鉄華団のメンバーが1人増えました《完結》   作:アグニ会幹部

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また連日投稿です。
今回こそ、地球支部編は最後になります。


#28 火星の王

アーブラウとSAUの戦争から、約1ヶ月。

ヴィーンゴールヴでは、セブンスターズの会議が行われていた。

 

「今回のSAUとアーブラウの戦争について、全ての責任は地球外縁軌道統制統合艦隊に有る事は明白! 今回の件で、水面下で行われていた経済圏同士の争いは表に噴出するでしょう。そうなれば、現在のギャラルホルンにどれ程の抑止力が有るk」

「落ち着きたまえ、クジャン公。今回の騒動は、ファリド公だからこそ最小限に被害を抑えられたとの考え方も有る」

 

マクギリスの責任を追求するイオクを、ガルスは諫める。

 

「しかし、気になるのはアーブラウ防衛軍を指揮していた男の事だ。アーブラウ軍事顧問の鉄華団とやらが後方支援に徹していた以上、他の誰かが指揮を取っていたハズ。一体、誰が…」

「地球上の全てのデータを洗い出した結果、該当する人物は見つかりませんでした」

「そも、そのような人物が本当にいたのかが疑問です。鉄華団は後方支援に徹していたと言う情報が、どこまで本当なのか。アーブラウ代表とSAU代表が交渉した日には、鉄華団の施設から発進するMSを衛星監視網で確認していますし」

 

ガルスの追求を、イオクとラスタルは流す。

 

マクギリスも調査を行ったが、ガラン・モッサなる男の正体は追い切れなかった。

ラスタル・エリオンと言う男が後どれぐらいの手駒を持っているのか、全貌は不明瞭なままだ。

 

マクギリスは、次の動き方を考え始めた。

 

 

 

 

「ぬるい! もっと歯応えの有る状況を用意して下さい! これでは訓練にならない!」

「あらあら、大分厳しくしたつもりだったんだけどねえ。じゃあ、次は--これか…いや、これ?」

 

ジュリエッタの要望を受け、技術担当のヤマジン・トーカは新しいシミュレータープログラムを作り始めた。

 

『熱心だな』

「ええ。もっと私に力が有れば、ラスタル様は私が前線に出る事を許して下さったハズ。そうすれば、ヒゲのおじ様を失う事も無かった」

 

ヴィダールの近くに降りつつ、ジュリエッタはそう言う。

 

『君が前線にいれば、戦況は変わっていたと?』

「勿論です!」

『その発言は、亡くなった彼を愚弄する事になると分かって言っているのか?』

「--ッ!」

 

核心を突かれたジュリエッタは歯噛みした後、「ヒゲのおじ様」…ガラン・モッサとの思い出を呼び起こす。

 

「私の戦いは、ヒゲのおじ様に教え込まれたモノです。おじ様が、身寄りもない私をラスタル様に推薦して下さいました。私はラスタル様とヒゲのおじ様への恩返しの為、強く在り続けねばならない」

 

それを聞いたヴィダールは、物思いに耽ってからこう語る。

 

『君のような人間を知っている。尊敬する上官に拾ってもらった恩を忘れず、上官の存在を誇りとして戦い抜いた』

「…その方は、今どちらに?」

『--今は、近くにいる』

 

ヴィダールは、それ以上語る気が無いようだ。

 

「成る程…そのような立派な方とお知り合いだったとは、貴方は想定していたよりも真っ当な方なのかも知れません」

 

ジュリエッタは腕を組んで、頷きながらそう言う。

 

『君は俺が想定していたよりも、シンプルな精神構造をしている』

「…? それは、お褒め頂いているのですか?」

『勿論』

 

一瞬驚くジュリエッタだったが、すぐに満足げな顔を浮かべる。

 

「ふふ~ん…それはどうも」

「オーイ、ジュリー! セッティング、終わったよー! 300年前のデータを引っ張り出して、プログラム組んでみたよ!」

 

その時、ヤマジンから声が掛けられる。

 

「ありがとうございます! しかし、300年前のデータ…とは、具体的にどのような?」

「えーとね、初代エリオン公ドワーム・エリオンの戦闘データを持って来たよ。敵機体は『ASW-G-68 ガンダム・ベリアル』。とりあえず、1対1でやってみな! まあ、所詮シミュレーターだから本物には及ばないけどねー」

 

ジュリエッタはそれを聞き、指を鳴らす。

 

「ラスタル様のご先祖、300年前の英雄が相手ですか。受けて立ちましょう!」

「頑張れー」

 

気合い十分に、ジュリエッタはシミュレーター戦闘を開始した。

 

 

数秒後。

 

 

「………何ですか、あれは」

 

憔悴し切ったジュリエッタが、コクピットから出て来た。

 

「あはは…まさに瞬殺だったねえ。初代エリオン公は基本船で指揮取ってて、前線に出る回数は少なめだったって聞くけど」

「動きが…動きが、全く見えませんでした。気付いたら敵機が目の前にいて、剣を振り下ろして来ていました…強すぎます…速すぎます…昔はこのレベルのパイロットが72人もいたかと思うと、震えが止まりません…」

