無色の世界   作:Hiramii

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神河シアン(18)
2074年フェンリル極東支部入隊。
同年フェンリル極致化技術開発局転属。
出生:4月10日 身長:165cm
特殊部隊「ブラッド」所属。サテライト拠点出身の神機使い。
極東支部にてオペレーター経験あり。
訓練成果は優秀であり、懸念されていた他隊員との関係も概ね良好だが、必要以上の交流は避けている模様。



第四話 初陣

フライアに来てから2日目、今日から本格的に神機使いとして訓練が始まった。

最初は神機の扱い方、剣形態と銃形態の切り替えや基本的な操作を教わり、スムーズにそれが出来るよう練習した。

次に擬似アラガミを使って戦い方を覚える。擬似的なものとはいえ攻撃はしてくるので、はじめは動かない擬似アラガミに対してボロボロだったものの、3日目、4日目と重ねるごとに動き方がわかって来て、2週間程度であのオウガテイル型の擬似アラガミ相手でも難なくクリアできるようになった。

指導教官は庭園で会ったジュリウスさん…いや、ジュリウス隊長だった。

 

 

 

時は訓練開始前にさかのぼる。

 

『フェンリル極致化技術開発局ブラッド所属、第二期候補生・神河シアン。参りました』

 

ブラッドの制服に身を包んだ私は、きっちり敬礼する。

 

「あの時は自己紹介をすっかり忘れていたな。俺はジュリウス・ヴィスコンティ。お前が配属された、極致化技術開発局ブラッドの隊長を務めている」

『…隊長!?』

「あまり恐縮するな。これからよろしく頼む」

『よ、よろしくお願いします、ジュリウス隊長』

 

 

…というような事があった。

 

 

 

 

特に厳しすぎるというような事は無かったが、やっぱり上司がいるというのは緊張する。

それはナナも同じようで。

 

「う〜…な〜んかさ〜、訓練で体力使うよりも精神的に疲れるよ〜…」

 

香月ナナとは訓練初日に会った、同期だ。

おでんとパンという奇妙な組み合わせの食べ物を好み、「お近づきの印」として渡された時は少しびっくりした。

…結構美味しかったけど。

今も大きな袋いっぱいに詰めたおでんパンを頬張っている。

見た目はすごく細いのにかなりの大食漢だ。ブーストハンマーとタワーシールドという重いものを扱っているから尚更エネルギー消費が激しいのだろう。

私はといえば、様々な刀身と銃身を試した結果、ロングブレードにバックラー、ブラストという組み合わせに今のところ落ち着いている。

 

『でもジュリウス隊長、いい人だよ』

「それはわかってるけどさ〜。ジュリウス隊長ってマグノリア・コンパスじゃ有名人だったから」

「ジュリウスにそんなに気ぃ使う事ねーのに」

 

そう言ったのはロミオ・レオーニ先輩。

私とナナより一年早くブラッドに所属している、ブラッド候補生だ。

ジュリウス隊長のきっちりした格好と雰囲気とは正反対に、賑やかな服装と軽いノリで場を賑わせるのが得意な人だ。

煩いのが好きではなさそうなジュリウス隊長も、ロミオとは波長が合うのか、それとも別の何かがあるのか、特に鬱陶しそうにしていることは無い。

 

「えー、ロミオ先輩が軽すぎるだけじゃないですか〜?」

「ジュリウスは見た目と話し方はあんなんだけど、結構冗談とか笑ってくれるんだぜ?もっと気楽にやろうよ、ブラッドは"家族"なんだからさ!」

『…ロミオ先輩は末っ子って感じ』

「ええ!おれ末っ子!!?」

「あはは、わかるー!」

「ちょ、ナナまで…オレってそんなに威厳ないの?」

 

家族。

ラケル博士がブラッドという枠組みを表す時によく言っている。

「私たちは家族だ」と…。

ナナもロミオ先輩も、ジュリウス隊長と同じく孤児院…マグノリア・コンパスの出身だからか、家族という表現をとても気に入っているらしい。

ジュリウス隊長も何かと口にするほどだ。

 

