彼を思う   作:お餅さんです

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十二話 「待望む晴」

 

「思ったより情けないね」

 

 痛い

 

 

「君が死にたくても死ねないのは晴の活性の炎が体内を巡っているからだろ?」

 

 辛い

 

 

「これは風紀委員が没収する」

 

 苦しい

 

 

 それにリングもとられちゃった。

 

 みんなには無理するなって言われてたけど、太陽サイもやられて真6弔花のみんなで黙ってつけた修羅開匣まで使ったのに。

 

 みんなが知ったら怒るだろうな。

 

 修羅開匣は全身匣兵器、強力だけどその分炎を凄く使って危険だから一人では絶対するなって言われてたし。

 

 

 もしかしたら…嫌われたかな。

 

 このまま誰も助けにきてくれなくて、

 

 ボンゴレに捕まって二度とみんなに会えなくなるのかな。

 

 それは…いやだな、

 

 会いたいな

 

 もう隠し事もしないし

 

 わがままも言わないから

 

 

 また、会いたいな…

 

 

 

 

 

 

 

「…ゴホッゲホっ⁉︎」

 

 急に体中を締めつけていた手錠がなくなった。

 それに指にリングがはめられて体に晴の死ぬ気の炎が回って傷も治り出した。

 

 いきなり肺に空気が入ってきたから少しせきこんだけどさっきと比べればすごく楽だ。

 

 一体どうしたんだろう。

 連れてくのに手錠を解くのは分かるけどリングまではめさせるなんて。

 

 倒れたまま視線を変えると、そこにはバラバラに散らばった僕を縛ってた手錠

 

 

 

「やぁみんな」

 

 コートを羽織った背中

 

 

「見た事ないのもいるけどまぁとりあえず…」

 

 服だけじゃなくて髪も合わせて全身真っ白の

 

 

「久しぶり♪」

 

 僕達のボスがいた。

 

 

 

「何でお前がここにっ⁉︎」

 

 僕がやっつけたキャバッローネのディーノって人が驚きながら言った。

 

 その人だけじゃなく部下みたいな人達や隣の雲の人もみんな驚いてる。

 

 もちろん僕もそう。

 こんなの始まる前に教えてもらってた計画の中になんてなかった。

 今の時間なら確か失敗するだろうからってGHOSTを牢獄から出す為に二回目の取引の準備をしなくちゃって言ってたのに。

 

 

「んー? デイジーの修羅開匣見たでしょ? こんな便利な駒ここで終らせるにはちょっと勿体無いかなって」

 

 …嘘だ。

 修羅開匣はどんな副作用があるかわからないって言って無くなった案だ。

 それを僕達真6弔花が見つけて黙って自分達につけた物だから絶対に知らないはずなのに。

 

 

 みんなが僕をまるで物みたいな扱いをした口調に顔を歪めていると雲の人が間に入ってきた。

 

 

「君がそこに転がってる彼を物扱いしようがどうでもいいよ。ただ部下の始末は上司がつけるものだろ? 彼のせいで壊れた学校の分だけ、君をここで噛み殺す」

 

 そう言ってトンファーを構えてきた。

 …でも確かこの人も僕を吹き飛ばして壊してたよね。

 

 

「別に付き合ってあげてもいいんだけどさ…」

 

「っ…待ちなよ」

 

 雲の人がこっちに走り出したけどもう遅い。

 もう僕も抱えられてミルフィオーレが作った炎を噴き出して飛ぶ靴、F(フレイム)シューズで宙に浮いてる。

 ディーノって人はまだ動けないだろうし雲の人は出来ないこともないけど基本は近距離、周りも深追いさせないように言い含めてる。

 

 

「どうせやるならもっと整った場所じゃないとね。次会うときまで楽しみにしててね♪」

 

 そう言って本格的に高度を上げて今僕達が使ってる基地めがけて飛び立った。

 

 

「…話は向こうに着いてからにしようか」

 

 僕だけに聞こえる声を発しながら。

 

 

 

 

 

 

「大体の事は聞いたよ。それで、何か言いたい事はあるかな?」

 

 桔梗やザクロ、ブルーベル、怪我が治ってきた幻騎士、そして僕だけ横たわってソファに座ってる。

 基地に戻り、内容が既に大凡分かってたのか真6弔花が集まると座らせて、向かいの椅子に座りながら喋り出した。

 

 

