」

「じゃあシアンだ!お前が話題にするから」

「私は話題にしただけで、からかったのはギルさんだよ」

「何だよ、俺が悪いってのかシアン?」

 

ギルバートがシアンに突っかかり、シエルが間に入った。

 

「言いがかりはやめてください、ギル。副隊長はそんなこと言ってません…ナナさん、ずっと笑ってないで何か言ったらどうですか」

「あははは。だってー、こんなにわかりやすく驚くと思わなくって」

「くっそー…、ギルだけでなくナナにまでからかわれるなんて屈辱だ…!」

「まったくお前らときたら…ロミオ、そんなに落ち込むな」

「うう…ジュリウス…!やっぱり俺にはお前だけだ〜!」

 

しばらくナナの笑い声と、ロミオとギルの小競り合いが続いた。

 

 

 

神機兵の試験運用は、2日後だ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

2日後、シアン達は神機兵が試験運用される現場の旧ダム施設付近にいた。

神機兵とアラガミを1対1で戦わせるために、ある程度アラガミを片付けておかなければならない。

神機兵が稼働可能になったのは、アラガミを片付け始めてから2時間後だった。

 

「つっかれたぁ…試験運用だからってビビりすぎじゃない?ここまでやらなくても…」

「副隊長、神機兵が二体到着致しました」

「了解シエル。…ではこれより作戦通り行動してください。神機兵がちゃんと戦えるよう、常に周囲に気を配ることを忘れずに」

「了解」

 

神機兵γはシアンとロミオ、ナナ。

神機兵βはギルとシエルが守る。

ジュリウスはバックアップに回るため、先にフライアへ帰還した。

 

〔神機兵β、指定ポイントに到着した。神機兵γ、そっちはどうだ?〕

「こちらも指定ポイントに到着。定刻通り開始してください」

〔了解〕

 

アラガミをおびき寄せるトラップを設置し、神機兵から離れて待機する。

万が一、二体以上のアラガミに合流された時はブラッドがアラガミを撃退し、神機兵の戦闘環境を整えることになっている。

 

待機中、ロミオがぼやく。

 

「ていうかさぁ、トラップなんか使って大丈夫なわけ?たくさんアラガミを呼び寄せちゃうんじゃ…」

〔その点に関してはほぼ心配ありません。効果はそれほど高くないですから〕

 

答えたのはクジョウ博士だ。

 

〔計画通りに事が進めば、ブラッドの皆さんの出番も無いですから、安心してください。手間はかけさせま…〕

〔警告!神機兵γに二体のアラガミが接近!〕

 

フランの声がクジョウ博士の声を遮った。

 

〔なんですと!?〕

〔速やかにアラガミを撃退し、神機兵を護衛してください〕

「…了解」

「なぁにが心配ないだよ、まったく…」

「ロミオ先輩、行くよ!」

「一体は神機兵に任せよう!もう一体はこっちで叩く!」

 

現れたのは中型二体だったため、難なく撃退に成功した。

神機兵の方もアラガミを倒せたようで、損害も見られなかった。

 

「おおすっげぇ…!マジでアラガミ倒しちゃったよ、アレ」

 

ロミオが感嘆の息を漏らした。

その目はさながら、ロボットに憧れる少年のようにキラキラしている。

 

「…あんなのの何がいいのかなぁ、ロミオ先輩…」

「…さぁね…」

 

それからしばらくはγもβも問題なくアラガミを倒せていて、順調に試験運用は進んでいた。

 

〔神機兵γに、再びアラガミが二体接近!二体とも大型種と思われます!〕

「大型か、3人じゃキツイな…」

〔副隊長、俺がそっちに合流しようか〕

「ギル?でも…」

〔こちらは先ほどシユウを倒したばかりですから、アラガミが再び現れるまで時間があります。私1人で大丈夫です〕

 

シエルの進言に少し迷うシアン。

 

「……わかった。ギル、少しこっちを手伝ってください」

〔了解。すぐそっちに行く〕

 

