ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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改めてまして、たくさんのお気に入り登録本当にありがとうございます!

こちらは一話読み切りの短編です!

システィとルミアの二人が風邪を引いたので、ルイスが看病にいくのですが、そこで色々なハプニングが起こります!

作者の欲望とサービスカット全開ですので、そういったものが苦手な方はご注意ください

それでは、ごゆっくりどうぞ!


番外編
二人が風邪を引いたので


ある日のフェジテ、その街中にて。

 

ルイスは急ぎ足で、とある場所に向かっていた。

 

思い出すのは、先程家にやって来たシスティーナの両親との会話。

 

『システィとルミアが風邪をひいてしまって……』

『私たちはこれから大事な仕事で出かけなくてはいけないんです。どうか、二人の看病をお願いできませんか?』

 

それを聞き、ルイスは大急ぎで荷物をまとめ、知らせてくれたシスティーナの両親にお礼を言って、家を飛び出した。

 

競歩のような速度で歩き続け、やがて大きな屋敷の前に辿り着く。

 

システィーナの両親から受け取った鍵を使い、玄関の扉を勢いよく開く。

 

焦ってはいるが、施錠は忘れない。

 

屋敷の中は、見た目に違わず広い。

 

慣れない者が入れば簡単に迷ってしまいそうだが、ルイスは迷う事なく歩みを進める。

 

階段を上がり、二階のシスティーナの部屋へ。

 

コンコン、と木造の扉をノックすると、

 

「はーい……」

 

と若干鼻声で返事が聞こえる。

 

「システィ、入るぞ」

「えっ?」

 

驚くような声がしたが気にせず中に入る。

 

「わっ、ちょ、る、ルイス!?」

 

明らかに焦っているシスティーナ。

 

理由が分からず首を傾げ、少ししてから気がついた。

 

システィーナはもちろん今寝巻きなわけだが、暑かったのか盛大に胸元が空いている。

 

ボタンは全て開き、その上でその間は大きく開かれていた。

 

寝起きだから、下着は身につけていない。

 

そうなれば当然、システィーナの控えめながらも白磁のような胸元が惜しげも無く晒されるわけで。

 

ルイスは急激に顔が熱くなるのを感じる。

 

(って、やべぇ!)

 

少々距離が空いているにも関わらず、思わず注視しそうになってしまい、秒速で目をそらす。

 

「ご、ごめん、システィ!」

「う、ううん。こっちこそ、油断しててごめんなさい……」

 

お互い耳まで真っ赤になり、しどろもどろに謝る。

 

妙な空気が流れる中、システィーナが遠慮がちに話しかける。

 

「って、っていうか、なんでルイスがここに?」

「お、おばさんとおじさんに二人が風邪引いたって聞いたから……看病しに。鍵は借りた」

「そ、そっか……。ありがと」

「お、おう……」

 

再び沈黙。

 

いくら幼なじみとはいえど、お互い年頃の少年少女だ。

 

いきなり開きまくった胸元を見た側も見られた側も、固まってしまうのは当然だった。

 

そのまま沈黙すること数分。

 

「そ、そういえば、ルミアは!?へ、部屋で寝てるのか!?」

「う、うん、そうね!?たぶんそうだと思うわ!?」

 

空気を変えるために不自然極まりない口調でやり取りする。

 

それで冷静になったのか、ルイスは口調を直す。

 

「悪いけどルミアをここに連れてきてもいいか?二人が一緒の部屋にいてくれた方が看病しやすいし」

「……それも、そうね。大丈夫よ。ベッドのスペースにはまだ余裕あるし」

「そっか。じゃあ、連れてくるよ」

 

そう言ってルイスは部屋を出て、その向かいの扉をノックする。

 

「おーい、ルミアー!」

 

先程のひと騒動で学習したのか、やや大きな声で呼びかけ、しばらく待ってみる。

 

しかし、ちっとも返事が返ってこない。

 

「寝てるのか……?」

 

仕方なく、ルイスは慎重に扉を開く。

 

「ルミアー。起きろー」

 

言いながら部屋に入り、ベッドの方に向かう。

 

そこには、熱のせいか少々苦しそうなルミアが寝ていた。

 

「ルミア、ルミア。大丈夫か?」

「うっ……んんっ……!」

 

