ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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どうも皆様

予防接種のせいかフラフラする雪希絵です

この状態で短編を完成出来るのか……

頑張りますけども!

それでは、ごゆっくりどうぞ!

-追記-

日付が変わり、途端に本格的に体調が悪くなってしまいました

何度も何度も申し訳ありませんが、短編の投稿を遅くさせてください

今日中には投稿します

よろしくお願い致します


馬鹿騒ぎと本題と

航路での移動を終え、生徒達はサイネリア島に到着した。

 

大広間での食事が終わり、入浴を交代で済ませた。

 

その夜、就寝時間。

 

「それでは作戦を開始する」

 

旅籠本館と別館を挟む中庭の茂みの中でカッシュが宜言した。

 

「我々、男子生徒が泊まる別館と女子生徒達が泊まっている本館を直接結ぶ中庭.....これは流石に使えない。誰かに目撃される危険性が高すぎる」

 

カッシュの後ろに控えたロッドやカイなど、計七人の男子生徒がコクコクと頷いた。

 

「よって、我々は裏手の雑木林に回り込み、木をよじ登って窓から部屋内に侵入しなければならない。安心しろ。ルートやどの部屋が誰の部屋なのかは、すでに調査済みだ」

「い、いつの間に……」

「さ、流石、カッシュ……抜かりないぜ」

 

カッシュに感嘆の表情が集まる。

 

「で、でも、グレン先生が巡回している可能性は……」

「それも大丈夫だ。一部、協力的な女子生徒にそれとなく探りを入れてもらった。これから三十分の間、先生が裏手の雑木林を巡回する可能性は限りなくゼロだ」

「スゲェ……か、完璧すぎる……ッ!?」

「あ、兄貴と呼ばせてくれ……」

「ふっ、まだだ。感謝にはまだ早すぎるぜ、皆……」

 

カッシュが不敵に笑う。

 

「全ては女の子達の部屋に忍び込み、夢の一夜を過ごしてからだ……そうだろう?」

「そ、そうだった……俺……リィエルちゃんと徹夜で双六するんだ……」

「な!?ずるいぞ、カイ!俺も混ぜてくれ!」

「シーサー、俺はルミアちゃんとトランプで遊ぶぞっ!」

「ああ、ビックス。僕はこの機会にリンちゃんと、たくさんお話しするんだッ!」

「ウェンディ様に『この無礼者!』って罵倒されたい……王様ゲームで奴隷の如くパシられたい……」

「システィーナは……別にいいや。多分、説教うっさいし」

「「「うんうんうん」」」

「さぁ、いくぞ!心の準備はいいか、皆!?楽園は目の前にあるぞっ!」

「「「おうッ!」」」

 

息巻きながら、カッシュを先頭に男子生徒達は行動を開始するのであった。

 

見事なものだった。

 

カッシュが食事をサボってまで、事前に周辺調査した結果は伊達ではなかった。

 

だが、

 

「ば、馬鹿な………ッ!?」

 

その道程、不意に林の中に現れた、ぽっかりと円形状に開けた空間にて。

 

「な、なぜ、アンタがこんな所に……グレン先生ッ!?」

 

どーん、と。

 

そこには待ってましたと言わんばかりに、グレンが腕組みして仁王立ちしていた。

 

「甘い……甘いぜ?お前ら。チョコレートに生クリームと蜂蜜かけて、砂糖をまぶしたくらいに甘すぎる……お前ら程度の浅知恵なぞ、この俺には最初からお見通しだぜ……なにせ」

 

グレンは不敵な笑みを浮かべ、現れた生徒達を威風堂々と睥睨して、言った。

 

「俺がお前らだったら、絶対このルート、このタイミングで、今晩、女の子達に会いに行くからなぁーッ!」

「ですよねー」

 

何の後ろめたさもないグレンの開き直った宣言に、カッシュはため息をついた。

 

「ま、そういうわけで……だ。部屋に戻れ、お前ら。一応、規則なんでな」

「それは出来ないぜ、先生……。男には引けない時がある……俺達にとっては『今』がそうなんだ……」

 

みるみるうちにグレンの表情が真剣そのものになっていく。

 

「そうか……お前ら、『覚悟』を固めた人間……なんだな?残念だな。ならば、俺は教師としてお前達を実力で排除するしかない……」

「先生────ッ!」

 

拳を握り固めて拳闘の構えを取ったグレンへ、カッシュが必死に呼びかける。

 

