鉄華団のメンバーが1人増えました《完結》   作:アグニ会幹部

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やっと、トリントンへ到着です。


#39 トリントンでの戦闘

アマディス・クアークが指揮するヘイムダル日本基地の潜水艦と合流した俺達は、オーストラリアの湾岸都市トリントンへ寄港していた。

 

「ここが、オセアニア連邦の首都なんだね」

「ああ。大昔はキャンベラって言う都市だったらしいが、コロニー落としでシドニーごと吹き飛んだってさ。今ではこのトリントンが最大都市で、オセアニア連邦の大統領官邸が有るらしい」

 

数百年経った現在でも残る巨大なクレーターが、その惨劇を生々しく伝えている。

 

「よう。テメェがアグニカ・カイエルか?」

 

オーストラリア大陸に降り立って身体を伸ばしていると、1人の男が話し掛けて来た。

 

「ああ。と言う事は、アンタがアマディス・クアークか」

「おう。よろしくな、天才科学者サン」

「だから、平凡な科学者だって。俺をクソ親父や爺さん、マッドサイエンティストと一緒にしないでくれ後生だから」

 

そう念を押しながら、差し出された手を握り返す。

 

「で、アグニカの後ろにいるアンタは…」

「私? スヴァハ・クニギン、よろしく」

 

自己紹介した後、スヴァハは微笑を浮かべた。

対するアマディスは、大きくのけぞった。

 

「――?」

「オイ、どうしたアマディス?」

 

スヴァハが首を傾げ、俺は呼び掛ける。

すると、アマディスは瞬時に体勢を立て直してスヴァハに近寄り頭を下げ手を突き出した。

 

「こ、こここここんにちはアマディス・クアーク18歳彼女いない歴=年齢の童貞です彼女募集中d」

「ふん!」

「ごばはァ!?」

 

カチコチしながら年齢その他諸々を明かしたアマディスの顎に、俺が渾身のアッパーをぶち込む。

アマディスは宙に浮き、数秒空を舞ってから地面へと崩れ落ちた。

 

「ふう、危なかった」

「ちょ!? アグニカ、何やってるの!?」

「いや、スヴァハの節操が危機に晒されてる気がしたから…」

 

適当に返したが、本当は気付いたら拳が出ていた。

何故だ。

 

「ガハッ、ゴハッ…! テメェ、よくも俺の童貞卒業計画を邪魔してくれやがって…!」

「人の幼なじみで童貞捨てようとしないでくれないかな、アマディス君。スヴァハは見ての通り、純度100%の美女乙女処女でね」

「ア、アグニカ!? ちょっと、何暴露しちゃってるの!?」

「な、何だと!?」

 

スヴァハが顔を真っ赤にして俺に言うが、ここで引き下がる訳には行かにゅのだ!

男には、戦わねばならぬ時が有るッ!!

 

「ハハハハハ、オレが勝ったぞ童貞め! 処女とは即ち膜付き、それが良いんだろうが!! 処女は正義、これ世界の真理なり!!」

「膜を大事にするその考えこそ、まさに童貞! いや大事だけどね! と言うか、お前にだけは童貞とか言われたく無いわこの童貞野郎が!!」

「よーし分かった、戦争だ!! 膜有りが良いか膜無しが良いか、ここで決着付けたらァ!!!」

「おうとも、望む所だ!! 掛かって来いやァ!!!」

 

そうして、童貞による世界一下品で下らない戦争が始まった。

 

「――何で、こんな事に…」

 

スヴァハは肩を落としつつも、その光景を微笑ましく見守る事にした。

 

(アグニカには同年代の男友達がいなかったからね。たまには良いでしょ…すっごく恥ずかしかったけど…うう、落ち着け私!)

 

などと思いながら。

 

その世界一下品で下らない戦争…第一次処女膜戦争は、夜――アグニカとアマディスが空腹で街のカフェへ向かうまで続いたのだった。

 

 

 

 

翌日。

MAを狩ったMSを保有する組織の艦が寄港しているとの噂を聞きつけたオセアニア連邦の代表が、港へとやって来ていた。

 

「ようこそ、トリントンへ。私はオセアニア連邦第三代大統領、エリセオ・プラウドフット。君達が、あのMAを撃破したMSのパイロットだそうだな」

 

エリセオ・プラウドフット。

ヨレヨレのスーツを着てハゲ散らかった頭で日光を反射させ笑いを誘うにも関わらず、狡猾で周到な有能政治家だと聞いている。

 

