次回からは早く出来るよう頑張りますので、ご容赦を…ご慈悲を!!
引きこもりたい。
家に引きこもって、執筆と言う現実逃避をしたい。
歳星への航路を取って、早10日余り。
未だ、その影は捕捉出来ない。
その他にも、鉄華団はとある事情を抱えていた。
火星の運用資金が、かなりヤバいのである。
それを打開する方策として、名瀬に相談する。
ハンマーヘッドの艦長室には、名瀬、オルガ、ビスケット、アラズが集っていた。
「…これは…」
受け取ったタブレットの画面を見て、名瀬は言う。
「はい。僕達が、火星でギャラルホルンから鹵獲した物のリストです。それを売却出来る業者を、紹介してほしいんですが」
「馴染みの業者はいねえのか?」
「CGS時代から付き合いの有る業者はいますが…物が物ですから。並の業者では扱い切れないんじゃないか、と…」
ギャラルホルンから鹵獲したのは、ナノラミネートアーマーやらエイハブ・リアクターの部品やら、高値で取引される物ばかりだ。
「勿論、仲介料はお支払いします。お願い出来ないでしょうか?」
「出来なかねえがよ…お前ら、そんなに金に困ってんのか?」
と、名瀬は前の机に足を乗せながら言う。
「困っている。とても、スゴく、めっちゃの三段活用でも足りないくらいには困っている…金は要るんだよ、金が無きゃ艦も動かせねェんだよ…」
とても素直に、アラズはそう返答した。
「…そりゃ、そうだがな。なら尚更だ。なんで、俺が仕事紹介してやるって言った時に断った?」
「えっ? あ、いや…だって、あの話を受けたら俺達はバラバラになっちまうって…」
「それがどうしたってんだ? なっちゃいけねえのか?」
ちぐはぐな答えを返すオルガに、名瀬は続けて質問する。
「…俺らは、離れられないんです」
「離れられない? オイオイ気持ち悪ぃな、男同士でベタベタと」
「なんとでも言ってください。俺らは…鉄華団は、離れちゃいけない。繋がっちまってんですよ、俺らは。死んじまった仲間が流した血と、これから俺らが流す血が混ざって…そうして、鉄みたいに固まってる。だから…だから、離れらんねえんです」
「…………」
名瀬は立ち上がり、オルガを見据える。
「離れられない…そりゃあ結構、何とでもやれ。だがな、鉄華団を守り抜くってんなら…
「覚悟は出来てるつもりです。仲間でも何でもねえ奴の訳分かんねえ命令で、仲間が無駄死にさせられるのは御免だ。アイツらの死に場所は、鉄華団の団長として俺が作る!」
名瀬の視線に怯む事無く、オルガはそう断言した。
「それは俺の死に場所も同じです! アイツらの為なら、俺はいつだって死n」
「「馬鹿野郎が」」
「痛ッ!?」
名瀬のデコピンとアラズのチョップが、オルガに直撃する。
「テメェが死んでどうすんだ。指揮官がいなくなっちまったら、それこそ鉄華団はバラバラだ」
「ああ、コイツの言う通りだ。末端が何人死のうが戦局への影響は微々たるモノだが、指揮官が1人死ねば戦局は途端にガタガタになって崩れ去る」
息ピッタリな大人2人から説教を受け、オルガはふてくされる。
何故、アラズと名瀬が息ピッタリかと言うと。
タービンズと合流した日の夜に同じバーボンを酌み交わして夜遅くまで語り合った結果、見事に意気投合したからである。
「まあでも、血が混ざって繋がって…か。そういうのは、仲間って言うんじゃないぜ」
「…? じゃあ、何です?」
首を傾げるオルガに、名瀬はこんな言葉を放った。
「家族、さ」
◇
「だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「っしゃ、勝っち~!」
ハンマーヘッドのMS格納庫に、ガチムチの叫び声と美女の喜ぶ声が響く。
後者はともかく、前者は誰得でもない。
ちなみに、ガチムチ=明弘で美女=ラフタ・フランクランドである。
「ぐっ! はぁ…まだまだ、もう一戦!!」
「やめときな、熱くなってちゃ勝てないよ」
明弘を制止するのは、タービンズの1人アジー・グルミンだ。
「明弘は休んでて。次は俺がやるから」
「それにしても、アンタ達毎日毎日よく頑張るね」
タービンズの所有兵器であるMS「百練」にシミュレーターがあると知って以降、三日月と明弘は模擬戦をしている。
ここにタービンズのMSパイロットであるラフタにアジー、時にはアミダまでも加わって模擬戦に模擬戦を、更に模擬戦をしまくっているのだ。
