三魔王異世界珍道中   作:ヤマネコクロト

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マダラスネイクを狩るため、人喰いの森に赴いた魔王一行を待ち伏せしていた謎のエルフ達。果たして、彼らはどうなってしまうのか(どっちがとは言わない


一泡吹かせてみる

◆◇◆

 

【side:リムル】

 

「さて・・・どうしようか?」

 

「………どうすると言われてもな」

 

俺達は今、盛大に悩んでいる。目の前の状況に。魔術師協会から依頼を受けた訳だが、人食いの森に来て早々エルフ達に待ち伏せされていた。冒険者協会に魔術師協会所属のガラクがいた事から、奴がこの依頼を利用して俺たちをおびき出し、手引きしたエルフ達に始末させようと画策したんだろう。シェラはお姫様だし、エルフ達に色々吹き込めばこうなることは自明の理だ。でなければ、こんな森の中で待ち伏せなんかせずに真っ先に俺達に接触してるはずだしな。待ち伏せしていたエルフの数は10名程で、胸当てだけの軽鎧装を身にまとい、その下に緑の貫頭衣を着ている。ズボンも緑色で、弓持ちが多いところを見ると森の中での戦闘を得意としているのが分かる。

 

え?なんでそこまでわかったのかって?そりゃもちろん

 

「くそっ、一体我々に何をした!?」

 

待ち伏せしていたエルフ全員簀巻きにして目の前に転がしているわけで。

 

ステルス中のアインズ君からの報告を受けた後、《思念伝達》による話し合いの結果、下手に動かれる前に無力化して話し合いに持ち込もうという少々強引な手段を打つことになり、アインズ君のスキルで数名を麻痺させて向こうが怯んだところを俺とディアヴロ君が強襲して無力化する事に成功した。ディアヴロ君が《バースト・レイン》という火の範囲魔法攻撃を撃った時は少々焦ったが、うまい具合に威嚇射撃兼目くらましになってくれたおかげで難なく残りのエルフも無力化できた。無力化した後は武器を取り上げて、《粘鋼糸》という俺がスライムに成り立ての頃にお世話になったスキルで縛っている。まさか異世界に来て早々このスキルを使う事になるとは思わなかったが

 

ちなみに、ガラクも捕まえてある。エルフ達を捕縛した後、少し離れた茂みの中に隠れていたところをアインズ君が見つけて、同様の方法で捕縛した。見つけた時点でひどく動揺していたらしく、察するに俺達がエルフにボコられる様を高みの見物しようとしてたら結果は逆だったとかそんなところだろう。なお、ギャーギャーと騒ぎそうだったのでこいつだけはくつわを嵌めて喋れないようにしている

 

「くそっ、このまま我々もシェラ様のように奴隷として売りさばく気か!?」

 

「いやいや、飛躍しすぎだって」

 

「そうだよセルシオ!そもそも、私は奴隷になんてなってないから!」

 

「ならば、その首輪は何なんですか!?」

 

「セルシオ」と呼ばれた、見た目女性の男が声を荒げる。まあ、そう思ってしまうのも無理もないだろう。ガラクにそそのかされたと言っても、こちらの見た目はいかにも怪しい黒ローブの魔術師に、目つきの悪い悪人面の混魔族。そして連れているのは首輪を嵌めた少女二人。そりゃ疑いたくもなる

 

『こりゃ俺の方もいらん事吹き込まれてるだろうなぁ・・・』

 

『見た目は完全に美少女ですのにね』

 

『中身はおっさんくさいがな』

 

ディアヴロくん一言多いよ。まあ、元のシズエさんが美人だからね

 

「えっと・・・これは、そのぉ・・・」

 

「貴様らが、純真無垢なシェラ様を騙して奴隷にしたのだろう!?早くシェラ様の首輪を外せ!」

 

「外せと言われてもなぁ・・・」

 

こちらもそうしたいのはやまやまだが、シエル先生の解析が終わらない事には……

 

≪……………≫

 

シエル先生も黙しているし、まだまだかかるんだろう。それを説明しても納得してくれるかどうか・・・

 

「ふむ・・・・・・セルシオさん、でしたか。少しばかり、こちらの話を聞いていただけないでしょうか?」

 

「うるさい!シェラ様は奴隷の首輪を嵌めていいようなお方ではないのだぞ!」

 

「まあまあ、そう仰らずに。むしろ、これは貴方方にとっても悪い話ではないと思いますよ?」

 

「なんだと!?」

 

うん?アインズ君がセルシオと交渉する姿勢を見せる。何か、考えがあるのか?

