ついにシアンが…!
ちょっと長めです!
エミールが合流し、本格的に掃討作戦が始まった。
シアンはギル、エミールと組み鉄塔の森へ降り立った。
討伐対象はウコンバサラ。
「僕は今、とても嬉しいんだ…。何故ならあの時オペレーターだった君と、今こうして肩を並べ戦場に立っているのだから!」
『……』
戦場に出てもエミールは煩かった。
「さぁ!臆することはない、共にアラガミを倒し、遍く人々の明日を守ろうではないか!」
『エミールさん、もう少し静かに…討伐対象の捜索中です』
「おっとすまない…あまりの嬉しさに我を忘れていたようだ」
(…アラガミに喰われればいいのに)
心中で毒づきながら、シアンはチームの先頭で精神を研ぎ澄まし周囲に気を配る。
はっ、と気配を感じて、後ろにいた2人に手でストップの合図を出した。
前方にアラガミがいる。
だが討伐対象ではないようだ。
「オウガテイルか…?ここの討伐リストには無かったハズだが」
『多分他から迷い込んできたんでしょう。問題ありません、このまま任務を続行します』
とりあえずオウガテイルを倒しましょう…と後ろを振り返ると、エミールが見当たらない。
後ろから「うおおお!!」と雄叫びが聞こえた。
『え!?』
「おい、アイツ…!」
エミールがオウガテイルに向かって疾走している。
その雄叫びを聞いたのか、ウコンバサラまで出てきた。
『な、何やってんのエミールさん…!!?』
「仕方ねぇ!シアン、先にあのバカと一緒に小型をぶっ潰せ!その間ウコンバサラは俺が引きつける!」
『わ、わかりました!』
ギルにウコンバサラを任せ、小型数体と対峙するエミールに加勢する。
「騎士の名にかけて、貴様らを成敗してやる!!」
『ちょっとエミールさん!単独での勝手な行動はやめてください!
おかげで中型まで出てきて乱戦になりかけてるんですよ!!?』
「くらえ、我が渾身の一撃を!!」
『私の話聞いてますか!!?』
アラガミと戦うことで頭がいっぱいなようで、エミールはこちらを見向きもしない。
仕方ないのでさっさと他のオウガテイルを片付けて、ギルに合流した。
「うおぁっ!?」
『すみませんギルさん、遅くなりました!大丈夫ですか?』
「問題ねぇ。さっさとコイツを片付けるぞ!」
遠目から見えたが、ギルは敵との間合いが見極めきれていないようで、銃形態で攻撃していても距離が中途半端なせいで被弾していた。
アサルトがほかの銃身と比べ形態変化に微妙に時間がかかるのも一因だろう。
これは早めに倒した方がいいな、とギルと連携し常にターゲットが自分に向くように形態を切り替えながら間断なく攻撃を続ける。
シアンのロングブレードの一撃がウコンバサラに致命傷を与えて、そのまま動かなくなった。
もう一体のウコンバサラが確認されていたので、二手に分かれて捜索する。
その間、ギルが言った。
「おいシアン、あいつ何なんだよ」
『私が聞きたいですよ、ミッションの撤退数がものすごく多いとは聞いてたんですけど…まさか単独行動をとるなんて』
そう、噂には聞いていたのだ、エミールの撤退数の多さは。
ヒバリさんすらげんなりするほどだ。
彼曰く、「騎士道に則って正々堂々とアラガミと対決している」らしいのだが、いい加減リタイアを覚えろと言ったコウタ隊長に対して「騎士道に諦めると言う言葉はない」と、開き直るどころかそう反論したという。
…もしかして第一部隊のオペレーターだけはヒバリさんが必ずやっていたのはエミールさんが原因なのだろうか。
その話をギルにすると、ギルは頭に手を当てて盛大にため息をついた。
「オペレーターや隊長を困らせる神機使いときたか…どおりで…。
さっさと俺たちで先に見つけて、倒しちまおう」
『そうですね』
そういう時に限って、相手が先に見つけてしまうものだ。
エミールから討伐対象を発見したという通信が入った。
すでに戦闘にも入っているらしい。
「くそ、先に見つけられたか。死なれちゃ面倒だ、早く合流するぞ」
『うわ!』
言い終わるやいなや、ギルはシアンの腕を引っ張り驚くスピードでエミールのもとへ走った。
だが加勢しようとした2人をエミールが制止した。
1人でやらせてくれ、騎士道の何とかを見せてやるとかなんとか。
「悪いがあんたの騎士道とやらに付き合ってるヒマはねぇんだ。さっさと終わらせてもらうぞ」
スピアを構えようとしたギルを、彼より一回り小さな手が制止した。
シアンだ。
「おい、なんのつもりだ」
『…やらせてあげましょう』
真顔でそう言うシアンに、ギルは「…勝手にしろ」と吐き捨てた。
何度も攻撃をくらいながら、エミールは訴えた。
「我々神機使いは…人々の希望の依り代だ!我々が、正義が勝つから明日を信じ!正義が負けぬから皆、前を向いて生きる!
