彼を思う   作:お餅さんです

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番外編
「伝える虹」


 違和感はあった。

 

 いや、むしろ本当は分かってたのかも知れねぇ。

 

 多くの財閥の買収、田舎の村での兵器実験、素質のある難病者や孤児の兵士化。そんなこれでもかと出てくる黒い噂に。

 

 なにより明らかでないものの、時折見せるどこかで見たことのあるその眼差しに。

 

 

 確かに証拠はねぇ。

 

 だけど、これだけは聞いてやってくれ。

 

 

 あいつが最期に遺した言葉だけは

 

 

 

 

 

 緑に恵まれ豊かだった森の木々はその大部分がなぎ倒された。近時代のアスファルトによる舗装もなかった自然そのままの大地は高熱により、一部を巻き上がった土煙で隠れながらも大きく捲り上がってる。

 

 ついさっきツナ達がお互いの全力で放った一撃によって出来てしまった痕跡。

 この惨状から分かるにその一撃はどっちもとんでもねぇ威力で競り合ってた。だが、初代が枷をといたボンゴレリングのお蔭もあってツナのやつが何とか押し切って白蘭のやつをふっ飛ばした。

 

 これで今いる十年後の未来での戦いが終わり、みんな無事に過去へと帰る事が出来る。

 

 そう、出来るはずなんだ。

 

 元凶が取り除かれた今現在も何故か表情を曇らせ、ボロボロのツナに心配されてるこの時代の大空のアルコバレーノ、ユニを見る。

 

 ユニはアルコバレーノの再構成、復活(リ・ボーン)を使わなかった。

 別にそれは構わねぇ。確かにそれをしねぇとこの世界の秩序は回復しねぇが、そんなことしちまえばユニは死んじまうからな。

 

 でも何故か辛そうな顔を隠そうともしないユニを見ると……忘れちまってる気がする。

 

 何か、大切なことを。

 

 

 そう考えていたとき誰のだったか短い悲鳴が上がる。

 

 それに驚き振り返ると、視線の先にそれはいた。

 

 

 

 目は朧気で何処を見ているのかすら分からねぇ。頭以外の右半身の殆どはさっきの一撃で吹き飛んだのか見当たらず、火傷だらけの左足一本で同じく焼けただれた残りの体を支えている。

 満身創痍どころかもう死んでるんじゃねぇかと思うような状態でも、確かに立っていた。

 

 そんな異様な光景に誰も、雲の真6弔花の桔梗ってやつがそいつの名前を叫ぶも誰も止めることすらしねぇ。

 

 何度目かの呼びかけでそいつの目に光が戻った気がした。

 それからほどなくして歩くような動きを見せるも、当たりめぇだが右足がないせいで崩れ落ちる。だがそれでも尚進もうとして体をツナとユニがいる方へと引きずっていく。

 

 するとさっきまで叫んでた桔梗が空へと雲の死ぬ気の炎を打ち上げ、白蘭の周りに今まで倒してきた幻騎士やデイジーを含めた真6弔花が全員集まった。

 

 情けねぇがここにきてやっと体を動かし全員が武器を構えなおす。

 だが確かバッテリー匣だったか、真6弔花全員が開けたことであっちは炎を回復するも、オレ達の殆ど全員はGHOSTのせいで炎をもってかれちまってる。

 

 白蘭は致命傷を負ってるものの少しづつ回復しちまってるし、そうでなくてもその強さはここにいる全員が知ってる。

 恐らく唯一対抗できるのがあそこまで追い込んだツナぐらいであり、自分たちが行けば邪魔にしかならないということも……

 

 一部のプライドがたけぇやつらは不満そうだが、それぐらいはわかってんのか何も言わず、ゆっくりとツナ達のところへと肩を借りながら進む白蘭達を止めようとはしない。

 

 

 それからたった十数メートルの距離にもかかわらず、数分という時間をかけてやっと二人の前に立った。

 

 途中でそこそこ回復したらしくしゃべれるぐらいにはなったみてぇだ。

 少し遠くて本人の声も怪我のせいか小さくて一部しかはっきりと聞こえねぇ。だが、それでもかすかに聞こえてきた声は感慨深そうに、何故かどこか少し嬉しそうな声でしゃべりだす。

