仮面ライダー×仮面ライダー W&ARTHUR NOVEL大戦ブレイク 作:名もなきA・弐
それでは、どうぞ。
プロローグ&Wの始動 / 二人で一人の探偵
そこは既に廃屋とも言える場所だった。
数年前から何かしらの研究がなされていたであろう巨大なその屋敷は現在、立ち入り禁止となっており廃墟マニアの好奇心を満たしたり若者たちの肝試し場所として使われている始末であった。
全ての部屋が倒壊している中、機能を失った膨大な数のコンピュータが鎮座している研究室とも言えるようなある一室だけが、埃被りながらも原型を留めていた。
本来ならば、何もないはずの部屋…。
しかし、そこには忘れ去られた…もっと言うなら、多くの調査員や研究員たちが見逃していたのだ。
一台のパソコン画面が点滅する…それは小さく早く点滅するとやがて大きくなりそして強烈な閃光が部屋中を照らした。
『あぁぁぁ……』
今ここに一人の『怪物』が目覚めた。
鳥かごを思わせるようなボディに、鉄くずが引っ付けられたような長い手足。
古びた機械人形を彷彿とさせる異形はライトのような黄色のモノアイで周囲を見渡す。
『時間軸は……なるほど、私が眠っていた間に随分と時が進んだものだ』
男性の声で納得したようにそう一人ごちた異形は自身を一度電子化した魔力へと返還させると、こことは距離の遠いある研究所の薄暗い内部へと侵入する。
研究所の部屋には培養液で満たされた十のカプセルがあり、その中には人型の異形が眠らされていた。
それを見た異形は楽しげな声で、今は亡き同業者へと向けて言葉を続ける。
『「道元」、貴様が残した遺産…使わせてもらうぞ。私のためにな』
身体中からケーブルのような管をカプセル全てに突き刺し、自身の魔力を流し込むと身体を軋ませる音を立てながら両腕を広げ、狂気で満ちた声で叫ぶ。
『さあ、目覚めろっ!!「妖魔衆」っ!新たな主の声に従い、世界再構築のための手足となれっ!!!』
瞬間、カプセルが音を立てて割れた。
『風都』……街の至るところに様々な形状の風車が回る、通称「エコの街」。地名・町名も風にちなんだものが多く、「ふうとくん」という街のマスコットキャラクターが人気者である。
風が吹き、風都タワー以外にも街のあちこちに大小問わず風車や風見鶏があり、街の電力はそうした光景の一端をなす風車による風力発電がかなりのウエイトを占めている。
そして今、休日で多くの子供連れの親子で賑わう広場は一体の異形の怪物の手によって破壊されようとしていた。
多くの人々が恐怖によって悲鳴をあげて逃げる中、黒いジャケットにダガーナイフと二丁の拳銃を装備した異形が暴れまわっていた。
『さあ、逃げ惑いやがれ人間どもっ!「神」となったこの俺に恐れをなして、精々しっぱ巻いて逃げやがれ!!』
自らを「神」と名乗った怪人『ソルジャードーパント』は人間を超えた力を駆使した攻撃で公共物を破壊して人々に恐怖を植え付けていく。
ドーパント……人間が「地球の記憶」と呼ばれる力を宿したUSBメモリ『ガイアメモリ』を自らに挿入することによって変貌した超人の総称。
メモリの強大さゆえに地球の記憶に飲み込まれたり、毒素に精神と身体を蝕まれてしまうまさしく禁断のアイテム。
兵士の記憶を宿したソルジャードーパントは自分に恐怖し涙する人々に気分を高揚させる……しかし、そんな彼の蛮行を、街の涙を許さぬ戦士たちがいたのだ。
『あん?何だこの…』
「音は」と最後まで言おうとした時だった。
広場からバイクのエンジン音が其の場に響き渡った。
前部の黒と後部の緑に塗り分けられた専用のバイク『ハードボイルダー』に跨っている男性が突如現れたのだ。
