定期更新に戻さねば…。
では、遅れた言い訳を致します。
ガンダムウォーズで逆シャア&閃ハサイベントが開催中でして。
持っていたHi-νガンダムとナイチンゲールにポイントで交換したアムロとシャアを乗せ、周回を続けております。
BGMは「MAIN TITLE」「SALLY」「SWAN」「BEYOND THE TIME」を流しながら。
ベルファスト基地へ入港した俺達は、その応接室でベルファスト基地所属のガンダムパイロット達と向かい合っていた。
既にゲーティア、サロモニスに乗る俺達は自己紹介を済ませている。
「では、こちらじゃな。ワシはトム・ダレイニー。この基地でガンダム・フレームを建造した科学者じゃ」
「私は、イーモン・ハットン。トム博士と同じく、ガンダム・フレームの建造に関わった科学者だ」
トム・ダレイニーの方は、爺さんことプラージャ・カイエルより年を取っているであろう。
頭から毛は消えており腰もかなり曲がっているが、その眼光は鋭い。
もう1人のイーモン・ハットンは、クソ親父やマッドサイエンティストと同年代に見える。
パッとしなさそうでマトモそうなキャラだが、大体こう言うキャラは思考回路がぶっ飛んでたりするんだよなあ。
「フェンリス・ファリド、ガンダム・アスモデウスのパイロットだ。撃墜数は――7か」
「クリウス・ボードウィンだ。ガンダム・キマリスのパイロットを担当している。撃墜数は6機だ」
「ケニング・クジャン! ガンダム・プルソンのパイロットだ! 今まで、5機を殴り殺したぜ!」
「俺はリック・バクラザン。ガンダム・ヴィネのパイロットで、4機を刈り殺している」
黒髪のイケメンことフェンリス、紫髪のイケメンことクリウス、黒髪のバカことケニング、金髪のそこそこのイケメンことリック。
この時には知る由も無いが、後に初代セブンスターズになる者達だ。
「――え、次俺? クレイグ・オーガス、バルバトスのパイロット」
「オーウェン・フレッチャー。撃墜はまだしてないが、電子戦なら任せろ。ところで、何か機体は無いか?」
オイ、1人機体を失ってんゾ。
後でガンダム・フレームの1機を進呈しなくては。
12機くらい余ってるんだよね、ゲーティアに。
「ナトリア・デヴリンよ。ガンダム・フェニクスのパイロットで、天使を3機撃墜していますわ」
「エドゥアルダ・デヴリン…です。ナトリア姉さんの妹で、ガンダム・ハルファスのパイロット…しています…」
「
「ドリス・マクソーリー。ガンダム・ストラスのパイロットをしています」
「
「ミランダ・アリンガム。機体は――無くしたわ」
おや、2機目のガンダム要り用の方が。
ミカエルの襲撃を受けた日本基地と同じような状況に有るこのベルファスト基地で、何が有ったのだろうか?
「和弘・アルトランド。グシオンのパイロットをやってる」
「ローズ・ランフランク。機体を無くしたの」
「
機体を無くしたのは、3人。
生きているのは15人、ベルファスト基地に有るガンダムは12機――6機が撃墜されたと言う事か?