 

 

「おめでとう……君は僕たちの期待通りに成長してくれた」

 

 また声が上がる。

 今度は悲鳴ではなく驚きの声が周りから。

 

 だがオレは驚くことはなかった。今までのが嘘みてぇな口調で、オレ達だけでなく初代がボンゴレリングの枷を解いたことまで全てがこいつの掌の上だったってのに。

 

 疑うなんてこともねぇし、むしろ今までの違和感が解けていく気さえした。

 

 

 そして次にそれは確信へと変わる。

 

 

 

 ユニが、震えながらおしゃぶりを渡した。

 

「……!? やめねぇかお前ら!」

 

 その瞬間今まで様子を見ていたやつらが我慢できなくなったのかあいつらに向かって攻撃をしようとしていたが、それを見て白蘭が何をしようとしてるか察したオレは滅多にしねぇ大声を出して止める。

 

「で……でもリボーンさん、あの白蘭におしゃぶりが渡ったんですよ!」

「ゔぉおおい! てめぇはあの意味がわかってんのかアルコバレーノ!?」

 

 それに対して反発はあったが仕方ねぇ、なんせついさっきまで全力でお互い戦ってたんだからな。

 

「とにかく、黙って見てろ」

 

 それでも少し本気で脅すように言うととりあえずは黙って見てるようになったが、正直オレもやろうとしてることはともかくどうする気のかが分からねぇ。

 

 

 そう、若干の不安を感じながら成り行きを見ていると、おしゃぶりを持つ白蘭の両手から炎が灯った。

 

「……!?」

 

 他のやつの殆どが何をしてるのか分からねぇのか不思議そうな顔をしてるが、似たような炎を見たことがあるオレだけは声こそあげなかったものの本気で驚いた。

 

「なあ、あいつなにやろうとしてんだ?」

 

 さっきの時も黙ってた山本がオレの様子に気付いたのか、この場に似合わねぇ不思議そうな顔で聞いてくる。周りを見れば他のやつらも何をしているのか当たり前だが分からないらしくオレの方を見てきた。

 そんなやつらにオレは自分へ少しのやるせなさを感じながら説明する。

 

 恐らく白蘭がしようとしているのはアルコバレーノの再構成、復活(リ・ボーン)

 

 アルコバレーノの復活はオレ達が過去の世界に無事に帰るために必要なことであり、本来なら大空のアルコバレーノであるユニが自身の命と引き換えに行う事を。白蘭がユニの炎を再現することで肩代わりしようとしていることを

 ……オレ達があいつに、無事に過去へ戻れるよう助けられようとしてるってことを。

 

 それを聞いたやつらは信じられないといった風に驚き、中には止めようとしてほかのやつらに押さえつけられてるやつもいる。

 

 

 中でも正一のやつはひでぇ有様だった。

 

 今まで自分のせいで始まってしまった白蘭の野望は絶対に止めるんだ、と誰よりも意気込んでいた。

 なのに詳細はまだ分からねぇが本当はその相手がツナ達を助けようとしてくれるなんて、思ってもなかったろうな。

 

 

 

 それでもそんなオレ達を嘲笑うかのように炎の熱はさらに上がっていく

 

 その規模も始めは掌に収まるほどだったにも関わらず、今では灯した本人すら包み出していくほど

 

 何か言ってる気がするが炎の壁のせいか、そもそもの声量のせいか上手く聞きとれねぇ

 

 

 それでもこれだけは何をおいても聞かなきゃならねぇ。

 

 そう思い、急いで近寄り口の動きを確かめようとすると……

 

 

 

『幸せだったよ』

 

 

 そんな言葉とずたぼろになったコート

 

 そして最後に、何人もの嗚咽を残して消えた。

 

 

 ……さっきまであいつがいたところに向かっていつも被ってる愛用の帽子を脱ぎ、胸に当てる。

 

 呪いにかかる前も含めて今まで一度もやったことのない感謝、そしてなにより尊敬の念を込めて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

grazie(ありがとな)…」

 

 

 

 確かに伝えてやる。

 

 なんたってオレは、あいつらの家庭教師だからな。

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