「アンタは俺達側の人間だったはずだッ!アンタは俺達が『楽園』を目指す理由を───学院どんな大人達よりも理解してくれているはずだッ!?なのに、なぜ!?止めるんだッ!?なぜ俺達を止めるんだッ!?どうして僕達が戦わなければならないんだ────ッ!?」

「馬鹿野郎ッ!わかってる……そんなことはわかっているッ!そんなうらやまけしからんイベント、むしろ俺が率先して乗り込んでいきたいわ!?だがな────ッ!」

 

ずがん、と。

 

「もう駄目なんだ……もう、俺はお前達側には戻れないんだ……俺は魔術学院という牢獄に縛り付けられた講師という名の奴隷……万が一、お前達が『楽園』を目指してことを見逃したことが、学院に知れ渡ったら……ただでさえカットされまくりな俺の給料はマイナスに落ち込んで、俺が学院に給料払う羽目になる……」

 

涙を拭い、グレンが叫ぶ。

 

「人はパンのみのために生きるに非ず───だがッ!パンなくしても人は生きられないんだッ!」

 

グレンの言葉は、痛烈に生徒達の心を鋭く抉った。

 

「わかるだろう?主の創りたもうた箱庭たるこの世界は……『地獄』なんだよ……」

「『地獄』だからこそ……人は『楽園』を目指さなければならないのに……あなたは悲しい人だ、先生……それでも先生は退けないんですね……?」

「……ああ」

 

しん、と。

 

夜に、静寂が広がる。

 

「わかってきたさ、先生……あんたが俺達が乗り越えていかなければならない壁だってことくらい……」

「もし立場が違えば……生まれてくる時代が違えば……俺も、お前達と肩を並べて『楽園』を目指してたのかもしれないな……今となっては詮無きことだが」

「……………………」

「……………………」

 

場に渦巻く緊張感が高まり続け。

 

爆発した。

 

「行くぜ、皆ッ!俺に続けッ!グレン先生をやっつけろッ!」

「ふっ……かかってこい、お前らぁ!?呪文詠唱技能が魔術戦における絶対的な戦力差でないことを教えてやるぜッ!」

 

男子生徒達は散開し、グレンは呪文の詠唱を始めた。

 

───────────────────────

 

閃光が爆ぜ、爆音が轟き、戦闘は激化した。

 

そして、何人もの犠牲を出しながら、生徒達はグレンという壁を乗り越えた。

 

「よし、行くぞ、みんな……!」

 

ボロボロになりながらもグレンを撃退したカッシュ達は、元の道へと戻って進み始める。

 

そんな生徒達の背中を見つめながら、グレンは口の端を釣り上げた。

 

「ふっ……甘いぜお前達……この先には……俺よりも、厳しいガードが待ってるぜ……がくっ」

 

そうして、グレンは倒れるふりを暫くしていた。

 

カッシュ達が林を抜け、そろそろ本館に着こうかという頃。

 

「みんな!見えてきたぞ!『楽園』だっ!」

「「「うぉおおおおおおおお!!」」」

 

とうとう目に入る位置にやってきた楽園に、男子生徒達は走り始めた。

 

だが、上を見上げたカッシュが気がついた。

 

「…………!? まずい、みんな下がれぇぇええええ!!!これは罠だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

そんな必死の叫びも虚しく、男子生徒達に無常の雨が降り注ぐ。

 

もちろん、水などという生易しいものではない。

 

剣だ。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「ごふっ……!?」

「な、なんで………!」

 

それらは次々に男子生徒達に直撃し、次々と倒れさせていく。

 

「くそっ……!なんで、なんでこんなことをしやがる……!」

 

怒りと驚愕に震える拳を握り、カッシュはすぐ近くの高めの木の上に座る、人影を睨みつける。

 

「なぜ、俺達の前にお前が立ちはだかるんだ……ルイス!?」

 

そこに居たのは、片手で白い剣をポンポンと放り投げて手遊びしているルイスだった。

 

「なぜ……か。じゃあ、言おうか」

 

ひょいっ、と木から飛び降り、ルイスは髪をかく。

 

「まあ、お前らの気持ちは分かるよ。気になる子とお近づきになりたい、可愛い女の子と仲良くしたい……そういう気持ちはよく分かる」

「じゃあ、なんで……!お前は俺達の邪魔をする!グレン先生とも違う、俺達と同じ立場のお前が……!」

「決まっているだろ」

 

