MH4Gの頃のお話で弓ちゃん視点となります
別に私が劣っているからどうとか、そういうことはありません。そんなことを気にしていたって仕様が無いことですから。
どうやら私の性格は他人よりも図太いらしく、我ながらとんでもない状況にいることは分かっていても頑張ることができます。
それでも……このパーティーにいると思ってしまうことが。それほどに、私を抜いた3人の実力があったというお話。
「ブレスワインってさ、美味しい?」
「……うん、おいしい」
最初はソロでした。
ただ、その時の私は本当にへったぴで、HR2になるための緊急クエストでさえクリアすることができないくらい。
だから、そんな私に声をかけてくれたあの人には本当に感謝しています。ひねくれたこの性格のせいで、それを言葉にすることはできませんが、それでも心の底から感謝しているんです。だって、あの時、あの人が声をかけてくれなければ、きっと私は止まったままか……ハンターを辞めていたでしょうから。
それから、先輩の力を借りどうにか緊急クエストをクリア。
そして、アルコールが入った勢いで私は、いつか先輩たちのパーティーへ加えてほしいと言いました。
その願いが叶ったのはそれからずっとずっと後になってからのことでしたが、あの時、勢いでもなんでも言葉にできたのは本当に良かったと思う。
「そっかぁ、それじゃあ今日は俺もブレスワインにしようかな。つまみは何が合うんだ?」
「ん~……私はロイヤルチーズが一番合うと思う」
先輩たちと出会ってからかなりの時が流れ、私だってそれなりに上手くなることはできていると思う。今は数多くのハンターたちの頂点であるG級ハンターの集まる大老殿にいますが、その中でも戦えるくらいには。
そんなこと、先輩たちと出会う前の私じゃ絶対に考えられないこと。
「あいよ、了解。ロイヤルチーズね。そんじゃ、今日はそれを試してみるよ」
「うん。おすすめする」
それでも、やっぱり私にはこの人たちに追いつける気はしません……
「んもう! 今はクエスト中なんだからご飯のことなんて話してないでモンスターに集中しようよっ!」
先輩と笛さんの会話へついにあの人のツッコミが入った。
はい、そうなんです。今は遺跡平原に現れたセルレギオス討伐のクエスト中。そうだというのに、まるで緊張感なんてなく帰ったら何を食べようかお話をしている先輩と笛さん。
「いや、だってなぁ。何回連続でセルレのクエに行っていると……おっ、スタンもらった」
「そうだけど、クエスト中くらいは……あっ、うん。ナイス」
確かに、ここ最近はずっとセルレギオスと戦っていることもあり、慣れてきてはいます。とはいえ、先輩たちほどの余裕はありません。
しかも、話をしているからクエストの方が疎かになっているかというと、そうではないんです。先輩も笛さんも、何の文句もつけようがないくらいの動きをしているんです。
そして、そんなふたりを怒るあの人だって……ホント、私とは次元が違いますね。
「……ずっと緊張していると疲れちゃうし、適度に抜かないと。スタン後、怒ったら閃光投げる」
「ん、任せた。まぁ、そういうもんだって。相棒さんはもう少しくらい楽にして良いと思うぞ?」
「えー、そうなのかなぁ……」
セルレギオスのスタン中、先輩と笛さんは頭に、あの人と私が脚へ攻撃。
そんな中でも3人は普通に会話。この人たちにはいったいどんな世界が見えているのでしょうか……
そして、スタンから起き上がったセルレギオスの咆哮が響き、その咆哮終わってから少しして視界が真っ白に。
視界が戻り見えて来た景色の先には、空中から叩き落され、もがいているセルレギオスの姿が。そんなセルレギオスへ全員で再びラッシュ。
さらに、閃光が解けないうちにあの人がセルレギオスの背中へ乗りました。
「ナイス。へい、相棒。セルレが空中にいる時に成功させたら落とし物も出るしぐぅれいとだぞ」
「……私のセリフを取らないで」
「そんな! 余裕っ! ありませんッ!!」
必死にセルレギオスの背中を斬りダウンを奪おうと頑張るあの人を他所に、砥石を使いながら自由な発言を飛ばす先輩と笛さん。
あの人もあの人で、そんなふたりの言葉に返せるだけの余裕はある。