軽く肩を揺すると、ルミアは僅かに身じろぎして目を開く。

 

「あれ……ルイスくん……?」

「おはよう、ルミア。風邪引いたって聞いたから、来たよ」

「あ……そうなんだ……」

「んで、早速で悪いんだけど、システィの部屋に移って欲しいんだ。二人一緒の方が看病しやすいから」

「うん……わかった」

「悪いな」

 

謝るルイスに首を横に振り、ルミアはベッドから身体を起こし、立とうとする。

 

しかし、

 

「あっ……!」

 

足元がふらつき、体勢を崩す。

 

「おっと!」

 

しかし、ルイスの反応は早かった。

 

素早く踏み込み、ルミアが転ぶ前に抱きとめた。

 

「あ……」

「やっぱり危ないか。歩くのは無理そうだな。ちょっとじっとしててくれよ?」

 

さらに、

 

「きゃっ……!」

 

追い打ちをかけるように、ルミアの背中と膝の裏に手を回して抱き上げる。

 

俗に言う、お姫様抱っこというやつである。

 

「る、ルイスくん……さ、さすがにちょっと恥ずかしい……」

 

これにはさすがにルミアも、熱以外の理由で顔を赤くする。

 

「ん……?」

 

言われ、気がついたようにルイスは考える。

 

そして、恥ずかしさで死にそうになった。

 

(よくよく考えたら、俺めちゃくちゃキザなことしてるじゃん……!)

 

しかし、今更引き返すわけにはいかない。

 

ここで慌てる方がかっこ悪い。

 

「う、動けないんだから、仕方ないだろ?ちょっとの間だから我慢してくれ」

「……うん」

 

どうにか表情を取り繕いながらそう言うと、ルミアは小さな声で答えて、ルイスの首に手をかけた。

 

近づくルミアの身体。

 

少女特有の甘い匂いが漂ってきて、ルイスはいよいよ取り繕いようがなくなる。

 

(落ち着け俺よ……!)

 

そう念じながら、ルイスは足早に部屋を出て向かいのシスティーナの部屋に戻った。

 

─────────────────────

 

「システィが38.5度。ルミアが38.8度か。二人とも結構な高熱だな」

 

若干むくれているシスティーナの視線に晒されながらルミアを寝かせたルイスは、ひとまず二人の熱を測った。

 

「とりあえず、今日は栄養とって薬のんで安静にした方がいいな」

「そうね……ちょうど休日で良かったわ」

「しっかり治して、明日からまた頑張らないとね」

「そうと決まれば、ひとまず食事だな。二人とも、食欲は?」

 

ルイスがそう言うと、二人は顔を見合わせる。

 

「そういえば、朝から何も食べてなかったね」

「普通のご飯は喉通らなかったし……」

「ん、そうか。じゃ、なんか作ってくるよ。システィ、調理場借りるぞ」

「それはもちろんいいけど」

「ありがとう、ルイスくん」

「気にしないでいいさ」

 

ルイスは一階に降り、調理場で自分の持ってきた食材を広げる。

 

「食べやすい柔らかいやつがいいな……。その上で栄養が取れるものって言ったら、やっぱりあれしかないな」

 

そうしてルイスはまず、鍋に水を張って米を入れ、火にかけた。

 

沸騰するのを待つ間に、卵を二つ割って器に入れ、かき混ぜる。

 

卵にさっと塩をふって味付け。

 

時折、鍋の中身をかき混ぜ、待つこと数十分。

 

米が柔らかくなったのを確認し、こちらにも塩を振りかけ、卵を入れる。

 

ささっとかき混ぜ、ひと煮立ち。

 

仕上げに葱をちらす。

 

「よし、完成」

 

この通り、ルイスは料理が得意である。

 

両親は仕事が忙しい上に、母親は薬学に、父親は鍛冶に熱を入れているため、家事があまりできない。

 

そこで、昔から家事全般はルイスの担当だった。

 

今では料理の腕前もかなり上がり、レパートリーもかなり多いのだ。

 

軽く味見をしてその出来に頷くと、鍋ごと持って二階のシスティーナの部屋へ。

 

「できたぞー」

 

ベッド脇のテーブルに鍋敷きを敷いて鍋を置き、蓋を開く。

 

身体を起こし、ベッドから鍋の中を覗きこむ。

 

