鉄華団のメンバーが1人増えました《完結》   作:アグニ会幹部

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皆様、早くも主人公の正体推測を始めている様子。

オカシイナー、コンナハズジャナカッタノニナー。
アハハハハ、ナンデカナ。
ワカラナイヨウニシテタノニナー。
ミンナスゴイナー。


#06 邂逅

三日月、クーデリア、フミタン、ビスケット、そしてアラズは、ビスケットの祖母のトウモロコシ畑に収穫の手伝いに来ていた。

そこで三日月の幼なじみのアトラ・ミクスタとビスケットの妹であるクッキー・グリフォン、クラッカ・グリフォンにその祖母である桜・プレッツェルが合流。

トウモロコシの収穫を始める。

 

「アンタも物好きだね」

「んん? いきなりどうした、婆さん?」

「いや何、こんな作業を毎回手伝いに来るなんて。アンタくらいの大人がいるのは助かるけど、他にやる事あるんじゃないかね?」

 

桜婆さんのその質問に、アラズは少し考えてから答える。

 

「…昔はな、こう言う機会があんまり無かったんだよ。それに、俺は基本的に暇人だし。部屋でゴロゴロするよりは、誰かの為になった方が良いだろ?」

「そりゃ、まあ…そうだけど。でも、こんな買い叩かれるモノの収穫の手伝いより有意義な事は無いのかい?」

「無いね。まあ、探せば有るかも知れないが」

 

このトウモロコシは、10kgにつき50ギャラーで買い叩かれる。

トウモロコシやサトウキビと言ったモノのほとんどは、バイオ燃料の原料に使われるからだ。

桜婆さんも、ビスケットの給料の一部の仕送りが無いと厳しい生活を強いられる。

 

これは何も、桜婆さんに限った事では無い。

火星に住む者達の大半が、桜婆さんと同じかそれ以下の境遇にある。

 

その際たるモノが、「ヒューマンデブリ」。

クソみたいな値段で取引される、奴隷のような…いや、それ以下かも知れない者達の総称だ。

名前からして「人間のゴミ」と言う意味なのだから、まともな待遇を受ける者は殆どいない。

大半は使い潰され、自由を得たとしても仕事にはありつけない。

 

そんな者達が腐る程存在している腐った世界が、この世界なのだ。

 

そんな世界に秩序を与える存在であるハズのギャラルホルンも、とうの昔に腐敗している。

クーデリアのような者達が、そんな実態を何とかすべく革命を起こそうとしているのも、致し方無い…いや、必要な事なのだろう。

 

と、アラズがそんな事を考えていた時。

 

キキィー、と言うブレーキの音がした。

 

「何だ…って、オイオイ!!」

 

アラズは、その音がした方向に走り出す。

その後で、桜婆さんも歩いてそちらに向かう。

 

そこには、急ブレーキをしたらしい車が一台。

そしてその横で、横たわっているクッキー&クラッカ姉妹。

 

状況から推察するに、跳ねられたと思われる。

 

「お、おい…お前達、大丈夫か?」

 

車から、紫髪の男が出て来る。

言わずもがな、ガエリオ・ボードウィンだ。

 

三日月はガエリオに近寄り、その首を掴んで持ち上げる。

 

間違い無く、殺しにかかっている。

 

「ぐはッ……お前、何を……!?」

「「三日月、違う! 違うの三日月!!」」

 

双子姉妹が声を揃えて、三日月を静止する。

 

「そこまでだ、三日月」

「いい加減にしないか、この慌て者」

 

アラズが三日月の腕、桜婆さんが三日月の頭をそれぞれ叩く。

それ故か三日月の腕はガエリオの首を離れ、ガエリオを解放する。

 

「私達が飛び出しちゃって…」

「あの車がよけてくれたの」

 

双子姉妹の説明を受け、アラズは頷く。

 

「成る程。でもな、倒れ伏すのは悪ふざけが過ぎるぞ」

「「ごめんなさい…」」

「分かれば良い、次から気を付けろよ」

「「はーい!」」

 

アラズは満足げにもう一度頷き、車に向き直る。

その時、車からもう1人、金髪の男が出て来る。

 

言わずもがな、マクギリス・ファリドである。

 

「こちらも不注意だった、謝罪しよう」

(あの車の紋章…ギャラルホルン)

 

マクギリスが謝罪する。

それと同時に、ビスケットはフミタンに言ってクーデリアを隠れさせる。

 

「カッとなるとすぐこれだ、気を付けな」

「ゴメン、桜ちゃん」

「謝る相手が違うだろ、全く」

 

桜ちゃん…もとい、桜婆さんはご立腹だ。

三日月はガエリオの前に行き、少し頭を下げてこう言う。

 

「あの…すいませんでした」

「何が『すいません』だ!!」

「オイ、ガエリオ!」

 

マクギリスの静止に構わず、ガエリオは拳を三日月に突き出す。

それを三日月はヒョイ、と容易くよける。

 

「ク…オイ貴様、何だその背中の物は!」

「『阿頼耶織システム』…人の脊髄に埋め込むタイプの、有機デバイスシステムだったか。未だに使われている、と聞いたことはあったが」

 

マクギリスは、三日月の背中を見て言う。

 

「阿頼耶織」なんて物は、地球ではもう使われていない。

むしろ、知らないガエリオの方が一般的だろう。

 

「身体に異物を埋め込むなんて…ウエェッ!」

 

ガエリオは口を押さえ、車の陰に隠れて行く。

キラキラあるいはモザイクか、ロクな物は出さないだろう。

 