って、ああそうだ。私は今のうちに強撃ビンを調合して、セットしないと。
そして、あの人も乗りも無事成功し、ダウン中にもう一度スタン。そこからのラッシュでセルレギオスは動かなくなった。
戦っていた時間は本当に短く、しかもほぼほぼ拘束していたため、危ない場面なんてありません。それでも、私にはあの3人の会話に加わる余裕がなかった。目の前にいるモンスターへ集中することだけで精一杯。他の3人の動きを見ている余裕だってないくらい。
……ホント、すごい人たちだ。
「んもう、ホントにこのふたりは!」
クエストを終えての帰り道。
ガタゴトと揺れる馬車の上で、あの人が今日もぽっぽこと怒っていた。
「まぁ、無事クエストもクリアできたのですし、良しとしましょう」
因みに、馬車へ乗り込んで直ぐ、先輩と笛さんは寝てしまいました。笛さんは先輩の肩を枕替わりに使っていますし、寄り添うように同じ毛布を使ってスピスピと寝ているふたり。まぁ、一応このふたりはカップルですもんね。
……大タル爆弾もありますし、使ってやりましょうか。
「そうだけどさぁ。もうちょっとこう、緊張感というかさぁ。だいたい、なんでこのふたりはクエスト中もあんなに余裕なのさ! 上手いことは知ってるけど、やっぱりちょっと次元が違うよね」
いや、私から見れば、貴方も十分おかしいレベルなんですが……それに、先輩や笛さん曰く、どうやらこのパーティーで一番上手いのはこの人だそうです。私には3人の存在が遠すぎるせいでその違いが分かりません。
「先輩と笛さんって昔からこんな感じだったんですか?」
「ううん、昔はちゃんと離れて寝ていたよ。くっそぉ、こうなったら間に入って寝てやろうかな」
あっ、いや私が聞きたいのはそのことじゃなくて……
あと、それはやめてあげてください。それはそれで面白いことになりそうですが。
「えっと、そのことじゃなくてですね。私がこのパーティーに入っていない時も、クエスト中はあんな感じだったのかって聞きたかったのです」
多分、そうだったんだろうなぁ。そして、そんなふたりにこの人が怒りながら会話に加わる。普通のハンターじゃ考えられないことだけど、この人たちならそんな光景が容易に想像できます。
「あっ、そのことか。んっと、ん~……そうではなかったよ。うん、昔はもっと張り詰めていたかな」
あら? そうなのですか? それは予想外。てっきり昔からこの3人はそんな感じなのかと……
「それじゃあ、最近になってからってことだったんですね。しかし、それはまたどうして……」
と、なるとそんな疑問を抱いてしまう。
昔――バルバレにいた頃が楽だったとはいいませんが、それでもモンスターの強さやクエストの難易度は絶対に今の大老殿の方が上です。だって、バルバレは上位で大老殿はG級なのですから。
上位とG級の間にある壁は厚く、だからこそG級ハンターはこの世界で尊ばれます。
そうだというのに……
「そりゃあ、そんなの決まってるよ」
「? 何がでしょうか」
「弓ちゃんがこのパーティーに入ってくれたから」
聞き間違いではなかったと思う。確かにあの人はそんな言葉を落としてくれた。
そして、その言葉の意味は……私が勘違いしていなければ、それはきっと……
「……そう、なのですか?」
「うん、このふたりがいつも言ってたよ。弓ちゃんがいるから本当に楽になったって。ま、弓ちゃんは私が認めたハンターなんだもん。そりゃあそうだよね!」
茶化すように笑うあの人。
ずっと……ずっと不安に思っていたことは確かです。先輩や笛さんから直接言われたことはありません。
心の中にあるモヤモヤの霧がずっとずっとあり続けていたんです。
そんな霧が一気に晴れた感覚。
身体が震え、鳥肌が立ち、目からは何かが溢れそうになったから慌てて上を向きました。
……そっか。私、このパーティーにいても良いんだ。
「とりあえず、このふたりにはお説教だ。弓ちゃんも協力してよ?」
目に溜まった何かを腕でぬぐい、もう一度あの人の方を向いてみる。
「ふふっ、私はこのままで良いと思いますよ。きっと私たちはこれが良いんだと思います」
「えー、でもさぁ……」
自分に、自信なんてない。
この人たちと比べたら私なんて本当にちっぽけだ。
それでも、私は前に進むことができそうです。