「このベルファストで、何が有った? 都市は生き残っているようだが――」
「ああ、私から説明しよう」
名乗り出たのは、フェンリス・ファリド。
どうやら、全体を纏めるリーダー的存在のようだ。
「MAの襲撃を受けた。しかし、先程の戦闘が我々の初陣となっていてね」
「初陣? 今の今まで、MAがベルファストを嗅ぎ付けていなかったと?」
「ああ。都市と基地の隠匿には、細心の注意を払っていたからな。トム博士の悪知恵…妙案も有り、無事に隠し通せていた」
今、悪知恵って言った。
何でこう、科学者ってガンダムパイロットから嫌われてるんだろう。
「だが、どうやって嗅ぎ付けたのか――2機のMAが何十機ものMAを引き連れてベルファストを焼き払いに来た。そちら側のデータと照合した限りだと、天使群を率いていたのは『天使長』ザドキエルとハシュマル。戦闘になり、先にザドキエルを後退させる事に成功した」
――3人のパイロットと、6機のガンダム・フレームを犠牲にして。
フェンリスは、そう付け足してから話を続ける。
「しかし、ハシュマルの後退はさせられなかった。そこへ現れたのが、君達だったと言う訳さ」
「成る程…都市を隠す妙案に付いては置いておくとして、2機の天使長による襲撃か――よく、ベルファストを守り抜いたな」
ドワームが、そう賞賛する。
だが、フェンリスは暗い表情を浮かべたままだ。
「――まさか。仲間の犠牲の上に得た栄光や賞賛など、栄誉とは言わん。私達は、仲間を捨て石にしなければならなかった」
「―――」
全員が黙ってしまう。
その静寂は、手を叩く音によって破られた。
「フェンリス、過ぎた事をとやかく言っている場合では無いだろ? 終わった事は終わった事で、過去は変えられない。未来を見据えろよ、未来を!」
「…ケニングの言う通りだ。ここはこう、パーッと歓迎パーティーでもしようじゃないか!」
ケニングの指摘を受け、クリウスがそう提案する。
「歓迎パーティー?」
「そうさ! せっかく、こんな人数のガンダムパイロットが揃ったんだ。これから連携して行く事を考えても、皆で腹の内を語り明かして親睦を深めないとな!」
「…論理的では有るが――それは要するに、自分の恥ずかしい過去大暴露大会だろ?」
「恥ずかしい過去とか…止めてくれよ」
「アグニカ、顔が曇ってるよ? 何、お漏らしが10歳の頃まで続いたとかそう言うk」
「よーしそこまでだスヴァハ! お願いだから、それ以上言うな!!」
こんな感じで、歓迎パーティーが行われた。
その後、バカ騒ぎが行われる事となるのだった。
◇
――時は一旦戻り、P.D.0325年。
ギャラルホルン本部基地「ヴィーンゴールヴ」のセブンスターズ会議場でのアグニカの過去話では、ようやくセブンスターズの初代当主達が出揃った。
しかし、アグニカが話し始めてから既に数時間が経過していた。
「一旦、休憩にしようか。いい加減疲れたしな、休みは必要だろう」
アグニカはそう言って、話を切った。
セブンスターズの面々も鉄華団の面々も、まさかここまで話が長いとは思っていなかったようだ。
休憩が宣言されるなり、とりあえず全員がトイレへ向かった。
そして、男連中からパラパラと会議場に戻ってき始めていた頃。
「話は真実なのですか?」
と、いち早く帰って来たジュリエッタがアグニカに尋ねる。
彼女はラスタル・エリオンの付き人として、この会議場でアグニカの話を聞いていた。
「ほう? では、ウソではないかと勘ぐった理由は何だ?」
「『アグニカ叙事詩』と内容の異なる部分が、多いように思います。特に酷いのが、スヴァハ・クニギンなる女性について。叙事詩には、
ジュリエッタの指摘を受け、アグニカはこう返す。
「だって、恥ずかしいじゃん」
「……………はあ?」
「アグニカ叙事詩はヘイムダルメンバーだった者の1人が原稿を書き、俺が手直ししたモノだ。その時、スヴァハ関連のは消させてもらった。メチャクチャ妄想されて物語が膨らんでたし、割と整合性高くて気持ち悪かったし! 何より、恥ずかしいし!!」
そして、アグニカは顔を伏せた。
300年が経った今となってはもういいやと言う悟りが有るが、当時は恥ずかしかったのだ。
「――まあ良いでしょう。結論は、最後まで話を聞いてから出させて頂きます。…それはそれとして、ラスタル様の先祖であるドワーム様はどんなお方でしたか?」