「そんな物を、一体何故?」

「火星に有るMWは、地球に有る物と違って中古品ですからね。『阿頼耶織』なんて物騒な物を付けないと、農作業すら出来ない場合も有るんですよ」

 

アラズは、淡々とそう答える。

マクギリスは「そうか」とだけ返し、クッキー&クラッカ姉妹に歩み寄る。

 

「怖い思いをさせてしまって、すまなかったね。こんな物しかないが、お詫びのしるしに受け取ってもらえないだろうか」

 

と言って、マクギリスはポケットからお菓子を取り出す。

それを見た双子姉妹は、そのつぶらな瞳を輝かせる。

 

「ありがとう!」

「ございます!」

 

双子姉妹はお菓子を受け取り、桜婆さんの下へ元気良く走って行く。

 

(一瞬で子供を買収するとは--恐ろしいな。奴め、さてはロリコンだな)

 

などとアラズは思っているが、マクギリスは知るよしも無い。

 

「念の為、医者に診せるといい。何か有れば、ギャラルホルン火星支部まで連絡をくれたまえ。私の名は、マクギリス・ファリドだ。ああ、それと。この付近で最近、戦闘が有ったようなのだが…何か気付いた事はないか?」

「そう言えば2~3日前、ドンパチやってる音が聞こえてたような…」

「この近くに、民兵の組織が有りますから。多分、そこの訓練か何かじゃないですか?」

 

ビスケットの答えに、アラズが補足する。

 

「…成る程。協力、感謝する」

 

すると、マクギリスは三日月を見てこう言う。

 

「君、さっきは見事な動きだった。何かトレーニングを?」

「うん。まあ、色々」

「そうか。…良い、戦士になるな」

 

それだけを言い残し、マクギリスはガエリオの肩を叩いてから車に乗り込もうとする。

 

「待て、ファリド」

「…何かな?」

 

アラズが、マクギリスを呼び止める。

 

「貴様は、何が目的だ?」

「…そうだな。『腐敗したギャラルホルンの改革』とでも。貴方に分かってもらえるかは知らないが。それと、私も1つ貴方に問おう。貴方は、()()()()()? 貴方の顔には、何か見覚えがあるような気がするのだが」

「ただのしがない労働者だよ。そう言われても、俺には心辺りが無い。世界には同じ顔の人間が3人いるとも言うから、他人の空似だろう?」

 

そう返して、アラズはマクギリスに背を向けて歩き出す。

そして、こう言った。

 

 

「クーデターと言うのは、市民を味方に付けねば成功しない。その第一歩として、身近な人間から味方に付けてみよ」

 

 

「…! 貴方は、まさか…いや、そんな……?」

 

マクギリスの疑問に答えを返さず、アラズは立ち去った。

 

 

 

 

「登録名称は、これで良いんですね?」

 

火星共同宇宙港「方舟」。

そこで、デクスターは昭弘に確認を取る。

 

「ああ、団長の命名だ。CGS時代の名前は嫌なんだと」

「分かりました。では、これで登録します。『ウィル・オー・ザ・ウィスプ』改め、『イサリビ』と」

 

 

 

 

「農場にいた男の証言通り、あの近くにはCGSという民兵組織が存在していたよ」

 

基地への帰り道で、マクギリスはガエリオに言う。

 

「経営者が替わり、社名も変更になっている。新しい名前は『鉄華団』。消したかったのは名前だけなのか、それとも…いや、いずれ分かるだろう」

「ん? 珍しいな、マクギリス。お前が疑問を先延ばしにするなんて」

「そうか? いや、そうかも知れない。私は今、その鉄華団以上に農場にいた赤髪の男が気になっているからな」

 

そう言って、マクギリスは懐から1冊の本を取り出す。

 

「あの男か? 確かに、酷く既視感を覚えたが…」

「私もだ。そして、最後の言葉で何故見覚えが有ったのか分かったよ。彼は、この本に出て来るお方に似ている」

 

マクギリスが掲げる本の名は、「アグニカ叙事詩」。

300年前の厄祭戦時代、伝説の悪魔に乗り厄祭の天使を狩った者。

そうして、ギャラルホルンを創設した男の半生が描かれた作品。

 

即ち、「アグニカ・カイエル」の英雄譚に他ならない。

 

「…まさか、アグニカ・カイエルか? 確かに、彼も赤髪だったと言うが…だが、そんな馬鹿な。アグニカは300年前の人間だぞ? その男の言う通り、他人の空似だろう?」

「ああ、そう考えるのが妥当だろう。だが、かのアグニカ・カイエルならば--」

「オイ待て、落ち着けマクギリス」

 

不敵な笑みを浮かべて陶酔した表情で本を見つめるマクギリスを、ガエリオは静止する。

 

「お前は、アグニカの事になると途端にバカになる癖が有るからな。落ち着いて冷静に、科学的に考えろ。300年だぞ? セブンスターズの初代当主が生きていた時代だぞ? お前は、フェンリス・ファリドが目の前に現れると思うか? 俺はクリウス・ボードウィンが目の前に現れるとは思わないし、億が一現れても信じれないぞ」

「確かに、その通りだな。だが、かのアグニカ・カイエルならば--」

「ダメだこりゃ」

 

同じ言葉を繰り返す親友の姿を見て、ガエリオはため息を付く。

 

(コイツに妹を任せて本当に大丈夫なのか? アルミリアがアグニ会に入ったりしないよな?)

 

とガエリオは思い始めていた。




アラズさん関係の新情報
・マクギリス&ガエリオ、既視感を覚える。
・マクギリス、アラズにアグニカみを見る。

いやはや、主人公。
一体何者なんだ…?

ファリド家とボードウィン家の初代当主の名前は、私が考えました。
無論、公式では有りません。
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