「…恐れながら申し上げます。まず幻騎士はこの事を知りません」

 

「全て彼がメローネ基地へ向かった後の事でしたので彼は本当に身に覚えがない筈です。そしてその間に私が偶々処分行きの書類を見たときに目に映り、これならばより強くなれると他の面々にも伝えた末に起こった事です」

 

「ですので全ての責任は私にあります。真6弔花のリーダーとしても、ここは私一人を罰するという形でどうか矛を収めて頂きたく存じます」

 

 真6弔花を代表したような形で桔梗が言った。

 他の僕達はみんな黙ってる。

 桔梗ほど上手に言えないからっていうのもあるけどここに来る前に桔梗から任せて欲しいって頼まれたから。

 

 それに罰とか言ってるけど多分何もされたりはしないと思う。

 今までそんなことは聞いたこともないし、すっごく優しいから。

 

 けどそれが一番つらい。

 いっそのこと本当に何かやって欲しいと思っちゃうくらい。

 

 …だって僕達は何もされないって分かってて言ってるから。

 

 

「…もし少しでも不調を感じたら直ぐにやめるんだ。何度も言うけど自分をもっと大事にしてね」

 

「それさえ分かればもういいよ、じゃあ明日も早しそろそろ寝ようか」

 

 そう手を叩いて締めくくった。

 

 

「…寛大な処置、痛み入ります」

 

 辛そうな声。

 本当に罰して欲しいって思ってるのが簡単に伝わってくる。

 

 他のみんなも部屋を出て行くとき歯を食いしばったり服の裾を握りしめててとても辛そうだった。

 

 

 部屋にはもう二人だけ。

 寝ようって言われたけど元々ここは僕の部屋。

 今では傷はもう治って少し疲れてるぐらいだけど一番重症だったし修羅開匣もしたから動かなくてもいいように僕の部屋で話し合ってた。

 

 無言が続く。

 寝るから動かないとダメなんだけど体が動かない。

 傷はもう治ったのに。

 どうしてかすごく辛くて、苦しくて。

 

 

 

「…ごめんなさい」

 

 先に話しを切り出したのは僕。

 

 この重苦しい空気に耐えられなかったから。

 

 

「なんのことに対してだい?」

 

 何でか質問された。

 ていってもさっき話してたことだけど。

 

 

「僕チン達が、勝手に修羅開匣つけたこと…」

 

 そう言うと椅子から立ち上がり僕が横たわってるソファの空いてる所に座って話し出した。

 

 

「さっきも言ったけどそれはもういいんだよ。元はと言えば不安にさせた僕のせいだし、君達は僕のことを考えて動いてくれただけだしね」

 

「ただ一つ言うことがあるとしたら…デイジーが一人のときに修羅開匣を使ったことかな」

 

「桔梗に聞いたよ、少なくとも周りに味方が一人はいるときに使うようにって伝えてあるって。それに君達の実力なら無理しなければ逃げ切れる筈なのに捕まってたし、僕が異常な炎の出力に気がつかなかったらボンゴレに連れてかれたかもしれないじゃないか」

 

 

 

 言葉が出てこない。

 言ってることは全部本当。

 

 太陽サイがやられたときは焦ったけど僕なら逃げ出すことも出来た。

 それをしなかったのは僕がもっと出来ると思ったから、

 

 もっと役に立ちたいと思ったから。

 

 

「明日はいよいよ大詰めだよ。デイジーの出番は後になるから、それまでゆっくり休んでなよ」

 

 

 脱落した人は一旦休むために離れることになってる。

 

 けど、それでも僕の炎は晴。

 少し無理すれば明日も始めから参加することも出来ると思う。

 

 最後だけじゃない

 

 もっとみんなの役に立ちたい。

 

 もっと、みんなと一緒に…

 

 

 

 そう考えてると手が置かれた。

 

 僕の頭に

 

 暖かくて優しい手が

 

 僕の気持ちを抑えるように

 

 

 …意識が遠のいてく感じがする。

 僕が思ってたよりもよっぽど疲れてたみたい。

 

 

「だから安心して。明日でやっと終わるんだ」

 

「そしたらきっと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなが笑顔でいられるから」

 

 

 …みんな、やっぱり僕行けなさそうだよ

 

 ごめん、でも僕の番には絶対戻るから

 

 だからいつか、

 

 

 今みたいな辛そうな物じゃなくて

 

 どうか白蘭様も、本当に笑えますように。

 

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