彼は今笑顔だが、その裏にはどんな策謀が巡らされているか分からない。

 

「大統領自ら足を運んで頂けるとは、恐縮の限りです。しかし、我々はもう出発直前でして。申し訳有りませんが、用件は簡潔にお願いしたく」

 

この前クルーに怒鳴り散らしていた奴と同一人物とは思えない口調で、艦長が言う。

現在、トリントン出発予定時刻まで1時間を切っている。

こんなジジイに時間を割ける程、艦長はヒマではないハズだが。

 

「ああ、私の用件はもう終わったよ。先程、ヴィヴァト・クニギン博士の案内の下でMSデッキを見学させて貰った。後はこうして、ガンダムのパイロットの顔を拝もうと思ってな」

 

そして、ジジイは鷹よりも鋭い目で俺とスヴァハを観察する。

 

「ふむ…若いかと思いきや、覚悟は決まっているようだ。しかし、根性が足りんな」

「――根性、ですか?」

「そうだとも。それに、覚悟も真に必要な覚悟では無い()()()()()。艦長殿、道具の扱いは見誤られぬよう。彼らが死ねば、人類の希望は潰えるのだからな」

 

そう言い残し、大統領がブリッジを後にしようとした――その時。

 

艦内に、警報が鳴り響いた。

 

「これは…?」

「トリントン上空に、エイハブ・ウェーブ反応! 多いです…数、7!!」

「はあ!?」

 

今、7機って言ったか!?

 

「更に、トリントン深海にもエイハブ・ウェーブ反応! 以前戦闘したMA、ガギエルです!!」

「ちょっと、合計で8機!?」

「潜水艦に連絡を取れ! 水中のは、彼らに任せるしかない! 総員、第一戦闘配備! アグニカとスヴァハは、上空の6機を叩いてくれ!」

「り、了解!」

 

水中の戦闘は、ガンダム・フォカロルがベストだ。

空中はバエルとアガレスの舞台なので、俺達が何とかするしか無い。

俺とスヴァハはブリッジを飛び出し、MSデッキへ走るのだった。

 

 

 

 

トリントンの上空へ突如出現した、7機のMA。

これはガブリエルによって新たに造られた1種類のMA5機と既存のMA1機、それを運ぶ輸送用MA1機である。

 

輸送用MA「サハクィエル」は、トリントンに向けて新型MA1機と既存MA1機を投下した。

 

新型は、翼を持たない陸戦用MA「スイエル」。

既存は、プルーマの生産と運用に長けた陸戦用MA「バラキエル」。

 

2機のMAを投下した後、サハクィエルは次のポイントへ向かうべくトリントンの空から飛び去った。

 

 

 

 

「上空より、2機のMAが降下して来ます! 残りの5機は、どこかへ去って行きます!」

「どう言う事だ…? とにかく、2機と交戦になるのは間違いない! 落下ポイントの計算、急げ! アグニカとスヴァハを出させて、迎撃に当たらせろ!」

 

ひとしきり指示を出した後、艦長はブリッジに立ってモニターを見据えるオセアニア連邦大統領エリセオ・プラウドフットを見る。

 

「プラウドフット大統領、これより我が艦は戦闘行為を開始します。ご避難をお早く」

「今から避難するよりは、ここの方が安全だと思うがね。――MAを狩る『世界の光(ヘイムダル)』の実力、特等席で拝見させてもらおう。すまんが、このコードでトリントン駐屯軍と連絡を取れるようにしてくれたまえ」

 

大統領がそう言うと、SPがブリッジクルーにとあるコードの記された紙を渡す。

 

「――大統領権限、ですか。こんなコードの情報、我々に渡しても良かったので?」

「大統領権限のコードは、権限を一度使うたびに変わるよ。現状、この艦は大統領を載せている。此度の戦いではこの艦を旗艦とし、部隊を展開させよう」

「…ある程度の損害は、覚悟して頂きますよ」

「無論。今までMAが出た時点で都市の全壊と大半の住民の死亡は免れなかった。対抗策が出来ただけでも、儲けモノだと思わねばな」

 

そして、大統領は意地悪く笑った。

艦長はその笑顔に寒気を覚えつつ、命令を出した。

 

「ゲーティア、出航! これより、MA討伐を開始する!」

 

 

 

 

ゲーティアより出撃したバエルとアガレスは、フォカロルに連絡する。

 