「どんな奴、と言われると――艦長のクセにガンダムに乗って前線に出て戦ってる、何かすげーやつって認識だ。MSの操縦技術も一級品だったしな」
「はあ…流石はラスタル様のご先祖様、イオク様とは違いますね」
「何だと!?」
挑発を受け、イオクが立ち上がる。
「撤回しろ、ジュリエッタ! 未熟な我が身はともかく、ケニング様を侮辱するのは許さぬぞ!」
「未熟過ぎて溜め息も出ませんよ。なら、聞いてみれば良いでは有りませんか」
「…そうか、その手が有ったか! では、ケニング様はどのようなお方で在らせられた!?」
「バカだよ」
一言で、全てを片付けられた。
イオクは、絶望したかのような表情を浮かべる。
「――イオク様の、ご先祖ですしね…」
「しかし、コイツみたくただのアホではない。頭だけは、フェンリスやドワーム並みに回った。決してアホではないが、バカだ。気持ちの良いバカ野郎だったよ。それに比べて貴様は何なんだ、バカでアホとはもはや手が付けられねェ。せめてどちらかにしとけ、たわけが」
「なぬッ!?」
日曜日のたわけ、一蹴。
「――クリウス・ボードウィン、か…ついでだ、クリウス様の戦い方を教えてくれ。ボードウィン家では代々、ランスの使い方を教え込まされるのだが…果たして、ガエリオはキマリスを十全に使いこなせているのか?」
と、そのように質問して来たのはガルス・ボードウィンだ。
「阿頼耶織無しであれなら、充分だろう。人間としては、最高点に程近い。クリウスは人間辞めてたから、参考にはあまり向かないと思うが――もしクリウスの戦闘を参考にするなら、こう言っとけ。『自分を、ダインスレイヴだと思え』」
「――ダインスレイヴ…MSですらない、とは」
「キマリスの設計思想の根本が、『ダインスレイヴは曲がらないから、ガンダムがダインスレイヴになったら最強じゃね?』だからな」
などとアグニカが会話している間、別の所は修羅場と化していた。
「アグニカの新規写真、増産を急げ!」
「アグニカが語る厄祭戦、DVDと書籍の制作を休むな! すぐに出せるよう、編集と執筆を早よ!」
「一言一句聞き逃す事無く心に刻み、粘土板に書き残すのだ! アグニカの偉業を、数千年後まで伝える為に!」
「アグニカ復活記念とし、PGガンダム・バエルとRGガンダム・バエルを発売するのだ!」
「PGとRGだけとか草バエルわ、SD出さないの?」
「草バエ散らかしてないで手を動かせぇ!! あ、ガシャポン戦士もお願いしますね」
アグニ会の会員達は、まさしく修羅だった。
アグニカ復活と言う最大のビッグイベントで、休む時間など無い。
アグニカの姿をその瞳に焼き付け、アグニカの言葉をその心に焼き付け、アグニカの伝説を本と粘土板に書き記し、アグニカの機体をPGで出さねばならないのだ。
この時代に粘土板とは、これ如何に。
ここはいつから、メソポタミアになったのであろうか?
まさに狂気、まさに盲信。
しかし、これこそがアグニ会である。
「
そして、修羅場っているのは勿論アグニ会だけでは無い。
「アグニカ叙事詩だけを頼るな! 厄祭戦で分かっている全ての事実を並べ、考察しろ!」
「MAの情報が少なすぎる、まだ有るハズだ!」
「あの破片は、本当にMAの物だったのか!? クソ、解析あくしろや!」
などと。
歴史学者や考古学者達もまた、大忙しである。
そんな事に感づきながらも、敢えて無視を決め込むアグニカは。
全員が戻って来た事を確認し、話を始める。
「現在、午後3時だ。話の進み具合を鑑みるに、今日だけでは話し切れないだろう。残りは明日に回す事になるが、話せる限りは話しておこう。話を聞いたからと言って、貴様らが俺を信じるか否かは――貴様らの判断に、委ねるモノとする」
アグニカは頬杖を付き、話を再開した。
「しばらく、平和な話になるがな。散々バカ騒ぎした歓迎パーティーの翌日、俺達は秘匿都市ベルファストの街に足を運んだ―――」
◇
時は戻り、B.D.0002年。
俺達は、ベルファスト基地のパイロット達から案内を受けてベルファストの都市へと来ていた。
「フェンリス、このベルファストはどう言う手段で秘匿されているのだ? 人口はおよそ100万人――MAが、この街を見逃すとは到底思えん。実際の所、コロニー群や圏外圏は悲惨な状況に在ると聞くが…」
