ネタが固まってたのにこの遅さとは何事ですかね、本当に!?
というわけで、ようやく完成致しました!
改めまして、閲覧件数10万突破ありがとうございます!
こちら、読み切りの短編になります!
今回は真面目に書きましたので、楽しんでいただければ幸いです!
ごゆっくりどうぞ!
「ん?」
ルイスにはお気に入りの場所がある。
街を一望出来る小高い丘で、そこから夕陽を見ると、思わず見惚れる程に綺麗なのだ。
ルミアと仲良くなるきっかけにもなった、思い出深い場所でもある。
しかし、普段は人がいることなどほとんどないのに、今日は先客がいたようだ。
「誰だあれ」
傍目から見ても、奇妙な人物だった。
年の頃は青年と言える見た目。
肌は浅黒く、白髪は逆だっており、黒い服に赤い色の外套を羽織っている。
そして、その目はただ一点、燃えるような赤色を放つ夕陽を眺めていた。
まるで何かを懐かしむように、取り憑かれたように眺め続けている。
「……なんか気になるな」
無視するというのも引っかかりを感じ、ルイスは青年に近寄った。
「……あまり見ない顔だな。こんな所でどうしたんだ?」
そして、割と踏み込んだ質問をした。
「何でもないよ。ただ、昔を思い出していたんだ」
皮肉めいた笑みを浮かべながら、そう言って青年はルイスの方を向く。
その瞬間、青年は大きく目を見開いた。
なぜ、どうして、という感情が透けて見えるような表情をし、少しの間思わず硬直してしまう。
しかし、すぐに取り繕うように、表情を元に戻した。
「ふーん……そっか」
「……自分で聞いた割には興味なさげだな」
そのせいか、ルイスは青年の変化に気がつかなったようだ。
「まあ、ちょっと気になっただけだし。ほら、この辺り出身の見た目じゃなかったから」
すると、青年は納得したような顔をする。
「そういえば、名前は何ていうんだ?」
「随分と踏み込んでくるな、君は」
「理由はさっきと同じく」
「……まあ、いいだろう」
何故か胸を張っているルイスに、青年は苦笑いで答える。
「そうだな。今は『無銘』と名乗っておこう」
「『ムメイ』……?」
聞き覚えのない響きに、ルイスは首を傾げる。
「私も名乗ったんだ。君も名乗るのが礼儀ではないかな」
「あー、たしかにそうだな……。俺はルイス=ハルズベルト。ルイスでいいよ」
「ルイス……か。では、ルイス。会っていきなりだが、君に提案がある」
会っていきなり何を言うんだ、こいつ?
といった顔をするルイス。
それが盛大なブーメランであることに、残念ながら気がついていない。
「提案か……なんだ?」
「君は魔術師だろう?だったら、私に魔術を教わるつもりはないか?」
突然のことに目が点になる。
まさか、一目で魔術師(見習い)であることを見抜かれ、しかも魔術を教えると言われたのだ。
そうなるのも無理はない。
だが、同時にルイスは、何故かそれを承諾する気になっていた。
ただの直感だが、ルイスはこの話に乗るべきだと思ったのだ。
商売上手の両親譲りの直感は伊達ではない。
しかし、それでも、聞くべきことはある。
まず第一に、
「なんでだ?」
理由を尋ねる。
「……なに。少し、この世界に形を残したくなっただけだよ」
「なるほど。わからん」
「君は素直だな」
「子どもってそんなものだろ?」
「それは子ども本人が言うべきセリフではないな」
もはや呆れ顔をする無銘。
そんな無銘の内心も梅雨知らず、ルイスは少しだけ考える仕草をした後、
「分かった。その代わり、行く宛がないならうちに来いよ。よろしくな!」
と言って、右手を差し出した。
「いや、そこまで世話になるわけには……」
咄嗟に無銘は断るが、ルイスは頑として譲らない。
こういうのは等価交換が原則なんだと。
「……分かった。では、お言葉に甘えるとしよう」
諦めたようにため息をつきながら、ルイスの手を握った。
こうして、ルイスと無銘の師弟関係が始まった。
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家に急に謎の青年を連れてきたことを、アミリアとレオンは『まあいいんじゃない』とだけ言って了承。
二人は基本的に、自分の仕事と家族、そして数少ない友人以外に興味が無い。
無銘がその友人枠に収まるか、何かやらかしでもしない限り、とくに反対する必要はなかった。