私自身も孤児だから、家族というものに憧れがないわけではないけど、私の"家族"は"希望の団"の皆だった。

フェンリルの中に私の"家族"はいない。

 

実はハルトやエイダには、私が本部の神機使いになることは伝えなかった。

だからまだ私が極東支部にいると思っているはずだ。

クレイドルがいたから神機使いになると決意したのであって、極東支部だったからフェンリルに属することも2人に理解してもらえた。

本部にいると聞いたら、2人揃って怒るだろう。

だから連絡もしばらくとっていない。

私を心配するメールがよく来る。文の最後には必ず「返信をくれ」と書いてある。

 

 

その日の夜。ターミナルを確認すると、今日も一通のメールが届いていた。

ハルトからだった。

 

 

《タイトル:元気か?

本文:どうしたんだよ。もう1ヶ月も返信くれないじゃねぇか。

そんなに忙しいのか?神機使いってのは…エイダも心配してたぜ。

オレにはなくてもエイダには絶対に連絡しろよ、アレでも心配性だからアイツ。

そうだ、今日ユノって奴がサテライト拠点に来たんだ。すっげえ歌が上手くて、歌声が綺麗でさぁ。そっちじゃ有名人なんだって?お前の方が知ってるかもな。

…小さい頃お前がよく歌ってたの思い出しちまった。お前も結構上手だったよなぁ。すっかり歌わなくなっちまったけど、もう聴けないのか?

PS.これ見たら絶対連絡くれよ!》

 

 

『……はぁ…』

 

私は深くため息をつくと、端末の接続を切ってベッドに倒れこむように眠った。

 

 

 

 

 

 

翌日も訓練だった。

難なくクリアしてナナと休憩していると、ジュリウス隊長が来た。

 

「訓練は2人とも良好なようだな。それを踏まえてこれから実地訓練を行う。

本来の訓練カリキュラムからすると時期が少し早いが…お前たちの今後を占う試金石と考えてくれ。

簡単な任務に同行してもらうから、任務内容をよく確認して、あとから現地で合流だ。いいな」

「了解しました!」

『了解です』

「具体的なことはオペレーターのフランに聞いてくれ。じゃあ、後でな」

 

隊長は必要な用件だけ伝えると、スタスタと歩いていった。

 

『実地かぁ〜…』

「ついに、って感じだね〜。でも、任務に同行ってどういうことだろ?」

『…いきなりアラガミ討伐しろって言われたりして』

「ええ?流石にそれはないでしょ〜!」

 

あはは、と笑うナナだが、極東支部ならそれはごく普通にある話だった。

私より後に来た新人の神機使いが、訓練を1、2度受けたと思ったらベテランと組んでミッションに出るのを見送ったことがある。

相当不安そうな顔をしていたのが印象深い。

最前線の極東支部では訓練する暇も惜しい。

だから基本的なことを覚えたらあとは実戦で身につけるのが主流だった。

ちなみにその人は運悪く初ミッションでヴァジュラに乱入されて、怯えた顔で帰って来た。

 

 

 

一通り装備と携行品を確認して、神機を手に黎明の亡都に向かう。

廃墟となった高層の建物が乱立している。

昔はここにも人が住んでいた。

 

ポイントに到達すると輸送ヘリから降下し、先行していたジュリウス隊長と合流した。

 

「…来たか」

「フェンリル極致化技術開発局ブラッド所属、第二期候補生二名。到着いたしましたぁ!」

「改めてようこそ、ブラッドへ。…さて、早速だがこれより実地訓練を行う。…アレを見ろ」

 

隊長が示す先にはオウガテイルが二体、この高台からよく見えた。

 

「アレこそが駆逐すべき天敵…人類を脅かす災い、アラガミだ。手段は問わない、完膚なきまでにアラガミを叩きのめせ」

 

ナナがおずおずと口を開く。

 

「あの、これって…実戦ですか!?」

「本物の戦場でやってこその実地訓練だ。お前達が実力を発揮出来さえすれば問題になるような相手じゃない」

 

その時だった。

 