ハードボイルダーはスピードを殺すことなく、ソルジャーへと向かって行くと強化された身体をバイクの前輪で弾き飛ばした。
「ぐわ」と呻き声をあげて吹き飛ばされたソルジャーを確認するとハードボイルダーに乗車していた男性『左翔太郎』はヘルメットを外して愛用のソフト帽を被る。
「おいたはそこまでだぜ?ドーパント」
『神であるこの俺にバイクをぶつけるなど…何者だっ!!』
あまりにもありきたりなセリフに内心苦笑いすると翔太郎は二つのスロットがあるバックル『ダブルドライバー』を腹部に当てて腰に巻きつける。
「『フィリップ』…」
(問題ない、行こう翔太郎)
自分にしか聞こえない相棒である少年の声に頷くと、黒いガイアメモリ『ジョーカーメモリ』を取り出し起動させた。
【JOKER!】
『っ!?』
自分とは異なるメモリを取り出したことに驚くソルジャー…それに気にすることもなく翔太郎はジョーカーメモリを構えて叫ぶ。
「変身っ!」
すると、少年…フィリップから右側のスロット『ソウルサイド』に転送された緑色のガイアメモリ『サイクロンメモリ』を装填すると、左側のスロット『ボディサイド』にジョーカーメモリをセットし展開した。
【CYCLONE! / JOKER!】
風と切り札の軽快な音楽が鳴ると、翔太郎の顔に電子回路か涙のようなラインが浮かび上がると一迅の風と共に左右非対称の緑と黒装甲を纏った。
バッタのような赤い複眼にアルファベットの「W」または「V」を彷彿とする銀色のホーンが光る。
右側のソウルサイドに緑色の装甲の首元には白いマフラー『ウィンディスタビライザー』が風に揺られてなびく。
最もスピードに優れ、バランスが取れた風と切札の戦士『仮面ライダー
「『さあ、お前の罪を数えろっ!!』」
指を突きつけて宣言すると、Wはソルジャーの鳩尾に目掛けてキックする。
あまりのスピードにとっさに対応出来なかった相手は防御行動が出来ずに攻撃を受ける。
『がはっ!?』
「さーて、散々暴れ回ったツケ。まとめて払ってもらうぜ!!」
怯んだソルジャーを続けて蹴り飛ばすと今度は膝蹴りを叩き込み、鋭いストレートで吹き飛ばすと、意識をWの身体へと移したフィリップが指示を送る。
『翔太郎、メモリチェンジだ』
「ああ、撃ち抜くぜ」
了承を表すように左手首をスナップさせると金色のメモリ『ルナメモリ』と青の『トリガーメモリ』を取り出して起動する。
【LUNA!】
【TRIGGER!】
サイクロンメモリとジョーカーメモリを外すと、『幻想の記憶』と『狙撃手の記憶』を宿した二つのメモリを空いたスロットに装填、展開する。
幻想の狙撃手『ルナトリガー』へとメモリチェンジをし、専用銃『トリガーマグナム』を手に持つと引き金を引いて幻想の力を宿した弾丸は不規則な軌道を描きながらソルジャーに命中する。
『うぎゃああああああああっっ!』
軌道を読むことが出来ずにソルジャーは翻弄されていく。
攻撃を受けたソルジャーは地面を削りながら転がるとよろめきながら起き上がる。
『くそがああああああああああっっ!調子に乗ってんじゃねええええええっ!!』
「おいおい、マジかよっ!?」
本性を剥き出しにすると、自分よりも身の丈以上ある噴水の一部を持ち上げると驚くWへ向けて投げた。
それを回避すると、ソルジャーが突撃して来る。
回避後の行動の隙をついてWを殴り飛ばそうとしているのだろう。
しかし、それを読んでいたダブルは銀色のメタルメモリと赤いヒートメモリを取り出す。
【HEAT!】
【METAL!】
【HEAT! / METAL!】
起動してからサイクロンメモリとジョーカーメモリと入れ替えると、『ヒートメタル』へとメモリチェンジを行った。