ドワームが、そう質問を投げる。
マザーMAにして四大天使の一角である「ガブリエル」は、現在月面を拠点としているらしい。
具体的には、真っ先にMA…四大天使「ウリエル」の襲撃を受けて更地へと変えられた月面都市の跡地に要塞「
加えて、
ウリエルはコロニー群を破壊して回り、最近では大気圏外から火星の地表に在る基地を攻撃したとか。
ヘイムダル最後の基地は、まさにその火星の衛星軌道上に存在している。
そして、ガブリエルの月面要塞に攻め込みガブリエルを仕留める為には火星基地のガンダムとの協力は不可欠だ。
「このベルファストでは、防衛策を取っている。MAが持つ、センサーのジャミング。センサーを掻き乱す事で、捉えられないようにしている。有効範囲はかなり広くてな、衛星軌道上まで届く」
感知を誤認させる事で、探知される事を防ぐ。
単純な作戦だが、なかなか良い案では無かろうか。
「――待て。じゃあ、何でお前らは襲撃受けてたんだ?」
フォカロルのパイロットであるアマディスが、ドワームに続いて問う。
それに、クリウスが反応した。
「問題はそれだ。あのザドキエルとハシュマルが他の天使とは違う『天使長』たる存在だとしても、嗅ぎ付けられる可能性は低いハズなのさ。だから、何か違う要因が有ると思うんだ」
「違う要因、ですって?」
「その通りだ、カロム・イシュー。お前達の話を聞く限り、この地球には今『四大天使』がいるんだろう? 名前は『ミカエル』だったか。日本基地に攻め入ったのなら、このベルファスト基地にも刺客を差し向ける可能性が高い」
カロムの言葉に続いたのは、リック・バクラザン。
――リックの言う通り、この地球には奴がいる。
現在の地球は、都市が殆どMAによって破壊されている。
しかし、それらの殆どは各経済圏が違う経済圏を潰すべく「煽動屋」を雇ってMAをそこへ誘導した…つまり、人類の自滅に近い理由で破壊された。
それ以前の核戦争で放射能汚染が進んでいるが、それを除けば地球は比較的被害が少ない。
MAが理由で命を落とした人間は、コロニーや圏外圏に比べれば微々たる人数だろう。
だからと言ってMAがいないかと言えば、断じて否である。
四大天使の中でも最強と目される個体、ミカエル。
コイツや他のMAがいて海が汚染されている以上、安寧の地などはどこにも存在していない。
「――こう考えると、人類の存亡ってかなり崖っぷちだな。MAを狩る程度じゃどうにもならないんじゃないか、これ」
「その可能性も否定出来ないね…」
天使を狩り尽くして人類存亡の危機を解決したとして、その後の世界が平和になるとは思えない。
エイハブ・リアクターや希少なハーフメタル資源の利益を巡って、経済圏同士が戦争を始めるだろう。
現在は犬猿の仲である各経済圏を仲良くさせるには――何かしら、抑止力が必要となるだろう。
各経済圏の協力を促し、どれかが裏切った際にはそれを潰せる第三者の存在が。
宇宙世紀よりも昔――西暦の時代に於いては、その役割を「国際連合」なる組織が担っていたと聞く。
いや、細かい部分はかなり違うが。
4つの経済圏どころか200に程近い数だった「国」が所属しそれぞれの協力を助け、世界が危険と判断された事態には「国連軍」が動く――それらは後に、統一政府である「地球連邦政府」へと発展して行ったらしい。
(この戦いを終わらせたならば、ヘイムダルがその役割を担うか…? 『世界の警察』たる存在に…ガブリエルを倒せたのならば、各経済圏を納得させられるかも知れんしな…)
どうやら、戦争終結後の事についても視野に入れておかねばならないようだ。
などと俺が色々考えていると、街の広場と思わしき場所で先頭のフェンリスが足を止めた。
「では、ここから12:00までは自由時間とする! 時間になったら、この広場へ再集合する事!」
「ちょっと待って、これ遠足!?」
「解散!!!」
「っしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
フェンリスが号令を掛けると共に、全員が広場から目的の場所へそれぞれ向かい始めた。
「オイ待て、お前ら打ち合わせでもしてたのか!? 何なの、俺らだけなのハブられてんの!!」
広場に残された俺とスヴァハは、ハブられたのか?
