最終回でも特殊読みって…まあ、いいや。
そんな感じで、いよいよ最終回です。
では、どうぞ。
「ターンX」と言うらしい機体の背中から、鮮やかな光がバエルに向かって解放された。
僅か数秒後の解放が終わり、光が霧散して消える。
『――ウソ、だろ…?』
『…教官――』
バエルがいたハズの場所には、何も存在していなかった。
ここで、鉄華団とギャラルホルンは何となく察してしまった。
あの光に呑み込まれ、ガンダム・バエルとアグニカ・カイエルはチリも残さず消滅した――と。
ターンXの四肢と頭部が、再び胴体に接続される。
アグニカの捨て身の攻撃を以て、ターンXの頭部は甚大な損傷を被ったが…すぐにナノマシンが、頭部の傷を覆い隠した。
『――やってくれたモノだ。如何に戯れていたとは言え、私のIフィールドとナノスキン装甲を突破したか。ある程度楽しんで撤退するつもりだったが、気が変わった。
そう言って、ターンXが再び月光蝶を発動させようとした瞬間。
ターンXに、∀ガンダムが激突した。
『な、に…!? ∀だと!?』
『ターンX、下がれええええええええ!』
∀とターンXが、∀の発生させた桃色の光に包まれ――どこかへ、
『……消えた?』
『――終わった、のか…?』
かくして、人類の危機は去った。
人類は、最悪の事態を避けられた――大きな犠牲を払って、であったが。
◇
地球は言うまでもなく、火星や木星、土星からも大きく離れた太陽系第七惑星――天王星。
地軸が傾いたまま自転、公転しているその惑星の周辺に、∀ガンダムはターンXもろともワープした。
∀に搭載された、空間転移能力である。
『――このような場所まで私を飛ばして、どうしようと?』
『無論、アナタを止めます。ここならば、全力を出したとて火星にも被害は及ばない』
ターンタイプのMSに搭載された「月光蝶」は、最大出力ならば地球から木星まで届くと言われる程に膨大な効果範囲を持つ。
それによる人類文明への影響を、∀は懸念した。
『――成る程。何故その転移能力で私に即時攻撃を仕掛けぬのかと疑問視していたが、距離を稼ぐためにエネルギーを温存したか。確かにここならば、文明を埋葬する憂いも無い』
『ええ。ですが、疑問が有ります』
『言ってみるが良い。兄として、弟の質問には答えねばな』
天王星を傍目に、∀はターンXに問う。
『何故、人類を滅ぼそうと? まさか、あのガブリエルとやらに誑かされたワケでも無いでしょう?』
『フ、そんな事か。無論、私があのような欠陥品に踊らされるハズも無い。だが、奴は私に協力した。最低限の義理立てはするさ』
『――それにしては、随分熱心ですね。
それだけではないだろう、と∀はターンXを見据える。
『だが、勿論それだけではない。私は、人類の行く末を見定めんとする。太古より、人類は争い続けて来た。文明レベルの後退など、何度起こったか数えるのもバカバカしい。此度も、ガブリエルが私の眼を覚めさせた』
ターンXは瞳を輝かせ、苛立つように言った。
『――文明レベルの後退は、有って然るべきモノです。行き過ぎた文明は身を滅ぼす、ならばリセットする事も必要でしょう? それを促進させる文明のセーフティーが、私達の持つ「月光蝶」ですから。しかし、何度文明を後退させても人類は再び文明を造り上げる。今はその途上に有り、文明のリセットは愚か人類を滅ぼすなど下らない』
対する∀は、ターンXの理論を否定する。
しかし、ターンXがその反論を苦笑によって笑い飛ばした。
『私の目的が、人類を滅ぼす事だと?