「俺達には、それくらいしか出来る事が無いんだ」
「MS乗りってのは、MSに乗るのが役目だからな」
「…アンタは?」
三日月の隣に、アラズがやって来る。
「アラズ・アフトル。鉄華団の1人で、たまにMSに乗る。よろしくな」
「ああ。私はアジー・グルミン。向こうのがラフタ・フランクランドだ」
「…? アジー、その人は?」
「鉄華団の、もう1人のMSパイロットらしい」
「へ~」
面白そうな奴だなあ、とでも言いたそうな顔で、ラフタはアラズに近付く。
「あたしはラフタ。ちょっと私と戦わない?」
「ほほーう、面白い事を言うな。良いぞ、その申し出をした事を後悔させてやろう」
「随分大きく出たじゃない。その言葉、後で振り返って後悔しなさい!」
数分後。
「だああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「ヌルいな、出直して来い」
ハンマーヘッドのMS格納庫に、美女の叫び声が響く。
「やっぱりね」
「だよなあ…」
「? アンタ達、ラフタの負けを予想してた?」
「うん」
「おう」
三日月と明弘が、ほぼ同時に頷く。
「この前のギャラルホルンとの戦いで、バルバトスに乗ってたの教官だし」
「ギャラルホルンの奴らを、普通にあしらってたからなあ…」
「…何てこったい」
驚愕するアジーに構わず、三日月がこう言う。
「次、俺」
「良いぞ、掛かって来い三日月。ただ、俺はもう教官じゃないが」
「待ちなさい三日月! 次コイツとやるのは私よ! このまま引き下がる訳には行かない!!」
「いや、譲れよラフタ」
この後結局、全員がアラズと戦った。
その結果纏めてボコされてしまい、ムキになって模擬戦しまくったらしい。
◇
鉄華団とタービンズは、無事テイワズの本拠地「歳星」に到着した。
歳星は大型惑星巡航艦。
宇宙世紀で言う、ジュピトリスやサウザンズ・ジュピターのような物だ。
この2つと同等に、歳星はとにかくデカい。
その中にある水上の邸宅に、テイワズの
圏外圏に於いて、ギャラルホルンすら迂闊に手を出せない程の規模を誇る大企業、テイワズ。
その社長が、どんな男だったかと言うと。
「成る程、お前らが鉄華団か。名瀬から話は聞いてるぜ。なかなか、良い面構えしてるじゃねえか。オイ、客人にカンノーリでも出してやれ」
笑顔と共に、カンノーリまで出してくれる親父だった。
ヤクザ的に。
ちなみに、カンノーリと言うのはイタリアの伝統菓子だ。
本来はカンノーロと呼ばれるのだが、日本ではカンノーリとよく言われる。
この事から、テイワズが日本寄りの文化を持つ組織である事が見て取れる。
(水分が無いとキツそうだなオイ…カプチーノとか出してくれないんだろうか? いや、ヤクザが優雅にカプチーノ飲んでる所なんて想像出来ねェけど)
などとアラズが思っている間に、名瀬は話を進め始める。
「俺は、コイツらに盃をやりてえと思ってる」
「お前が男をそこまで認めるとはな。珍しい事もあるモンだ」
(女は認めるのか?)
「まあ、良いだろう。俺の下で義兄弟の盃を交わせば、タービンズと鉄華団は晴れて兄弟分だ。俺らテイワズの後ろ盾も得られる」
割とあっさり、マクマードは許可を出した。
「タ、タービンズと俺らが兄弟分?」
「そうだ。で、貫目はどうする?」
貫目とは、ヤクザ用語で組織内の順列の事である。
「五分で良い。どっちが上かなんて、コイツらとは無いからな」
「お前がそこまで言うとはな、名瀬。だがお前が良くても、周りが許さんだろう。お前と同等は、コイツらには荷が重い。せめて四分六にしておけ」
と、あっさり話はついた。
お土産を貰って、皆が社長室を出ようとしたが。
「ああ、クーデリア嬢は残ってくれないか?」
「はい?」
「ちょっと、話してえ事が有ってな」
◇
「後3つのアリアドネを辿れば、地球到着だな」
監察局のマクギリスとガエリオは、地球への帰路に付いていた。
「ああ、鉄華団の先を越せたのは大きい。非公式のルートを使われる可能性が高い以上、アリアドネでの観測は難しい。必然的に、地球圏で再び会い見える事になるだろう。裏でそちらも探らせているし、迎撃では地球外縁軌道統制統合艦隊にも協力を要請するつもりだ」
地球外縁軌道統制統合艦隊。
とても長く仰々しい名前を持つこの艦隊は、地球外縁軌道を統制統合するセブンスターズの一家イシューが指揮する艦隊だ。