いや、俺はともかくスヴァハをハブるな。
「悪いなアグニカ、これには深い理由があるんだ」
神妙な面持ちで、アマディスが説明を始めた。
それはそれは、とても深い深い理由が――
「昨日の夜、スヴァハが酔い潰れただろう? そして、お前はベッドに運ぶ為にスヴァハを背負って宴会場を出た。その時、どこへ行こうかとか日程とか打ち合わせたんだ」
「この理由、深いッ――とでも言うと思ったか!? 深くないわ、浅いわ! この理由、浅いッ! 何なのお前ら、バカ騒ぎしてたクセに真面目に話し合いやがって! そもそも、打ち合わせたならちゃんと教えろよ!」
「悪い、酒に酔って忘れてた。じゃ、オレも行くとこ有るんで…あでぅ。」
そして、アマディスは街へ消えて行った。
「酔っててぐだぐだだったのか真面目に打ち合わせたのか、結局どっちだよお前らァ!!」
「ごめんねアグニカ、私が酔い潰れちゃったせいでこんな事に…」
遠ざかるアマディスの背中にツッコんでおき、俺は申し訳なさそうにしているスヴァハに向き直る。
「まあまあ、あんなに酒が出て来ちゃ仕方ないさ。――12:00までここにいるのも何だし、適当に街を見て回ろうか。相手が俺で良ければ、だが」
「――あ、うん…ふつつか者だけど、よろしく…」
すると、スヴァハは俺の手を握って来た。
少し驚きつつも握り返し、適当に街をフラフラし始める。
「…まさか、この時代にこんな都市が残ってるなんてね」
「ああ、全くだ。SAUの首都ニューヤーク、アーブラウの首都エドモントン、アフリカンユニオンの首都ダカール…そして、オセアニア連邦の首都トリントンもMAの襲撃を受けている。そんな中、こんな都市が残っているのは奇跡に近い」
街を歩きつつ、スヴァハは感慨深そうにそう言う。
それを返した後、俺はふと脇道を見る。
「――繁栄してるかと言えば、そうではないかも知れないがな」
大通りから少し離れた所には、他の都市から逃げて来たと思われる貧困者や孤児達が見受けられる。
何年も世界規模の戦争が有った後の、天使による人間狩り――人々は、とっくに疲れ果てていた。
すると、孤児達がこちらに気付いたようだ。
2人程が、こっちへ向かって来る。
1人が男の子で、後1人は女の子と思われる。
「…どうしたの?」
スヴァハの問いに、孤児達は答えた。
「「着る物をくれ食べ物をくれ住む所をくれ」」
3つ、足りていないモノを要求して来た。
服と飯と家――人間に在るべきモノを、彼らは持っていない。
「…どうしよう、アグニカ?」
「と、言われてもな…俺達はこの都市の住人じゃない上に、安全から程遠い立場に有る。物資も必要最低限しか無い。くれと言われても、あげられる余裕が充分にないんだ」
何とかしてやりたいのはやまやまだが、俺達とて余裕綽々な訳ではない。
これから火星――圏外圏にも行かねばならず、道中での補給も期待出来ない。
食料の余裕は、充分にないのだ。
それを聞いて諦めたのか、孤児達は脇道の奥に去って行き――
「オイ、ダメじゃん。どうするんだよ、トビー」
「あっさり断られたわよ」
――誰かに相談してる。
奥に、孤児達のボスでもいるのか?