そこには、黄色と白色が見事な模様を描く、卵粥が入っていた。

 

「わあ、美味しそう!」

「特製卵粥だ。昔ある人に教わったんだ。美味いから食べてみなよ」

 

言いながら皿に卵粥を盛り付け、二人に手渡す。

 

嬉しそうに二人は卵粥を受け取り、早速スプーンで口に運ぼうとする。

 

しかし、やはり熱のせいか、二人とも上手く食べられない。

 

「わっ!あ、危ない……こぼれるところだった……」

「あー、やっぱり大変か……」

 

無論、解決法はある。

 

だが、それはやる方もやられる方もかなり恥ずかしい。

 

(けど、お粥無駄にするのもなぁ……)

 

ため息をつき、

 

「二人とも、ちょっと貸してくれ」

 

器を受け取る。

 

そうしてスプーンで一口分卵粥をすくい、

 

「ほら、あーん」

 

言いながらルミアの口の前に差し出す。

 

「えっ……?」

「なっ───!?」

 

驚く二人。

 

「いやだって、仕方ないだろ?食べにくそうだったし……」

「う、うん……そうだね。じゃあ、お言葉に甘えて」

 

ルミアは気恥しそうに笑いながら、卵粥を頬張る。

 

「……うん。相変わらずルイスくんの料理は美味しいね」

「そ、そっか」

 

ポリポリと頬をかき、ルイスはもう一つの器を手に取る。

 

また一口分すくい、今度はシスティーナの口の前に差し出す。

 

「ほら、システィも。あーん」

「ううっ……!」

 

しばらく唸りながら迷っていたが、

 

「わ、わかったわよ……食べるわよ……」

 

と言い、遠慮がちに卵粥を口に含んだ。

 

「どうだ?」

「……美味しい」

「そっか」

 

そうして、ルイスは交互に卵粥を二人に食べさせたのだった。

 

─────────────────────

 

「ごちそうさま、ルイスくん。美味しかったよ」

「本当。ちょっと元気になった気がする」

「お粗末様でした」

 

見事に鍋の中が空っぽになるまで食べきり、ルイスは満足そうに頷く。

 

「ま、これで栄養は大丈夫だろう。後は薬だな」

 

洗い物を終え、部屋に戻って来たルイスは、荷物の中から紙包を取り出す。

 

「はい、これ飲んで」

「うっ、苦そう」

「でも、その方が効きそうだよね」

 

中の白い薬剤をルミアはあっさりと、システィーナは苦々しい顔をしながら飲みきる。

 

「あとはしっかり休む。これで治るはずだ」

「うん……ありがと。ルイス」

「いいってことよ」

「おやすみ、ルイスくん」

「おやすみ」

 

卵粥で満腹になったのも手伝ったのか、二人はすぐに眠りに落ちた。

 

「……ふぅ」

 

ひと安心とばかりに、ルイスは息を吐く。

 

「それにしても、なんで二人一緒に風邪なんか引いたのかね……。仲がいいにも程があるだろ……」

 

後日聞いた話だが、どうやら二人して風呂上がりにバスタオル一枚で会話に夢中になっていたらしい。

 

それを想像してしまったルイスが再び真っ赤になったのは余談である。

 

「しっかし……」

 

ルイスはベッド脇の椅子に座り、部屋を見回す。

 

そうして視線をベッドの二人に戻し、一言。

 

「暇だな」

 

看病に来るのに夢中で、こういった時間に何しようとかは全く決めていなかった。

 

荷物もほとんどが薬と看病用の道具で、残念ながら暇を潰せるものなどない。

 

かといって、外に出るなど論外である。

 

こんな状態の女の子二人を放置して出かけるなど、ただのクソ野郎である。

 

「……そういえば」

 

そんな時、ふと思い出した。

 

システィーナは熱心な『メルガリウスの天空城』のファン、通称メルガリアンと呼ばれるほどのマニアである。

 

ならば、この部屋には当然とある本がある。

 

「あったあった。やっぱりここか」

 

部屋の片隅にある本棚に、件の本はあった。

 

タイトルは『メルガリウスの魔法使い』。

 

正義の魔法使いが魔王を倒す、典型的な童話である。

 

「久しぶりに読むか」

 

