楽しみにしていた漫画のネタバレをされて、壁を殴って凹ませたことのある雪希絵です
未だに家の壁のそこの部分は凹んでいます
さて、やって来ました更新日!
セリカの弟子コンビの共同戦線ですね
それでは、ごゆっくりどうぞ!
「……なるほど。フィレストが姿を見せないと思っていたが、お前がやつを仕留めたのか」
グレンと並び立つルイスを見て、レイクは納得したように呟く。
「だったらなんだ」
「なんでもない。ただ俺はお前達を殺すだけだ」
そう言い、レイクは指を鳴らす。
相手は二人に増えた。
だから今度は欠片も油断せず、全力の剣戟をぶつけに来た。
「ふっ───!」
「しっ───!」
しかし、二人は動じない。
相談しなくても、アイコンタクトすらなくとも、お互いにやることはわかっている。
短い気合いとともに、駆け出す。
グレンは手動剣を【ウェポン・エンチャント】が付与された拳で叩き落とし。
ルイスは自動剣を両手の双剣で弾き飛ばす。
すぐに仕留められるはずだった。
片方は無数の切り傷にマナ欠乏症。
片方は無数の切り傷に火傷。
満身創痍の敵が一人から二人になったところで、全力で戦えば自分の勝利は揺るがないと。
そうレイクは考えていた。
だが、そんなにこの二人は甘くない。
響く剣と剣の衝突音。
何度目になるかわからない、剣が空を切る音。
受け、回避し、弾き、流す。
二人はボロボロのはずの身体で、レイクの猛攻をしのぎ続けていた。
「……一体どうなっている……?」
レイクは困惑する。
グレンとルイスは、セリカを通じて長年付き合った仲だ。
もちろん、魔術の訓練も武道の訓練も一緒に行って来た。
だからこそ、お互いの適した戦い方がわかる。
反射神経に優れたグレンが、咄嗟の判断力が必要な手動剣を担当。
双剣術に卓越したルイスが、達人の剣技に着いていく必要がある自動剣を担当。
レイクが隙のない布陣を組むなら、ルイスとグレンもそうするまで。
その中でもレイクは、ルイスの剣技に驚かされていた。
ルイスと切り結ぶ三本の剣は腐っても達人の剣術だ。
それを、当たり前のように受けていく。
三本のうち一本が大上段の切り下ろしを放つ。
ルイスはそれを身体を半身にして紙一重で回避。
半秒遅れて左右から襲いかかる剣を回転斬りによって弾く。
床から引き抜かれた剣が突きを放つ。
双剣をクロスして防ぎ、思い切り振り抜くことでその隙をついてきた剣に衝突させる。
残る一本が背後に回る。
しかし、まるで後ろに目がついているかのように的確にしゃがんで回避する。
直後、衝突した二本が戻って来て、二本同時に右手の剣に迫る。
さすがに回避出来ず、右手から剣がこぼれ落ち、地面に落ちる前に消える。
だが、
「
その一言で剣は即座に現れた。
右手に現れた剣を握り、再び三本の剣と切り結ぶルイス。
一体どれだけの間、そんなことを繰り返していたのか。
「ちっ……」
不意に舌打ちし、レイクは攻撃を一旦中止して、五本の剣を自分の元へ引き寄せる。
その間にルイスとグレンは、飛び下がって後退し、距離を開ける。
お互い牽制し合いながら向き合っていると、レイクが唐突に口を開く。
「十本以上は弾いたが、まだあるとはな。いや、召喚ではなく作り出しているのか?」
「お前に言う義理はないね」
「ふん、つまらん」
そう言い、本当につまらなさそうに鼻を鳴らす。
外道に堕ちようとも、根は魔術師。
まだ見ぬ知識には興味があるのだろう。
「……おい、ルイス」
「ん?」
再び場に沈黙が降りた時、グレンが隣のルイスにしか聞こえない声で話しかける。
「このままじゃジリ貧だ。ルイスが来てくれたおかげでどうにかなってるが、決定打に欠ける。早いとこケリをつけるぞ」
「っていっても、どうするんだよ」
「ふっ、任せろ。策は考えた」
キメ顔で言い、口を抑えながらグレンは唐突に駆け出す。
「お、おい!グレン!」
「《────・」
咄嗟に引き留めようとするが、すでに遅い。
服に触れることすら出来ず、グレンはレイクと距離を詰めていた。
「血迷ったか魔術講師!」
勝利を確信したレイクが、グレンに刃を向ける。
「この馬鹿グレン……!」
そんな中、わずかに聞こえた呪文から狙いを察したルイスも遅れて駆け出す。
「────死ねッ!」
四方八方からグレンに襲いかかる刃。
ドスッ────!