突如オウガテイルが隊長の背後から襲いかかってきたのだ。

私は咄嗟にナナを庇う。

しかし一行に痛みがくることはなく、おそるおそる振り返ると、ジュリウス隊長が自らの左腕に噛みつかせていた。

 

『た、隊長…!腕が!!』

「…フッ」

 

隊長は澄ました顔で神機を銃形態から剣形態へ変形させると、オウガテイルを斬り伏せる。

私はナナを立ち上がらせた。

 

「古来より人類は強大な敵と対峙し、常にそれを退けてきた。

強靭な肉体も鋭い牙も持たない人間がなぜ勝利することが出来たのか…。

連携し、共闘し、助け合う戦略と戦術…人という群れを一つにする、強い意志の力…それこそが俺達人間に与えられた最大の武器なんだ、それを忘れるな。

…時間だ、いくぞ」

 

ジュリウス隊長の後に続いて高台を飛び降りる。

 

「うわー…本物のアラガミだ…」

「凶暴な種ではないが、気を引きしめろ。少しの油断が命取りになるぞ」

 

他のアラガミの死体を屠っていたオウガテイルがこちらに気づいて威嚇の咆哮をあげる。

走って距離を詰め、ロングブレードを上から振りおろしたが、後ろに飛んで避けられる。

今度はそのまま下から上に切り上げ、勢いのまま身体を回転して体勢を変えると再び振り下ろした。

オウガテイルの顔面に二本の筋ができていた。

 

オウガテイルの攻撃を盾で防ぎ、カウンターとばかりにゼロスタンスからのインパルスエッジをお見舞いした。

オウガテイルが倒れこむ。まだ死んではいない。

 

『はぁっ!!』

 

トドメに頭を一刀両断すると、オウガテイルはそのまま動かなくなった。

もう一体はナナが仕留めたようで、ほぼ同時だった。

 

「やったー!アラガミ倒せた!」

「まだコアの回収が済んでいないぞ、ナナ。コアの回収を行うところまでが任務だ。捕喰形態(プレデターフォーム)の展開方法は覚えてるな?」

 

神機使いが"ゴッドイーター"と呼ばれる由来はここにある。

極東に伝わる八百万(やおよろず)の神々になぞらえてつけられた、荒神(アラガミ)という呼称。書いて字のごとく、神機でアラガミを喰らうのだ。

 

二体の捕喰が済んだ頃、フランから緊急の通信が入った。

 

〔緊急事態です!付近に新たなアラガミ反応を確認!〕

「種別は?」

〔オウガテイルと思われます!〕

「わかった、こちらで対処する」

 

ジュリウス隊長が言い終わらないうちに、通信にあったオウガテイル数体が姿を見せた。

 

「いい機会だ、お前達がこれから目覚めるべき血の力をここで見せておこう」

 

下がっていろ、と言われ神機は構えたまま後退する。

隊長がゼロスタンスの体勢をとり神機を振り下ろすように構えると、自分を淡い光が包み力が湧き上がるような感覚がした。

 

「力が…みなぎる…!」

『これが血の力…!』

「俺が今発動した力は"統率"。仲間の力を一段階あげるものだ。

これからブラッドアーツを目標に放つ。よく見ていろ」

「ブラッドアーツ…?」

「戦況を覆す大いなる力…戦いの中どこまでも進化する、刻まれた血の為せる業…!」

 

一瞬、赤い光が神機から発せられた。

それと同時に飛び出すと、数体いたオウガテイルが瞬く間に倒れて動かなくなった。

 

「これがブラッドアーツだ。俺達ブラッドに宿る血の力とブラッドアーツ、これをどう伸ばし生かしていくかは、全てお前達の意志次第だ。覚えておいてくれ、いいな?」

 

ナナとシアンは圧倒的な力の差を見せた隊長を前に、ただ黙って頷いた。

 

 




ナナとロミオの登場シーンをことごとく削る。笑
シアンはおでんパン以外あまり印象に残らなかったようです。
この怒涛のような更新速度は飽きるまで続きます。笑

シアンは極東でオペレーター業務の合間にコウタ達が受けてたサカキ博士の講義を受けてました。

(チュートリアルで死にかけたのは本当の話)
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