ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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どうも皆様

ここで、皆様にお詫びがございます

短編を書き上げるつもりでしたが、時間がなくて書けませんでした

自分のスケジュールを考えない軽率な発言を、どうかお許しください

誠に申し訳ありませんでした


手を出すんじゃねぇよ

「陛下は……その、失礼ですが人違いをされておられます」

 

その言葉に、アリシアの顔が凍りつく。

 

「私はルミア。ルミア=ティンジェルと申します。恐れ多くも陛下は私を、三年前に御崩御なされたエルミアナ=イェル=ケル=アルザーノ王女殿下と混同されておられます。日頃の政務でお疲れかと存じます。どうかご自愛なされますよう……」

「………そう、ですね」

 

淡々とそう言うルミアに、アリシアは気まずそうに目を伏せた。

 

「あの子は……エルミアナは三年前、流行病にかかって亡くなったのでしたね……あらあら、私ったらどうしてこんな勘違いをしてしまったのでしょう?ふふ、歳は取りたくないものですね……」

 

そんなアリシアの哀愁漂う言葉に、グレンは複雑な表情で頭を掻き、ルイスはルミアの側で心配そうな顔をしている。

 

「勘違いとはいえ、このような卑賤な赤い血民草に過ぎぬ我が身に、ご気さくにお声をかけていただき、陛下の広く慈愛あふれる御心には感謝の言葉もありません……」

「いえいえ、こちらこそ。不愉快な思いをさせてしまって申し訳ありません」

 

しばらくの間、沈黙が続く。

 

ルミアは何も言わない。

 

アリシアも、何か言おうと口を開くが、それが声になることはなかった。

 

やがて、

 

「そろそろ……時間ですね」

 

アリシアが、名残惜しそうに呟いた。

 

「グレン。それと、ルイス君。エル──……ルミアを、よろしくお願いしますね?」

「……わかりました、陛下」

「この身に代えても、守り抜きます」

 

悲しげな目で言うアリシアに、二人は頷いて答える。

 

アリシアが中庭からいなくなるまで、ルミアは一度も顔を上げなかった。

 

─────────────────────

 

魔術競技祭、午後の部が始まった。

 

アリシアとの密会の後、消沈するルミアを連れて競技場に戻って来た。

 

しばらくは競技場で競技を眺めていたが、ルイスはあることに気がついた。

 

「あれ。ルミアどこ行った?」

 

先程まで近くにいたはずなのだが、ルミアが辺りに見当たらない。

 

「……あんなことあったしな……。探しに行くか」

 

心配になったルイスは、ルミアを探しに行くことにした。

 

最初に中庭に向かったが、そこにはいなかった。

 

(まあ、そう簡単には見つからないか)

 

めげずに学院の様々な場所に向かう。

 

恐らく、人気を避けた場所に行くだろうと考え、人のいない方角に歩く。

 

やがて辿り着いたのは、学院敷地の南西端、学院を囲む鉄柵のかたわら、等間隔に配置された木々の木陰に、ルミアの姿を見つけた。

 

「ルミア」

「……ルイス君」

 

声をかけると、ルミアは手元を覗き込んでいた顔を上げた。

 

「何してんだ?こんなところで」

「……何でもないよ」

「そうか。じゃあ、質問を変えよう」

 

言いながら、ルイスはルミアの握っているロケットを指さす。

 

「なんで、空っぽのロケットなんか見てるんだ?」

「─────ルイス君、相変わらず目がいいね」

「別に覗くつもりはなかったんだ。見られたくなかったなら、ごめん」

「ううん。気にしないで」

 

首を振るルミアに、ほっと息をついた。

 

そして、二人は近くにあったベンチに座り、話を続ける。

 

「……このロケットね、昔は、誰か大切な人の肖像が入ってたような気がするんだけど……いつの間にかなくなっちゃって」

「…………」

 

沈黙するルイスに、ルミアは寂しげに笑い、ロケットを首にかけた。

 

「これ自体、特に価値がある訳じゃないのに……変だよね。こんなものを今でも大事に肌身離さず持ってるなんて」

「変じゃないよ」

 

どこまでも悲しげなルミアの目を、まっすぐに見つめ、ルイスはそう言う。

 