「悪いが、水中のガギエルは頼むぞ」

『よろしく。こっちは何とかするから』

『おう、任せた』

 

フォカロルはそれだけで通信を切り、潜水艦から出撃したようだ。

 

「――さて、こっちも気合いを入れるか」

『うん…行こう』

 

その時、空中から2機のMAがそれぞれ着陸した。

着陸の衝撃でビルは崩れ、ガラスは割れ、道路が歪み、大地が震える。

 

「今、オセアニア連邦軍が一般市民の避難を進めてる。俺達の仕事は、その間MAの注意を引きつける事だ!」

 

バエルとアガレスは飛び、それぞれMAに襲い掛かる。

 

 

 

 

8本足のMA「スイエル」は正面からビームを発射し、トリントンを炎に包んで行く。

 

「させるか!」

 

突撃するバエルの前に、漆黒の小型機体「プルーマ」が立ちはだかる。

バエルはそれを一掃し、斬り掛かれる位置まで急接近した。

 

しかし、機体の上部から出るアームがバエルに向いて先端からビームが出た。

 

「うお!?」

 

バエルはすれすれで回避するものの、ビームはバエル後方のビルを破壊した。

続いてスイエルは機体前面のビームを放ち、また都市を破壊する。

 

「クソ!」

 

悪態を付きながら、バエルはスイエルの足の1本を切断する。

だが、その程度ではスイエルの体勢は崩れない。

合間を縫って群がって来るプルーマを弾きつつ、バエルは急上昇する。

 

「じゃあ、これ…で!?」

 

上部のアームがバエルを捉え、ビームを放つ。

射角や発射点を瞬時に変え、スイエルはバエルを撃ち落とそうとする。

あまりの連射速度の為、バエルは回避が精一杯だ。

 

「チッ、何か、奴の注意を逸らす方法は…!」

 

 

 

 

バエルが足止めを食っている頃、アガレスも同じように足止めを食っていた。

 

「何なの、あのプルーマの数!」

 

バラキエルは止まる事無くMAを生み出し続け、それを見事に操っていた。

これこそがバラキエルの特性であり、真価で有る。

 

プルーマを生み出し続け、操作し続ける。

シンプルだが、バカげた数のプルーマが統制を取って襲って来るのはなかなかに厄介だ。

 

「これで70機…! 減らないってどう言う事!?」

 

アガレスは銃のカートリッジを瞬時に入れ替え、正確無比な射撃でプルーマを撃って行く。

しかし、プルーマの数は一向に減らない。

 

1秒に2機撃っても減らないと言う事は、バラキエルのプルーマ生産速度が単純に1秒2機…全てのMAの中でも規格外である事を示している。

しかも、それが縦横無尽に襲い掛かって来るのだ。

 

「数瞬、数瞬でもMAまで射線が通れば…!」

 

大量のプルーマが壁となり、アガレスからバラキエルまで射線が通らない。

少なくとも、このままでは弾を使い果たして食い潰される。

 

「何か、他の方法は…!?」

 

 

 

 

姉に手を引かれ、その少年はシェルターへ向かっていた。

避難している理由はただ1つ、MAが攻めて来たからだ。

 

世界に厄祭をもたらす、天使。

人類を容赦無く殺し続け、今までに総人口の7分の3を死滅させた災厄。

 

それが、世間一般に於けるMAの認識だ。

 

「落ち着いて、落ち着いて避難して下さい! 現在はMAを足止め中です、焦らず落ち着いt」

 

誘導していたオセアニア連邦の兵士が、光に呑まれて消えた。

それがMAの兵器…ビームだと気付いたのは、熱い暴風により吹き飛ばされた後になる。

 

周囲は、地獄だった。

 

ビルは倒壊し、道路は溶けていた。

ビームが直撃した所にいた人々は溶けて消え去り、周囲には同じように吹き飛ばされて瓦礫に埋まった人や頭を打ち付けて死んだ人が無造作に転がっていた。

 

だが、そんな光景は少年の目に映っていない。

 

「…ねえ、さん――?」

 

手を握っていたハズの姉の姿が、どこにも無い。

打ち付けられた身体の痛みに耐えながら、身体を引きずって姉を探す。

 

どれくらい、そうしていただろうか?