無事に二人を看病しながら時間を潰す手段を見つけ、ルイスはしばし本を読みふけっていた。

 

どれくらい時間が経っただろうか。

 

不意に、ルミアが苦しそうな声を上げた。

 

「はあっ……はぁっ……!」

「ルミア?」

 

ただ事ではないと察し、ルイスはルミアの顔を覗きこむ。

 

「さむ……い……!寒い……!」

「……そうか。汗が冷えて……」

 

おそらく、ルミアの熱が上がったのだろう。

 

そのせいで汗をかき、それが冷えて身体を冷やしてしまっているのだ。

 

このまま放置しては、確実に風邪が悪化する。

 

「ルミア。おい、ルミア!」

「……はぁっ……はっ……ルイス……くん……?」

 

肩を揺すり、ルミアを起こす。

 

開いているものの、その目の焦点はあっておらず、身体中に汗をかいている。

 

(……ごめん、ルミア)

 

「ルミア、このままじゃ身体が冷える。ひとまず、汗を拭こう」

「……うん」

「で、だ。ルミアは動くのもしんどいだろうから、その……俺が拭いても大丈夫か?」

「………うん。お願いね」

 

ゆっくりと、しかし確かに頷くルミア。

 

顔は、お互い真っ赤である。

 

正常な判断を失っている可能性はあるが、無断で服を脱がせるよりはマシだろう。

 

「……それで、あの……服脱ぐから……」

「あ、ああ、ごめん。あっち向いてる」

 

大慌てでルイスは後ろを向く。

 

やたらと早鐘をうつ心臓。

 

すぐ後ろで聞こえる、衣擦れの音。

 

(やばいやばいやばいやばい)

 

まるで上官に会う兵士のごとく身体を真っ直ぐにしながら、長い時間を耐え続ける。

 

「い、いいよ、ルイスくん」

 

やがてルミアの許可が出た。

 

恐る恐る後ろを振り向き、また速攻で目を逸らす。

 

(無理無理無理無理無理無理!直視できるかっ!?)

 

振り返った先には、胸元を右腕で隠し、背中を向けるルミア。

 

システィーナ程ではないが充分に綺麗な肌と、じっとり汗ばんだ身体。

 

それによって張り付いた金髪が、ルミアを普段とはまるで違う雰囲気にさせる。

 

しかし、長い間脱いだままでは、余計体調を崩してしまう。

 

「……よし」

 

覚悟を決め、ルイスはタオルを手に取る。

 

極力見ないようにしながら、ルミアの背中に恐る恐る触れる。

 

「んっ……!」

 

くすぐったかったのか、ルミアが短く声を上げる。

 

(頼むから耐えてくれよ俺の理性───!)

 

タオルを滑らせ、手早く動かす。

 

「る、ルイスくん……ちょっと痛い……」

「あ、ああ、ごめん……」

 

知らず知らずに力が入っていたらしく、ルイスはゆっくりとタオルを動かす。

 

しかし、そうなれば当然、時間がかかるわけで。

 

「ふぅ……ふぅ……」

 

近距離から聞こえるルミアの息遣い。

 

タオルごしでもわかる、肌の柔らかさ。

 

そして何より、思春期男子には目の毒極まりない光景。

 

ルイスの精神力の限界が試されていた。

 

ほんの数分のことだが、永久のように果てしなかった時間が終わり、ルイスはタオルを畳む。

 

「よ、よし……終わった……」

「あ、ありがとう。ルイスくん」

「お、おおお、おう」

 

全力で声を震わせ、ルイスは足早に部屋を出ていった。

 

─────────────────────

 

しかし、事件はそれでは終わらない。

 

ルミアの着替えも終わり、ルイスが再び椅子に座ってしばらくした頃。

 

今度はシスティーナが動き出した。

 

「ん……」

「どうしたんだ?システィ」

 

先程のルミア同様、システィーナの顔を覗きこむ。

 

見たところ、異常はない。

 

多少顔は赤いが、それでも朝よりは大分良くなってきている。

 

だが、ルイスは判断を誤った。

 

いきなり、システィーナがルイスの首に腕を回し、自分に引き寄せたのだ。

 

「ぐおっ!?」

 

突然の事態にさすがに対処できず、ルイスはシスティーナとルミアの間に収まる形で、ベッドに寝転がってしまった。

 

(な、なにごと!?)