その夜、ルイスと一緒に無銘は夕食を作ったのだが、あまりの美味さに全員驚愕していた。
二人が出会った翌日、早速魔術の鍛錬が始まった。
「それでは始めよう」
「よろしくお願いします!で、どんな魔術を練習するんだ?」
深々と礼をし、勢い良く頭を上げてそう言う。
「そういえば、説明していなかったな。君には、私の魔術を習得して貰う。私にしか使えない魔術だ」
「……まさか、
「私にしか使えないということなら、そういうことになるな」
「いや、無理だろ……」
固有魔術は、作った術者しか使えない、作った術者だけの魔術だ。
製作者よりどれだけ高い魔力があっても、どれだけ圧倒的な才能があっても、術者出ない限りは使えない。
それを習得しろなど、無茶にも程がある。
「安心したまえ。君なら出来る」
「何その自信……」
ため息をつくルイスを無視し、無銘はルイスから少し離れる。
「百聞は一見にしかずだ。ひとまずは見本を見せよう」
そう言い、無銘は右手を突き出す。
ぐっ、と手を握り、再び開いたかと思うと、
「……え」
何も無いはずの手の中に、白い幅広の剣が現れていた。
「……え?え?」
「これが私の魔術【無限の剣製】。君にはこれを習得してもらう」
「……いい」
「ん?」
よく聞こえなかった無銘が聞き返す。
「かっこいい。めっちゃかっこいい!絶対習得する!頑張るよ、俺!」
「そ、そうか……なんにせよ、やる気が出てくれたのは良かった。では、まず原理等を説明することにしよう」
そうして、無銘はその手の剣を放り投げる。
「おっとと」
辛うじてキャッチしたルイスは、その剣を見聞する。
これでも鍛冶師の息子だ。
剣の善し悪しくらいは分かる。
「……名剣だな。けど、何かおかしい……」
「鋭いな。その剣は私が魔力で編み上げた代物だ。当然、本来の剣とは様々な点が異なる」
無銘はもう一本同じ剣を呼び出すと、それを構えた。
「ルイス。その剣で全力で打ち込んで来い」
「……?わ、分かった」
ルイスも構え、無銘の握る剣に狙いを据えて、一歩踏み込む。
「!」
見事な動きに、感嘆する無銘。
まだまだ未熟だが、年齢にしては良い動きだった。
横薙ぎに振るわれた剣は、エミヤの握る剣と衝突し、
バキンッ!
と音を鳴らしてその剣を通り抜けた。
「うおっ!?」
予想外の脆さに、ルイスはバランスを崩した。
「おっと」
その手を掴み、無銘はルイスを支える。
「あ、ありがとう」
「なに。それはさておき、これで分かっただろう?」
「……?」
「すまない、端折り過ぎたな」
こほん、と咳払いして続ける。
「今見た通り、同じ剣を作ったにも関わらず、後から作った方は極端に脆かった。何故か分かるか?」
「うーん……。魔力が足りなかったからとか?」
「それも一因としては有り得るが、今回は違う」
悩むルイスに、無銘は答えを告げる。
「剣のイメージが固まっていないからだ。基本骨子の想定、その剣がどんな効果を持つか。そのイメージが不足すると、作り出した剣はただの鈍になる」
「なるほど……。自分が作るものをはっきりイメージしないといけないのか……」
ふむふむ、と頷き、またペタペタと剣を触り始める。
「そうだ。【無限の剣製】は何よりイメージ力を要求する。まずは、起動の為の詠唱作りと、私の作った剣を覚えることから始めよう。次に進むのはそれからだ」
「よろしくお願いします!」
もう一度そう言い、夜遅くまで魔術の訓練は続いた。
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「『
七日目。
何度目になるか分からないルイスの声が響き渡る。
時刻も既に夕刻。
練習に使っている広場も、茜色に染まり始めている。
今のところ、ルイスはただの一度も投影に成功してはいない。
四日目辺りに、木刀のように歪な剣のなり損ないは出来たが、それでは完成とは言えない。
それでも、無銘は根気よくルイスを指導する。
さらに時間が過ぎ、すっかり夜も更けて来たころ。
「『
全力の魔力と気合いを込め、ルイスは叫ぶ。
「『
直後、ルイスの左手が光り輝く。
今までとは明らかに違う閃光に、二人の期待が高まる。
それは、無銘が見本として用意した剣の形を取る。
「やった……!」
成功を確信し、目を輝かせる。
だが、
パキャ────ッ!