「…なんで毎度毎度ボクに頼るんだ…諦めて寝ようよ、どうせ無意味なんだから…こんなクソ世界で生き残ってどうするんだよ…疲れたんだよボクは…」
なんか、すげー無気力な奴がいる。
男の子…だとは思うが。
「…アグニカ、あの子どう思う?」
「子供にあるまじき絶望を抱えておられる――まあ、孤児ともなれば仕方ないかも知れんがな――頼られてるって事はあの中だと優秀なんだろうが、やる気が微塵も感じられない」
どうやら、向こうで地面に寝そべっているようだ。
さり気なく立ち去る案を提案しようとしたが、スヴァハはあの孤児達が気になるようなのでしばらく様子を見よう。
ヒマだし。
「…通りすがりの奴らにそんな事言って、何かされるハズないだろ…ソイツらだって、MAから逃げてここまで来たんだ…服も飯も家も持ってる訳ないだろ…だからもう諦めよう…諦めて土に還ろう…」
「嫌だ! そんなの御免だぞ!」
「そうよ、餓死なんてしたくないわ! どうせならMAに踏み潰された方が、まだ苦しまないわよ!」
――あの子、悟ってるな。
他の孤児達が異議を唱えるが、その孤児はそれ以上話すつもりは無いようだ。
「―――オイ、お前ら」
「ちょ、アグニカ?」
脇道に足を踏み入れ、その寝そべっている子と周りの孤児達に話し掛ける。
「――なんだよ? くれない奴に用は無いぞ」
「だろうなあ。そんな奴に構ってる余裕は、お前らには無い。だが――俺達が
子供達が、寝そべる奴を除いて目を見開く。
「無論、タダでくれてやるつもりは毛頭無い。俺達の仕事を手伝えるのなら、その対価として服も飯も与えられる。家も、場合によってはあげられる」
「…つまり、働けばあげると…?」
「そうなるな。お前達は労働力を俺達に提供し、俺達はお前達に衣食住を与える。当然の等価交換だ」
そう提案した俺に、スヴァハが近付いて来る。
そして、こう言った。
「――大駕くんみたいに、この子達まで死地に行かせるつもり?」
「…死地には向かわせる事になるかも知れんが、別に大駕みたくガンダムに乗って戦えと言う訳ではない。その辺りは、コイツらの自由意志を尊重する。ガンダムに乗らずとも役に立つ方法は有るし、強制している訳でもない」
それに、大駕は望んでガンダムに乗り――悪魔に右腕を取られた。
戦力不足なのは相も変わらずだが、そこら辺で出会った子供達に「ピアス」を埋め込ませてガンダムに乗せる程狂ったつもりはない。
「――アンタ、
「俺の名は、アグニカ・カイエル。天使を狩る組織『ヘイムダル』のメンバーで、ガンダム・バエルのパイロットをやっている」
それを聞き、寝そべって話を聞いていたらしい子がこちらに振り向いた。
トリントンでの戦闘も有って、ヘイムダルとガンダムの名はそれなりに売れている――らしいが。
それを知っているこの子は、なかなかの切れ者な可能性が有るな。
とにかく、俺は続いて彼らに問う。
「さあ、どうする? 俺達はこの後、圏外圏へと旅立つ予定だ。俺達に付いて来てMA共を滅ぼす手助けをするか、ここで平穏に慎ましやかに暮らすかはお前達に任せよう」
―――決断を迫られた彼らは、悩んだ。
悩んだ末に………俺達に付いて来る事となった。
寝そべっていた子も立ち上がり、俺達は脇道から出る。
「―――アグニカ」
「…罵声を浴びせられても、今この場で殴られても文句は言えん。いずれ罰を受けるだろうが――前も言っただろう、スヴァハ。俺達は何としても、あの天使共を根こそぎ殺さねばならない。その為なら、手段を選ぶ余裕など無いとな」
いざと言う時に使える人手は、多い方が良い。
如何に罵声を浴びせられ嫌われようと、人類愛より生まれし殺戮の天使は滅さねばならないのだ。
しかし――意外にも、彼女から掛けられた声は罵声ではなかった。
「…ううん、そうじゃない。そうじゃないよ、アグニカ。別に、責めてる訳じゃないんだよ。MAを倒す為に、戦力は多い方が良い。そんな事は分かる。でも―――君は、大丈夫なの?」
「―――」
俺を心から心配するような彼女の問いに――俺は、答える事が出来なかった。