 

『どうする気だ?アインズよ』

 

『いえ、彼らにも決してメリットがないわけじゃないと思うんですよ。この状況』

 

『と、いうと?』

 

『このまま彼らに彼女を引き渡しても、彼女が黙ってついていくと思います?』

 

『……あー、成程』

 

アインズ君の言いたい事は分かる。ディアヴロ君も少し間をおいて、察したようだ。彼女の性格を考えると確かにメリットもあると言えばあるが、さて・・・・・・

 

「まず、大前提として言っておきますが、我々は奴隷商ではありません。そこにいる混魔族の彼は元素魔術師で、私ともう一人の彼も、系統は違いますが魔術を扱えます。そして、彼女の事情も本人から聞いております」

 

「それを知って奴隷にしたのか!?」

 

「いえいえ、あの首輪は事故でついたようなもので、その所為か普通の方法では外せない状況にあるのです。むしろ、我々はその方法を探している最中なのです」

 

「くっ、例えそれが本当だとしても、それのどこに我々に益のある話だと」

 

「落ち着いてください、話はここからですよ。考えてもみてください。仮に彼女の首輪を外して、国に帰らせたとします。ですが、彼女がその程度でおとなしくしていると思いますか?」

 

「む・・・・・・それは・・・・・・」

 

「セルシオ!?」

 

アインズ君に問われてセルシオが目をそらした。うん、なんとなくそんな気はしてた。レムも呆れた顔をしている

 

「それに、聞けば彼女はずっと王族としての生活に息がつまっている様子。ならば、いっその事外の世界を歩かせて息抜きしてもらう方が精神的にもよろしいかと思いますが?」

 

「むぅ・・・・・・」

 

「そして、事故とは言え彼女には隷属の首輪がついています。それはつまり、彼女の行動をこちらである程度制限する事ができる、という事にもなります。極端な話、『我々から離れるな』と命令すればどこかへ勝手にいくこともないでしょう」

 

アインズの提案にセルシオが迷いを見せる。悩むあたり、シェラの事を大切に思っているのは見ていてわかる。他のエルフの連中も、ざわざわと相談し始めている。

 

「ですが、こちらが怪しいというそちらの言い分ももっともな話。ですので、そちらから一人監視役兼連絡員を付けることを提案します」

 

『アインズよ、そんな事いって大丈夫なのか?』

 

『こちらも少しは譲歩しないと交渉とは言えないですよ。ぶっちゃけ、見られて困るような事なんてしてないでしょ?』

 

うーん、そういわれると後ろめたい事なんてやってない・・・・・・いや、ディアヴロ君がやらかしてるな。事故にせよ、こちらが気を付ければいい話ではあるんだが

 

「……仮に監視役を付けたとして、お前たちが寝静まったころにシェラ様を連れ出す事ができるわけだが?」

 

「それはあまりお勧めしません。どうやら彼女は城の警備を抜けてファルトラの街に来たご様子。ザルだったとは思いませんが、そんな警備を抜け出せた彼女が、また城を抜け出さない保証もそちらにないでしょう。むしろ二度手間になると思いますが?」

 

「ぐっ、それは・・・・・・くやしいがその通りかもしれん」

 

「えっと・・・・・・これ、褒められてる・・・・・・?」

 

「……どうしてそう思うのか、理解に苦しみますね。どうみても呆れられているでしょうに」

 

レムも呆れながらシェラの勘違いを正す。シェラは不満そうに頬を膨らませているが、弁護の仕様がないな、うん。それにしても、アインズ君の交渉術は流石というべきか。伊達に営業マンやってないね

 

「だ、だが、シェラ様の警護はどうするつもりだ?元素魔術師など、一体なんの役に」

 

「ほう?この俺を前にそのような戯言をほざくか」

 

あ、ディアヴロ君に火が付いた。そりゃ、極めるほどにやりこんだ元素魔術を馬鹿にされたら怒りもするか

 

「せっかくだ。そこの小物にも、もう一度わからせる必要がある。貴様らが侮っている元素魔術の恐ろしさというものをな。アインズも付き合うといい、貴様の力もあの程度ではあるまい?」

