そこに待っている真実とは……
◆◇◆
【side:リムル】
さて、と。あの子達から少し離れたあたりで俺は魔法による防音措置をとり、二人と向き合う。傍から見れば亜人と魔物にしか見えないが俺の予想が正しければ
「単刀直入に聞くけど君たちってもしかしなくても日本人?」
「何だと!?まさか貴様もか!?」
「まさかとは思いましたが・・・・・・貴方のその姿もアバターなんですか?」
やっぱりな。ていうかこんな状況で、あのネタで吹き出すっていったら日本人くらいなものだ。更に召喚者の二人が無反応であったという事実がこの結論に拍車をかける要因にもなった
「ああ、ちょっと話すと長くなる事情はあるが俺も日本人だ。まあ積もる話はあるだろうけど向こうも放置しとく訳にもいかないからな」
そう言って俺はとあるスキルを発動して二人に繋げる
『二人の前じゃ言えない事もあるだろうしこっちで話そうぜ』
「ぬおっ!?こいつ、まさか直接脳内に!?」
「これは・・・≪
そう、俺が使ったスキルは≪思念伝達≫。これは使用した相手に会話したり、自分のイメージを伝えたりと早い話が
『ふむ・・・こんな感じか?まるでボイスチャットを思考化したようなスキルだな』
『ええ、≪伝言≫でも対象は一人でしたし、≪ユグドラシル≫にもこんなスキルはありませんでしたね』
『なに?≪ユグドラシル≫だと?なんだそれは?それにさっきから言っている≪伝言≫とは何だ?』
『え?≪ユグドラシル≫を知らない?』
おや、同郷かと思っていたらなんだか齟齬があるな
『ふむ・・・・・・お互い認識に齟齬があるみたいだし一度整理するか』
そして事情を聴いた結果だが
まず角の生えた亜人。名前は『ディアヴロ』、本名『坂本 拓真』というらしく≪クロスレヴェリ≫というMMO-RPGで公式ラスボスや魔王などと呼ばれるほどの上位プレイヤーだそうだ。本人曰く、いつものように向かってくるプレイヤーをのした後、眠って起きたらディアヴロの姿になっていたという。ちなみに坂本くんのしゃべり方がちょっと気になって、疲れないのかと聞いたところ
『ふん、我は魔王だぞ?これくらい造作もないわ!』
と、返された。まあそれでいいなら別にいいんだけども、もしかしてなりきりプレイヤーなのか?
次に骸骨の魔術師っぽい人。名前は『モモンガ』(名前顔負けじゃねぇかと突っ込んだのはおそらく必然だろう)、本名は『鈴木 悟』という。話を聞いているとどうやらかなり未来の日本から来たようで、ナノマシンを活用したバーチャルゲーム、DMMO-RPG≪ユグドラシル≫というゲームのサービス最終日でそのゲームの最後を見送ろうとしたその深夜0時に、いきなりこの塔の上にそのアバターの姿で立っていたという。
要約するとこんな感じか。しかし、同じ日本でもこうも時間差があるのはどういうことなのか。しかもこの塔、坂本くんから聞いたらどうやら≪星降りの塔≫というらしいが、坂本くんのやっていた≪クロスレヴェリ≫と同じ建造物というのも気になる。そんな場所に別々の世界から集められた訳だが・・・・・・単なる偶然なのか?
ちなみに俺の事も話したよ。話した訳なんだが
『え!?その体ってアバターじゃなくて
『しかも通り魔に刺されて死んだら転生してスライムになっただと!?』
うん、そうだよな。普通に驚くよね。俺、『リムル=テンペスト』こと『三上 悟』は後輩の結婚相談で同行していたところを通り魔に刺されて死亡し、気づけばスライムに転生していたという訳だ。いろいろあったが今では一国の王様であり、魔王にまでなったんだから人生なにがあるかわかんないね!
