三魔王異世界珍道中   作:ヤマネコクロト

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冒険者協会でやらかしてしまった魔王一行、騒ぎに駆けつけた協会会長『シルヴィ』に呼び出されてしまう。果たして彼らの運命やいかに(マテ


初クエスト

◆◇◆

 

【side:ディアヴロ】

 

「単刀直入にいうと、ウチじゃ君達を扱えないと思うんだよね」

 

カラカラと楽しそうな笑みを浮かべながら、ファルトラ市冒険者協会会長(ギルドマスター)『シルヴィ』が告げる。ギルマスの部屋は六畳ほどの広さで、内装の全てが木製だった。応接用の低い机があり、その近くの木製の椅子に俺とシェラとレムが、対面の椅子にアインズとリムルが座っている(アインズの横幅がかなり広いためこの配置になった。決して他意はない)。シルヴィは、俺達が座っている場所から少し離れている執務机に座っている

 

「それは・・・・・・我々は冒険者に登録できない、という事なのでしょうか?」

 

「いやいや、むしろファルトラの冒険者としてはありがたいよ?ボクの方じゃなくて、君達の方に不満があるんじゃないかと思ってね」

 

「どういうことだ?」

 

「納得してもらえるか、分からないけどね。ウチに限らないけど、冒険者協会ってのは、登録された冒険者にレベル付けをして、そのレベルに応じた依頼を任すんだけど・・・・・・君達の場合、レベルがわからないんだ」

 

「わからない、か・・・・・・まあ、鏡があんな風になったらなぁ」

 

「そう、こんな事は初めてだからね。高レベルなのは間違いないと思うけど、どれほど高いのかわからない。どんな依頼を任せていいのか判断できないんだ。そして恐らくだけど、まだ判定していないリムルさんも鏡に触れたら、ああなるんじゃないかなと思ってるんだけど」

 

「まあそこそこ強いとだけ言っておくよ。やってみてもいいけど、流石にこれ以上騒ぎを起こすわけにもいかないだろ?」

 

「少なくとも、ここで公開されているクエストなら、全てクリアできると思うがな」

 

「すごい自信だね。なおさら、評価規格外だ。ギルマスとしては難しいかな」

 

むぅ・・・・・・俺としてはこの世界での自分のレベルを知りたかったのだが、これはしょうがないのか。ファルトラの街は”序盤の終わり”であり、ここから西に広がる魔族の領域に入ってからがMMOのクロスレヴェリの本番。点在する人族の拠点を足掛かりに、魔王の復活を阻止するために必要な強さは人族の限界に近いレベル80以上。そこから種族の限界を超えるためのシナリオを経て、初めて未到の領域であるレベル100に至れる。確定ではないが、レベル制限を超えている俺や、課金で能力値を上げているアインズ、そして現役魔王のリムルを規格外と評価するのは間違いではないのだろう

 

「こちらとしては、正当な報酬を支払って頂けるのなら不満はないのですが・・・・・・」

 

「そうかい?多分ボクは君達より弱いよ。その僕に命令されて納得するかな?それとも、ボクに替わって協会会長になりたいと思うかい?」

 

「待て待て、俺達ってどんな目で見られてんだよ。そもそも、協会会長って腕っぷしだけでなれるものじゃないだろ」

 

「いやー、一階で屯してた冒険者達を見てもらったと思うんだけど、荒っぽい人が多いんだよね」

 

「確かに、クエスト一つで争い事になってましたが・・・・・・纏め上げるにも相応の実力が必要ということですか」

 

「そういうこと。さっきも、何処かの誰かさんが難癖つけてきた冒険者を殴り飛ばしたみたいだし」

 

ニコニコと、先ほどのエミールとの騒動を誰がやったのかわかっているような口ぶりでシルヴィがそう告げると、四人の視線がこちらに向いた。

ヤメテ!?そんな目で見られると胃が痛くなっちゃう!!ていうかアインズとリムルは納得してただろ!?

 

「俺は組織などに興味はない。それは、そこのリムルとアインズも同様だろう。面倒な事は、貴様がやるがいい」

 

「元々路銀稼ぎが目的だしな。アインズが言った通り、正当な報酬を払ってもらえれば文句はないよ」

 

「あはは、面白い人達だね。それじゃあ、もう一つだけ。キミ達の実力にあった任務は、そうそうないよ?」

 

その点に関しては、ファルトラでは仕方ない。ここでは『上級クエスト』は数えられるほどで、最後の『初級クエスト』が与えられるような街だ。もっとも、今は『ストーリークエスト』を受けているようなものだろうな。隣にいるレムを見て、そんな事を思う

 

「任務のレベルは気にしなくても問題ありません。むしろ、様々な事を学べるいい機会です」

 