 

「まあ確かにそうですが・・・・・・ほどほどにお願いしますよ」

 

そう言って、ディアヴロ君がセルシオ達の背後の森に向かって杖を向ける。どんな魔法を見せるのかわからないが、念の為結界を張ってこっちに被害が及ばないようにしておく

 

「しかとその目に焼き付けるがいい!これが、貴様らが軽んじてきた元素魔術の神髄であり、異世界から召喚された魔王の力だ!!」

 

あっバカ、と思うのとほぼ同時にディアヴロくんが魔法を放った。何も自分から堂々と言わなくてもいいと思うんだが・・・・・・

主に余計なトラブル回避のために

 

「《フリージア》!!」

 

ごうごうと風が鳴り、ターゲットとなった森が瞬く間に氷漬けにされていく。その様子は正に、氷の花が咲くかのように幻想的でもあった

セルシオ達は勿論、ガラクも絶句している。あれだけこき下ろして来た元素魔術が、このような光景を作り出すなんて夢にも思わなかったのだろう。中にはひどく怯えている者もいる。当然、森の中にいる野生動物ならびにモンスター達も逃げ出している。中には森から飛び出してくる奴もいて、そこにはターゲットでもあるマダラスネイク姿もあり、沼の中に飛び込んでいる。まあ、魔法の威力もそうだがモンスターといえど蛇なんだし、寒いのダメなんだろう

 

「全く・・・・・・そのようなものを見せられては私も負けてられないな」

 

アインズ君もノリノリなようで、連中が唖然としている間に『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』を取り出している。どうやら、ガラクへの当てつけに塔で見せた『アレ』を出すつもりのようだ

 

「ついでに氷の処理もするとしよう。いでよ、《根源の(サモン・)火精霊召喚(プライマル・ファイヤー・エレメンタル)》!!」

 

アインズ君が叫ぶと、スタッフの宝石が光輝いて根源の火精霊が召喚される。エルフ達やガラクは勿論、一度見たはずのシェラやレムも驚いている。シェラに至っては一度見ているはずなのに、「すごい、すごーい!」とはしゃいでいる始末だ

 

「根源の火精霊よ、木々に火がうつらないよう注意しながら目の前の氷を処理せよ」

 

「アインズ君、力を示すためとはいえあれだけの精霊を氷の処理だけにつかうのってどうなのよ?」

 

「いえ、別にあれが切り札って訳でもありませんしね・・・・・・それに、火系統の魔法は確かに習得していますが、あの氷を処理するとなると加減の問題で適当なのがないんですよ」

 

うーん、そうなるとあながち間違ってもないのか。というか、今の会話を聞いてガラクがこちらから目をそらしてひどく狼狽している。大方、昨日の一件に加えてあれほどの精霊を使役している現実を受け入れないでいるのだろう。多分、くつわを外したら「馬鹿な・・・・・・そんな馬鹿な・・・・・・!?」とか呟いてそうだ

 

『さて、実力の程はこれで伝わったはずだが、標的のマダラスネイクが沼に潜ってしまったな・・・・・・』

 

『ああ。それなら大丈夫だ』

 

『『え?』』

 

《思念伝達》で二人にそう伝え、俺はマダラスネイクが逃げ込んだ沼の方に向かう。沼の淵一歩手前で止まり、先ほどすれ違った際に仕掛けたものを手繰る。大分深くまで潜ったようだが、あえて言おう。

 

大魔王からは逃げられないと

 

「ソォイ!!」

 

掛け声とともに、両腕を振り上げる。すると、大きな水しぶきとともにマダラスネイクが空中に放り投げられる。

アインズ君が「おおー」と感嘆の声を漏らしている傍らで、ディアヴロ君が『そこは「フィーッシュ!!」ではないのか?』と《思念伝達》でツッコミを入れる。だって蛇だしねぇ、合わないと思った

 

そう、すれ違ったあの数秒の間に粘鋼糸を巻き付けて文字通り釣りあげたのだ。割と簡単にやっているように見えてるが、糸の強度とか結構気を遣っていたりする。必要なのは目玉という話だが、皮とか牙とか普通に売れるだろうから、傷の少ない方が絶対に高値で買い取ってもらえる事だろう

 

「……あ、そうだ。《真なる死(トゥルー・デス)》」

 