『まあ、こんな体でもなれたら結構便利なんだ。大変な事もあったが、皆が頑張ってくれたおかげで国も安定してきたし』
『いいですね、そういうのは・・・・・・『アインズ・ウール・ゴウン』も最初のころは小さかったけど、皆時間を惜しんで大きくしていったんだよな。そう、皆で頑張って・・・・・・』
ぬ、そういえば鈴木くんのやっていた≪ユグドラシル≫はサービス終了したんだったよな。そりゃ思い入れも強いか・・・・・・
『嘆いてもしょうがなかろう。鈴木、いやモモンガよ。今重要なのは我々がなぜ喚ばれたのかだ』
お、坂本くん・・・・・・いや、ディアヴロくんナイス方向転換だ。俺の配下に同じような名前のやつがいるがこの際気にしないでおこう。鈴木くんの方もアバター名で呼んだ方がいいだろうな
『・・・ええ、そうですね。今は現状の把握から、ですね。そういえばエルフの子、名前は『シェラ・L・グリーンウッド』というらしいんですが、どうやら魔王を呼ぶつもりで召喚したと』
うぉい!?なんだそのピンポイントな指定は!?確かに外見じゃぁ二人はどう見ても魔王だが・・・・・・
『『グリーンウッド』?確かその名はどこかで聞いた事があるな・・・・・・こういうのは本人達から聞くに限るな』
◇◆◇
【side:ディアヴロ】
俺たちは一旦思念での会議を切り上げて、召喚者である豹人族の『レム・ガレウ』とエルフの『シェラ・L・グリーンウッド』の元へ戻る。念のため≪思念伝達≫のスキルはまだ繋げてもらっているのでいざとなったらフォローしてもらうつもりだ。もっとも、そんな雰囲気は欠片も出せませんけど!
「あ、戻ってきた!ねぇねぇ、なに話してたの?」
「ふん、そんな事はどうでもいい。それよりも、貴様らがなぜ俺たちを召喚したのか。その理由を聞かせてもらおうか?」
「……あなた達を召喚した理由、ですか」
レムがそう言った後、彼女はその小さな手でぎゅっと胸元を押さえた。その姿は祈っているようで、痛切な表情だった
「……私の目的はこの世界の魔王、『クレブスクルム』を打倒すること。あなた達を召喚したのは、それを為すために力を貸して欲しいからです」
「……魔王『クレブスクルム』とは?」
「確か魔族たちが崇拝している魔王の名だったはずだ」
そう、魔王『クレブスクルム』は公式最強の魔王。しかし、未だクレブスクルムが出てくるシナリオは公開されていないためどんな姿なのか、どれほどの強さなのかがわからない。一応、三年前に≪剣の魔王サンクディウス≫というのがラスボスとして登場し、それを倒すとクリア演出があった。しかし、サンクディウスは所詮”魔王の欠片”であるらしい。いずれ完全な魔王が復活するのではとプレイヤーの間で憶測が飛んでいるが、その完全な魔王がクレブスクルムなのかはわからない
「魔王を倒すのに魔王を召喚したのか・・・・・・それっていったいどんな当てつけだよ」
「そ、それは・・・・・・というか、貴方も魔王なのですか?」
「ああ、こんななりだがれっきとした魔王だよ。『リムル=テンペスト』だ、ひとまずよろしく」
「私は『モモンガ』と言います。レムさん、その魔王『クレブスクルム』について何か「いったぁ!?」・・・え?」
モモンガがクレブスクルムについて何か知らないか質問しようとしたら、いつの間にかシェラがモモンガに近づいており、何やら手を痛そうにさすっている
「……貴様は一体何をしているのだ?」
「うぅ・・・・・・ディアヴロには隷従の儀式が効かなかったけど、他の二人にはまだやってないからもしかしてと思ったんだけど、モモンガに触れようとしたらビリッて・・・・・・」
儀式魔法が俺に跳ね返されたのに懲りないのか・・・・・・それよりもモモンガの方にも何かスキルが常時発動しているのか?
「あー・・・おそらく私が持っている特殊能力のせいでしょう。えーと・・・・・・これでおそらく大丈夫です」
そういってモモンガはシェラの手を握ってみる。どうやら能力の解除には成功したらしく、痛がっている様子はなかった
「あー、痛かったー。それじゃあ気を取り直して「あ、それはお断りします」なんで!?」
シェラが再び隷従の儀式を試そうとしたがモモンガが拒否する。そりゃそうだよな。俺の場合はこの『魔王の指輪』による魔法反射があったからよかったものの、普通は隷従なんでされたくないよな
「そ、それじゃあリムルちゃん・・・」
「俺も断る。というかちゃんはやめろ。れっきとした男だ俺は」
リムルも拒否した。二回も拒否されるのはさすがに堪えたのかシェラが項垂れる。そして最後の希望にすがるがごとく俺の方に寄って来て今着ている装備である『漆黒の虚』という黒い服の袖を引っ張る
「ね?ね?ディアヴロは私が召喚したんだから一緒に来てくれるよね?ディアヴロがいてくれたら晴れて召喚士として冒険者登録できるんだから!」
やめてください。そんな涙流しながら上目遣いで懇願なんてされたら断りづらくなるんですけどぉ!?
