太陽のような君へ   作:こやひで

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謹賀新年

 ピンポーン

 

「……んっ」

 

 ピンポーン

 

「ん~」

 

 ピンポーン

 

 三度目のインターホンが鳴ったところでのそのそとベッドから出る。

 時計を見るともうすでに九時をまわっている。

 カーテンを開けると元気に手を振る胡桃と、ジト目でこちらを見ている維織の姿が見えた。

 

「……ヤバッ」

 

 慌てて下に降り、玄関の扉を開ける。

 

「明けましておめでとう~、ひーくん!!」

「お、おめでとう、今年もよろしくな、二人共」

 

 そう笑いかけるが維織はジト目のまま

 

「昨日、初詣に行くから九時にあなたの家に集合と言ったのは忘れたのかしら?私には今起きたように見えるのだけど」

「……悪い、寝坊した。十分で用意するから待っててくれ」

 

 二人を家に上げ、慌てて準備するためまた部屋に戻る。

 

「急がなくても大丈夫だよ~」

「胡桃、甘やかしては駄目よ」

 

 そんな会話が下から聞こえてきて、苦笑いしながら支度をする。

 そして、急いで支度を終わらせ二人の所に戻る。

 

「お待たせ。悪いな、待たせて」

「大丈夫だよ。行こう~」

「行きましょう」

 

 歩いて初詣に向かう。

 場所は夏にお祭りに行った桐谷神社だ。

 到着すると境内は多くの人であふれている。

 

「凄い人だね~」

「正月だからな。あんまり俺達から離れるなよ。はぐれるから」

「うん」

「急ぎましょう。あまり人込みは……得意ではないわ」

「そうだな」

 

 維織は人込みに酔う。

 人の流れに乗り、なんとか賽銭箱の前まで着き、お参りを済ませる。

 

「ふう。何とかできたな。あとはお守りでも買って帰ろうか」

「私おみくじも引きたいなあ」

「そうね。せっかくだし引いていきましょうか」

 

 歩いていると向こうから見知った二人組が歩いてくる。

 向こうも気付いたらしくこちらに近付いてくる。

 

「みんなも初詣来てたんだね。明けましておめでとう」

「おめでとうございます、祐子さん、先生」

 

 俺が祐子さんに会うのは体育祭ぶりだ。

 

「博人君と維織ちゃんは久しぶりだね」

「そうですね。体育祭の時はお世話になりました」

「お二人も初詣ですか?」

「ああ。誘われたものでな」

 

 先生は肩を竦める。

 

「今からお参りですか?」

「ああ。そのつもりだったんだが……人が多いみたいだな」

「私達、今からおみくじに行くんですけど一緒に行きませんか?」

「そうだな。先に行こうか」

「うん、そうだね。結構時間かかりそうだし」

 

 そういう訳で五人でおみくじの所まで歩いて行く。

 先生と胡桃が話しているのを見ていると祐子さんが話しかけてくる。

 

「そう言えば博人君と維織ちゃんは今年は大変だね。受験でしょ?」

「はい、大変ですよ。維織にも結構言われますしね」

「それはあなたがあまり勉強しないからでしょ」

「……俺は維織よりも学力が低いところに行くんだから維織程勉強しなくてもいいんだよ」

「二人共行きたい大学とかは決めてるの?」

「いやまだ全然です。何しろやりことが見つかっていないので」

「私もです……」

「家で調べたりしてる?」

「してるんですけど、あんまりこの話題が好きじゃない奴もいて……」

 

 そう言ってチラリと胡桃の方を見ると、その視線で祐子さんも察してくれる。

 

「……なるほどね」

 

 そう言って苦笑いする。

 胡桃はこの話題があまり好きではない。

 一学年下の胡桃は俺達が卒業すれば、一人で高校生活を送ることになるからだ。

 胡桃自身は無意識だろうがこの話題を維織としていると少し寂しそうな顔をする。

 

「仕方ないことなんですけどね。……やっぱり寂しいみたいです」

「君達はずっと一緒に居たからね」

 

 そんなことを話しながら歩いていると、あることを思い出す。

 

「俺達、もうすぐ修学旅行に行くんですけど何かお土産いりますか?」

「へえ、どこに行くの?」

「え~と、沖縄です」

「沖縄かあ。いいね~」

 

 祐子さんはそう言い俺の顔を見たが少し首を傾げる。

 

「……行きたくないの?」

「えっ?い、いや、そういう訳ではないんですけど」

「ふうん。まあ、余裕があればでいいよ。大人がねだる訳にはいかないからね」

 

 そう笑って祐子さんも先生の所まで歩いて行く。

 別に行きたいわけではない。

 しかし、沖縄には少し嫌な思い出がある。

 実は中学の修学旅行でも沖縄に行ったのだが、それが胡桃が事故に遭った一週間後だった。

 事故の日から全く話さなくなっていた維織と夜の海岸で話し合い、俺から離れると維織に言われた。

 そんな思い出がある少し因縁の場所だ。

 

「ひーくん、いーちゃん!!おみくじ引こー!!」

 

 胡桃が笑顔で手を振っている。

 俺も行こうとすると維織に袖を引っ張られる。

 

「どうした?」

「言い忘れていたと思って。明けましておめでとう」

「あ、あれ?言ってなかったっけ?」

「ええ。誰かを怒ることに頭が一杯で忘れてしまっていたわ」

「そ、それは悪かったな。今年もよろしく」

「よろしく」

 

 維織と一緒にみんなに合流する。

 そして、おみくじを引くが凶という文字が眼に入る。

 維織も凶、胡桃に至っては大凶という初めて見るようなものを引き当てた。

 逆に珍しいななんて言いながら三枚を木の枝に結び付ける。

 それを見ながら今年が良い年になればいいなと思った。

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