無色の世界   作:Hiramii

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遅れてすみません、後編です!
やっぱりギルバート編は長くなりそうです。


第二十話 過去の想起(後編)

歓迎会の数日後ーーー

 

極東での任務に慣れてきたブラッド。

シアンの血の力で他のメンバーの血の力の目覚めを目指すなか、極東周辺のアラガミの強さを実感していた。

今日はヴァジュラとグボログボロの討伐。昨日はガルムの討伐だった。

 

「大型種出すぎ!」

 

そう嘆いたのはロミオ。

 

「こんなもんだよ、極東は」

「シアンは慣れてるかもしんないけどさあ…!」

 

高台から巨大な虎を眼下に見据える。

言ったシアンも若干顔がひきつっているが。

 

「…やっぱヴァジュラってでっかい…大丈夫かな…」

「ヴァジュラは神機使いの登竜門だ、心してかかれ」

「ヴァジュラくらいでビビってんじゃねーよまったく…」

 

ヴァジュラの大きさに慄くロミオとシアンとは反対に、いつもと全く様子の変わらないジュリウスとギルバート。

これが戦歴の差なのだろう。

ジュリウスがアドバイスする。

 

「昨日のガルムと同じようにやればいい。ヴァジュラも動きは単調だが、あいつが放つ電撃は強力だぞ。なるだけ避ける事を心がけろ」

「了解」

「では、行くぞ。幸いにもグボログボロは作戦地域には侵入してきていない。早めにヴァジュラを片付けよう」

 

ジュリウスに続いてシアンたちも高台の降下ポイントから降る。

降ってきた4人に気づいたヴァジュラが振り返り咆哮をあげた。

 

「!っ…こわ…」

「止まるなシアン!狙われるぞ!」

「ぅ、はい!」

 

ヴァジュラがシアンに狙いを定め突っ込む。

それを躱したシアンのすぐ横にジュリウスが立ち、肩に手を添えた。

 

「大丈夫だ、お前なら出来る」

「…はい」

 

シアンは一呼吸おいて神機を構えた。

 

「ギル、ロミオのフォローを頼む」

「…ああ、わかった」

 

ヴァジュラが再びシアンの方を向き、飛び上がった。

 

「避けろ!」

 

左右に避けるジュリウスとシアン。

ジュリウスがすかさずアサルトで注意を引く。

 

「ちっくしょー…大型だからってなんだぁ!!」

 

ロミオがバスターを大きく振りかぶって打ちかかる。

攻撃の当たった前足が結合崩壊を起こした。

咆哮をあげて大きく仰け反るヴァジュラ。

 

〔ヴァジュラに結合崩壊発生!活性化します!気をつけて!〕

 

不意にヴァジュラが動きを止めた。

 

「!今っ」

 

シアンはチャンスを逃すまいと攻撃を仕掛ける。

 

「シアン、だめだ!」

 

ジュリウスが止めるが既に遅く、神機を振りかぶったシアンは突然の雷撃に見舞われた。

 

「きゃあああ」

 

吹き飛ばされたシアンは地面を転がった。

立ち上がろうとする腕に力が入らない。スタン状態になったのだ。

目の前にヴァジュラが迫る。

 

ギリギリのところでジュリウスがシアンを抱えて避けた事で助けられた。

 

「う…あ、ありがとうございます…」

「先に言っておくべきだったな…活性化したヴァジュラには迂闊に近づくな、活性化状態の雷撃はくらうと身体の自由を奪われる」

「肝に銘じておきます…」

 

身体の痺れがようやく取れたシアンはふらふらと立ち上がる。

 

「いけそうか?」

「まだ平気です」

「よし、気を取り直していくぞ」

 

その後どうにかグボログボロの進入前にヴァジュラを倒すことに成功し、4人はグボログボロを迎えうった。

 

すぐに1体倒した4人の背後…2体目のグボログボロからまたしてもシアンに向けて水泡が放たれ、とっさにシアンの後ろに回ったジュリウスが装甲を展開して防いだ。

 

「まだ隙が多いな、シアン。気を抜くな」

「は、はい…」

 

ヴァジュラとの戦闘でスタミナの大半を消費したな、と判断したジュリウスは、シアンに後ろに下がるよう指示した。

 

「シアンとロミオは後方から支援を頼む。ギルは俺と直接叩くぞ」

「了解した」

 

 

 

やっとの事で任務を終えた4人。

ヘリの待機中、ロミオとシアンは瓦礫に背を預けて座り込んだ。

 