ただ、地球外縁軌道で迎撃に当たらなければならないような非常事態は殆ど起こり得ないので、実態はお飾り部隊だが。
「カルタに、か。確かに、実戦経験が少なくともイシュー家の親衛隊は腕利き揃いだ。全く、抜かりなしだなマクギリス・ファリド特務三佐」
「誉めても何も出ないぞ、ガエリオ・ボードウィン特務三佐」
「単純に畏敬の念を示しただけさ。この呼び方が出来るのも、後少しだろうしな。地球に帰ったら、准将への昇進が待ってるだろう?」
「ああ、アルミリアとの婚約も有るしな。問題は、鉄華団がカルタの地球外縁軌道統制統合艦隊の管轄地域に入る前にラスタル・エリオンの
月外縁軌道統制統合艦隊…通称アリアンロッド。
セブンスターズの一家エリオンの当主ラスタル・エリオンが司令官を務める艦隊だ。
その艦隊規模は恐ろしく、月外縁軌道どころか宇宙にポツポツと散らばるコロニー群までも管轄地域としており、ギャラルホルン最大の戦力を誇る。
「まあ、そこは彼らの力に期待するしか無いな。ラスタルが失策する事を祈るのも変な話だが」
「全くだ。だが…彼らならば、本当にラスタルの目をかいくぐれるかも知れないしな」
◇
「アンタが、火星独立運動家のお嬢さんか。時の人と会えて光栄だ」
「い、いえこちらこそ。テイワズの社長さんに会えて光栄です」
歳星の社長室では、マクマードとクーデリアが話を始めた。
クーデリアの護衛として三日月が扉の側に立ち、傍観者としてアラズが応対用のソファーでくつろいでいる。
「火星経済の再生策として、地球側が取り纏めていた火星のハーフメタル資源の規制解除を要求。火星での独自流通を実現する為、わざわざ地球くんだりまで交渉に出向く。アンタの目的は、それで間違いないな?」
「はい」
ハーフメタルは、火星の地下資源である。
エイハブ・ウェーブによる電波障害を防ぐ特性を持つ金属で、エイハブ・ウェーブの影響下における電子機器の保護に必須と言われる。
MSやMWに用いられる事から、有用な資源となっている。
「うちで仕入れた情報じゃあ、現アーブラウ首長である蒔苗は本気でそれを通そうとしているらしい」
「…! 本当ですか!?」
「ああ。下手すりゃ、戦争になるな。新たな利権を得ようと、東西南北様々な組織が暗躍する。それこそどんなあくどい手を使ってでも、な。しかも、こいつは長引くだろう。利権を勝ち取っても、その後の各組織間では軋轢が残るからな」
自らが甘い汁を啜る為、他人を犠牲にする…もしくは搾り取る。
人間は結局の所自分が一番可愛いので、そんな事はごく当たり前のように行う。
だからこそ、人間は何千年と戦争を繰り返しているのだ。
「その資源の商売役として、テイワズを指名しちゃくれないか? お嬢さんが直々に指名した業者って言う大義名分を得られれば、当座の問題に関しちゃこっちでなんとかやれる。まあ、ちょっとした紛争は避けられないだろうがな」
(このタヌキ、さり気なく儲けを得ようとしているな)
と、アラズは心の中で呟く。
その商売人根性を少しばかり賞賛しつつ、世界情勢をもう一度考える。
(今の腐敗したギャラルホルンは間違いなくクーデリアの活動を妨害するだろうし、事実としてギャラルホルンと同等の影響力を持つテイワズしか、ハーフメタル資源なんて宝は扱えない。テイワズの単独での膨大な利益取得による財の不均等分配か、世界中で泥沼の利権争い…戦争をするか。現状、選択の余地は無い。格差拡大も世界の大きな課題だが、長期の紛争による更なる人口減少と比べれば小さな課題だからな)
厄祭戦以前に約120億人いた人口は、厄祭戦後には約30億人に激減した。
地球全土と地球圏のコロニー、更に火星圏にまで生活の場を拡大した今、人口の少なさは問題になっている。
11人で組むサッカーチームを、3人以下で組むようなモノだ。
それではコート全体を使えずサッカーが成り立たないように、約120億人が住む事を前提とした地球圏と火星圏をその4分の1ほどの人口で維持しようと言うのが、無謀な話だった。
アグニカ・カイエルの自伝「アグニカ叙事詩」の記述によれば、厄祭戦後に火星圏の維持を諦めて全人類が地球圏に住むべきとの意見も有った。
当時の状況を鑑みれば、それが一番の得策だっただろう。
ただ、それによって再び人口が増えた時、人類が火星に生活圏を拡大するのでは無く地球を再開発する方針を取ってしまう可能性が有るのではないか。