◇
12:00。
俺達は、広場に再集合していた。
「――アグニカ、スヴァハ。増えてるその子供達について、私は説明を求めるわ。何なの?」
カロムが、子供達を指差して言う。
すると、スヴァハが口を開いた。
「衣食住を要求して来たから、連れて来た。ヘイムダルで働いてもらえば、何とかなるでしょ?」
「なんだ、お前達の子供ではなかったのか」
「そ、そんな訳ないでしょ! その、色々とおかしいじゃない!」
リックの言葉に、スヴァハが慌てて反論する。
リックは冗談を言ったつもりなのか、はたまた本気で言ったのかがよく分からない。
まあ、冗談だと思うが…。
「――あ。名前、聞いてない」
「ひゃはははは! どうして彼らはこんな所にいるんだ、アグニカ? 彼らは名前すら名乗ってないんだぞ? ダメじゃないか、名前も聞かず連れて来ちゃ!」
「クリウス、キャラが崩壊しているぞ。何かに憑依でもされたか?」
突如豹変したクリウスとそれにツッコむフェンリスを差し置き、俺が改めて子供達に名前を聞くと。
「ラッセル・クリーズ」
「マリベル・コルケットよ」
「…トビー・メイ…面倒臭い…」
ちゃんと答えてくれた。
と言うか、名前が有るだけまだマシかも知れない。
「して、午後の予定は? まだ遊ぶ、とかは流石に言わないよな?」
「ふむ――フェンリス、アグニカにベルファスト基地の多忙さをお教えしてあげよう」
「そうだな、クリウス。これより街のカフェで昼食を取り、午後の部を始める。午後の部は男女に別れて、それぞれ目的の場所で楽しむこと。プラン通り回り切ったら、各自で自由行動。早く基地に戻っても良し、しばらく遊んでから戻るのも良し。ただ、20:00までには基地へ帰還する事」
――おう、ちょっと待てや。
「…まだ遊ぶ気か?」
「まだ遊べる」
「クソコラ画像のネタ素材みたいに言うな! まだ遊ぶのか? この状況で? やる事なんて山ほど有るだろ!?」
「いや、パイロットのやる事は今の所ほぼ無い。ガンダムの整備は、昨晩に技術班が終わらせてしまっているし、現在はそちらの戦艦ゲーティアに大気圏突破用装備を付けている所だ」
俺のツッコミに答えたのは、真面目要員のドワームであった。
淡々と、ヘイムダルの現状を述べて行く。
「あー、うん。――予想が立って確信した上で一応聞くが、つまり?」
「つまり、我々はここで夜まで遊ぶしかやる事が無い」
「―――もういいや」
諦めよう。
今日はもう、遊び尽くすしか無いみたいだ。
「…こんなので、MA倒せる?」
「――倒してるわ、一応。ただ、普段はこんな感じよ」
呆れたように、カロムがトビーに諭す。
まあ、普段は気さくな奴らだし…。
「この子達、どうしよう?」
「ふむ…一緒に遊びたいのはやまやまだが、基地の皆に紹介して部屋とか取って仕事をもらわないといけないからな。すまないが、誰かこの子達を送ってやってくれ」
「――じゃあ、俺が」
大駕が手を上げて、志願する。
「…良いのか?」
「ああ。…こんな事をしてるより、
「――向こうで車借りて、送ってあげてくれ」
俺の言葉に頷きを返し、大駕は3人組を引き連れて広場から離れて行った。
「…本当に、良かったのかな」
「―――さあ、な…あの子達が俺らと出会うのは偶然だったのか、運命に仕組まれた必然だったのか。いつか、分かる日が来るかも知れないな」
曲がりなりにも元科学者の俺が、運命なんてモノを考えるのもおかしな話だが。
とりあえず、今回は遊ぶとしようか。
――買いたい物とかも、有るしな。
―interlude―
移動式海上施設、ヴィーンゴールヴ。
「ヘイムダル」の創設者の1人にしてツインリアクターシステムとガンダム・フレームの開発者であるスリーヤ・カイエルは、施設に残った技術者達と共に新型フレーム「ヴァルキュリア・フレーム」を開発していた。
既に開発と設計は終わり、9種のヴァルキュリア・フレームがそれぞれ1機ずつ試しに建造される事となった。
そして現在、全てが順調に進んでいた。
V01-1228 ブリュンヒルデは建造完了。