いや、それよりも
「ちょっと待て、今貴様は召喚士として冒険者登録できるといったがここでは召喚士は憧れるような存在なのか?」
そう、クロスレヴェリにおいて≪召喚士≫とは言うなれば不遇職である。俺たちガチ勢からすれば「ペットが欲しいなら別のゲームをしろ」と揶揄されるくらいに弱いとされていた。だが
「召喚士だよ!?魔術師って言ったら召喚士に決まってるじゃん!」
「元素魔術はどうなっているのだ?元素魔術こそが至高ではないのか?」
「……元素魔術、ですか?そうですね、拳くらいの火球を放つとか転ばせるくらいの突風を吹かせるとかその程度ですが」
「なん・・・だと・・・!?」
なんということだ・・・・・・俺が多くの時間と熱意を注いで鍛え上げた職業がまさかの不遇職だと・・・・・・!?
軽くショックを受けてしまいそうになったが、魔王はこの程度で落ち込まない!
しかし、そうなってくると浮かび上がる疑問がある
そう、今の俺はどのくらいの強さなのか。こうなれば試すしかあるまい
『リムルよ、今の俺はどの程度の強さなのか試す必要が出てきた。少し外に出てくるぞ』
『あ、それなら俺も一緒にいいですか?≪ユグドラシル≫の魔法がどれほど通用するのか確認したいですし、お互いの強さの程度は把握しておいた方がいいでしょう』
『ふむ、確かに把握しといた方がいいな。丁度いいから俺もこの二人の首輪が外れないか調べておくよ』
リムルはどうやら隷従の首輪の解除について調べてくれるようだ。流石に俺たちより異世界に長くいただけあって頼りになる
「貴様ら、このあたりにモンスターはいるか?」
「もう!さっきから”貴様ら”ってやめてよね!?あたしには『シェラ・L・グリーンウッド』って名前があるんだから!」
「ふん、今のところは”貴様ら”で十分だ。あまり無駄話をして俺を怒らせるな」
「うぅ・・・・・・わかったわよ」
二人に断られたのをまだ引きずっているのか、俺の魔王ロールプレイを怖がっているのかはわからないが潔く引き下がってくれた。しかし、いずれは力を証明しなければならない時が来るだろう。早めに能力の確認をしなければ
「それで、モンスターはいるのか?」
「……たまに森から追い出されたモンスターがいる程度です・・・・・・街の近くよりかは多いですけど」
よかった、外に出ていきなり戦闘とか能力を把握していない現状では避けたかったところだ
「ふん、モンスターはいないのか・・・・・・退屈な場所だな・・・・・・まあいい、適当な岩があればそれで試すとしよう」
そう言って俺は階段を目指して歩き出した
「ちょっと、勝手にいかないでよ!あんたはあたしの召喚獣でしょ!?」
「……あなたの召喚獣ではありません」
「まあまあ、あっちは置いといて、さっきも言った通りその首輪を調べて、解除できそうならしてあげるから」
後ろで騒ぐ二人をリムルがなだめてとどまらせる。
「私も一緒に行きましょう。召喚された事で私の能力に何か変化がないか確認しておきたいですし」
そして俺の後を追うようにモモンガもついてきた。うん、≪思念加速≫便利だわ。ここまでの流れを時間をかけずに打ち合わせできるのは正直助かった
さて、うまく魔法が発動できるかな・・・・・・
◆◇◆
【side:リムル】
「うー・・・・・・隷従の儀式も済んでないのに勝手に行動して・・・・・・」
「……さも貴方が召喚したように言わないでください」
「あーはいはい、その話はもういいだろ。じっとしててくれ」
全く、どっちが召喚したとかそんなに重要なことかね。まあ隷従する気はさらさらないけど
ディアヴロとモモンガが外に出た後、俺はシェラとレムの首輪の解除法を探るためシエル先生に解析をしてもらっているわけだが・・・・・・うん、シエル先生に頼らなくてもわかるわ。言うなれば”絡まった極細の糸”のような状態と言えばお分かりだろうか
魔法を反射された影響なのか、普通の儀式魔法と違う形でかかったのかは定かではないが、果ての見えない部屋にとてつもなく長い糸が絡みに絡みまくってそれを明かりのない暗闇の中で解きほぐさなきゃいけないといえばどれだけ困難かわかってもらえるはずだ。それほどにこの首輪を解くのは困難を極める
なおここに至るまでに
≪私としてはこのままでもいいと思います。仮にもマスターを隷従させようとした罰と思えばいいのです≫
いやいや、シエル先生。確かにそうなんだけど一応うちの国にもエルフがいるわけでしてね