神機使いは…騎士は!絶対に…負けるわけにはいかないのだぁぁ!!」
勢いのまま高く飛び上がったエミールは、重力に任せてハンマーをウコンバサラの脳天に叩きつけた。
ウコンバサラは大きな断末魔をあげると、その巨体は音を立てて倒れ動きを止めた。
「…や、やったぞ!!騎士の!騎士道の勝利だ!!!」
うおおおお、と雄叫びをあげるエミール。
「フン…バカなりに、筋は通った奴らしいな」
『…騎士道か。私でも騎士になれるのかな』
「お前、まさかあいつに感化されたのか?」
『違いますよ、ちょっと考えてることが似てるなって思っただけです。…私が神機使いになると決意した理由に』
「…へぇ……」
ギルが何か意味ありげに視線をこちらに向けてくる。
『…言いませんよ?』
「なんだよ勿体ぶりやがって」
『"A secret makes a woman woman...."てやつですよ』
「…一丁前にガキがそんな生意気な言葉覚えんじゃねえ」
『いいじゃないですか、別に。それにガキじゃないです』
フランから帰投準備完了との通信が入り、一同は無事フライアへ帰還した。
エミールはずっと機嫌がいい。
「最高の任務だった!シアン君と共に任務に臨めただけでなく、僕の騎士道をこの世界に示すことが出来たのだから!」
機嫌が良いのはいいが、余計にうるさくなってしまった。
シアンとギルはロビーにてエミールの一人語りに付き合わされて、2時間後には2人ともお互いの背を背もたれがわりに、ぐったりしていた。
「……こんなの聞いてねぇぞ……」
『……私だって聞いてませんよ……』
そうしてぐだぐだしていると、ロミオがやってきた。
別チームとして別の任務に向かっていたジュリウス、ナナと帰ってきたらしい。
「どうしたんだよ2人とも、ぐったりしちゃってさ。
そんなに疲れる任務じゃなかっただろ?中型2体なんて…」
「任務のせいじゃねぇ…」
「え?」
「…アイツと組んでみりゃわかる…」
「アイツって…誰だよ」
「オレは今これ以上お喋りする気力がねぇ…後にしてくれ」
「なぁシアン…」
『パスです』
ギルがダメならシアンに、と相手を変えたが即断られたロミオはあからさまにむくれた様子で去っていった。
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作戦は数日続いた。
今回の討伐対象はコンゴウ2体、場所は黎明の亡都だった。
しかし周辺にもまだアラガミがいるらしく、討伐後は各々別れて、そのアラガミの索敵に移行した。
当然だが極東から派遣されたエミールも出撃していた。
エミールは周辺にアラガミの気配がないか警戒しながら歩を進めていた。
ふと背後に感じた気配に振り返る。
そこには案の定アラガミが。しかし…
「なんだ、このアラガミは…?ガルムに似ているが少々姿が違うようだな」
通常のガルムは赤いたてがみと岩のようなガントレットが特徴だが、
このガルムらしきアラガミは全体的に白かった。
そこでエミールはある噂を思い出した。
ガルムに似た、強力なアラガミの話を。
確かデータベースにもその姿と名前が載っていなかったか。
名はマルドゥーク。
通常のガルムに比べて白い体躯が特徴の、炎を操るアラガミ。
マルドゥークは"赤いオーラ"のようなものを放ちながら雄叫びをあげた。
「フッ、お前が噂のマルドゥークか…さぁ、その手並みを見せてもらおう!」
アラガミを発見したら即座に連絡を入れることなどとうに忘れたエミールは、ポラーシュターンと名付けた自身の神機を構えた。
そしてそこで神機に異常を感じた。
(いつもの感覚がない…?)