途端、ルイスは悔しそうに口元を噛み締める。

 

「俺のキャラでそんなことしたら、間違いなく嫌われるだろうがっ!?」

「……ですよねー」

 

男子生徒達が同意する。

 

ルイスは優等生だ。

 

成績も実技もそこそこ点数を取り、グレンの授業も手伝い、性格の良さで知られるルイス。

 

そんなルイスが『女子生徒と遊ぶために本館に入った』等と言われたら、そんな評価は一瞬で霧散する。

 

「生憎率先して嫌われる趣味ないんでな……まあ、だったら見逃すだけで参加しなければ良いんだけどよ……」

 

もう片手にも剣を投影し、ルイスは右手の剣の切っ先を向ける。

 

「グレンに『頼むから止めてくれ』って言われてな」

「くっ……!」

 

男子生徒達に焦りが浮かぶ。

 

ルイスはクラスでは上位成績者。

 

おまけに固有魔術持ちである。

 

分が悪いのは間違いない。

 

「だけど、男には引けない時があるんだ……!グレン先生を乗り越えた俺達は、もう止まれないんだぁぁぁぁ!!!」

「うぉおおおおおおおお!!!」

 

叫び、構え、散開する男子生徒達。

 

「……止まるわけないよな。ああ、知ってるよ。だからこそ……」

 

ルイスは左右の双剣を振るう……振りをして、そのまま消す。

 

「俺は全力で迎え撃つ」

 

パチンッ、と指を鳴らして、周囲に無数の剣を投影。

 

先程の剣の雨程の数。

 

だが、それはルイスを中心に円形に展開する。

 

「なっ……!」

「しまった……!」

 

気づいた時にはもう遅い。

 

「恨むなよ」

 

剣はひとりでに動き出し、次々と男子生徒達に直撃する。

 

肉を叩く鈍い音と、連続した苦悶の声が止むと……。

 

「……ふぅ」

 

そこに立っていたのは、ルイスだけだった。

 

「……さて、どうしよ」

 

気絶させたはいいが、何しろ男子生徒達十数人だ。

 

いくらルイスでも、運ぶには骨が折れる。

 

「……とりあえず縛って、別館の方に放り込もう」

 

黒魔【マジック・ロープ】を使って男子生徒達を軽く縛り、【フィジカル・ブースト】で強化した状態で引き摺りながら運ぶ。

 

別館ロビーに放り込み、ルイスは手をパンパンと鳴らした。

 

「さて、行くか」

 

この後、ルイスには用があるのだ。

 

ある意味、旅行中に最も大事な。

 

別館の階段を登り、ルイスは最上階へ。

 

使われていないのか、屋上への階段は荒れている。

 

それを一段、一段と踏みしめて歩く。

 

やがて、ルイスは屋上に辿り着いた。

 

そこには、

 

「……こんばんは。ルイスさん」

 

寝間着に身を包んだ、ジャンヌがいた。

 

「……ああ。約束通りだな」

「私はしばらく待ってたんですよ?」

「……すまん、グレンに野暮用を頼まれた」

 

ジャンヌに言われ、ルイスは申し訳なさそうにする。

 

とことん、自分はジャンヌに弱いと悟る。

 

「……早速だけど、話いいか?」

「……はい」

 

一歩、また一歩と詰め寄り、ルイスは避け続けていた言葉を、直接口にする。

 

「……ジャンヌ。なんで、お前は生きてる?」

 

夜風が靡く。

 

冷えていく身体とは反面に、鼓動が早くなって熱を持つ。

 

沈黙が、夜闇に溶けていく。

 

しばらくして、ジャンヌが口を開いた。

 

その目は真っ直ぐに、ルイスを見据えている。

 

「……結論から言います。私は、あなたの知っている『ジャンヌ・ダルク』ではありません」

「……なに?」

「ああ、違うんです。記憶もありますし、心はそのままです。でも……」

 

でも……、ともう一度だけ繰り返し、

 

「今の私は、別の世界の、英雄だった『ジャンヌ・ダルク』と混ざり合っている……そういう状態です」

「……はっ?」

 

全く予想もしない解答に、ルイスは硬直した。




お読みいただきありがとうございました!

とてつもなく長くなってしまいました(^_^;

私って結構文字数極端ですよね、すみません

もうしばらくあとですが、短編小説『赤い弓兵』も投稿します!

それでは、また来週お会いしましょう!
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