さも当たり前であるかのように、ターンXはそう断言した。
人類の運命を左右する、神であるかのように。
『――やはり、貴方とは相容れないようですね』
『フ』
∀はビームライフルとシールドを背部に格納し、両肩からビームサーベルのグリップを射出して両手で掴み取る。
それを∀が構えると、細いプラズマ粒子が形成されて
対してターンXは右手の溶断破砕マニピュレータを少し開き、∀とは対照的な太いビームサーベルを生み出す。
そして、言葉もなくターンタイプは激突した。
謎の光が撒き散らされ、しばらく地球から天王星方面の観測が出来なくなったらしいが――それが何なのか理解出来る者は、存在しなかった。
◇
「天使王」ルシフェルとの戦闘から、2日。
ギャラルホルンより、全世界にアグニカ・カイエルの戦死が発表された。
そして、その後にセブンスターズ会議が緊急で開かれた。
この会議は年配のセブンスターズ当主は参加せず、若き次期当主達が椅子に座っている。
このセブンスターズ会議場も、じきに改装されて角笛議会の議場となる。
これは正真正銘、最後のセブンスターズ会議となるだろう。
「お前達は何を言っているのだ? 無礼はそこまでにしておけ。あのアグニカ・カイエルが、ルシフェルと引き分けて戦死だと? 笑えない冗談だな」
しぶとく復活して会議に出席したマクギリスが、そう笑い飛ばす。
とは言ってもその怪我は深く、全身に包帯が巻かれているが。
アグニカが死ぬなど有り得ない。
アグニカはあらゆる力を誇る、彼に取って最強たる存在であり――ヒーローだったのだ。
それが負けたと知らされて、マクギリスは笑い飛ばすしか出来なかった。
だが、彼とて理屈では理解している。
ただ単純に、感情で納得出来ないのだ。
「准将。残念ながら、事実です。私は見ました――ガンダム・バエルが、消滅する瞬間を」
マクギリスの背後に立っていた石動が、マクギリスにそう耳打ちする。
信頼する部下である石動の言葉を聞いても、なおマクギリスは受け入れない。
「マクギリス・ファリド。現実から目を背けるのは止めろ。お前が如何に否定しようとも、アグニカ・カイエルが戦死したと言う事実は変わらない。その事実を精査するのは、この会議の本分ではないだろう」
見かねたラスタルが、マクギリスにそう告げる。
対するマクギリスは突っかかろうとしたが、自制心を働かせてなんとか押さえ込む。
その隣に座っているガエリオが、ラスタルに続いて議題を述べる。
「俺達が議論すべきは、アグニカ・カイエルを喪失したままでどう改革を進めるかだろう。一度発表して使節団まで組織した以上、ギャラルホルンの改革を取り止めるコトは出来ない。反対する者も、ここにはいないだろう?」
ガエリオの唱えた議題に、その場の全員が頷く。
それに続けるように、カルタが方策を提案する。
「各経済圏への使節団代表は、アグニカ・カイエルに代わり私ことカルタ・イシュー一佐とディジェ・バクラザン二佐。ここにトリク・ファルク二佐も加えて、鉄華団にも引き続き護衛を継続して頂くわ。ここについて、意見はおありですか?」
反論は無い。
カルタの意見が可決されたコトを確認し、マクギリスが意見を出す。
「組織再編に伴うヴィーンゴールヴとグラズヘイムの改築は、私の地球外縁軌道統制統合艦隊が取り持とう。ラスタル・エリオン司令官の月外縁軌道統制統合艦隊には、組織再編が終わるまでの各基地の人事とテロリストが現れた緊急時にはその鎮圧も行って頂きたい。ボードウィン家には、ファリド家の援助を」
「請け合おう。今は互いの組織の利害関係を考慮している場合ではない。かつてアグニカ・カイエルと共に戦場を駆けたセブンスターズの末席として、ギャラルホルンの改革は成功させねばならないのだ」
「――分かった」
各経済圏との交渉はイシュー家、バクラザン家、ファルク家。
施設の改築はファリド家、ボードウィン家。
それ以外の雑務はエリオン家、クジャン家の仕事となる。
「しばらくは混乱も生じるだろう。だが、必ず良くなると信じて――全力を尽くそう」
◇
会議は終了した。
カルタ、ディジェ、トリクはすぐにSAUに経たねばならない。
マクギリス、ガエリオ、ラスタル、イオクもしばらくは仕事に忙殺されるだろう。
「マクギリス」
さっそく仕事が入ったマクギリスを、同じく仕事の有るガエリオが引き止める。
忙殺されるコトで、約束した決着もギャラルホルン組織再編完了まで持ち越しだ。
「――ファリド家とボードウィン家は、共に設備改築を担う。アグニカ・カイエルの意志であるギャラルホルンの再編、成し遂げるぞ」
「…ああ」
「そしてその後、決着を付けよう。いつになるかは分からんがな」
それに、ガエリオは頷いた。
この因縁の戦いが、どうなったかを知る者は僅かしかいない。
ただ――ファリド家とボードウィン家は、他の家よりも早く仕事を終わらせたとか。
―Epilogue―
