最近ベースを弾いている雪希絵です
とはいっても、三味線のようにペンペンしているだけですが
さて、最近戦闘シーンがありませんね!
第3巻自体に全然ないんですけども!
それでは、ごゆっくりどうぞ!
その日の夜。
ルイスは一人で街中を歩いていた。
流石に昼間と比べたら人の数は疎らだが、お楽しみはこれからだと息巻く人達で、夜の観光街はお祭りのように賑わっている。
本格的なシーズンにはまだ早いこの時期でこの賑わいだ。
シーズン中の隆盛ぶりは想像もつかない。
表通りにはオープンカフェや酒場が乱立し、客達が店前でたくさんのテーブルを並べて酒や料理を片手に、連れ合いや友人達との会話に花咲かせている。
そんな公営店に負けじと、店と店の隙間を埋めるように様々な個人経営の屋台が立ち並んでいる。
ジャガ揚げや串焼き、腸詰めの燻製、新鮮な魚介類のスープに、海老のフリッター、ホットワインなど、思わず手を伸ばしたくなるような安料理を、道行く人達へひっきりなしに売り捌いている。
そんな活気ある飲食店に立ち寄り、ルイスはいくつかの小料理を購入した。
受け取りながら辺りを流し見る。
盛り上がっているのは、飲食店だけではない。
異国情緒漂う衣類、奇妙なアクセサリーや木彫り細工を商うちょっと怪しげな露天商など。
雑貨店も数多く軒先で商品を広げ、威勢よく客引きをしており、足を止めた客達が物珍しい商品を前に大はしゃぎだ。
ルイスはそんな町の喧騒に背を向け、町の外へ。
石畳で舗装されていた道は砂に代わり、小波と海風がルイスを撫でる。
周囲に人気はほとんどない。
いや、ただ一人だけ、ルイスの見知った人物がいる。
「……よぉ。グレン」
「……なんだ。誰かと思ったらルイスか」
近くの木陰に腰掛け、小さなブランデーを煽るグレンがいた。
「ってか、結構買ってんな……。全部食うのかよ」
「お前に言われたくないんだよ。……ほれ、食うか?」
「いただきます」
肴をゲットすることに成功したグレンが、串焼きを齧りながら酒を煽る。
「美味いな、これ」
「そうだな。ぱっと見で買ったが、正解だったよ」
そうして、二人は海を眺める。
ダークブルーに染まった海と平行線。
そして、月光が揺らめく波をキラキラと輝かせ、実に幻想的で美しい光景を作っている。
特上の景色と美味しい海鮮を肴に飲み続け(ルイスは飲んでいないが)ている時だった。
「……んで?ルイスは何しに来たんだよ」
「………ヤケ食い」
「ふーん」
ポツリと答え、再び串焼きに齧り付く。
そんなルイスを、グレンは意味有り気な目で見ていた。
「じゃ、ヤケ食いさせた原因があるわけだ」
「…………」
押し黙るルイスに、グレンは勝ち誇った顔をする。
地味に腹が立ったルイスは、
「あちぃ!」
まだ熱を持った腸詰めの燻製を押し付けた。
「やめろやめろやめろまだ熱いまだ熱いやめろやめてくださいお願いします!」
焦ったグレンが矢継ぎ早にそう言う。
このまま続けると本格的に火傷してしまうので、ルイスは腸詰めを離し、そのまま齧り付いた。
「……別に大したことじゃない。というか、人に言うような話じゃないんだ」
またポツリと、ルイスはそう言った。
「ほーん。そう言われると余計に気になるのが人間ってもんでしてねぇ?」
「もう一回押しつけんぞ?」
「やめてくださいお願いします」
途中までニヤニヤしていたグレンが、ルイスに腸詰めを向けられると謝る。
割とトラウマなようだ。
しかし、どうやらグレンには大体察しがついているらしい。
「……ジャンヌか?」
「……はぁ。本っ当に……洞察力と頭の回転だけはすごいよな……」
「おい、他にも褒めるとこあるだろ」
「やかましい。分かってるよ、そんなことは」
バレてしまっては仕方ない、とルイスは諦めて話始めた。
元より、グレンとセリカには、あまり隠す気はなかったのだ。
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「なるほどねぇ……。異世界の魔術に、異世界の『ジャンヌ・ダルク』か……」