V02-1228 ゲルヒルデ、V03-1228 オルトリンデ、V04-1228 ヴァルトライテ、V05-1228 シュヴェルトライテ、V06-1228 ヘルムヴィーゲ、V08-1228 グリムゲルデ、V09-1228 ロスヴァイセは建造中。
なかなか悪くないペースだと、スリーヤは自負していた。
と、その時。
『上空に、エイハブ・ウェーブを確認! この周波数は、MAと推測されます!』
「な、に!? MAが、何故…!」
『不明です! ですが――攻撃姿勢を取っている事は、間違い無いかと!』
スリーヤは、大きく舌打ちする。
ガンダム・フレームを引き払った今、このヴィーンゴールヴにMAを何とか出来る戦力は無い。
一撃で破壊され、乗組員とヴァルキュリア・フレームもろとも海の藻屑になる結末しか有り得ない。
「――ここまで、か」
スリーヤの優秀な頭は、この状況が「詰み」だと導き出した。
最後の数秒、何をしようかとスリーヤが考え始めた頃。
ヴィーンゴールヴの横の海から、赤い光が上空に向けて飛び出した。
「!?」
『 !』
その光は海から出て空を裂き、上空のMA「アラエル」をいとも簡単に撃ち落とした。
「――ビーム、だったな…」
スリーヤは、自らの想像を超える事態に直面して一瞬の思考停止を余儀無くされた。
ビームでは、ナノラミネートアーマーを持つMAに有効なダメージを与える事は出来ない。
にも関わらず、あのビームはMAのナノラミネートアーマーをいとも容易く溶解させ、破壊した。
エイハブ粒子を高速振動させる事で熱を帯びさせ、それを収束して放つビームとあのビームは別物だと考えられるだろう。
海中から、ヴィーンゴールヴの危機を救うかのような援護射撃。
恐らく、何かが海中にいる。
何故海中にいて、ヴィーンゴールヴの危機を救うようにビームを撃ったのか。
何か意図が有るとしか思えず、そもそも海中からビームを撃って上空のMAを破壊出来るのか。
スリーヤが考え込んでいると、スリーヤの持つタブレットの画面が突如暗転した。
「――これ、は…」
タブレット画面は暗転したまま、そこに白い文章が綴られ始める。
スリーヤがそれを読み始めたその時――世界の運命は、とあるモノ達によって大きく動き始めていた。
厄祭戦―――その最終局面で、人類はその存在を再認識する事になる。
―interlude out―
オリジナル設定解説です。
トム・ダレイニー
イーモン・ハットン
「ヘイムダル」ベルファスト基地の科学者。
オーウェン・フレッチャー
ナトリア・デヴリン
エドゥアルダ・デヴリン
ドリス・マクソーリー
ミランダ・アリンガム
ローズ・ランフランク
「ヘイムダル」ベルファスト基地のガンダムパイロット。
名前が全部覚えられない(オイ作者)。
乗ってるガンダムのデータについては、戦闘したらその時に載せます。
SAUの首都について。
本作では、ニューヤークとなっています。
公式では明言されていなかった為、救いようのないガンダム脳からニューヤークを抜擢。
「ニューヨーク」じゃないのかって?
宇宙世紀時代には既に「ニューヤーク」なので、是非もございません。
アフリカンユニオンの首都について。
本作では、ダカールになっています。
こちらも公式で明言されていないので、救いようのないガンダム脳からダカールになりました。
シャアの演説、好きです。
ラッセル・クリーズ
マリベル・コルケット
トビー・メイ
アグニカとスヴァハに拾われた孤児達。
名前が覚えられn(ry
アラエル
お野菜さんより頂いた案を参考に、設定しました。
巨大なブースターと胴体が直結され、翼にスラスターが敷き詰められた高機動型MA。
核爆弾による、一撃離脱作戦を得意とする。
ただし、プルーマは生産出来ない。
謎のビーム
いずれ分かります、とだけ。
アグニカが言っていた国際連合→地球連邦は私個人の勝手な妄想によるモノで、サンライズの公式設定では有りません。
次回「天使長の逆襲」(予定)。
出来る限り早く更新出来るよう、努力致します…。