ギャラルホルンの地球外縁軌道統制統合艦隊(通称、グウィディオン艦隊)と月外縁軌道統制統合艦隊(通称、アリアンロッド艦隊)、アグニカ・カイエル率いる使節団とそれを護衛していた鉄華団が最後のMA「天使王」ルシフェルと交戦してから、およそ半年後。
年が明けた、P.D.0326年。
『アフリカンユニオン、アーブラウ、オセアニア連邦、SAU。これら既存の経済圏に加え、コロニー群と火星。この6つを新しい経済圏と定め、ギャラルホルンを加えて「角笛議会」を組織致します。今は亡き元ギャラルホルン最高幕僚長アグニカ・カイエルの意志と方針に基づき、我ら新生ギャラルホルンは世界協調のため各経済圏同士の橋渡しとなるコトを宣言します!』
ギャラルホルン本部「ヴィーンゴールヴ」には各経済圏の首脳が招かれ、角笛議会によって新生ギャラルホルン初代最高幕僚長に選ばれたカルタ・イシューによって「角笛宣言」が行われた。
ギャラルホルンの体制を示す「角笛憲章」も発表され、世界は対立と支配から協調と自由に向けて動き始めた。
大きな変革として、コロニー群と火星が独立した経済圏として認められたコトが有る。
それまでの四大経済圏の支配から脱却し、自治を認められたのである。
コロニー群の代表に、労働者を中心に若輩者ながらも圧倒的な支持を集めたサヴァラン・カヌーレが。
火星の代表に、「革命の乙女」として名を轟かせ選挙に圧勝したクーデリア・藍那・バーンスタインがそれぞれ就任した。
また、角笛宣言と同時にヒューマンデブリと宇宙ネズミを始めとした人身売買を禁止する「ヒューマンデブリ禁止条約」と各経済圏とギャラルホルンが行う「軍縮条約」が締結。
両者ともヴィーンゴールヴで、各経済圏の代表が調印した。
ヒューマンデブリ禁止条約は、かつてのセブンスターズの一員であったディジェ・バクラザンの。
軍縮条約は、同じくセブンスターズであったトリク・ファルクの主導の下で実現へと至った。
グウィディオン艦隊とアリアンロッド艦隊の全面衝突を招いたマクギリス・ファリドとラスタル・エリオンを始めとし、ガエリオ・ボードウィンとイオク・クジャンも新生ギャラルホルンの重役には就けず、制裁として私財を全て取り上げられた上で左遷されたが――世界中に散らばった為、細かな部分まで手が回る。
故に、世界全体の秩序維持に一役買っている。
このように世界は、ゆっくりと自由平等の実現へと向かい歩みを始めた。
その道のりにはまだ、多くの困難が立ちふさがっているだろうが。
そして、鉄華団もまた――。
◇
鉄華団。
ちっぽけな会社を乗っ取った所から始まったその組織は、今や大企業テイワズのNo.3と言っても良い程に拡大していた。
テイワズのNo.1は当然マクマード・バリストンで、No.2はタービンズを率いる名瀬・タービンである。
テイワズはそのシェアをどんどん拡大しており、火星のクーデリア・藍那・バーンスタインもその助力を得るコトが多い。
鉄華団は拠り所の無いヒューマンデブリや宇宙ネズミをメンバーとし、構成員はどんどん増えている。
がしかし、一般企業やタービンズ、テイワズや時にはギャラルホルンからも多すぎる程の依頼が来る。
その為にオルガ・イツカやユージン・セブンスターク、ビスケット・グリフォンなどの幹部は連日激務に追われており、ブラック企業並みに働いているとの噂が立っている。
「団長、これとこれとこれ――あ、これもです」
「副団長、これもお願いします」
「ビスケットさん、新しい依頼が246件です」
――いや、噂でなく事実だ。
オルガとユージンが向かうパソコンには、次々と団員がやってきてUSBをぶっ刺してデータを移して消えて行く。
ビスケットの所には様々な新しい依頼が数百件単位で届き、依頼人との面会であちらこちらへ行かなければならない。
そのお陰で、ビスケットの体重は急激なる減少傾向に有る。
「がああああ、やってられっかあああああ!」
「副団長、これお願いします」
「クッソおおお、こんなハズじゃなかっただろおおおおおお!?」
叫びを上げながら、ユージンは目にも止まらぬ速さで仕事を処理して行く。
叫びこそ上げないもののオルガも同様で、彼らはもうデスクワークが板に付いている。
「休むなよユージン、ミカがいない分はオレらがカバーするんだ」
「三日月の野郎、育休なんて取りやがって! 羨ましい限りだなオイ! おやっさんとメリビットさんも似たようなモンだし、昭弘はラフタさんとイチャついてるし!!」
そう。
三日月と雪之丞は育休、昭弘はラフタといい感じになってるせいで定時退社。
お陰で、それのカバーを行うべくオルガやユージンは毎日残業だ。
どれだけ仕事が飽和状態でも育休も定時退社も認められる――鉄華団は素晴らしく優良なホワイト企業である。
その分、偉い奴らが涅槃に旅立ちかけるコトもしばしばだが。