「…なんか…久々にすごく疲れた…」

「おれも…」

「シアンはともかく、なんでロミオまでバテてんだ。お前一応2年目なんだろ」

「オレ、大型種なんて極東来るまで相手したことなかったんだよ」

「フライアも充分な戦力を持ってるとは言えないからな…大型種との遭遇は避けていたから仕方ないだろう」

 

ジュリウスは今回の一人一人の動きについて言った。

 

「シアンは様子見をしすぎたな。攻撃が疎かになりすぎだ。アラガミの動きをよく見るのは基本だが、それで攻撃が出来ないでいるのではいつまでも倒せないぞ」

「はーい…」

「ロミオはスタミナ配分を考えた方がいいな、バスターは大型種には当たりやすいが、やみくもに振り回すだけではせっかくの威力が活かせない。スタミナ切れが命取りになることもある、あとちゃんと装甲を使え」

「うう…りょーかい…」

「ギルは流石ベテランだな。だが銃形態が多かったように思う、もう少し積極的に接近戦をしてもいいんじゃないか」

「さっさと銃に慣れたいんでな…まぁ、参考にするよ」

 

はぁ〜…と、シアンは大きくため息をつく。

 

「隊長にはフォローされまくりだし攻撃はくらうし…」

「いきなり全てができる人間なんかいないさ、気にするな。これから成長していけばいい。…戻ったらシアンとロミオは俺と一緒に訓練だな。複数人での模擬戦闘システムは極東にもあるようだ」

 

げっ、と声を上げるロミオ。

 

「マジかよ…」

 

 

極東支部に戻り、訓練施設に向かったジュリウスたちと別れたギルバートは、エントランスでハルオミの姿を見かけた。

どうやらギルバートを待っていたらしかった。

 

「よっ、お疲れさん。どうだ、任務後に一杯」

 

ハルオミに誘われラウンジへ。

然程美味しいわけではないビールの缶を開けて乾杯する。

 

「どうだ、今のチーム」

「悪くはないっすけど…年下は苦手です」

「ははは、お前もそんなこと言うようになったのか。老けたな」

「ハルさん…」

「そうだ。シアンちゃん、表情が柔らかくなったなぁ」

「…副隊長っすか?」

 

ハルオミはビールを一口飲むと頷いた。

 

「ああ。入隊当初の彼女は警戒心が強くてな、クレイドル連中以外にはほぼ心を開いてなかったんだ。何を話しても話半分以下って感じで流されちまってな…ヒバリやコウタのおかげで多少は笑顔も見せてくれるようになったが、そしたら本部に転属って話になっちまって。せっかく仲良くなり始めてたのにって、みんなして残念がってた」

「……」

「だからよかったよ…お前とも仲良くやってるみたいだしな。…彼女、いい子だろ?」

「…そうっすね」

「あれはケイトと同じにおいがするなぁ。人から好かれて、何でもすぐに背負っちまう…」

「ええ…それでつい…一度、説教じみたことをしてしまいました」

 

シアンを慕うシエル。

シアンが大切にしているサテライト拠点の仲間たち。

仲間を守るために1人で先走って、1人で無茶をしたシアン。

仲間を守るために自ら戦いの道を選んだ彼女に、迷いは見えなかった。

 

「…放っといたら、あいつが死んでしまいそうで」

「ああ、言うだけムダだよムダ。ケイトもそうだったろ?結局どこまでも前向きで、キラッキラしてて、そのくせすごい頑なで、こっちの言うことなんて聞きゃしないんだ」

 

恩師、ケイトの生前を思い浮かべるギルバート。

 

"なんとかなるでしょ。前向いていこう"

 

「いい奴ほど早く逝っちまうってのは、何でなんだろうなぁ…」

「…ハルさん、俺が、あの時……」

「あー悪い!昔話はこのくらいにしとかないとなぁ。じゃないとケイトに、前向いていこうって怒られちまう。…だよな、ギル?」

「…はい」

 

ギルバートは自身が発そうとした言葉をビールと一緒にのみこんだ。

 

 

 

それからというもの、ギルバートは眠れぬ毎夜を過ごしていた。

どうしても過去の出来事が夢になって出てくるのだ。

殺して、と言われて岩に凭れ掛かるケイトに向かってスピアを構える自分。

意を決して振り下ろすと、その姿はシアンに変わっていてーーー。

 

「シアン!!?」

 

飛び起きたギルバートはぐしゃっと前髪を掴んだ。

 

「…夢…なんでシアンが…タチの悪い夢だぜ」

 