と、こんな感じでシエル先生がへそを曲げて俺がそれをなだめて何とか解析してもらえるようにこぎつけて、やっとの事で判明したわけである
なお外に出た二人に関しては≪思念伝達≫を繋げたままにしており、何かあれば即座に向かう手筈になっている
「うーん・・・・・・思ったよりも複雑で解除が難しそうだな・・・・・・」
シエル先生なら一晩でやってくれそうだけど
「そんなー・・・・・・」
「……知らなかったとはいえ、ディアヴロに魔法反射という能力があったとは・・・・・・完全に想定外でした」
「そういえばさ、レムはクレブスクルムを倒したがってたみたいだがどうしてなんだ?誰かに頼まれたとか」
そう、先ほどから疑問に思っていたのだ。ディアヴロがいうには魔王『クレブスクルム』はこの世界において最強の名を持つ魔王。そんな存在を、一介の召喚士が倒そうとする理由は何なのか。ただ単に名声や金が欲しいとか、そういった俗物的な理由も考えられるがわざわざ同じ魔王を召喚してまでなそうとする事ではないはずだ。おそらく何か人には言えない何かを隠していると思うが・・・・・・
「それは・・・・・・私は個人的な理由で強さを常に示し続けなければならかったので、今回の召喚であなた達魔王を召喚したのです」
「ちょっと!召喚したのはあたしだっていってるでしょ!?」
「……全く、理解力がなく人の話を聞かない。これだからエルフは・・・・・・・」
あーもう、これで何回目だよ。飽きないね君たちは
しかし、”個人的な理由”ねぇ。おそらくそれが隠してる何かだと思うが・・・・・・向こうから話す気がない以上、聞き出そうとするなら力づくかはたまた脅すかでもしないと無理そうだな
それはそうとシエル先生の解析の方はどうなったのかな、と
≪それなのですがマスター。レムの事で少々気になることが≫
おや、何か異常でもあったのか?そう思って詳しい内容を聞こうとしたのだが
突如として大きな爆発音が響き渡り、塔が揺れる
「きゃっ!?」
「何事です!?」
二人が突然の事に驚き、身構える。ていうか何が起きた!?
≪どうやらディアヴロとモモンガが魔法の試し打ちをしているようです≫
ちょっ!?魔法を試すって言ってたけど一体どんな魔法使ってんだ!?
俺は即座に≪思念伝達≫で二人に問いただす
『うぉい!?一体何やってんの君たち!?』
『ああ、リムルさん。いえ、ディアヴロさんと少々模擬戦をしてまして』
『うむ!≪ユグドラシル≫とやらの召喚獣もなかなかやるではないか!』
いやいやいや!?さっきから塔揺れまくってるんだけど、一体何と戦っているんだ君らは!?
先ほどから鳴りやまない轟音にいてもたってもいられなかったのか、こちらが説明する前にレムとシェラは立ち上がり階段へと向かっていく
「あ、ちょっと!?」
「ディアヴロ達が外で何かに襲われているのかもしれません!急いで向かわないと!」
「まだ隷従の儀式も終わってないのに倒されちゃったりしたらたまんないよ!」
止める前に行っちゃったよ。仕方ない、俺も様子を見に行くとするか
そう思いながら二人の後を追い、星降りの塔の外へと出ていく
すると・・・・・・
「フハハハハッ!召喚獣は雑魚と決めつけていたがなかなか強いではないか!≪エクスプロージョン≫!!」
「あまりなめてかかると痛い目にあいますよ?行け!≪
うん、今何が起きているかというと、恐らくモモンガが召喚したであろう巨大な火の精霊と不適な笑みを浮かべているディアヴロがどう見てもガチンコバトルを繰り広げている。おそらくどっちも本気でやっているというより未知の体験にテンション高くなって遊んでいるという感じだろうか。雰囲気的にそんな気がする。あ、今度は氷系の魔法かな?火の精霊が凍り付いてる
この光景をレムとシェラも一緒に見ているわけだが、うん。見事に開いた口がふさがってない
・・・・・・ていうか、君たち
「やりすぎだバカタレェ!!」
俺の怒号とともに諸悪の根源たる二人にハリセンをお見舞いするのであった
思った以上に筆が進んで早めに投稿する事が出来ました。
進む時は進むものですね(遠い目
ディアヴロの口調は思念加速の中でも魔王ロールプレイです。ぼっちですので(ry
2017/05/03 追記
転スラの原作や書籍を読み返して、いろいろと考えた結果≪思念伝達≫と≪思考加速≫を別物扱いにする事にしました。読んでくださった方には申し訳ありませんが、ご容赦願います