と、小さな音を鳴らしてヒビが入り、直後に爆ぜた。
閃光に目を細め─────、
「え」
その視界が真っ赤に染まった。
「いっ………があぁぁぁぁぁぁぁッ!」
目を中心に激痛が走る。
まるで毒が広がるように、それは全身に蔓延する。
「ルイス!大丈夫か、ルイス!」
「うぐっ………はっ、はっ、ぐぅぅぅぅぅぅぅぅ……!?」
どうやら欠片が完全に目に刺さったらしく、ルイスの目からとめどなく血が流れる。
無銘は応急処置をするべく、アミリア特製の薬をかける。
「……私ではどうにもならないな」
そう言い、無銘はルイスを抱えて夜の街を滑走した。
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「……まあ、これでひとまず大丈夫だろ」
「……申し訳ない。私がついていながら……」
「あんたが気にする事じゃないさ。不幸な事故だよ、事故」
アミリアは処置を終えて、手にこびりついた血を拭う。
ベッドでは、安らかにルイスが眠っている。
「……ルイスはどういう状態だ?」
「間違いなく、この先視力が回復することはないな。下手すりゃ脳に達してる傷だ。生きてるだけ儲けものだな」
「そうか……」
アミリアは薬学を学ぶ中で、医学もそれなりに習得している。
実際に手術などは出来ないが、怪我や病気の診察することくらいは出来る。
そのアミリアが言うのだ。
ほぼ間違いなく、回復は望めないだろう。
「すまない、私が無理をさせたせいで、ルイスがこんなことに……」
「さっきから言ってんだろ?気にすんなって。ルイスもあんたを恨んでなんかいないし、あたしも旦那も何も言うつもりなんざない。目が覚めたら、また魔術の手ほどきでもしてやってくれ」
そう言い、アミリアはヒラヒラと手を振りながら、部屋を出ていった。
「……そうは言っても、私には責任がある」
無銘は一人呟き、ルイスの顔を覗き込む。
刃の欠片が突き刺さった両目には、包帯がぐるぐると巻かれていた。
「……背負った力の重さに、また君を苦しめることになるかも知れない。それでも、君なら乗り越えられるだろう、ルイス」
目に手を当て、無銘は躊躇なく力を込めた。
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深夜、無銘は丘にいた。
闇のように暗い空には、大きな月と小さな星ぼしが輝いている。
そこへ、ふわりと風が靡く音がして、誰かが降り立った。
比喩でも何でもなく、その場に着地したのだ。
「……お前か。うちの愛弟子に魔術を教えてるってやつは」
「……そう言う君は、ルイスの本物の師匠というわけか」
豪奢な金髪に、黒いドレス。
月明かりに映えるその姿は、まるで女神のような美貌を誇っていた。
「───まあ、そういうわけだ。セリカ=アルフォネアという。よろしく頼もうか」
「生憎、私はルイスの師匠の資格を、先程失ったところでね」
「冗談きついぞ。せいぜい、師匠同士語り合うとしようじゃないか」
無銘の罪の告白を一笑に付し、セリカはエミヤの隣へ。
手すりに座り、セリカは足を組む。
その姿は、まるで絵画のように絵になる。
「よっと」
「……全て知っている、といった様子だな」
「まあな。一応、見てたし」
「……そうか」
無銘は納得したように頷き、再び月に向き直った。
しばらく黙り続ける二人。
その沈黙を破ったの無銘だった。
「セリカ。君は、どこまで知っているんだ?」
「お前がこの世界のものじゃないってところと、純粋な人間じゃないってとこくらいか」
だいたい理解しているじゃないか……という内心はさておき、無銘は口を開く。