くそっ、と拳をマットレスに叩きつける。

水でも飲もう、と部屋を出ると、ちょうど部屋の前にシアンが驚いた顔で立っていた。

極東に用意されたブラッド区画はフライアに寄せたのか、こちらも各自の部屋は共有スペースと繋がっている。

どうやらタイミング悪くギルバートの部屋の前を通りかかった彼女に聞かれてしまったらしい。

これが彼女の寝間着なのだろう、タンクトップとロングスカートという格好で、手にはマグカップが握られていた。

 

「…あの」

「気にするな、何でもねえ」

「でも汗すごいですよ、おでこ」

 

言われて袖で額を拭うと、確かに大量の汗をかいていた。

 

「…嫌なら聞きませんけど…無理はダメですよ?」

「無理なんかしてねえよ。だから気にすんな…それよりお前はなんで起きてるんだ」

 

時計を見れば、既に日付は変わっていた。

 

「明日…というか、今日ラケル博士に報告する分の報告書がようやく完成したので休憩しようと思ったんです」

「…お前が無理してぶっ倒れんなよ」

「分かってますよ。ギルさん、ここ最近は二言目にはそればっかりですよ?心配してもらえるのはありがたいですけど」

「こっちは二度も冷や汗かかされてんだ」

「それも先日聞きました。心配症だなぁギルさんは」

 

シアンは面白そうにふふっ、と笑った。

 

「じゃあ、おやすみなさい」

「…ああ」

 

部屋に戻るシアンを見送ると、ギルバートは簡易キッチンの自分のカップに水を注ぎ、それを一気に飲み干した。

それでようやく心が落ち着いた気がした。

 

 

翌日、睡眠不足に陥ったギルバートはラウンジのソファで船を漕いでいた。

それを見たシアンは、やはり昨夜は何かあったのではと心配になった。

とりあえずこの後アサインされている任務のブリーフィングのために起こさなければ、と歩み寄った。

 

「ギルさん、ブリーフィング始めますよー。起きてくださーい」

 

しかしギルバートが目を覚ます様子はない。

肩を叩くが、それでも無反応だった。どうやらよほど熟睡しているらしい。

シアンは申し訳ないと思いつつ、ギルバートの肩に手を置き体を揺すって声をかける。

 

「ギルさん、起きてください。ギルさん」

「…ん」

 

ギルバートがようやく薄らと目を開けた。

シアンは俯かれたギルバートの顔をのぞき込んでさらに声をかけた。

 

「ギルさん、こんなところで寝てると風邪ひきますよ。てか早く起きてください」

「…………」

 

ゆっくりと顔を上げたギルバートは、開ききっていない目と眠そうな顔でシアンを見つめた。

 

「…ケイトさん…?」

「誰ですかそれ。もう、いい加減寝ぼけてないでしゃんとしてください!」

「………副隊長?」

 

ようやく意識がはっきりと覚醒したらしいギルバートは、そこで初めて目の前のシアンを認識した。

 

「ギルさんらしくないですね、うたた寝なんて。それよりブリーフィング始めるんで、ちゃんと目を覚ましてからエントランスに来てくださいね」

「…あ、あぁ」

 

シアンがエントランスに出ると、既に出撃メンバーのナナとロミオがオペレーションカウンター付近のモニター前に来ていた。

極東の神機使いはだいたい、任務前にここでミッションブリーフィングを行っている。

 

「お待たせ、2人とも。ギルさんが来たらブリーフィングを始めよう」

「あいつ、また遅刻か?」

 

また、というのは以前の緊急任務時の召集に現れなかった事を言っているのだろう。

 

「最近ちゃんと眠れてないみたい…夕べも夜中なのに起きてて、さっきはラウンジでうたた寝してたし」

「ギルの寝不足をシアンが知ってるってことは、シアンも夜中まで起きてたの?」

「報告書をまとめるのに時間かかっちゃってね…休憩しようと思ったらギルさんが部屋から出てきて」

「オレのことはどうでもいいだろ」

 

シアンの言葉を遮るように、遅れてきたギルバートが不機嫌そうに言った。

 

「遅くなって悪い、ブリーフィング始めてくれ」

「…大丈夫なんですか?」

「何がだ。…今日の討伐対象はなんだ、副隊長」

「…今日は感応種の討伐ですね、またイェンツィーです」

 

シアンは言い知れぬ不安を抱きつつ、それを考えないようにしながらブリーフィングを開始した。




早く話を進めたい感があっていまいちメインストーリー以外の描写が雑になってますね…
直したいです、はい
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