鉄華団のメンバーが1人増えました《完結》   作:アグニ会幹部

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今回から、地球編開始です。
戦闘が無い回ですね。


地球編
#20 決断


スレイプニルに帰還した後、アインはすぐに集中治療室へ放り込まれた。

一命こそ取り留めているが、アインの容体は酷かった。

 

「特務三佐、どうか落ち着いて聞いて下さい。我々は、あらゆる手だてを講じております。ただ臓器の大半が機能不全となり、全身の壊死も始まっています。このままでは、アイン・ダルトンはs」

「フザケるな、何としても元に戻せ! 言い訳は聞かん、元に戻せと言っているんだ! 戦士として戦場に戻れる体に…上官の敵を、討てる体に! このまま、このまま終わらせる訳には行かないんだ…!!」

 

医師に掴みかかり、ガエリオは叫ぶ。

 

「しかし、ここまでの怪我では機械的に延命するしか方法は…!」

「機械的…!? アインを機械仕掛けの化け物にするつもりか!?」

 

ガエリオに取って、機械になると言う事は人間をやめる事と等しい。

それに、ギャラルホルンが禁じている人体改造をセブンスターズが破る訳には行かない。

 

『ガエリオ特務三佐。マクギリス・ファリド特務三佐より通信です。至急、ブリッジへお越し下さい』

「…? マクギリスから…?」

 

艦長の艦内放送が、医務室にも響く。

困惑しながら、ガエリオがブリッジに行くと。

 

『やあ、ガエリオ。少しばかり進捗状況を確認しようかと思って通信したが、艦長から話は聞いた。アイン・ダルトンの件--何とかなるかも知れん』

「…!!? 本当か!?」

『ああ。人道的な方法で有るかは疑問が残るが』

 

そして、マクギリスはこう提示した。

 

 

『「阿頼耶識システム」。あのシステムなら、全身が動かなくともMSを動かす事が出来る』

 

 

「…なん、だと……!?」

 

友人の口より発された言葉に、ガエリオは固まる。

 

『元々「阿頼耶識」を始めとする人体改造は、厄祭戦後にギャラルホルンが意図的に広めたモノだ。その全ては、アグニカ・カイエルとその同士--初代セブンスターズの意向だ。自らのような者は、もう要らない時代だとな』

「--以外だな、マクギリス。アグニ会会長で有るお前が、アグニカの意思に逆らうような提案をして来るとは」

『偶々、アイン・ダルトンを生かす為の唯一の手段が阿頼耶識だったと言う事だ。私とて、アグニカの意思には逆らいたくはない。これは致し方ない事なのだよ、ガエリオ。お前とて理解はしているハズだろう? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ガエリオは歯噛みする。

それは、ガエリオが目を背けていた事だ。

 

最早「阿頼耶識」しか、アインを生かす術は無い。

 

『ガエリオ、時代は変わったのだよ。今の世界は、再び阿頼耶識が必要な時代へと逆行している。それを引き寄せる元凶こそが、クーデリアと鉄華団だ。そして、それを撃破して世界の秩序を守る存在こそがギャラルホルン。大義を成し遂げる為には、ある程度のリスクが必要だ』

「………ッ!!」

 

ガエリオは、決断を迫られている。

 

 

 

 

「い~やいやいやいや、よう来て下さった。儂が蒔苗東護ノ介だ」 

 

鉄華団は、件の蒔苗東護ノ介と面会していた。

太い眉毛にクソ長いヒゲを蓄えた、サンタになる為だけに存在するかのような老人だ。

 

鉄華団側のメンバーは団長のオルガと参謀のビスケット、何故か連れて来られたアラズにテイワズ代表のメリビット、クーデリアとフミタンである。

 

「待ちわびておったよ、長い事な。腹は減っとらんか?」

「ああ、魚の差し入れはどうも。美味かったぞ」

「ほっほ、それは何より」

 

蒔苗の言葉に、アラズがそう返す。

 