 

「――あ、ああ…」

 

少年は、姉を見つけた。

上半身を無くし、焼かれて無惨に残った下半身を。

 

「ああ、あああああ――」

 

爆音は止まず、虐殺も止まない。

しかし、少年にそれを恐れる余裕など残っていない。

 

 

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ――!!!!」

 

 

少年の絶叫は、爆音に掻き消され誰に気付かれる事は無かった。

燃え盛る都市の中心で、少年はただ――泣き叫ぶ事しか出来ない自らの非力さを呪った。

 

 

 

 

海中では、フォカロルがガギエルと戦闘を開始していた。

フォカロルは水中用ダインスレイヴ「ハープーン」を放つが、ガギエルの装甲を貫く事が出来ない。

 

「チ――だったら、コイツで分解してやらァ!」

 

フォカロルは「トライデント」を構え、スラスターを全開にしてガギエルに襲い掛かる。

 

(前の戦闘からして、このガギエルの速度はもうサキエルに比べれば大した事は無い!)

 

ガギエルは魚雷を多数発射するが、フォカロルはそれをトライデントの回転で防ぐ。

回転を止めた後すぐにティザーアンカーを放ち、魚雷発射管に撃ち込んでガギエルを捕らえる。

 

「らァ!」

 

フォカロルはティザーアンカーを巻き戻し、ガギエルに張り付いて装甲の隙間にトライデントを突き刺す。

 

「せーのっ――って、うおッ!?」

 

ガギエルが回転を始め、フォカロルは振り回される。

しかし刺さったトライデントは離さず、ティザーアンカーから電撃を流す。

 

『       !』

 

魚雷発射管が爆発し、ガギエルの体勢が大きく揺らぐ。

その間に、フォカロルはガギエルの分解に掛かるが。

 

「どわッ!」

 

ガギエルは更に回転し、フォカロルを周囲の岩盤へ叩き付けた。

ティザーアンカーがガギエルから離れ、フォカロルの全身の動きが鈍くなる。

 

「チィ…!」

 

トライデントを振り、ガギエルの装甲の1枚を吹き飛ばす。

フォカロルはガギエルに取り付いたままスラスターを全開にし、ガギエルを押し出す。

 

「撃て!!」

 

潜水艦から魚雷が発射され、ガギエルに命中する。

堅い装甲には傷くらいしか付かなかったが、フォカロルに取っては僅かな隙さえ出来れば充分だった。

 

「死ねェ!!」

 

ハープーンを装甲を剥がした部分に押し当て、弾頭を発射。

内部に重大な損害を負ったガギエルの体勢が大きく揺らぎ、その隙にフォカロルはトライデントで追撃を掛けた。

 

『         !!』

 

不協和音を鳴らしながら、ガギエルは残された弾薬の信管を作動させる。

 

「ヤバいか…!?」

 

フォカロルがガギエルから離れた時、潜水艦からの魚雷がガギエルに直撃して機体を離れさせる。

ガギエルの中に残された弾薬が一斉に起爆し、大爆発を引き起こした。




では、オリジナル設定解説を。


オセアニア連邦首都トリントン。
原作ではオセアニア連邦の拠点が語られてなかったと思うので、勝手にトリントンだとしました。
UCのep.4を見る限りかなりの大都市でしたので、鉄血世界でも変わらず大都市に発展していておかしくないかと。

エリセオ・プラウドフット。
オリジナルキャラクターです。
オセアニア連邦の第三代大統領になります。

MA、サハクィエル。
バキシムさんより頂いた案を元に、設定しました。
巨大な6枚の翼を持っている為飛行に特化し、翼1枚につき1機の陸戦用MAの運搬と補給、投下を行う輸送用MA。
空中の他、宇宙でも運用されます。
ただ、戦闘力は無くプルーマも生み出せません。

MA、スイエル。
こちらも、バキシムさんより頂いた案を元に設定しました。
翼は無く、8本の足で移動する蜘蛛に似た形状の陸戦用MA。
胴体は横向きになっていて側面からは足が生え、上面からはビーム砲を内蔵した腕が生えています。
また、胴体の正面にもビーム砲が取り付けられており破壊力抜群。
機動性は低いですが、プルーマの生産能力に優れています。

MA、バラキエル。
pakuyasaさんより頂いた案を元に、設定しました。
本体の武装は無く、プルーマの生産と運用に長けた陸戦用MA。
生産速度は1秒に2機と言う、数で攻める怖いタイプですね。


戦闘は、次回も続きます。
いつになったら日本へ行けるのやら…
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