極東支部第一部隊所属の神機使い。
シアンとはオペレーター時代からの顔見知りだが、エミール自身が貴族階級の者であるため、シアンにとってはあまり関わりたくない相手。
エミールがあまりにうるさいので、シアンはいつか殴り飛ばそうと思っている。
ギルが加入し、ブラッドのメンバーが5人になってからすぐのことだった。
常に移動を続けている移動要塞、フライアの進行上に、多数のアラガミの群れが現れ、障害となっているという報せを受けた。
その数はフライアの神機使いだけでは手が足りず、他の支部への支援要請をし共闘作戦が行われることになった。
『…え、極東支部から応援が?』
ブラッドはロビーに集まりフランから詳細を聞いていた。
「ええ、グレム局長からそう聞いています」
『誰が来るの?』
「エミール・フォン・シュトラスブルクさんです」
『…あー…』
「知ってんの?シアン」
ロミオが言う。
『……まあ一応…』
オペレーター業務を手伝うためにずっとエントランスにいたから、一応互いに顔見知りではある。
でもあいつは…。
「ただ、応援に来てもらうにもそこかしこにいるアラガミが進行を妨げてしまっているので、まずは極東支部からフライアへのルート上にいるアラガミの討伐をお願いします。
応援が到着次第、フライアの進行上にいるアラガミの掃討作戦に移ります」
作戦説明を終えて神機保管庫へ向かう途中、ギルが呟いた。
「着任早々、でかい波がきたな…だがやる事はいつもと変わらねぇ。アラガミをぶっ倒す、それだけだ」
「まぁ、応援なんて居なくても俺達だけで楽勝だけどね〜」
とロミオが返す。
「"楽勝"なんてどの口が言うんだ、昨日あれだけ被弾しまくってたクセに…」
「お前だってそうだろ、敵に突っ込んでケガして、シアンにフォローされてたじゃん」
「やめないか2人とも」
ギルとロミオの口論が激化しかけてジュリウス隊長が止めた。
「任務前だぞ」
「はーい…」
「……」
素直に返事をするロミオと帽子のつばを深く下げ無言のギル。
「それにしてもシアンはすげーよなー。まだ神機使いになってからそんなに経ってないのに、ジュリウスとの息ぴったりなんだもんな〜。
他の神機使いたちもお前のこと噂してたぜ」
『…そうですか』
私はただ生きるために、必死に技術を身につけてきただけ。
生きるために必要な、当たり前のことを褒められても、別に嬉しくない。
むしろ何故自分より先輩であるロミオがあんなに被弾するのか、訳がわからない。
素っ気ない返事をすれば、ジュリウス隊長が心配そうにした。
よほど顔に出ていたらしい。
「気分でも悪いのか?険しい顔をしているぞ、シアン」
『いえ、なんでもありません』
「…あまり無理はするなよ」
『はい。お気遣い、ありがとうございます』
神機保管庫で神機を受け取り輸送ヘリで現地へ向かう。
今回の討伐対象はシユウとウコンバサラだ。
大した相手ではない。
私は神機を手に取るとさっさとヘリに乗り込んだ。
「………」
ジュリウスはそんなシアンの様子を怪訝な顔で見ていた。
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任務終了には1時間もかからなかった。
無事にフライアへ帰りつくと、シアンは自室に引きこもった。
『いろいろ…つっかれたぁ……』
正直、今回の任務にギルとロミオは必要なかった。
彼らは連携が出来てない。
ギルは元々近接旧型だったからか、やたらと敵に突っ込むし、
ロミオはバスターとブラストという高火力装備なのにそれが全く活かせていない。
オマケに任務中にまた喧嘩。
私が仲裁したのはなんだったのか…。
戦闘中の動きについて、まだ新人の私がどうこう言える立場ではないけど、それでもあの二人とはやりにくい。
まだナナと出る方がマシだ。
おかげで色々神経をすり減らして、体力的にも精神的にも、今誰かと話したくない。
その時、訪問者を告げるインターホンが鳴った。
私はカメラからの映像を確認することなく、ベッドに倒れ込んだまま『どーぞー』と言った。
「…邪魔するぞ」
入ってきた人を見て飛び起きた。
『た、隊長…』
やらかした……怒られる。これは絶対怒られる。
「…フ、散々だ、といった様子だな」
『……怒らないんですね』
「お前の立場を考えればな。ギルとロミオの喧嘩の事だろう」