「蒔苗さん。悪いんだが、あんまりゆっくりする時間は俺達には無いぞ」

「ふむ。ギャラルホルンの事ならば、心配要らん。ここはオセアニア連邦の管理地域でな。連邦の許可が無ければ、ギャラルホルンとて自由に出入りする事は出来ん」

 

いかに「世界の警察」と言って良いギャラルホルンと言えど、軍を動かす為には各地域の許可がいる。

 

「けど、オセアニア連邦が俺たちを匿う理由も無いでしょう?」

 

のんびり話を進める蒔苗にイラついているのか、オルガが急かすように問う。

 

「ところが大あり。寧ろ、お前さんらに表彰状でも渡したいくらいには連邦は感謝しておるよ。どうも、ドルトの改革が上手く運んだようでな」

 

あそこまでの大事になってしまえば、ギャラルホルンとて隠蔽は不可能。

結果、労働者達の要求が呑まれるのを指を咥えて見る事しか出来なくなったのだ。

 

地球側が指示するのは変わらないが、成功と言って良い結果だ。

ブラックな労働環境の改善で、一時的にドルトの生産力は落ちる。

アフリカンユニオンに取っては大きな痛手だが、他の経済圏に取っては万々歳。

その呼び水となった恩人をギャラルホルンに売り渡すような真似を、オセアニア連邦はしない。

 

要するに、儲けさせて貰えるから歓迎するよと言う事だ。

 

「いや~愉快、実に痛快! それで…ふむ、何だったかな? お前さんらが来た理由は」

(時々ボケて油断を誘っているつもりか…? このジジイ、食えんな)

 

アラズが胡散臭い奴を見る目で蒔苗を見据えるが、蒔苗は全く動じない。

 

「それは、アーブラウとの火星ハーフメタル資源の規制解放の件で…」

「おお、そうだったそうだった。それはもう、儂に取っても実現したいと常々考えておった事だ」

 

と言ったものの、次にはこんな事を言った。

 

 

「だが、今は無理だな。儂は今、失脚して亡命中の身。つまり--()()()()()()()()()()()()

 

 

「--は?」

「オイオイオイオイ、何だそりゃ? 要するに、お前は今ただただヒゲがスゴいだけの普通のジジイって事か」

「うむ、そうなるのう」

 

アラズの失礼な言葉を、蒔苗は否定する事も無く頷く。

 

「ちょっと待て! それじゃあ、俺達は何の力も無い爺さんに会う為にわざわざこんな所まで来たって事なのか!? 俺達が今までやって来た事は、無意味だったって事か!?」

「やれやれ、若者は気が早くていかん。()()()()()()()()()。まだまだ残っておるよ、逆転の目はな」

 

蒔苗が提示したのは、全体会議。

近々、カナダのアルバータ州の州都エドモントンにてアーヴラウの代表指名選挙が行われる。

それまでにエドモントンに行かねばならないので、その道中の護衛を依頼したいと言う。

 

「よし良いな、それで行こう」

「ちょ、アラズさん!? 何を勝手に…!」

「戦争であれ政治であれ、速度ってのは大事だ。今回のアーヴラウ代表選に立候補しているアンリ・フリュウは、ギャラルホルンと癒着しているとか。こちらの動きにギャラルホルンが感づく前に、さっさとエドモントンに入ってしまうのが一番手っ取り早く安全だ」

「ほほう。お前さん、なかなか分かっておるのう」

 

速やかに賛成するアラズ。

対して、オルガ達はまだ決めかねている。

 

「で、ヒゲジジイ。選挙の勝算は?」

「ヒゲジジイとは、これまた酷い言い草だのう。勝算はほぼ10割、と言って良い。アーヴラウの議員達は、ギャラルホルンを良く思わない者が殆ど。アンリ・フリュウを支持しておるのも、ギャラルホルンに取り入ろうと企む極一部の者のみだ」

 