「じゃあ、止める?」

 

ヤマジンの問いで、ジュリエッタがいつもの元気を取り戻した。

 

「いいえ、もう一度お願いします! 今度は初代クジャン公を! あのイオク様のご先祖なら、もしかしたら…!」

「おっけー」

 

ジュリエッタはその後もそんな感じで、初代セブンスターズのデータを使った仮想敵相手にシミュレーションを繰り返した。

 

いずれも数秒で撃破されたが、ジュリエッタが頑張り続けた結果十数秒持つようになったそうだ。

 

 

 

 

すぐにアーブラウ防衛軍の持ち物となる鉄華団地球支部の本部施設。

その応接室で、マクギリスとオルガ、アラズは向き合っていた。

 

何でもマクギリスから、鉄華団団長に重要な話が有ると言う事だ。

 

「ガラン・モッサには、ラスタル・エリオンの息が掛かっていたと見て間違い無いだろう」

「--また、ラスタルって奴か」

「彼らを討たずして、ギャラルホルンの改革は有り得ない。相手側が仕掛けて来たと言う事は、もはや全面対決も近いだろう。これからは、君達にも手を貸して貰わねば」

「…一度組むって言った以上、筋は通s」

「ハイ、ストップ」

 

オルガの言葉は、アラズに遮られた。

 

「…アラズさん、何のつもりです?」

「いや、面倒事に巻き込まれる前に幾つか確認を取りたいだけだ。何故我々に固執する、マクギリス・ファリド? 地球外縁軌道統制統合艦隊は、先の地域戦争の功績を認められて更なる軍備増強に動いていると聞いている。鉄華団が関わらずとも、いずれはアリアンロッドに届きうる戦力になるハズだが」

 

アラズの問いに、マクギリスはこう返して来た。

 

「象徴が必要なのです。アリアンロッドを討滅し得ると言う、絶対的な力の象徴が。300年前のギャラルホルンには、確かにそれが存在していました。アグニカ・カイエルと、ガンダム・バエル。カロム・イシューと、ガンダム・パイモン。フェンリス・ファリドと、ガンダム・アスモデウス。クリウス・ボードウィンと、ガンダム・キマリス。ドワーム・エリオンと、ガンダム・ベリアル。ケニング・クジャンと、ガンダム・プルソン。リック・バクラザンと、ガンダム・ヴィネ。そして、ミズガルズ・ファルクとガンダム・アモン。天使を1匹残らず殲滅し、世界の平穏を取り戻してギャラルホルンの中核を担う事となった英雄達。彼らの尽力によって、現在のギャラルホルンは創り上げられました。しかし、今のギャラルホルンにそのような崇高なる意志は存在しません。セブンスターズも各局も腐敗し、権力抗争の温床と成り果て、社会的信用も失いつつ有ります。私は、この忌むべき現状に変革をもたらしたいのです。ギャラルホルンを改革し、今一度正しき秩序有る機関へと戻す。その変革に必要なのは、圧倒的な力の象徴と各経済圏の支持です。そして、私はその圧倒的な力を鉄華団に見た。アグニカ・カイエルの姿を。私は、貴方達の力を借りれればギャラルホルンのトップに立てると確信しているのです」

 

マクギリスの答えを受け、アラズは更に質問する。

 

「ギャラルホルンのトップだと? 最高幕僚長アグニカ・カイエルにでも成り代わるつもりか?」

「勿論です。私自身がアグニカ・カイエルとなり、世界を今一度変える。この計画に、鉄華団も力を貸して欲しいのだよ。オルガ・イツカ、鉄華団の団長よ。君達の協力の下、世界を変えた暁には--」

 

マクギリスは続けて、衝撃的な発言をした。

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「「--は?」」

 

オルガは愚か、アラズさえも首を傾げた。

 

「火星は各経済圏の植民地だが、実際にそれを束ね管理しているのはギャラルホルンだ。その権限を君達が持つとなれば、それは鉄華団が火星を支配すると言う事だ。つまり--()()()()()()()()()()()()

「火星の…王?」

 

オルガが、全く理解出来ないと言うような顔で固まる。

対して、アラズは少し考え込んだ後。

 

「オルガ、俺の意見を言って良いか?」

「あ、ああ…頼む」

 

オルガの了承を得て、アラズはこう話し出した。

 