と、鈍い音が鳴る。
続いて、二度三度、音が響く。
背後でシスティーナとウェンディが短く悲鳴を上げた。
そこには、四本の剣が刺さったグレンと、腹部に深々と剣の刺さったルイスがいた。
グレンは体捌きで急所を外し、ルイスはどうにか臓器だけを避けたが出血量が多い。
あとは、レイクが手動剣を引き抜いて二人の首を刎ねれば終わりだ。
しかし、
「均衡保ちて・零に帰せ》!」
グレンが呪文を最後まで完成させた。
「何!?【ディスペル・フォース】だと!?」
【ディスペル・フォース】。
対象物の魔力を打ち消し、無効化させる魔術。
魔導器であるレイクの剣に使えば、たしかにただの剣に成り下がる。
だが、【ディスペル・フォース】で消費する魔力は対象の内包する魔力に比例する。
魔導器というものは、基本的に半自律行動のために魔力増幅回路が組み込まれているため、かなりの魔力を持っている。
【イクスティンクション・レイ】で魔力を使い切ったグレンにそんな魔力はない。
案の定、グレンの【ディスペル・フォース】では魔導器を無効化出来ていない。
せいぜい、魔力を多少削いだ程度だ。
剣を動かすのに大した影響はない。
だが、それで充分。
一瞬だけ止まってくれるなら、それでいい。
「今だっ!白猫、ルイス!」
「《力よ無に帰せ》!」
「何っ!?」
驚いたレイクが声の方を見ると、システィーナが左手を突き出していた。
ありったけの魔力を乗せ、【ディスペル・フォース】を放ったのだ。
これで、レイクの剣はこの瞬間、ただの剣になる。
しかし、レイクも馬鹿ではない。
ここで魔術でも起動しようものなら、即座に【愚者の世界】が飛んでくるのはよく分かっている。
だから、
「ふん────!」
隠し持っていたフィレスト特製のナイフを投げる。
「がぁ!?」
右手にナイフがかすり、
これでは愚者のアルカナを抜き取れない。
勝利を確信し、
「《目覚めよ刃・─────」
再び魔導器を起動させようとするレイク。
しかし、それすら計算のうち。
グレンは、口を釣り上げる。
「
ルイスが口の端から血を流しながら、一歩踏み込む。
「
輝く左右の腕。
投影の合図の、蒼白い光。
「
一際強く輝き、全容が現れる。
「
右手に三本の白い剣、左に三本の黒い剣。
「
さらに距離を詰め、その手に握った剣全てをレイクに投げる。
ブーメランのように回転しながら、レイクに迫る剣。
「《鶴翼三連》!!」
呪文のような詠唱とともに、双剣を手元に投影。
「ちっ───《炎獅子」
猛スピードで飛んでくるルイスに、レイクは呪文を切り替える。
だが、
「遅せぇッ!」
それを予想していたグレンが、フラフラの左手で愚者のアルカナを抜き放つ。
グレンの固有魔術《愚者の世界》が起動。
レイクの【ブレイズ・バースト】は当然のごとく解除。
そこへ、
「おぉぉぉぉぉ!!」
ルイスの剣戟全てが叩き込まれる。
投げられた三本の刃。
ルイス自身の切り込み。
フィレストによる付呪もいとも簡単に破り、レイクの身体に次々と刃が突き刺さる。
「うぉおおおおおお──────ッ!」
さらに、グレンはアルカナを投げ捨て、自身に刺さる剣を抜き、ルイスが外したレイクの心臓に剣を突き立てた。
「ふん、見事だ」
レイクは微動だにしない。
直立不動でグレンとルイスに賞賛を送り、床に落ちた愚者のアルカナを見やる。
一対二が卑怯だとか、そんなことは言わない。
魔術師においては、どんな手を使おうが、常に勝った方が正義だ。
「そうか……愚者、か。なるほどな。つい最近まで帝国宮廷魔導師団に一人、凄腕の魔術師殺しがいたそうだ。いかなる術理を用いたのか預かり知らぬが、魔術を封殺する魔術を持って、反社会的な外道魔術師達を一方的に殺して廻った帝国子飼いの暗殺者」
「……」
「活動期間はおよそ三年。その間に始末した達人級の外道魔術師の数は明らかになっているだけでも二十四人。その誰もが敗れる姿など想像もつかなかった凄腕ばかり。裏の魔術師達の誰もが恐れた魔術師殺し、コードネームは─────『愚者』」
「何が……言いたい?」
「……遺言はそれだけか?」
暗く冷たい目をするグレンと、そんな二人を腹部を抑えながら見つめるルイス。
「さぁな?」
凄惨に笑って言い残し、レイクは崩れ落ちた。
もう、息はしていない。
「さ……て……」
「ぐっ……っ……」
レイクの死を確認し、グレンとルイスはふらりと倒れる。
「俺も……ここまでか……。なんて……つまんねぇ……人生……」
「ごめん……システィ……ルミア……」
そうして、二人の意識は暗闇に沈んだ。
短編の方はもう少しお待ちください……!
ネタはもうまとまってるので、来週には書き上がるようにします!
それでは、また来週お会いしましょう!