それでもいいという方は第十三話をお楽しみください。
文がスペルカードを砕き、そのカードの細かい結晶が太陽の光の照らされて雪のようにきらきらと輝いている。とても綺麗だが、見とれている暇はない。
ゴォォォォォォォォッ!!
紅葉の芭蕉扇の周りに風が巻き付いていき、それがだんだんと強く大きくなっていくのが見ていてわかる。
「くらえ!」
文が自分の武器を私に向かってぶん回し、纏った風を私に向けて飛ばしてくる。
風の形が見えるほどの強い風が、直径二メートルほどの大きさの竜巻を作り出し私に向かってきた。
反重力で浮かせていた岩や竹、土の塊などは吹き飛ばすか竜巻の中で発生している大量の鎌鼬で切り刻んでいく。直接当たっていない岩や竹も竜巻が巻き起こす風に竜巻の通る道を作ってしまい。盾にもなっていない。
「うおあああああああああっ!!」
魔力を使って体を浮き上がらせながらジャンプした。だが、右足が竜巻に巻き込まれてしまい。そのまま竜巻の中に引きずり込まれてしまう。
魔力で全身をガードするが、常に巻き起こっている鎌鼬に体や服を切り刻まれ、体中から出血が起こる。
魔力の膜が薄くなり、無くなっていった場所から鎌鼬に切り刻まれ始めてしまう。初めは狭かった鎌鼬に切られている部分もだんだんと広くなっていき、物の数秒で体中を切り裂かれ始めてしまう。
徐々に出血が多くなり、血が付いていない場所を探す方が難しいぐらいにまで血まみれになっていく。
竜巻に勢いが弱まるとすさまじい勢いで竜巻の中を移動していた私は、引きとどめようとする竜巻の力をぶっちぎって竜巻の中から飛び出して宙を舞う。
「かは……っ…!」
電気を体に流された時の切り裂かれるような疑似的な痛みとは違い。今度は本当に物理的に切られている痛みに涙が滲んでくる。
「…まだ生きてましたか…まあ、あれで死ぬとは思えませんが…」
竜巻から飛ばされた私の数倍は早い速度で目の前に現れた文が、私に呟くと持っている芭蕉扇に風をまとわせた。
「っ!」
腕を伸ばして進行方向上にある竹を掴んで体の動きを止め、文の攻撃の射線上から体を出させる。
文が巨大な鎌鼬を放ち、紙一重で私の体を切り裂かずに竹や地面を切り裂いた。初めに私をおぶっていた霊夢に奇襲をかけていたときのような光景が作り出される。
竹を掴んでいた私が進む強さが強かったせいで竹が大きく湾曲し、掴んでいられなくなった私は竹から手を離してしまった。
文がいる方向に遅れて向かった私は、文に向かって最大出力でレーザーをぶっ放すが文はひらりとかわすと、私に向かって空気の弾丸と飛ばしてくる。
再度レーザーを撃って空気の弾丸を撃ち落とすとそうとした。だが、空気の弾丸の方が一歩も二歩も早く、それは高速で接近してくると私の脇腹にめり込んだ。
「がはっ……!?」
圧縮されていた空気が爆発し、私は鎌鼬が含まれる爆風に切り裂かれながら弾き飛ばされ、後方にぶっ飛ばされてしまう。
「あ……ぐっ……!?」
周りの光景から地面が近くなっているのがわかり、受け身を取ろうとするがこの状況でどうやって体を動かして受け身をとればいいかわからず、私は何もできずに落ちていってしまう。
文が私に向かってもう一度攻撃を仕掛けてこようとするのが見えるが、受け身をとることすらできていない私にはどうすることもできない。
レーザーを文に向けて撃とうにも、地面に体が当たって狙いがずれて当たらないだろうし、落ちたところを鎌鼬で切り裂かれてしまう。
「…くそ……!」
私が呟いたとき、文が芭蕉扇を私に向かって振りぬいた。その軌道は私の首をきれいに切り落とすものだ。
死ぬ。そう思ったとき、
「魔理沙ぁ!!」
強い衝撃を背中に感じた。それは、硬くて冷たい土の感触ではない。さらに土の独特なにおいも感じることはできない。
感じたのは柔らかくて人肌に温かいぬくもりと石鹸の良い香り、それと鉄臭い血の香りだ。
「大丈夫かしら?」
お姫様抱っこをするようにしてキャッチして抱えた霊夢が私に言った。
「あ…ああ……なんとかな」
私が呟くと顔に少しだけ返り血をつけている霊夢が強く私のことを抱き寄せ、私を抱えたまま霊夢は文が飛ばしてきていた鎌鼬を屈んでかわし、地面をけって宙に浮きあがる。
「霊夢!!」
文が飛ばした鎌鼬とは別方向から血まみれの椛が出現し、ひびが入っていて半分にたたき折れられている大太刀を私たちに向かって振り下ろしてきてきた。
「あら、白狼天狗って意外と頑丈なのね」
霊夢は呟きながら椛の攻撃をひらりとかわし、振り下ろされて地面に埋まっている大太刀に足をかけて体を持ち上げ、椛の顔に膝蹴りを食らわせた。
「うぐっ…!?」
椛が持っていた大太刀を手から落とし、霊夢は私の体の足側を抱えていた手を一時的に離して大太刀を拾い上げる。
ひるんだ椛を拾った大太刀で切り裂きながら身を翻すと、文が椛には当たらないように飛ばしてきていた鎌鼬をかわし、文に向けて大太刀をぶん投げた。
「っ!?」
途中半端にかわした文の脇腹を大太刀が十センチ程度抉り、ぶった切る。
「うぐ……!?」
文が空中でバランスを崩し、地面に落ちて倒れこむ。
「ごほっ…!」
文が腹から血をダラダラと溢れさせながら吐血し、地面に血を吐き出した。
霊夢が私のことを抱き寄せながら、また抱き直して後ろに飛びのくと椛が私たちがいた場所を鋭い爪で切り裂いてくる。
「くそ…!」
全身を血まみれにしている椛が潰れた左目から流れ出している血をぬぐい、犬歯をむき出しにして唸った。
椛が私たちに向けて走り出そうとしたとき、いきなり空中に現れた数本のナイフが彼女の背中に根元まで突き刺さる。
「う……ぐぅぅっ……!!?」
走り出していた椛が地面に転がりながら倒れこみ、血反吐を吐いて地面の土を掻きむしった。
「あら、昨夜…遅いじゃない」
霊夢が私をグイッと持ち上げて抱え直しながら呟くと、何の前触れもなしに昨夜が私たちの隣に現れる。
「遅かった……それは私のセリフですよ、霊夢」
そういって現れた昨夜は両手に三本ずつナイフを持っていて、地面に倒れている文と椛の二人を見ながら呟く。
「…くそ……霊夢だけじゃなかったのか……!」
椛が刺されたナイフに強い痛みを感じて顔をしかめて呟く。相手から見れば戦況は最悪な状態といえるだろう。
椛が私たちを睨みながら下がり、体を何とか起き上がらせようとしている文の近くで立ち止まってこちらを警戒している。
「…それじゃあ、あの二人の始末は任せたわよ…昨夜」
霊夢はそう言いながら戦って方向感覚を失っている私にはどこに向かうかわからないが、ゆっくりと飛び立つ。
「始末……?霊夢…始末ってどういうことだよ…!」
私が霊夢に聞くと、彼女は平然とした顔で言い放つ。
「そのままの意味、殺すだけよ」
何を言っているのと言いたげな霊夢の目は、濁っていてとてもじゃないが直視できないような眼の色をしていた。
多分明日も投稿すると思います。