「何も入ってないからって、大事にしない理由になるわけじゃないだろ?何を大事に思うかは、人それぞれだしな」

「……ルイス君は、知ってるんだよね?私と女王陛下のこと」

「おう。結構前からな」

「それでも、ずっと変わらないでいてくれたんだね」

 

そう言い、ルミアは少しだけ微笑んで、俯いた。

 

そんなルミアに対し、ルイスは頭を掻きながら、少しだけ恥ずかしそうに呟く。

 

「───当たり前だろ」

「え………?」

 

ルイスは立ち上がり、ルミアの正面に立った。

 

「確かに、ルミアの過去には色々あったんだと思う。残念だけど、俺はそんなルミアの気持ちを分かってやることはできないし、無責任に安っぽい言葉をかけるなんてこともできない」

 

優しくルミアの頭に手を乗せ、ポンポンと撫でる。

 

「けど、こうしてそばにいることくらいは出来るよ」

「…………!」

 

はっ、と顔を上げる。

 

ルイスは、恥ずかしそうに頬を染めながら、微笑んでいた。

 

「嫌なことがあったら、一晩中でも愚痴を聞いてやる。泣きそうになったなら、胸くらい貸す。……寂しくて仕方なくなったら、ずっとそばにいてやる」

「……うん」

 

頷き、声を絞り出す。

 

ルミアの声は、少しだけ枯れていた。

 

「何が寂しいんだよ。ルミアには、騒がしすぎる両親と、幼馴染みが二人もいるんだぜ?」

「……うん……うん……!」

 

頷き続けるルミアの頬を、一筋だけ雫が横切る。

 

「だから、会いに行ってこい。本当の母親に」

「……でも、私……」

「言ったろ?寂しい、なんてことないし、そんな思い絶対させない」

 

ルミアの言葉を遮り、ルイスは続ける。

 

「実の母親と仲違いしたって、絶対にルミアを一人になんてしない。だから、今行きたいところに、行ってこい」

 

しばらく、ルミアは唇を引き結んだまま、無言だった。

 

やがて、

 

「私……怖いんだ」

 

ぼつり、とルミアが消え入りそうな声で呟いた。

 

「私を追放した前日まで、あの人はとても優しかった。でも、私が追放されたあの日、あの人に呼び出されたら、国の偉い人達が険しい顔で沢山集まっていて……あの人は、凄く冷たい目で私を見つめていて……まるで別人のように豹変していて……」

「……………」

「さっきのあの人はとても優しかったけど、いつ私に対して、突然、あの冷たい目を向けてくるかと思うと……怖くて……だから……あの……」

 

意を決したように、ルミアはルイスを真っ直ぐに見つめる。

 

「ルイス君、一緒についてきてくれないかな?」

「……ああ、もちろん。ルミアの頼みなら」

 

ルイスは嬉しそうに微笑みながら、腕を組んで胸を貼る。

 

「いいよ、付き合ってやる」

「本当に?」

「ここで嘘だって言ったら、ただの極悪人だろ」

「もう、ルイス君ったら」

 

お互い微笑み、並んで歩み始める。

 

二人の間に流れる、穏やかな空気。

 

だが、ルイスは妙なことに気がついた。

 

見慣れない集団が、自分達の行く手に立ちはだかっているのだ。

 

全員、身体中を甲冑で包み、緋色の陣羽織を纏い、腰には細剣をさしている。

 

(……たしか、王室親衛隊……だったか?)

 

服装から、女王陛下直属の騎士団であることを思い出す。

 

その全員が、等しく精鋭中の精鋭。

 

「なんでだ?女王陛下の護衛についてるはずだよな……?」

 

疑問に首を傾げていると、王室親衛隊の面々はルイス達の前で足を止める。

 

そして、音もなく二人を取り囲んだ。

 

「ルミア=ティンジェル……だな?」

 

二人の正面に立った、その一隊の隊長らしき騎士が言う。

 

「ルミア=ティンジェルに間違いないな?」

「え?は、はい……そ、そうですけど……」

 

肯定した瞬間、騎士達が一斉に抜剣し、ルミアに剣先を突きつける。

 

「────っ!?」

 

自分に向けられた抜き身の剣に、思わず硬直するルミア。

 

