無色の世界   作:Hiramii

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ようやく更新です。
ギルバート編は長くなりそうだ…。

↓とりま人物紹介↓

真壁ハルオミ
極東支部第四部隊の隊長。
ギルバートとは旧知の仲で、ギルバートが以前所属していたグラスゴー支部にて同じチームを組んでいた。
ナンパ好き。


第十九話 過去の想起(前編)

極東に来て最初の任務を軽く終えてシアン達が戻ってくると、出撃ゲートの前でコウタさんがジュリウスと共に待っていた。

 

「お、きたきた」

「任務ご苦労。首尾はどうだ、シアン」

「上々です、隊長」

「歓迎会の準備、もう出来てるぜ。あとはあんた達ブラッドが入場するだけ!」

 

コウタさんに誘導されてラウンジへ入る。

 

「みんなお待たせ!本日の主役、ブラッド隊のご入場でーっす!」

 

綺麗に装飾されたラウンジには極東支部の面々が揃い、ブラッドを拍手で迎え入れた。

 

「えーみなさん、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます!これから歓迎会を始めさせていただきます!

司会進行役はオレ、藤木コウタです!

ブラッド隊が今日からしばらくこのアナグラに滞在するということでお互いに親交を深めるべく、この歓迎会を企画しました!

さて、早速ブラッド隊隊長のジュリウスさんから一言いただきたいと思います!」

 

突然振られたジュリウスは少し驚いた顔をしながらも、ゆっくりとした足取りでマイクスタンドの前に立った。

少しだけ会場内、主に女性達がざわめいた。

 

「…ご紹介に預かりました、フェンリル極致化技術開発局所属、ブラッド隊隊長のジュリウス・ヴィスコンティです。このような会を催していただき、誠にありがとうございます。この極東支部を守り抜いてきた先輩方に恥じぬよう、懸命に任務を務めさせていただきます。ご指導ご鞭撻のほど…何卒よろしくお願いいたします」

 

スピーチをするジュリウスを、シアンは静かに見ていた。

 

(さすが隊長だなぁ…)

「かっこいいなぁ、隊長…」

 

ジュリウスが一礼して戻ってきた。

 

「ジュリウスさん、ありがとうございました!続きまして、極東支部の元オペレーター、シアンさんからも何か一言お願いします!」

「え、私も?」

「…ほら、頑張れ」

 

シアンはジュリウスに背を押されて、戸惑い気味にマイクスタンドの前に立つ。

 

「…えーっと…ご紹介に預かりました、ブラッド隊副隊長の神河シアンです。コウタさんがおっしゃったように、私はブラッドに所属する前、短い期間ではありましたが、ここ極東支部でオペレーターをしていました。ここに帰ってこれたことをとても嬉しく思っています。

神機使いとしてはまだまだ未熟ですが、ブラッドの副隊長として出来ることを全力でやっていくつもりです。どうぞよろしくお願いいたします」

 

一礼して元の場所に戻る。

 

「シアン、ほんとお帰り!またよろしくな!…そしてユノさんも、お帰りなさい。ユノさんもなにか一言!」

 

やはり事前連絡はなかったようで、少し驚きながらもマイクの前に立つユノ。

 

「えーっと…私、こういうの慣れてなくて…もしよかったら歌を…」

「はーいちょっとごめんねー!実はもうマイク準備してあるんだー」

 

ユノはマイクがセットされたピアノの椅子に座ると、静かに旋律を奏で始めた。

ユノが歌い終わる頃にはロミオは「もう死んでもいい…」とボロ泣きしていた。

ロミオほどとはいかずとも、シアンも実際に歌声を聞いてみて、確かにユノの歌が好きになる気持ちがよく分かった。

シアンだけでなくナナもシエルも、ユノの歌に感動していた。

 

「ユノさん、ありがとうございました!これから極東支部一丸となって仲良くやっていきましょう!以上、歓迎会を終わらせていただきます、ありがとうございました!この後は食べたり喋ったり、自由に楽しんでください」

 

コウタの司会が終わると同時に大きくざわめきだすラウンジ。

 

「ユノさんの歌、綺麗だったな…」

「そうだな…しかし、過剰なほどの歓迎を受けてしまったな。それにスピーチがあるなら事前に言って欲しいものだが」

「スピーチすごく良かったよ、ジュリウス。カッコよかった」

「やめてくれ、恥ずかしい…お前は初々しくて可愛かったぞ」

「う…可愛くないです恥ずかしいだけですやめてください」

 

思わぬ反撃をくらったシアンは目をそらした。

 