空中に放り投げられているマダラスネイクに、アインズ君が魔法を唱えた。名前からして即死魔法のようで、マダラスネイクが地面に落とされた後、一向に動く気配がない。俺の感知スキルで確認してみたが、間違いなく死んでいる

 

「相変わらずえぐい魔法だな」

 

「あらゆる魔法を跳ね返す貴方がいいますか・・・・・・それよりも、無傷で仕留めたのはいいんですが、剥ぎ取りとかどうします?持って帰れない事もないですが・・・・・・」

 

「ああ、その辺も問題ないよ」

 

そういって、死体となったマダラスネイクに触れてスキルを発動する。

 

まずは、究極能力(アルティメットスキル)虚空之神(アザトース)》の権能の一つである虚数空間にマダラスネイクの死体を収納する。この時、みんなの目にはマダラスネイクが一瞬にして消えてしまったように見えた事だろう。現に、俺のスキルに関心を示しているアインズ君とディアヴロ君以外(未だに現実逃避しているガラクを除く)全員目が点になっている。まあ、そんな事お構いなしに目玉、皮、牙etcと売れそうな部位は一寸の無駄もなく分解して外に出すんだけどね!

 

三分どころか三秒クッキングである

 

『これは・・・・・あれだな、某狩猟ゲームのリザルト画面を見ているかのようだな』

 

『この場合、物欲センサーが機能しなさそうですね・・・・・・それはそれとして、これで一応クエストは達成ですね』

 

『まあ確かにそうなんだが、この際だしもう少し稼いで行こうじゃないか』

 

『『え?』』

 

「時に、レム君」

 

「…………ハッ!?え、あ、な、なんでしょうか?」

 

「今回のクエスト、『マダラスネイクの目玉』が目的だった訳だが、必要個数までは記載されてなかったよね?」

 

「………ええ、確かに数量の記載はなかったと思います。元々、あっちもエルフを使って三人を始末するつもりのようでしたし、適当だったんでしょう」

 

そう言って、レムが冷たい視線をガラクに向ける。まあ、俺もそんな気はしてたよ、うん。死んでしまえば、依頼料も払わなくていいんだし

 

だが、こうして目的の物を手に入れた訳だし?おまけにノルマも明記されてないんじゃねぇ?

 

「魔術師協会の思惑はどうあれ、数が足りないと難癖つけられても困る訳だし・・・・・・」

 

「………あー、成る程」

 

アインズ君は察してくれたようだ。ディアヴロ君もくつくつと笑っている。セレスティーナさんには悪いが、クエストとして出された以上はしっかりとこなさないとね。別に、ガラクへの意趣返しでやってる訳じゃない。ないったらないのである

 

「既に他のマダラスネイクの位置は掴んでるから、後は狩るだけだ」

 

「ならば折角だ。次は一人一殺で狩ろうではないか」

 

「いいですね。今後もこう言ったこともありそうですし、ある程度はこちらの実力の証明になるでしょう」

 

「よーし、それじゃあ俺は最初はナビゲートと周囲警戒に徹するから先に行っててくれ」

 

こうして魔王三人による蛇狩りが敢行された。結果は言わずもがな、アインズ君は先ほどと同じく即死魔法で、ディアヴロ君は風魔法で首をきれいに切断してマダラスネイクを狩っていた。当然、俺も二人の後で一匹狩りましたとも

 

こうして、指名依頼による俺たちの初クエストは幕を下ろしたのであった。因みに、アインズ君がセルシオに提案した件は、最初の敵愾心は何処へ行ったのかと思うくらいすんなりと通り、監視役には彼自身が来る事になった

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

【とある三大魔王の思考会議その10】

 

 

『『一狩り行こうぜ!!』』

 

『未来に生き過ぎててネタがわからない・・・』

 

 

 

 




今回は結構難産でした。主にアインズ様の交渉とか転スラのスキルとか(白目)

おまけに最近までリアルに追われ、追撃にコロナ騒ぎと大変でございますが、皆様もお体にお気を付けて。

最後にもう少しで1巻も終わりそうですが、今後の展開に関してアンケートしたいと思いますので、できれば投票をお願いします。(大体2週間ほど期間を設けます)

追記:2020/5/30 アンケート終了しました。ご協力頂きありがとうございます

クロスレヴェリ以外にも様々な世界に行ってもいいですか?(その場合、クロスレヴェリの顛末はダイジェストに(ry

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