『…まぁそんなところです』
私が主に悩んでるのはそれじゃないけど。
私は立ち上がって、ジュリウス隊長を部屋の向かいのソファに促した。
『何か飲みますか?紅茶と緑茶と、あとコーヒーがありますけど』
「なら、紅茶を頂こう」
『では少々お待ちください』
ここに来てから一度しか使ってないティーセットを棚から出す。
極東からフライアへ移ると聞いたエミールさんが、「ひと時の休息に活用してくれたまえ」とくれたものだ。
ご丁寧に、紅茶の正しい淹れ方の説明書付き。
…まぁ一度しか使ってないから出来ない事はしない。
そういえばコウタさんは急須と湯呑みをくれたっけ。
ティーカップを二つ、トレーに乗せるとテーブルに運んだ。
シュガースティックとポーションを添える。
『…どうぞ』
「ああ、ありがとう」
ジュリウスはカップを見て「ほう…」と感嘆の息を漏らした。
「ずいぶん凝っているな。お前の趣味なのか」
『いいえ、ただの貰い物です。紅茶好きな人が極東にいるんですが、転属する際に頂きました』
その人が援軍に来るんだけどね。
『…それでご用件は?』
「いや、特にこれといった事はない。ただ少し、様子が気になったのでな…」
『特に何も問題はありませんよ』
「…本当に何もないのか?」
『気にかかる事があるなら遠慮なく言ってください。あなたは私の上司ですから』
「……」
ジュリウス隊長が黙り込んだ。
しばらく黙りこんだあと、「…そうか…」とつぶやいた。
『…?なんですか?』
「今、なんとなく…お前に対する違和感の正体が分かった気がする」
『違和感?』
「お前に信用されていない気がしている…お前がサテライト拠点出身なのは知っている。私もあまり詳しくはないが、サテライト拠点住民の中にはフェンリルを信用しない者も多いと聞いた」
『それで?』
「…俺は、出来ればお前達とは"上司と部下"ではなく"仲間”でありたいと思っているんだ。だがそれは互いの信頼が無ければ成り立たない」
『任務中に問題が無ければいいのでは?』
「…俺はお前が信ずるに値しないのだろうか」
『私たちはフェンリルという組織そのものから捨てられたんですから、その答えは聞かずとも分かりますよね?』
「………」
少しの間沈黙が流れる。
『…すみません、言いすぎました。隊長の言いたい事は理解しました、でも…』
「分かっている。無理強いはしない」
『問題は起こしませんよ、アラガミがいなくなればいいというのは私も同じですから。その為に神機使いになったんです』
「ああ、これからも頼む」
『こちらこそ。すっかり紅茶が冷めてしまいましたね…淹れなおしますか?』
「いや、これから幹部連中とのミーティングがあるので失礼する…また今度、頼むよ」
『ちゃんとした紅茶の淹れ方、マスターしておきます』
「…フ、楽しみにしているよ」
少しだけ微笑むと、隊長は去って行った。
冷めてしまった紅茶をシンクに流して、カップを洗う。
ふとある事に気付いた。
『そういえば、部屋に誰か来たの初めてだ……』
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エミールが来たのは翌日だった。
「やぁやぁ、久しぶりじゃないか、シアン!」
『お、お久しぶりですエミールさん…相変わらずで何よりです……』
「私が来たからには大船に乗ったつもりでいてくれて構わない!我々の勝利は約束されている!!」
はっはっはっはっは…と高笑いをしながら、エミールはどこかへ行った。
一緒に居たギルが冷ややかな目で見ている。
「…ややこしい奴が来たな」
『わ、悪い人ではないですから…』
「足手まといにならなきゃなんでもいい…」
今回文字数少ないです!申し訳ない!(しかもほぼ進んでない)
というのもどこまでを1話とするか、区切りが見つからずに悩みに悩んでいたためです(1ヶ月更新してなかったのもそのせい)。
あまりゲームから台詞を取るとルールに引っかかるので、オリジナルの話を入れようとした結果、かなり長くなりそうな予感がしたので、とりあえずエミール登場までで一区切りとさせていただきました。
そして描写が下手な戦闘は全カット。
ジュリウスとの謎の会話シーン。
書きたいことが書ききれてない感満載。
ああ、これで血の力に目覚めさせるシーンは大丈夫なんだろうか…。