「そもそも、俺に見合ったクエストなど、このエリアにはないだろうからな」

 

「そう?じゃあ・・・・・・これからよろしくね!」

 

シルヴィが俺の方に駆け寄ってきて、右手を差し出した。どうやら俺がリーダーと思われたようだ。まとめ役としてはリムルなんだろうけど・・・・・・

何はともあれ、話は纏まったので俺は差し出されたその小さな手を掴む

 

「うむ」

 

鏡が黒くなった時はどうなるかと思ったが、これで晴れて冒険者になれた。傲慢な態度をとりつつ、俺は内心で安堵するのであった

 

 

◆◇◆

 

【side:アインズ】

 

「ねぇ、早くクエスト行こうよ!」

 

シルヴィさんとの話し合いが終わった後、俺達はクエストを受注するためにカウンターに戻ってきた。シェラさんが息巻いているが、気持ちはわからないでもない。俺も『ユグドラシル』を始めた頃は同じように気分が高揚したものだ

 

『シェラのテンション高いなー』

 

『だが、シェラの気持ちも分からんでもないぞ。この辺りのモンスターの強さは興味がある』

 

『ですね。それに、俺に至っては別ゲームに入り込んでいるようなものですからね。新鮮さが違いますよ・・・・・・ん?』

 

『どうした、アインズ?』

 

『ディアヴロさん、あそこにいるのってガラクじゃないですか?』

 

『何?』

 

ふと、一階を見下ろした時に発見した人影を指差す。そこには、昨日の夜絡んできた魔術師協会のガラクが、周囲の冒険者達に侮蔑の視線を向けながら、冒険者協会を出ていく姿が見えた

 

『冒険者協会に依頼を出しに来たんじゃないのか?』

 

『確かに、魔術師協会は頻繁に冒険者に依頼を出していたな。魔術の実験に使うから、とある魔獣の牙を何本取ってきて、といったようなものが大半だ』

 

『二人の首輪に関する依頼を出しに来たんでしょうか?でも、あの視線が気になりますね・・・・・・』

 

あんなに嫌そうな顔をするくらいなら、部下に来させればいいのに・・・・・・そんな事を思いながら、カウンターに視線を向けると受付の赤い子がシルヴィさんと何やら相談しているのが見えた。相談が終わると、シルヴィさんが一枚の紙を持ってこちらに声をかけてくる

 

「やあ、ディアヴロさん達。早速、やってほしいクエストがあるんだけど」

 

そういって持っていた紙をカウンターの上に差し出す

 

「……すまん、レム。ちょっと読んでくれないか」

 

「えっと・・・・・・これは、『人食いの森』のモンスター『マダラスネイク』の討伐クエストですね。こんな依頼をする者がいるのですか」

 

どうやらモンスターの討伐クエストのようだ。『マダラスネイク』というモンスターがどの程度の強さなのかはわからないが、レムさんの言い方だと”普通の”依頼じゃないように聞こえる

 

「モンスター討伐は、クエストとしては普通ではないのですか?」

 

「……あの辺りのモンスターは、冒険者が数人で行って倒せる相手ではありません。普通はウルグ橋砦や、星降りの塔の周りのモンスターを狩るものです」

 

「そんな事をやっているから、レベルが上がらないのだ」

 

ディアヴロさんが肩をすくめる。彼の言う通り、ゲームであれば弱いモンスターばかり狩っても経験値効率が悪く、レベルを上げて強くなりたいなら強いモンスターを狩った方が何倍もマシだ。そのあたりに、ここの冒険者のレベルが低い理由がありそうだ

 

「……仕方ありません。誰もが、あなた達のように強いわけではありませんから。強力なモンスターに挑んで、死んでしまったら、何も残りません」

 

「・・・・・・・・・」

 

「ふむ」

 

「うぅ・・・・・・人食いの森って、すっごい強い魔獣が出るんだよね?」

 

確かシェラさんは魔術師の判定でレベル30と言われたんだったな。ディアヴロさんの情報通り、人食いの森が適正レベル60ならシェラさんが脅威に思うのも無理はないだろう。もっとも、俺達がいる以上余程の事は起きないと思うが

 

「どうやら、依頼主は魔術師協会だね。実験のために、どうしても人食いの森の≪マダラスネイクの目玉≫が必要みたいだ。期間も短いから、強い人を集めてる時間もないし、どうだい?無理にとは言わないけど・・・・・・やってみる?」

 

話を聞く限りでは、緊急性の高い依頼に聞こえる。しかし、この依頼を持ってきたのが先ほど冒険者協会を出ていったガラクだとすると

 

『さっきディアヴロくんが言ってたような依頼の内容だけど・・・・・・ぶっちゃけどう思う?』

 

『罠、の可能性が高いと思います。先ほどのガラクの態度が気になったのと、過去に似たような襲撃を受けた事がありました』

 