『何っ!?』
「ゥオラッ!!」
『があああああああっっ!!?』
ソルジャーのナイフによる攻撃を受け止めるとソウルサイドからの炎のパンチを顔面に叩き込むと、専用武器『メタルシャフト』を構えて強烈な一撃を浴びせた。
熱き闘士によって再び吹き飛ばされたソルジャーはダメージが蓄積されているのか立ち上がることが出来ずにいる。
Wが止めを刺そうとメタルメモリに手を掛けた時だった。
「『『っ!!?』』」
突如急激なスピードで『何か』が落下してきたのだ。
この場にいた三人がそれによって生じた土煙によって顔を防ぎ咳き込む中…煙の中でゆっくりと起き上がる存在がいた。
全体のフォルムから見て女性型だろう…しかし黒い皮膚とボロボロの布きれ、紅に染まる瞳から人間はおろか全ての生態系に存在しないだろう。
禍々しい気配を放つ二体の異形の内の一体が黒い傀儡のような怪物を召喚すると周囲を観察するように見渡す。
『妖魔衆、開発ナンバー009「第九座」…Wの世界への到着を確認。これより探索行動を開始する』
『並びに開発ナンバー010「第十座」…行動を開始する』
二体は機械的な言葉で締めくくると、呆然としているWを無視して足を進める。
しかし、それを許さない存在がいた。
『おいおいおいおいっ!!何者か知らねぇが俺様を差し置いて何処行こうとしてんだ、あぁんっ!?』
Wに一方的に追い詰められたことで不機嫌になっているソルジャーは突如上空から現れた異なる存在に敵意を向けると「第九座」と自分を呼称した存在の右肩に手を置こうとする。
『これよりデータの収集を開始する』
『あっ?』
突如振り向いた第九座がソルジャーの黒い頭を掴んだ。
驚いた彼はその手から離れようと抵抗するが……すでに遅かった。
『ぎっ、ぎゃああああああああああああっっ!!?』
「『っ!?』」
絶叫と共にソルジャーの身体が粒子状に分解されていくと、使用者であった冴えない男性へと戻る。
ソルジャーメモリの力とメモリに残った使用者の情報を全て吸収したのだ。
ドーパントとは違う未知の怪人に警戒する中、第九座は男性を乱雑に投げ捨てると何も変わらぬ様子で取り込んだ情報の確認を始める。
『この世界に存在するデータの収集を完了…怪人ソルジャー・ドーパントのデータを保存。第十座と連携して複製作業に入る』
『第九座からの要請を受諾。ソルジャー・ドーパントの再現及び複製作業を開始する』
その言葉と同時に第十座が黒い怪物に手をかざすとそれは姿を変えて先ほどWと対峙していたソルジャー・ドーパントになる。
しかし、言葉通りに再現された存在だからか何処か無機質な存在となっており生気が感じられなかった。
再び進行を開始しようとした三体にWが行く手を阻む。
何者かは知らないが先ほどの言動や見た目からしてこちらに好意的ではない存在と判断したからだ。
理由は分からないがとにかくやばい、そう感じたのだ。
「お前らが何者かは知らないが、好き勝手なことはさせるかよ!」
『対象の強烈な感情を確認。先ほどの収集したデータから仮面ライダーWと認識』
『この世界に存在する仮面ライダーを確認。排除と情報収集行動に入る』
そう呟くと第九座は独特な構えを取り、第十座はソルジャーに指示を送りWに攻撃を開始する。
第九座の拳を受け流し、背後を蹴り飛ばすが入れ替わるようにソルジャーがWにキックを浴びせると地面を転がる結果となる。
何とか起き上がるも、二体に気を取られていたため背後から気配を消して近づいてきた第十座への反応が遅れてしまい、首元を片手で締められてしまう。