「そもそも私には副隊長らしさが足りないんですよ」

「お前はそのままでいいさ」

「そうですか?私はもっと副隊長らしさが欲しいですけど…ん?」

 

シアンはふとなにかに気づいてラウンジを見回した。

 

「どうした?」

「ギルさんがいない…さっきまでいたのに」

「…そういえばそうだな」

「私、探しに…」

 

ラウンジを出ようとしたシアンの手をジュリウスが引っ張った。

 

「ジュリウス?」

「…すまない」

 

ジュリウスはぱっとその手を離した。

 

「あまり人のいる場所は好きじゃないんだろう…フライアでもそうだった、そっとしておこう。それに極東支部の人達はお前の事を待っていたようだしな。主役がいなくては話にならん」

「…そうですね」

 

ギルバートの事も気がかりだったがジュリウスの言い分も一理あると思い、せっかく開かれた歓迎会なのだからと、久々に会う極東支部の面々との雑談を楽しむことにした。

 

司会を終えたコウタとカウンターに並んで座った。

 

「いやぁ急に当ててごめんなぁ、シアン」

「そうだよ、私だけならともかく隊長やユノさんまで…」

「コウタ隊長、段取り悪いから」

 

ボソッとそう言ったのはエリナだ。

少しは警戒を解いてくれているようでシアンは安心する。

 

「なんていうかさぁ、ジュリウスさんはすっごく隊長っぽいけど、コウタ隊長は全然隊長っぽくないよね。ジュリウスさんを見習ってほしいなー」

「うるさいよエリナ。…まぁそれはともかく、どう?今いる部隊は」

「うん、わりと仲良くやれてる…と、思う…。これから、って感じかなぁ。私と隊長、シエル以外は、まだ血の力に目覚めてないんだよね」

「ねえ、その血の力ってなんなの?ブラッドって普通の神機使いと何が違うの?」

 

エリナの質問に、シアンは少し考えてから答えた。

 

「ブラッドっていうのは、そもそも投与されてる偏食因子が今主流のものとは異なってるんだけど…それを投与されると感応種って言って、通常の神機使いでは対抗出来ないアラガミに対抗できるようになるんだよ」

「神機が動かなくなるんでしょ?エミールみたいに」

「そう。でもブラッドの神機なら問題なく動くんだ…マルドゥークに出会うまで未実証だったけどね」

「で、血の力って何?」

「一言では言いにくいんだけど…簡単に言えば、個人特有の潜在能力の事なんだ。ジュリウス隊長はみんなの力を一段階上げる"統率"、シエルは敵の情報を共有する"知覚"、私は喚起で…ラケル博士が言うには確か…心を通わせた者の秘めた力を呼び覚まし、自身の限界も超える事が出来る…かもしれない、とか…まだ分かってないことも多いみたい」

「要はよくわかんないけどすっげー力なんだな」

「…まぁ、ある意味それが一番わかりやすいかも」

「コウタ隊長ざっくりしすぎ…」

「ブラッドってひとくちに言っても、血の力に目覚めるまではまだ"候補生"だから、実は血の力に目覚めてないほかの3人はまだ正式な隊員じゃないんだよね」

「え、そうなの?」

「うん、だからみんなが正式な隊員になるためには、私の血の力が必要不可欠だって博士が言ってた。"心を通わせる"って所がちょっとハードル高いけどね…」

 

あはは…と乾いた笑いを見せるシアン。

 

(ロミオとナナはともかく、ギルさんが一番難易度高そうなんだよねぇ…)

 

「なんだ、随分弱気だな副隊長…それじゃ隊員は困るんだが」

「あ、ギルさん」

 

いつの間にかギルバートがすぐそこに立っていた。

 

「どこいってたんですか?さっきはラウンジ見渡してもいませんでしたよ。歓迎会の途中でいなくなるなんて」

「…どこだっていいだろ、お前には関係ねぇよ」

「はぁ…そーですね」

「…シアンさん、この人は?」

 

エリナはギルバートの威圧感に気圧されたのか、少し表情が強ばっている。

 