つまり、連れて行けさえすれば何とかなると言う事だ。

 

「--乗る価値は有りそうですが…?」

 

フミタンが、クーデリアとオルガに確認を取る。

クーデリアとオルガは、決断を迫られている。

 

 

 

 

その日の夜。

バルバトスとグシオン、流星号の整備を終えた雪之丞は、アラズの頼みでテルギア・グレイズを改修していた。

 

何でも、阿頼耶識を組み込むとの事だ。

シノの流星号と言う前例が有るので、すぐ終わるだろうとも。

 

MWの1機とコクピットブロックを入れ換える形で、改修は順調に進んでいた。

 

「オルガは、どうするって?」

「ああ。蒔苗の依頼、引き受けるらしいぞ」

「そうか--だが、ビスケットは反対なんだろ?」

 

雪之丞の問いに、アラズは苦い顔をする。

 

「そう、言ってたな。おやっさん、もしかして相談でもされたのか?」

「何でおめえはそう言うの分かるんだ? 相談されたよ…だが、迷いは無くなったみてえだ。俺らはただ、アイツらが死なねえように助けるしかねえ。コイツの改修も、その1つ何だろ?」

「ご明察。まあ、グレイズ・フレームはガンダム・フレームと違って阿頼耶識による運用を想定してないから、少しのミスマッチングは否めないんだが」

 

2人して、コクピットブロックの固定にかかる。

 

「--なあ。アラズって名前、本名じゃねえだろ」

「ほほう。これはまた、珍しく面白い事を言うなおやっさん。その根拠は?」

「根拠は無えが…10年前に何となく、呼ばれ慣れて無いような素振りが有ったような気がしてなあ」

 

雪之丞の推察に、アラズは一瞬考えてから。

 

 

「ああ。アラズ・アフトルってのは、最初に名乗った時に考えた名前だ。本名じゃない」

 

 

と、雪之丞の推察を肯定した。

 

「じゃあ、本名は何て言うんだ?」

「本名は--いや、止めとこう。俺が本名を名乗ったら、世界の情勢は大きく変わる。来るべき時が来たら、堂々と名乗ってやらァ」

 

そして、作業は完了した。

 

「阿頼耶識、マッチングオールグリーン。おやっさん、手伝わせてすまねェな」

「気にすんな。だが、いつまでも本名を隠してるのはどうかと思うぜ」

「だから、来るべき時が来たら名乗るって。全員が腰を抜かすような名前だ、楽しみにしといてくれ」

「アラズさん! アラズさーん!」

 

その時、団員の1人がやって来た。

 

「ようライド、どうした?」

「ああ、やっと見つけた! 大変です、ギャラルホルンが来ます!」

「--何? あのヒゲジジイ、断言してたくせにダメじゃねェか」

 

そっと蒔苗をディスりつつ、アラズはライドに続きを聞く。

 

「で、誰が来るって? オセアニア連邦の圧力を諸ともしないような奴だ、さぞかし偉いんだろ?」

「は、はい…えーっと、確か--そうだ! 地球何チャラ艦隊のバカダ・コイツー!」

「--地球外縁軌道統制統合艦隊の、カルタ・イシューな。流石はセブンスターズ第一席イシュー家、たかが1経済圏を敵に回しても痛くも痒くも無いってか? しかし、どう出て来る…? パイモンとか出されたら、面倒になって来るが…」

 

鉄華団に、安全な場所など無いのだった。

 

 

 

 

「逃がしはしないぞ鉄華団、このカルタ・イシューの名に賭けて! 我等、地球外縁軌道統制統合艦隊!!」

『面壁九年、堅牢堅固!!』

「さあ、捻り潰してあげるわ!!!」




この間に、ビスケットとオルガの衝突が有ったりします。
原作と同じなのでカットさせて頂きました、ご了承下さいm(__)m

次回、カルタ様無双。
残念ながら、ここはニチアサじゃ無いんだよなあ。
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