『ふむ・・・・・・あり得ん話ではないな。大方、昨日の復讐と言ったところか』

 

ディアヴロさんも、概ね同じ意見のようだ。復讐するにしても、戦力を整えるため時間をかけると思っていたが魔術師協会から切り札に足る”何か”を持ってきたか、はたまた強い協力者を得たか・・・・・・

 

『うーん、それを考えると断った方が安全なんだろうけど、後でいちゃもん付けられそうだよなぁ』

 

『ふん、ならば正面から全て叩き潰してこそ魔王であろう。それに魔術の連続使用による影響の確認もしたかったところだ』

 

『それなら、向こうの依頼ということですしちょっと痛い目も見てもらいましょうか。セレスティーナさんには申し訳ないですけど』

 

『『ほう?』』

 

『一先ず、リムルさんにお願いしたいんですが―――』

 

フッフッフ、ギルド一のえげつなさを誇る『ぷにっと萌え』さん直伝の≪らくらくPK術≫、とくと味合わせてくれる

 

 

◇◆◇

 

【side:リムル】

 

今現在、俺達はシルヴィが持ってきた魔術師協会の依頼を受けて≪人喰いの森≫の中へ入っている。木々が鬱蒼としており、数メートル先が見渡せない上に空も生い茂った葉が隠してしまっているため、上空から敵を視認する事も難しい。高高度から物理魔法『神之目(アルゴス)』でモニターしてみたが、地面の見える箇所がほとんどない程で、まさに罠を張るにはもってこいの地形と言えよう。ちなみにこの魔法を見せた時の彼らの反応は言わずもがなである。アインズくんは≪ユグドラシル≫で似たようなアイテムがあったみたいで、反応は薄かった。逆に、探知阻害や攻勢防壁等々対策なしでこういった探査魔法を使う危険性を説かれたほどである。彼がいた≪ユグドラシル≫の魔境っぷりが凄まじい・・・・・・

 

そんなこんなで、森の中に原生する魔物たちに注意しながら進むと大きな沼が見えてきた。事前情報では今回のターゲットである『マダラスネイク』は体長20mにも及ぶ大蛇で、普段は沼に生息し近づく獲物を襲うそうだ。

ディアヴロ、アインズ、俺の三人は打ち合わせ通りに襲撃の可能性を考えて、周囲を警戒している。なお、シェラとレムにはこのことは伝えていない。レムはともかくシェラはポーカーフェイスとかできそうにないからね

 

「リムルちゃんの魔法で居場所が分かればよかったんだけどねー・・・・・・」

 

「……あれだけ鬱蒼としていたなら無理もないでしょう。住処は特定できているんです。後は囮を用意しておびき寄せるだけです」

 

そういってレムがクリスタルを構える。確かに召喚獣であれば囮には最適だろう。さて、こっちも釣れたかな?

 

≪マスター、こちらを監視する者たちを確認しました≫

 

シエル先生、流石仕事が早い。気配を探ると少し離れた木の上に10人ほどの集団を見つけた。敵意マシマシでこちらを見つめているのが嫌でもわかる

 

≪ですが『リムルさん、そちらを監視している集団を発見しました』≫

 

『お、早いねアインズくん』

 

『リムルもそうだが、アインズも中々便利な魔法を使うではないか。こうも相手に気配を悟らせないとは』

 

そう、これがアインズくんが建てた作戦である。今ここにいるアインズくん、実は俺が魔法で作った幻影なのだ。森に入ると同時に幻影をアインズくんに被せ、その間にアインズくんが第9位位階魔法『完全不可視化(パーフェクト・アウンノアブル)』を使用し、俺達と別れて索敵を行っていたのだ。この魔法、発動すればシエル先生でも知覚するのは困難を極めた。実際、俺もスキルを総動員したがアインズくんを補足できずにいたくらいである。もっとも、攻撃を行えばその効果は失うらしいが

 

『アインズの予想が的中したわけだが、さてアインズよ。そこにいる愚か者はどんな奴らだ?』

 

『えー・・・・・・それなんですが・・・・・・』

 

おや、アインズくんの歯切れが悪い。そこにいる襲撃者に何かあるのか?

そういえばシエル先生も何か言いかけてたみたいだが

 

『そこにいるの・・・・・・≪ユグドラシル≫と≪クロスレヴェリ≫に相違がなければエルフに見えるんですが・・・・・・』

 

……あ、これ終わったかも

 

 

◆◇◆

 

【とある三大魔王の思考会議その10】

 

『『『\(^o^)/』』』

 

 




かなり間が空いてしまいましたが何とか投稿できました(主にリアルとかリアルとか(ry


シエル先生は万能であっても全能ではないという私的見解ではありますがご容赦願います(gkbr

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