「ギルバート・マクレイン、ブラッド候補生の1人だよ」

「隊の中じゃブラッドに入って日は浅いほうだが、神機使いとしてはもう5年やってる。よろしく頼む」

「おれは第一部隊隊長のコウタ、支部長室で会ったよな。こっちはうちの隊員のエリナだ。改めてよろしく、ギルバートさん」

「ギルでいい、呼びにくいだろ。…うちの副隊長が迷惑かけなきゃいいが」

「私が問題児みたいな言い方やめてください」

「…実際問題起こしてんだろ」

「うっ…ぎ、ギルさんだって配属早々問題起こしたくせに」

「はっ、懲罰房に入れられたお前に言われてもな」

「ギルさんに罰則が何もなかったのは隊長のおかげなんですからね。仲裁してあげたのは私ですし。シエルの件だってそうですよ」

「ああ?頼んでないし、お前がお人好しなだけだ」

「随分な言いようですね、私が動かなきゃ困ってたのはギルさんですよ」

「知るか。言ったはずだ、おれは仲良しごっこをしに来たわけじゃない」

 

お互い無言の睨み合い。

コウタには火花が見えそうだった。

 

「ま、まぁまぁ2人とも…」

「…仲間同士助け合って支え合うことをそんな風に言われるのは心外です」

「…支え合うか」

「…あれ、ギル?ギルじゃないか!」

 

ギルバートが振り返ると、そこには緑髪の見覚えのある男が立っていた。

 

「…ハルさん!?」

「お、噂どおりシアンちゃんも帰ってきてるんだな。相変わらず可愛い顔してるねえ」

「ま、真壁隊長…」

「…相変わらずその呼び方なのな…ハルさんでいいって言ってるだろ?」

 

第四部隊隊長、真壁ハルオミ。

その女好きの性格から、シアンが苦手とする人物の1人である。

 

「にしてもギルさん、真壁隊長と知り合いだったんですね」

「……」

「ギルさん?」

「!あ、ああそうだ…前にいた支部で、同じチームを組んでたんだ」

「へえ…意外」

「つーかハルさん、任務だから歓迎会には間に合わないって言ってなかった?」

 

コウタが言った。

 

「ん?ああ、案外早く終わってなぁ。早いとこシアンちゃんの顔も見たかったし、さっさと帰ってきたってわけ。にしても驚いたな、シアンちゃんだけじゃなくてギルにも会えるとは」

 

ハルオミはギルの背中をばしっと叩いた。

 

「2人とも同じ黒い腕輪か…ブラッドだっけ?同じ部隊にいるのか」

「はい、神機使いの先輩として色々教えて貰ってます」

「もしギルの事でなんかあったら言えよ?斜に構えたコイツの扱い、オレは相当プロだぜ」

「ハルさん…」

「はは、冗談だよ冗談」

「ハルさーん!もう、置いていくなんて酷いじゃないですか!私だってパーティ楽しみにしてたんですよ!」

「ん?おー悪い悪い、そういやそうだったなカノン」

 

ハルオミの後ろから駆けてきたのは桃色の髪の女性。

第四部隊隊員の台場カノンだ。

 

「こいつは台場カノン、うちの唯一無二の隊員だ」

「あ、シアンさん!お久しぶりですね!」

「お久しぶりです、カノンさん。元気そうですね」

「私は元気とお菓子作りだけが取り柄ですから!…あ!この日のためにクッキー焼いたの忘れてました!持ってきますね!」

 

カノンは慌ただしくラウンジを出ていった。

 

「相変わらず何かと忙しそうですね、カノンさん…」

「まーそういうとこも可愛いってもんさ。それに、」

 

ハルオミは一段階声を抑えて言った。

 

「出てるとこ出てるからまぁいいかなー、的な?」

「…またセクハラで査問会に呼ばれますよ」

 

ギルバートはため息をついてそう言った。

 

「…"また"?真壁隊長、前科があったんですね…」

 

シアンが引き気味にそう言うとハルオミはギルバートに向かって言った。

 

「ギル、余計なこと言うなよ。アレがあったからケイトと付き合えたんだぜ?」

「だとしてもアレはないです」

「お前ホント手厳しいなぁ。少しはナンパくらいしてみろよ。お前顔いいんだから女の子の1人や2人くらい簡単に…」

「…遠慮しときます」

 

欲がねえなぁ欲が、とハルオミは大げさにため息をついた。

その時ハルオミの携帯端末が鳴った。

画面を見たハルオミはゲンナリした顔になった。

 

「まーた任務だよ。戻ってきたばっかだってのに…しゃーない、さっさと行ってくるかぁ」

 

あ、そうだ、とハルオミは去りかけた足を止めた。

 

「近々飲むぞ、ギル」

「…はい」

「んじゃなー」

 

 

 

シアンは終始様子のおかしいギルバートを黙って見ていた。

 

 




ギルバート編は個人的に凄く好きな話です。
一番力入ってるかもしれない…笑
シアンはギルバートをどう落とすんでしょうかねぇ(誤解)
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