ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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どうも皆様

剥がれかけた爪が痛い雪希絵です……

なのでだいぶ書くペースが遅くなってしまいました……

来週には治っていることを祈ります……

それでは、ごゆっくりどうぞ


ルイスの苦手なもの

次の日から、本格的な遠征学修の本格的な内容がスタートした。

 

午前中に軽めの食事を取ってから、グレンと二組の生徒達は観光街の旅籠を出発。

 

サイネリア島の中心部にある白金魔導研究所を目指し、ぞろぞろと歩き始めた。

 

北東沿岸部の観光街周辺こそそれなりの開発と発展が進んでいるサイネリア島だが、実は島の敷地のほとんどは今もなお、手付かずの樹海であり、未知の領域でもある。

 

その未知の領域の生態系は、未だ完全には摑めておらず、魔術学院や帝国大学の調査隊力が定期調査に入るたびに、新種の動植物や魔獣の発見が報告されるほどだ。

 

確実な安全が確保された島の北東沿岸部周辺と野外散策用のいくつかの例外区域を除き、島の大部分は今もなお、立ち入り禁止とされている。

 

今回の『遠征学修』の目的地である白金魔導研究所は、そんなサイネリア島のほぼ中心部に設置されている。

 

ルイス達は北東沿岸部と中央部を繋ぐ道を、島の中央を目指して延々と歩く。

 

石畳で舗装された、樹海を貫く道の左右には鬱蒼と茂る原生林が踊っており、のびのびと手を伸ばす梢が頭上を覆い隠し、僅かな木漏れ日が道に細やかな光の切れ端を形作っている。

 

舗装された道とはいってもフェジテのような精緻な石畳には程遠い、起伏がわかるほど残っており、石の並びも雑で、歩きにくいことこの上ない。

 

場所によってはまったく舗装されておらず、道なき道になっている領域すらある。

 

軍生活の長かったグレンや、田舎地方出身で学院に通うためにフェジテにやって来た数少ない例外の生徒を除き、基本的に都会っ子な生徒達は早くも音を上げ始めた。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

「ぜぇ……ぜぇ……」

「おいおい、大丈夫か?リン。俺、まだ余裕あるから、荷物持とうか?」

「あ、ありがとう、カッシュくん。さすが、将来冒険者志望だね……」

「ははは、ただ田舎者なだけだよ」

「きぃいいいいいい……どうして……高貴なわたくしが……このような……ッ!馬車を回しなさいな……ッ!馬車を……ッ!」

「ふっ……随分……だらしが……ないね?……ウェンディ、君のような……お嬢様には……荷が重かった……かな?」

「そういう……貴方こそ……皮肉に……いつものキレが……なくってよ……ギイブル!」

 

ルイスはそんなクラスメイト達の様子を、とことこと普通に歩きながら見ていた。

 

ちなみに、ルミアとシスティの荷物はとっくに預かっている。

 

ルイスは疲れている様子どころか、ほとんど汗すらかいていない。

 

日々の訓練の賜物だ。

 

「ウェンディ。しんどいなら荷物持つよ。貸して」

「あ、る、ルイス……。あ、ありがとうございます……」

 

ルイスはすたすたとウェンディに歩み寄り、後ろから荷物を抱えあげる。

 

そんなルイスに、ウェンディは少々頬を赤くしながらお礼を言った。

 

自分を含めて四人分の荷物を持っているわけだが、ルイスは平然と道を進む。

 

「はぁー……はぁー……はぁー……。ルイス君……相変わらず、体力あるね……?」

 

息を切らし、額の汗を拭いながら、それでも懸命に歩くルミア。

 

そんなルミアに、ルイスとシスティーナが声をかけた。

 

「大丈夫か?ルミア。辛くなったら言えよ。肩くらいなら貸すから」

「そうよ。本当に大丈夫?」

「あんまり……大丈夫じゃ……ないかも。……二人は?」

「私も結構、きついけど……まだ、なんとか大丈夫……かな?」

「俺は大丈夫だよ。これくらいなんともないさ」

「さすが……」

 

たしかに、ルイスはともかくシスティーナの立ち振る舞いも、疲弊してこそいるが、息の上がり方は他のクラスメイトと比べるとマシな方だ。

 

毎朝グレンとルイスの訓練を受けているからだろう。

 

「悪いな、二人とも。ちょっと先頭に出て、大きめの石とか草とかどけてくるよ」

「うん、いってらっしゃい」

「相変わらず、ルイスは優しいわね」

「うるさいやい」

 

若干ふてくされながら、ルイスは急ぎ足で先頭に出た。

 

先頭の方には、ペース良く歩き続けるカッシュがいた。

 

「よ、カッシュ」

「おお、ルイス。どうした急いで」

「石とか草の除去にきただけだよ」

「そういうことか。よし、俺も手伝うぜ」

「サンキュー、助かる」

 

そうして、二人で道の整備をする。

 

早速効果は現れ、先程からつまづいていた生徒も、上手く歩けるようになっている。

 

しばらくの間、黙々と作業をする。

 

そんな中、

 

「お?」

 

カッシュが何か発見した。

 

ひょいとつまみ上げ、ルイスの方に見せる。

 

「おーい、ルイス。これ見ろよ」

「んー?」

 

顔を上げたルイスが見たのは、手のひらに乗った虫。

 

長い足が特徴的な、バッタだ。

 

「……………………」

 

ルイスは一瞬沈黙した後、

 

「………ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ────────っっっ!!!!」

 

この世の終わりのような悲鳴を上げて、ルイスは全速力で逃げる。

 

目にも留まらぬ速さで、後ろの方へと走り去ってしまった。

 

「……なんだぁ?」

 

一人先頭に残されたカッシュは、わけが分からないという顔をしている。

 

後方まで走り抜けたルイスは、最終的にルミアの後ろに隠れた。

 

若干沈んだ表情をしていたシスティーナとルミアが、今度は驚いた表情をする。

 

「わっ!る、ルイス君……?」

「この反応……。まさか、虫でも近づけられた?」

 

カタカタと震えながら、ルイスは必死に頷く。

 

ルイスは虫がこの世で一番嫌いである。

 

触るどころか近づくことさえ無理、出来るなら視界に入れたくもない。

 

身体にとまられた時など、絶叫の果てに卒倒したくらいだ。

 

過去にシスティーナ宅に虫が出た時は、逃げ回って窓ガラスを3枚割って大泣きした。

 

「やっぱりそうだったのね……」

「本当に虫だけは苦手だよね……ルイス君」

「……あんなもんの何がいいのか俺には分からん」

 

ようやく落ち着き、震えてはいるが、どうにか声は出た。

 

そんなルイスに、二人はついつい吹き出してしまった。

 

リィエルに拒絶され、少し沈んでいた気分が、ちょっとだけ晴れた気がした。

 

事情が分からず、ルイスは頭にクエスチョンマークを浮かべる。

 

そんなこんなでひと騒ぎふた騒ぎあったものの、一行は目的の白金魔導研究所に到着したのだった。




お読みいただきありがとうございました

さすがに指が限界です、腫れてきました……

とはいえ、右手の親指以外では打てませんし……

とりあえず処置して治します

それでは、また来週お会いしましょう!

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