『仮面ライダーW…「左翔太郎」と「園崎来人」の情報を完了。その中から最も有効な情報の取得を確認。具現化させた情報を第九座へと移行させる』
その言葉と共に第十座がワールドを蹴って距離をとると自らの部位を剥ぎ取り『ある物』へと変化し第九座へと投げ渡す。
「何だ?あいつら何を…?」
ある物…ロストドライバーと純正型メモリ『ウェザーメモリ』をキャッチするとドライバーを腰に巻きつける。
『っ!?まさかあれは!』
【WEATHER!】
驚くフィリップの声を余所に第九座は、雨と竜巻、雷と太陽光で「W」を模った銀色のガイアメモリを起動させた。
『変身……』
【WEATHER!】
第九座がスロットに装填してロストドライバーを展開させると、感情のない顔に白い電子回路か涙のようなラインが浮かび上がると雷と竜巻、雨水が包み込んだ。
変身が完了すると、そこにはアルファベットの「W」を模した兜を持つ一体の戦士が立っていた。
先ほどとは対照的な白が主体としたカラーとなっており、マゲのある頭部と肩と首回りにかけて風神の風袋のようなものがあり黒い複眼がWを睨み付けていた。
「仮面ライダー、だと……!?」
『ウェザー、井坂深紅郎のメモリ…!」
「対象の反応と先ほどのデータから、この姿の最適なコードネームを発案……『仮面ライダーウェザー』。敵対対象の排除行動へ移る」
そう名乗ると、仮面ライダーウェザーはWに拳で攻撃をするが、あまりにも単調な攻撃のため防がれてしまう。
しかし拳に冷気を纏わせると、ヒートサイドのボディすらも凍結させる威力に驚くがすぐさま距離を取ってサイクロンジョーカーへとメモリチェンジする。
「武装召喚。『ウェザーソード』」
淡々と呟くと、ウェザーの手元には片手剣とライフル銃が合体した武器が出現し銃身を握ってソードモードに変えると、太陽の熱を宿した斬撃を浴びせる。
『翔太郎!エクストリームで…』
「ああっ!ぐはっ!?」
自分たちの切り札…『エクストリームメモリ』を呼び出そうとするが、刀身にあたる部分に持ち替えてガンモードに移行したウェザーソードによる銃撃を受けてしまう。
怯んだWを見逃さずウェザーは武器にメモリを装填した。
【WEATHER! MAXIMUM DRIVE!!】
「排除っ!!」
「『ぐわああああああああああああっっ!!!」
必殺技の銃撃『ウェザーテンペスト』をまともに受けてしまったWは変身解除こそ免れたがダメージによって動くことがままならずにいる。
止めを刺そうとウェザーと第十座、ソルジャーが動き始めた時だった。
【ENGINE! MAXIMUM DRIVE!!】
『ギィッ!?』
高熱を纏った青く光るライトを光らせた赤いバイクが第十座へぶつかり吹き飛ばされる。
赤いバイクは人型へと変わると赤い装甲を纏った戦士『仮面ライダーアクセル』へと戻る…それと同時に大型特殊車両の『リボルギャリー』が展開する。
「左っ!フィリップ!」
「照井……ぐっ!!」
「じっとしていろっ!」
アクセルが動けなくなったWを担いでリボルギャリーに乗り込むと、土煙を巻き上げて去って行った。
自分たちから逃げたのを確認したウェザーはバックルを閉じてメモリを抜き取ると第九座の姿に戻る。
『対象の逃走を確認。追跡は困難と判断』
『引き続き、探索を開始する』
第九座に続くように第十座も自らの傀儡となったソルジャーを一度粒子状に分解して内部に収納するとその場から跳躍して姿を消した。
一先ず、最初の話はWのターンです。初期のMOVIE大戦のようにWパートとアーサーパートに分かれてストーリーを展開します。
そうは言いましても、この作品は所謂映画版なので前後編にする予定ではあります。本編の方も気長にお待ちください。ではでは。ノシ