「……恐れながらお聞きします、親衛隊殿。これは一体どういうおつもりで?」

 

そして、ルイスは咄嗟にルミアを背後に庇い、そう言う。

 

もちろん、切っ先はルイスに向けられることになるが、全く恐れてはいない。

 

「傾聴せよ。我らは女王の意思の代行者である」

 

隊長と思しき人物は、そんなルイスを忌々しそうに一瞥し、朗々と宣言した。

 

「ルミア=ティンジェル。恐れ多くもアリシア七世女王陛下を密かに亡き者にせんと画策し、国家転覆を企てたその罪、もはや弁明の余地なし!よって、貴殿を不敬罪および国家反逆罪によって発見次第、その場で即、手打ちとせよ。これは、女王陛下の勅命である」

 

あまりに現実離れした言葉に、ルイスとルミアは凍りつく。

 

しかし、ルイスはすぐに我に返った。

 

「ルミア……彼女が国家転覆罪?どういうことでしょうか?」

「部外者に開示する必要はない。だが、証拠は上がっているぞ、大罪人。我らとて、貴殿に悪戯に苦痛を与えるつもりはない。大人しく己が罪を認め、我が剣の梅雨となってもらおう」

 

ギリ……、とルイスが歯ぎしりする。

 

しかし、ここで感情を暴れさせるわけにはいかない。

 

「……では、その証拠を開示していただきたい。そもそも、平時ならば、裁判所からの正規の手続きを踏んだ上で、刑罰が発令されるはずでは?」

「それこそ、部外者に開示する必要はない。帝国憲章を見返すがいい。女王陛下の最高国家元首。その言葉はあらゆる法規を超え、全てに優先する」

 

(頭湧いてんのかこいつ……!)

 

「そもそも、女王陛下の忠実なる家臣たる我らに逆らうとは、立派な不敬罪が成立するが?」

「………やれるものなら、どうぞ」

 

収集がつかなくなり、ルイスが左手を構えた瞬間、

 

「待って、ルイス君!」

 

ルミアが意を決したように叫ぶ。

 

「……おおせの通りに致します。恐れ多くも女王陛下に仇為そうとしたこと、今思えば、そのあまりもの不遜さには恥じ入るばかりです。故に、我が命をもって償いといたします。だから、どうか、お慈悲を。ルイス君は……何も関係ないんです!」

「お、おい、ルミア……!」

「少し、静かにしてもらおう」

 

叫ぶルイスに、騎士の一人が拘束して口を塞ぐ。

 

その手は、何かの液体に濡れていた。

 

「……か……はっ……」

 

直後、ルイスが糸が切れたように崩れ落ちる。

 

「ルイス君!」

「安心しろ、ただの麻痺毒だ。いつ動くようになるかはわからんがな」

「そんな…………!」

 

相当な濃度であることを察し、ルミアが絶句する。

 

しかし、剣を突きつけられ、硬直する。

 

剣を突きつけた張本人、隊長らしき騎士が、ルミアに詰め寄って口を開く。

 

「体の力を抜いて、動かぬことだ。急所を外せば長く苦しむことになる────」

「………はい」

 

覚悟を決めたのか、ルミアはゆっくりと、瞼を閉じる。

 

「──────ざけんじゃねぇよ」

「がっ……!」

 

だが、唐突に鈍い音が響き渡る。

 

「ふざけんじゃねぇぞ、てめぇら」

 

ルイスはポキポキと拳を鳴らし、立ち上がる。

 

「馬鹿な、あの濃度の麻痺毒を受けて……」

「生憎だがな、俺は大体の毒には耐性がある自信がある。こんな麻痺毒取るに足らない」

 

そして、ルイスは詠唱する。

 

「《体は剣で出来ている・ただの一度の敗走も勝利もない・その体はきっと剣で出来ていた》」

 

短縮した、三節詠唱。

 

両手のひらが光り輝き、白と黒の双剣が現れる。

 

「俺の大事な人に、手を出してんじゃねえよ。まとめてかかってこい!」




お読みいただきありがとうございました!

来週、出来れば短編を書き上げて投稿したいと思います

よろしけれれば、それまでお待ちくださると、助かります
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