神機は生体兵器。
動かす時にそのコアに反応があるはずだった。
しかしそれがない。
「まさか、こんな時に壊れてしまったのか?ポラーシュターン!」
しかし動かなくなるほどの外傷は見当たらないし、フライアへ来る前にメンテナンスを行ったばかりで、さっきまで調子もよかった。
こんなに急に壊れることなどあり得ない。
エミールが神機を気にしている間にマルドゥークが動いた。
彼に向かって突っ込んで来る。
咄嗟に避けたものの、初めて身の危険を感じたエミールはやむなく逃げるという選択肢をとった。
「うわぁぁぁぁ!!」
という悲鳴をあげながら。
逃げる間にも神機が動かないか幾度も試した。
しかし何度やっても何も反応がない。
エミールはマルドゥークに関して最も重要な情報を見落としていたのだった。
「なぜだ!!なぜ神機が動かない!!?」
『!エミールさん!?』
エミールの逃げた先にシアンがいた。
「おおシアン君!助けてくれ!僕の神機が動かないんだ!!」
シアンはエミールの背後から迫る白いアラガミを見て身を強張らせた。
こいつは強い。
外で生き延びてきたシアンの本能が、頭の中で警鐘を鳴らしていた。
『エミールさん、他のメンバーに救援信号をだして!私が引きつけます!』
「ああ、わかっ…うわぁっ!!」
『エミールさん!!』
白いアラガミに弾き飛ばされたエミールは、地面に倒れこんでしまった。
気絶しているのかそこから動く気配がない。
『く…』
白いアラガミの目がシアンを捉える。
通信を入れる隙もない。
自分の心臓の鼓動がうるさく聞こえる。
飛びかかってきたアラガミを飛んで避けるが、着地とほぼ同時に側面からやってきた前足の攻撃で盾を展開する間も無く吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。
『うっ……』
神機を杖代わりになんとか立ち上がる。
叩きつけられた全身が痛い。痛みと極度の緊張でシアンの息遣いが荒くなる。
『ハァ…ハァ…ここでやられるわけには……っ!』
ブレードを構える。
緊張のせいか、いつもよりも全身の神経が研ぎ澄まされたような、力が神機に集中しているような強い感覚がシアンの全身に駆け巡った。
『はぁぁぁっ…!!』
アラガミに向かって飛び出す。
『おりゃぁぁああ!!!』
シアンの渾身の一撃が、アラガミの左目をえぐった。
アラガミはその巨体を宙に浮かせ、ドシン…と倒れこんだ。
『ハァ…ハァ…どうだコノヤロー!』
しかし致命傷には至らなかったらしく、アラガミは再び立ち上がる。
倒すのは無理かと諦めかけたその時、視界の外からアラガミへ撃ち込まれる弾丸。
弾丸が来た方を見ると、ギルとロミオがこちらに駆け寄って来ていた。
「おい、大丈夫か!!?」
「助けに来たぜ!」
「シアン、大丈夫!?」
反対側からナナも来ていた。
ナナは目の前のアラガミに驚く。
「なにこれ!?」
「今はそんな事を気にしてる場合じゃねぇ、ありったけオラクル弾撃ち込め!」
3人は息も絶え絶えのシアンを庇うように並び、アラガミに銃弾の雨を降らせた。
それに驚いたアラガミがその巨体に見合わぬ俊敏さで崖上まで後退した。
「ちくしょう、弾切れ…!」
ロミオが近接形態に変化させるが、アラガミは反撃する事なく4人を見据えるとその場から去って行った。
それと同時に背後でドサッ、という音がした。
シアンが倒れた音だった。
「シアン!?」
漸くやって来たジュリウスがシアンを抱きかかえる。
ナナが心配そうにシアンの顔を覗き込む。
「シアン…大丈夫かなぁ…?」
「安心しろ、気を失っているだけだ…ギル、ロミオ、エミールさんを頼む」
「わかった。おい」
「あぁ」
「フラン、聞こえるか?帰投準備を急いでくれ。それと救護班を要請。けが人が出た、2人とも気を失っている」
《了解しました》
ジュリウスが一言呟いた。
「大したやつだ……」
「あの、隊長…」
「なんだ?」
ナナが言った。
「さっき、多分シアンが戦ってた時…妙な感じがしたんですけど…」
「ああ、オレもさっき"血の力"を感じた…恐らく覚醒したのだろう」
「やっぱり!実地訓練の時の隊長と同じだと思ったんだ〜。あれが血の力かぁ…シアンも隊長と同じ力を使えるようになったんですね!」
「どんな血の力に目覚めるかは人それぞれだ。恐らく俺とは違う力だろう…どんな力かは分からないけどな」
フランから帰投準備完了の連絡が入った。
気を失ったエミールとシアンはフライアへ到着後医務室へ運ばれた。
エミールの怪我は大したものではなく数時間後には目を覚まし、気を失ったのも脳しんとうを起こしたためと診断された。
シアンも怪我は比較的軽度ではあったが、極度の緊張状態にあったことと血の力の発現が重なり、それに伴い大きく疲労したために丸一日眠り続けた。
やっと書けました〜!
伝説はここから始まったのだ(的な)
ここまで書いたら書きたいことが山ほど出てきました。笑
また思いつく限り超スピードで投稿します。笑
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