 

状況が飲み込めないルイスはひたすら困惑する。

 

そこへ追い打ちをかけるかのごとく、

 

「うーん……」

 

寝ぼけたシスティーナがルイスをきつく抱き寄せる。

 

(待て待て待て待て待て待て!!!)

 

しかも、場所が悪いことにそこはシスティーナの胸の中央である。

 

漂ってくる甘酸っぱい香り。

 

触れただけで壊れそうな柔らかい肌が押し付けられ、ルイスは意識を消失しかける。

 

だが、ここで意識を失ったら、起きた時にはあらゆるものを失うことになる。

 

(とりあえず脱出するしかない!)

 

身体を小さく縮め、どうにか腕から抜け出そうとしていると……。

 

「ん、んんっ……?」

 

システィーナが、ぱっちりと目を開いた。

 

「あっ……」

 

(終わった)

 

悟り、殴られてもいいように歯を食いしばっていると、

 

「あら、ルイス。あはは、どうしたのぉ?」

 

やけに柔らかい表情でそう言った。

 

その表情には、見覚えがあった。

 

あれは数年前、システィーナが誤って父親のワインを飲んでしまった時のこと。

 

それなり高いワインだっらしく、たった一杯でも結構な度数だ。

 

結果システィーナはベロベロに酔い、ところ構わずあらゆる人に抱きつくわ、頬ずりするわで収集のつかない事態になっていた。

 

その時の表情に、今のシスティーナはよく似ていた。

 

(つまり、熱にやられて酔った時の状態になったってわけか……?)

 

そう推測を立て、ルイスはこの後起こることを考える。

 

そして、ダラダラと冷や汗を流した。

 

「ねぇぇ、ルイスぅ……。うふふふ……」

 

とろん、とした表情のシスティーナ。

 

酔った時の症状、抱きつき魔、甘え魔。

 

加えて、ここはベッドの上である。

 

(……頼むからもう少しだけ、もう少しだけ頑張ってくれよ。俺の理性……)

 

半ば諦めたような気持ちで、さらに強くなるシスティーナの抱擁に備えるのだった。

 

─────────────────────

 

「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……!」

 

どうにかシスティーナの抱きつき甘え地獄(割と天国でもある)を乗り切り、ようやく眠ったので脱出したルイスは、荒く息を吐く。

 

「つ、疲れた……なんで……看病でここまで疲れないといけないんだ……」

 

もはや本を読む気になどならず、背もたれに勢いよくもたれる。

 

「……くそ。明日どんな顔して二人に会えばいいんだ……?」

 

二人が覚えているかはわからないが、どちらにせよルイスが顔を合わせるたびに意識してしまいそうである。

 

しばらく窓の外を眺め、気持ちを落ち着かせる。

 

いつの間にか日は暮れて、空には月が出かかっていた。

 

「……いい月だ」

 

ルイスは月が好きだ。

 

というか、夜空と月の組み合わせが落ち着く。

 

昔はよく、システィーナの部屋のバルコニーで星を見ていた。

 

幾許か落ち着き、再びベッドの上の二人を見る。

 

もうすっかり表情は落ち着き、熱も下がったようだ。

 

ハルズベルト家特製風邪薬の威力は伊達ではない。

 

「……本当にどうしよ。ぶっちゃけ今でも顔合わせ辛い……」

 

そしてまた同じことで悩んでいた。

 

そんな時、二人が、

 

「う……ん……」

「んっ……」

 

同時に身じろぎした。

 

思わず身構えるルイスだが、とくになにも起こらない。

 

代わりにポソリと、

 

「ルイス……」

「ルイスくん……」

 

名前を呟き、

 

「「ありがとう……」」

 

といって頬を綻ばせる。

 

ルイスは面食らったような顔をして、その後微笑みながら、

 

「どういたしまして」

 

と言った。

 

(まあ、どうにかなるか)

 

そんなことを、考えながら。

 

ちなみに後日、ルイスも盛大に風邪を引き、二人に平謝りされながら看病されたというが。

 

それはまた、別のお話。




如何でしたでしょうか?

実は他にも色々とアイディアはあるので、また書けたらいいなと思っています

少しでもお楽しみ頂けましたら、幸いです
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