ギルに合流してもらって、何とか一体倒し、少し苦戦気味だった神機兵のサポートをしてもう一体も漸く倒すことが出来た。

おかげで神機兵にはアラガミにつけられた傷跡が目立っている。

その間に神機兵βの方にもアラガミが現れたらしく、通信で聞こえるシエルの音声の後ろで戦闘音がした。

 

充分なデータを取れた、とクジョウ博士の判断で、神機兵βの戦闘が終了次第引き上げらことになったが…。

 

〔神機兵β、背部に大きな損傷!フライア、判断願います!〕

 

どうやら神機兵が手痛い一撃を食らってしまったらしい。

クジョウ博士が困惑する中フランが神機兵βを停止させ、引き続き護衛するよう指示をする。

そこに、フライアへ帰還したジュリウスが待ったをかけた。

 

〔帰還中に赤い雲を見かけた、あれはおそらく…〕

〔…まさか、赤乱雲…〕

 

一連の会話を聞いていたブラッド一同は、空を見上げた。

ギルバートが通信機に手を当てる。

 

「…こちらギル、ここからも赤い雲を確認した」

「噂には聞いてたけど…すっげえ…」

〔総員即時撤退だ!一刻を争うぞ!〕

 

珍しくジュリウスが焦って声を荒げる。

しかしシエルだけはそうはいかなそうだった。

 

〔すでに赤い雨が降り始めました。ここからの移動は困難です〕

「!?シエル、今どうしてるの!?」

〔停止した神機兵の陰で何とか凌いでいる状況です、副隊長〕

「そんな程度じゃ赤い雨は……!」

 

動揺するシアン。

ジュリウスの指示が飛んだ。

 

〔全員防護服を着用、及び携行し、シエルの救援に向かってくれ!戦闘中に防護服が破損する可能性が高い、なるべく交戦を避けるよう心掛けろ〕

〔待て、勝手な命令を出すな!〕

 

 

フライアのカウンターにいたジュリウスが振り返ると、そこには…

 

「グレム局長…!?」

「おい、神機兵がアラガミに傷つけられないように守り続けろ」

「バカな…!赤い雨の中では戦いようがない!」

「儂がここの最高責任者だ、いいから神機兵を守れ!」

 

ジュリウスはカウンターをダンッ、と叩いて反論する。

 

「人命軽視も甚だしい!!赤い雨の恐ろしさは、あなたも知っているはずだ!!!」

〔…隊長〕

「!どうした、シエル!?」

〔隊長の命令には従えません…不充分な装備での救援活動は、高確率で二次被害を招きます。よって上官であるグレム局長の命令を優先し、各自待機すべきと考えます。…更新された任務を、遂行します〕

「待てシエル!…シエル!?」

「…無線が切られています…」

 

フランの言葉に歯をくいしばるジュリウス。

グレムは満足そうに鼻を鳴らす。

 

「フン、よく躾けてあるじゃないか。結構結構」

 

 

一連の会話を聞いていたシアン、ギルバート、ロミオ、ナナ。

ギルバートは地面を足で蹴った。

 

「クソッ、嫌な予感が当たっちまった…!こんな命令聞けるかよ…!」

「お、俺たちどうしたらいいんだ!?」

「と、とりあえず防護服着よう?みんな病気になっちゃうよ!」

 

ねえシアン?とナナがシアンを振り返る。

シアンは何故か神機兵を見上げて突っ立っていた。

 

「何ボーッとしてんだよ、副隊長。俺はあんな命令は聞けねぇ。お前に従うぜ、副隊長!」

「何とか言えよシアン!」

「どうしちゃったの…?」

 

シアンは一つ深呼吸をすると、3人を振り返った。

 

「…私の命令に従うって言いました?」

「ああ」

「…分かりました。3人とも、すぐに撤退してください。回収班が待機してるはずだから、彼らと一緒に。周囲にアラガミの反応が見られるようなので、速やかに撃破すること。…私は隊長の命令に従い、シエルの救援に向かいます」

 

それを聞いた3人は驚きの声を上げる。

最初に引き止めたのはギルバートだった。

 