遥か昔、「宇宙世紀」と呼ばれた時代を経てようやく元に戻りつつ有った生態系を、再び壊してしまうのではないか。
そう言った意見も出され、結局は厄祭戦以前の経済圏を維持しているのが今の世界だ。
ここから更にハーフメタル資源を争って人類が疲弊していったとすれば、人類の未来には衰退と滅亡しか無くなるだろう。
現在の世界人口は約50億人にまで回復しているが、それでも経済圏の維持はギリギリだ。
「若い衆。名前は?」
アラズが考え込んでいる間に、一通りの話は終わってしまったらしい。
マクマードが三日月に話しかけている。
「三日月・オーガス」
「MS乗りか。よし、お前のMSをうちで見てやろう」
「は?」
「そう警戒するな、うちの職人は腕が良いぞ? ジジイの気まぐれだ、取り上げようって訳じゃねえ」
未だ決めかねている三日月に、アラズはこう言う。
「見てもらえ。鉄華団だけじゃ、バルバトスの維持やら改修やらは出来ないからな。何せ、現状世界に28機しか残ってない貴重な『ガンダム・フレーム』だからな」
「…うん、分かった。教官がそう言うなら、見てもらう」
「だ、そうです。また持って来ると思うんで、その時までに『ガンダム・フレーム』に興味の有る腕の良いメカニックに話をお願いしますよ」
「オイオイ、候補を絞り込むまで待ってくれよ。多すぎて困るぜ」
灰皿に葉巻を押し付けつつ、マクマードはぼやく。
恐るべし、テイワズ。
「それでは、我々はこれで--」
「…アンタ、俺とクーデリア嬢が話してる時に何を考えてた?」
「…何を、ですか? 一介のMS乗りに過ぎない俺に、そんな事聞いてどうするんです?」
アラズの質問に、マクマードは近くに有った菓子をほうばりながら答える。
「一介のMS乗り、ねえ…ただの勘なんだが、俺にはどうにもそんな風には見えねえ。
「過大評価が甚だしいですよ、マクマードさん。…ただまあ、答えろって言われたら答えますけど」
そこでアラズは息を吐き、こう答えた。
「どうすりゃ、世界はもっとマシになるのか。ただの空想ですが、それをクソ真面目に考えていましたよ。話を聞かずにね」
「いや、そこは聞いとけよ」
◇
その後色々な手続きを経て、イサリビとハンマーヘッドは地球へと出発した。
--のだが。
「ねえ教官、何でアンタまで残ったの?」
「んん? いや、あのMSオタクの面白すぎるメカニックからMSの長距離移動を可能にする支援機の事を長々と…具体的に言うと3時間2分53秒程熱弁されてな。途中から殆ど聞いてなかったけど、なかなか面白いアイデアだったから協力しようと言う事になった。その代わりに俺のグレイズの改修をお願いしたら、ノリノリでやって貰えたし結果オーライだ」
三日月とアラズは、歳星に残った。
バルバトスの改修が終了していないのと、MS長距離移動用支援機の開発協力の為である。
追加スラスターは百里のスラスターを流用した物であり、グレイズタイプの機体の背中に取り付けてエイハブ・リアクターと直結する方式を採用した。
これにより、アラズ専用グレイズはバルバトスと同等の機動力を得た形になる。
その代わりスラスターのバランス操作系がピーキーなモノになってしまったので、機体は並のパイロットでは扱えない代物になった。
今現在そのアラズ専用グレイズはイサリビに詰め込まれ、遥か彼方である。
「まあ、追い付くアテは有るし問題ない。心置き無く、バルバトスと支援機の方に集中出来る」
「明弘1人で大丈夫かな…?」
「まあまあ、信じてやれよ。無駄にガチムチな訳でも、無駄にタービンズの奴らとシミュレーションしてた訳でも無い。アイツの根性は筋金入りだし」
大分巻きましたが、地球へ出発。
歳星にいる間、鉄華団とメリビットさんとの出会いとかオルガのキラキラ放出とかシノとユージンのDT卒業とか色々有りましたが、原作通りの為カットさせて頂きました。
後、以前にも後書きで書いた通り、現在の人口とかはオリジナル設定です。
また、この作品世界は宇宙世紀とやんわり繋がっている設定となっております。
何年前なのかは定かでは無い(考えてない)ので、「へー繋がってるんだなー」くらいふんわりとお願いします。
実際、物語に関わるかと言えば微妙な所なので…。
次回、いよいよブルワーズが登場します。
ガチムチの弟を救うか救わないか、迷い中。
この世界、恐ろしくガタガタだなあ…