「それに比べて何だよオレ達はよ! 女の1人も出来やしない! なあオルガ、今日仕事片付けたらお姉さんがいっぱいいる店にイこうぜ!?」
「んだそりゃ…そもそもだユージン、そんなのに意味有んのか?」
「――無いですねチクショー! 金じゃ愛は買えないからな! アラズさんの話聞いたくらいで察してたよクソがああああああああ!! 女、オレを心から愛してくれる女をくれええええええええ!!」
血涙を流しながら、ユージンは仕事という彼女に向き直る。
強く生きろ。
一方その頃、基地の外では。
「っしゃあ、じゃ訓練始めんぞ! 身体が資本だ、身体が弱けりゃ鉄華団の仕事はやれねえ!」
シノが教官となり、新米団員達の体力訓練が行われていた。
「まずは基地10周! あのMWに付いてけ!」
ライドが運転するMWに続いて、団員達は走り出した。
苦情も飛んで来ていたが、そんなモノは軽く無視である。
「お疲れ様、シノ」
「おっすヤマギ、オメーこそ大変だな。オレはただ、アラズさんの真似してるだけだ。こんな感じだったろ?」
「うん、叫んでなかったけどね。あの人、厳しかったなあ」
ヤマギの感想には、シノも同意せざるを得ない。
CGS参番組の教官だったアラズは、新米団員が来た初日に基地10周と腕立て、腹筋、跳躍をそれぞれ100回課したのだ。
しかも、歩いたりタイムオーバーした場合は腹筋が20回増えると言うオマケ付きで。
ビスケットやタカキ、ヤマギと言った体力の少ない者は地獄を見た。
ちなみに、体力が多い者には腕立てが20回増やされた。
理不尽極まりない。
「まあ、あれはあれで後々役立ったしな。オレもビシバシ行くぜ」
「うん。頑張ってね」
一方その頃、クリュセ市内。
「ただいまー」
「あっ。お帰りなさい、三日月」
子供が出来た為に育休を取っている三日月が、アトラの待つ家に帰宅した。
お腹が重たくなってきたアトラの代わりに、買い出しに出ていたのだ。
「三日月、クーデリアさんがテレビに出てるよ。もうすぐ、火星に帰って来るって」
「へー。頑張ってるんだね、クーデリア」
「うん、クーデリアさんは凄いよね。と言うか、三日月はいい加減洗濯くらい出来るようになってよ。私、そろそろ動くのも面倒になって来ちゃったんだからね」
少し申し訳無さそうにしつつ、三日月はアトラの隣に座り込む。
アトラのお腹をさすりながら、クーデリアの動向を報道するニュースが流れるテレビに向き直った。
「あ、そうだ。名前決めないと。男の子だって」
「うーん…アトラはどんな名前が良い?」
「えっとね――三日月が決めた名前なら、何でも」
「名前、名前…『暁』とかどう?」
三日月が提案した子供の名前を、アトラは何度も口の中で転がす。
「――良い名前だね、三日月」
「うん。色々調べたけど、やっぱりこれが良いかなって」
「元気に会おうね、暁。――さて、今日もご飯作るよー! 名前も決まったし、今日は気合い入れちゃうぞ!」
勢い良く立ち上がってキッチンへ向かうアトラに続いて、三日月も立ち上がる。
テレビのニュースには、カルタと握手を交わすクーデリアの姿が有った。
◇
世界は前進する。
呪われた厄祭戦から300年の時を経て、人類はようやく紛争も無い平和な世界へとたどり着いた。
人類の営みは、これからも続いて行くだろう。
如何なる逆境であれ諦めず、生き抜く――その想い、信念が未来へと
それこそが、人類の成して来た偉業であり。
命を賭してMAと戦った人間達の、信念そのものでも有ったのだから―――。
今作「鉄華団のメンバーが1人増えました」は、これにて完結です。
果たして大団円と言えるのかは、皆様の判断にお任せ致したいと思います。
もしかしたら、epilogueの追加とかはして補完するかも?
この後は正真正銘の蛇足コーナー「アグニカポイント獲得状況」の最終報告。
作者がちょっとした裏設定や小話、余談を挟みながら適当に作品全体を振り返る後書き。
これらを同時投稿し、更新終了とさせて頂きます。
ただ、この2つは別に読まずとも問題はございません。
あくまでも蛇足と余談である、と言うコトを理解して頂いた上でお読みになられるかは皆様にお任せします。
そして、ここからは全体の後書きを読まれない方の為にご挨拶を。
語彙力が著しく低い、拙い作品でありましたが――ここまで読んで下さいまして、ありがとうございました。
このページへと辿り着いた皆様に最大級の感謝、圧倒的感謝を…ッ!
私は今書いているもう1つの作品(そもそもガンダム系じゃないのでスルー安定)が書き終わり次第、読み専門へと回ります。
なので、これ以外のガンダム系二次創作を書く事はまず無いかと。
時々感想を残して行ったりするでしょうが、その時は是非とも生暖かい眼でご覧下さい。
最後にもう一度言わせて下さい。
本当に、ありがとうございました!!
NToz
まだ今作を読まれる物好きな方は、明日更新の「アグニカポイント獲得状況 最終報告」もお楽しみにネ♪