()()()()()。先程、地球外縁軌道統制統合艦隊はいずれギャラルホルンに届きうる戦力になると言ったな。あれはあくまで『いずれ』だ。現状を見れば、地球外縁軌道統制統合艦隊の戦力はアリアンロッドに遠く及ばない。そこに鉄華団が加わったとしても、何が変わる訳でも無い。アグニカ・カイエルを始めとする300年前の奴らは、現在のMSパイロットとは次元の違う強さを持っていた。そうだな…三日月と戦ったとしても、10秒有れば奴らはバルバトスをスクラップに出来るだろう。アグニカ・カイエルは元より、初代セブンスターズの誰もがな。三日月のレベルは、当時からすれば最低ラインより少し上って所か。世界をも黙らせ支持を得る圧倒的な力とは、即ちそう言うモノだ。鉄華団にそんな戦力は存在しないし、そもそもだマクギリス・ファリド。貴様は、()()()()()()()()()()()()()()()()()? ああ、1つだけの道はお断りだぞ。戦場ならまだしも、政治に於いて一点突破は愚者の行いだ。メインの策略が失敗した時にも、それを鑑みてサブの策略に移れるような余裕が無ければ改革などは不可能だぞ」

 

アラズの指摘に、マクギリスは黙り込む。

 

「--策は1つか? ならば、乗る価値は無い。今まで通り、依頼人と仕事人の関係を続けるべきだ。依頼されれば仕事はするが、それ以上は踏み込まない--良いな、マクギリス・ファリド」

「…そう、だな。今回の地球支部の件では、アラズさんの頑張りで鉄華団には怪我人すら出なかった。でも、これからもそうとは限らねえ。悪いな、団員を守るのが俺の仕事だ」

 

マクギリスは、目を瞑って頷く。

 

「そうか、分かった。また依頼しよう」

 

そして、マクギリスは部屋を出て行った。

 

「--アラズさん。本当に、これで良かったんですか?」

「…さあな。あくまで、俺が意見を述べて俺的に判断した事だ。だが、あのマクギリス・ファリドの意見には私情が含まれているように思えた。奴の目的は、ガンダム・バエルと言う力を手に入れる事。それ以外は全て二の次だ、と考えていてもおかしくは無い。そんな奴の賭けに乗るのは、あまりに危険だ」

 

アグニ会会長だし。

アグニ会会長だし!

アグニ会会長だし!!

 

 

 

 

マクギリスとの話が終わり、オルガとアラズが部屋を出ると。

 

「すみません、少し…良いですか?」

 

そこには、タカキとアストンが立っていた。

 

「んん?」

「何だ?」

 

すると、2人はこう聞いて来た。

 

「あの…地球支部が無くなるって事は、これから火星に行くんですよね?」

「--ああ、そうなるな」

 

オルガが肯定すると、2人は頭を下げてこう言った。

 

「俺達は、一緒に行けません」

「鉄華団を--辞めさせて、下さい」

 

オルガとアラズは、続きを促す。

 

「俺達は、地球に慣れてしまいました。フウカも地球の学校に通って、毎日楽しく暮らしています」

「でも、俺達が火星に行ったらフウカは1人になる。そんな事、嫌です」

 

地球支部が開設して、約1年が過ぎている。

鉄華団の家族には地球に順応し、そこで暮らしたいと願う者も少なくない。

 

「分かった」

 

一言、アラズはそう頷いた。

 

「だが、これからどうするんだ? 鉄華団を辞めるって事は、収入が無くなるって事だ。収入が無けりゃ、人間的な生活は送れないぞ」

「--それは…」

 

2人は、言葉に詰まる。

かたや元宇宙ネズミ、かたや元ヒューマンデブリ。

そんな2人が、地球での金の稼ぎ方を知っているハズも無い。

 

「そんな事だろうと思ったよ。オルガ、悪いがちょっと蒔苗代表に繋げてくれ。コイツらに仕事を紹介するよう、頼んでやるよ」

「…あ、ありがとうございます!」

「気にすんな。だが、俺達が手伝えるのは今回までだ。これからは、自分の力で生きて行かなきゃならない。気張れよ」

 

オルガとアラズは、通りすがりに2人の肩を叩いてから去って行く。

 

「「お世話になりました!!」」

 

2人の声を、背中で受け止めて。




地球支部編、終了です。

初代セブンスターズのガンダムと初代セブンスターズの名前を一斉公開しましたが、バエルとキマリス、アグニカ以外は全てオリジナル設定であるとご理解下さいm(__)m

一応、下に一覧をのせて置きます。


ASW-G-01 ガンダム・バエル
最高幕僚長 アグニカ・カイエル

ASW-G-09 ガンダム・パイモン
第一席 カロム・イシュー

ASW-G-32 ガンダム・アスモデウス
第二席 フェンリス・ファリド

ASW-G-66 ガンダム・キマリス
第三席 クリウス・ボードウィン

ASW-G-68 ガンダム・ベリアル
第四席 ドワーム・エリオン

ASW-G-20 ガンダム・プルソン
第五席 ケニング・クジャン

ASW-G-45 ガンダム・ヴィネ
第六席 リック・バクラザン

ASW-G-07 ガンダム・アモン
第七席 ミズガルズ・ファルク


これに加えて、何機かのガンダムを所有した設定。
後、アグニカの階級もオリジナル設定です。
各局やセブンスターズをも越え、ギャラルホルン全体を指揮出来る最高階級です。

次回、いよいよMA戦へ。
たわけめ。
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