「おい待て、どうやって助けに行く気だ!?防護服は頼りにならねえぞ!」

「神機兵には、赤い雨に耐えられるような塗装が施してあるらしいです。…だから神機兵に乗りこめば、私は大丈夫」

「だとしても危険すぎるだろ。こいつも損傷してるんだぞ、これ以上動かせるかどうか…!」

「大丈夫。私、サバイバルなら慣れてますから。私は大丈夫です、ギル。私より自分の心配をしてください。シエルは私に任せて」

「そういう問題じゃなくて」

「大丈夫ったら大丈夫!今までだって何とかしてきたんですから、今回だってどうにか出来ますよ!…だからお願い、ギル」

 

懇願するシアンの姿が、ギルバートの頭の中であの人と重なった。

 

(……チッ、なんでこんなに…)

 

ギルバートはシアンに背を向けた。

 

「絶対、無事に帰れよ」

「…分かってます」

「え、おいギル、止めないのか!?」

「行くぞロミオ、ナナ。時間がねえ」

「でも…」

 

戸惑うロミオとナナの後ろで、シアンは神機兵に乗り込み操作をコックピットでの手動に切り替える。

シアン!と呼び止めるナナの声を聞き流し、シアンは全速力で神機兵を走らせた。

 

 

 

シエルが通信を切ったところでシアンも通信を切っていた。

きっとフライアではグレム局長が激怒してるに違いない。

ジュリウス隊長には迷惑をかけることになるだろうが、シエルの救援を命令されなくても、シアンはシエルを助けるつもりだった。

 

全速力で神機兵を走らせた先で、シユウが今にもシエルに襲いかかるところだったのを寸でのところで阻止することに成功した。

赤い雨が降る中、シアンは停止した神機兵と自分の乗る神機兵で屋根を作るように態勢を作り、シエルを赤い雨から守った。

 

 

漸く赤い雨が上がったのは、それから3時間後。

フライアに帰還した2人は真っ先にメディカルチェックを受けた。

2人とも身体に問題はないと判断されて安心したのも束の間、シアンは命令違反で懲罰房に入れられてしまった。

 

2日ほど経ってから、シエルがシアンに面会に来た。

冷たくて硬い鉄の扉に、申し訳程度につけられた小窓からシアンが顔を覗かせれば、シエルの顔がよく見えた。

 

「…調子はどうですか、シアン」

「まぁまぁ、かな」

「副隊長である君がいない分は、私が代行しているので心配しないでください。…きっとすぐに出られますよ」

「どうかなぁ、あのクソ局長の事だししばらく出られないと思ってる」

 

シアンの口ぶりからすると、こうなることは予想済みだったらしいとシエルは察した。

 

「……あの」

「ん?」

「こうなることがわかっていて、なんであんな無茶を?神機兵だって、本当は事前に入念な検査が必要なんですよ」

「…シエルとおんなじ理由かなぁ」

「え?」

「隊長の命令に、従わなかったでしょ」

 

シアンは小窓に手をかけ、シエルに微笑んだ。

シエルはあの日、自分が発した言葉を思い返した。

それで気づいた。

 

「命令よりも…自分よりも…だいじなもの…」

 

シエルはシアンの手に自分の手を重ねた。

 

「…とっても、温かいですね」

「…そうだね」

「でも今回みたいな無茶は二度とダメですよ。みなさん凄く心配してるんですから」

「あはは…肝に銘じとくよ」




ここまで読んでくださりありがとうございました!
長かったと思います。お疲れ様でした。

ここからは補足です。
GE2RBで気になることといえば、主人公や他のブラッドメンバーの階級!
わかっているのはジュリウス(大尉)だけで、他のメンバーに関してはリヴィを除いて詳しい階級は不明のまま…。
というわけで、GERのキャラたちの階級の推移や実在する軍隊の階級などを調べ、参考にさせていただきました。
(私が某海賊漫画のファンなのでGERの階級表記を踏襲してはいますがそれに一番似てるかもしれません)
機会があれば、その辺りの設定詳細を載せようと思います。
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