ルイスが話終えると、グレンはブランデーをちびりちびりと舐めながら、考え込む。
ルイスは、まさしくヤケ食いという言葉ふさわしい勢いで、手持ちの料理を片付け始めた。
「……分かってはいるんだよ。転校してきてからずっと見てたんだからな。俺の記憶にあるジャンヌと、何一つ変わってないって」
それでも、頭の片隅で考えてしまう。
燻るように、チリチリと。
記憶の奥にある炎が、それでいいのかと嘲笑っているのだ。
「……なあ、ルイス」
グレンがそう言いかけた時、付近に人の気配を感じた。
こんな良い景色の場所だ。
他に人が来るのも当然だろう。
だが、問題は、
「ほら、システィ、早く早く」
「ねえ、ルミア......その......やっぱりまずいわよ……」
遠くから聞こえてくる声に、どこか聞き覚えがあったことだろうか。
「すぐに戻れば大丈夫だよ。それよりも早く海、見よう?絶対、物凄く綺麗だよ?」
「海なんて昼間、散々見たでしょう?......あー、もう、貴女って子は!」
案の定といえば案の定。
やがて砂浜に現れたのは、ルミアとシスティーナ。
それに……、
「一体、これから何をするの?」
二人の後を雛鳥のようについてきたリィエル。
そして、
「あ、あの……やはりよした方が……」
あわあわとしているジャンヌだった。
「ふふ、皆で夜の海を見るの。今日は月が明るいから、きっと凄く綺麗だよ?」
「……そう。よくわからないけど」
「どうしましょう……あれよあれよといううちに、着いてしまいました……」
四人は離れた木陰に潜むように腰かけるグレンとルイスに気付いていないようだった。
そして、四人で月を眺めながら目を輝かせる。
「綺麗……ですね……」
「ね?システィ、ジャンヌ。来てよかったでしょ?」
「うっ……。それは確かにそうだけど……」
「今回ばかりは……仕方ありませんね。せっかくの旅行ですし」
「リィエルはどうかな?……やっぱりリィエルには、つまらなかったかな?」
「……よく……わからないけど……。この景色は、飽きない」
そうして語らう四人の美少女たち。
ひとしきり話したあと、今度は水かけ遊びが始まった。
最初にルミアから始まり、システィーナが参戦。
「わっ、ちょ、ルミアさん!やめてください!私にもかかってます!」
流れ弾が当たり、ジャンヌもそこに加わった。
しばらくして、その細腕からは有り得ない膂力で放たれたリィエルの水かけが、システィーナをすっぽりと覆ってずぶ濡れにする。
「こんの……三人とも、そこに直りなさーい!!!」
システィーナに怒鳴られるが、ルミアとジャンヌは終始笑顔。
リィエルもぼーっとしているが、どことなく楽しそうだった。
「……いい構図だ」
「……そうだな」
そんな少女達の様子を眺めながら、ルイスとグレンは呟いた。
ルイスはすっかり料理を食べ終えた。
不思議と、食べる前のような嫌な感情はなくなっていた。
グレンも、名前を覚える気すらなかった安酒が、極上の美酒のように思えていた。
美しい光景というのは、ここまで人の心を溶かすものだ。
それが、自分にとって大切なものなら、尚更のこと。
「……なぁ、ルイス。せっかく生き返って来たんだ。色々と事情はさておき、とりあえず仲良くしとけよ」
「……グレン?」
「俺はよく知ってるんだよ。あとあとになって、こうしとけば良かった……ああしとけば良かった……そう後悔する気持ちを」
「…………」
ルイスにも、それは分かる。
なにせ、一度は失った人なのだから。
「だからよ、とりあえず関わっておけよ。おんなじ思いなんざ、二度とごめんだろ?」
「……そうだな。たしかにその通りだ」
寂しげな笑顔を浮かべるグレンに、ルイスは深く頷いて答える。
以降、二人は黙って海を見つめた。
濡れ鼠になった少女達が帰るまで、グレンとルイスは、その景色を眺め続けていた。
お読みいただきありがとうございました!
もうそろそろ緊迫したシーンに入ってきますね
頑張って書いていきますので、これからもどうぞお付き合いください!
それでは、また来週お会いしましょう!