「どうやって知ったんだ?」
「こっちは名高き
「……さすが、世界最強の魔術師だな」
「あ?なんだ知ってたのか」
「ルイスから散々聞かされているからな。自慢と一緒に」
苦笑いしながら、無銘はそう言う。
「これなら話は早いな」
「ってことは、話してくれるんだな?お前自身のこと」
「……少なくとも、君には話すべきだと思う」
若干言いにくそうに、無銘は答える。
「じゃあ、聞いてもいいか?その方が話しやすいだろ?」
「よろしく頼もう」
「じゃあ、とりあえず……。お前がどういう存在なのか聞かせてもらおうか」
「了解した」
エミヤは一泊置いて、説明し始めた。
ここではない別世界で行われている、7人の魔術師と7人のサーヴァントによる殺し合い、『聖杯戦争』のこと。
そもそも聖杯とはなんなのか。
無銘の世界における、魔術の原理まで説明した。
「……なるほどな。こいつは歴史的一大発見になり得るな。誰にも言うつもりなんざないが」
「そうして貰えると助かる」
「はいはい。……で、だ」
ひと通り話を聞き終わり、セリカが質問を返す。
「聖杯がないはずのここで、何故お前が召喚された?」
「……それについては、私も考えていたよ」
長くため息をつき、無銘は答える。
「おそらく……この世界の誰かが聖杯を降臨させようとしている」
「……はぁ?」
あまりにも突拍子のない結論に、セリカは変な顔をして固まる。
「おい待て。この世界は、お前の元いた世界とは全く違うんだぞ?魔術の基本も、世界の法則も違う。それどころか、お前の言う『魔術回路』ってやつすらない。それなのに、どうやって……」
「それは、ルイスを見ていたら解決したよ」
「はっ?」
予想だにしない回答。
セリカはもはや驚くばかりだ。
「ルイスを一目見た時驚いたよ。魔術回路も無ければ、私の世界の魔術の常識すら通用しないというのに……。彼の魔術的要素は、私に非常に良く似ていた」
「……つまり?」
「同じ『魔力』という概念であれば、双方の世界の魔術の再現は不可能ではない……ということだよ。現に、ルイスは私の魔術を完成しつつある」
「そういう……ことか」
天を仰ぎながら、セリカは深いため息と一緒に嫌気を吐き出す。
『別世界の願望器を呼び出す』というろくでもないことを考える奴らなど、一つしか思いつかない。
「……天の知恵研究会。おそらくあいつらが原因だろうな」
「心当たりがあるんだな?」
「ああ。頭がおかしい癖に、才能のある外道魔術師ばかり集まる……そんな集団だ」
「どこの世界でも、そういう人間はいるものだな」
「そんなもんさ。それが人間だからな」
人を超越した魔術師と、人を辞めた英霊が揃って苦笑いする。
「……君には、もう一つ話した方がいいだろうな」
「ん?なんだ?」
真剣な顔つきの無銘に、セリカが目だけ振り向く。
「これはあくまでも予想だが、今後私以外にもサーヴァントが現れる可能性がある。その時は……」
「場合によっては排除してくれ、か?」
「……ああ。世界最強の魔術師なら、サーヴァントにも対抗できるだろう?」
「さーな。だが、やれるだけの事はやろう」
「よろしく頼む」
セリカは戦闘魔術に関しては、間違いなく世界最強だ。
邪神の眷属を真正面から迎え撃ち、そして勝利する魔術師など、世界に何人いるか分からない。
「では、そろそろ失礼するよ。少なくとも、ルイスの世話くらいはしなくては」
「ああ、待ってくれ。最後に一つだけいいか?」
踵を返し、立ち去ろうとする無銘を、セリカが呼び止める。
「その目、どうした?」
「…………」
「だんまりか。なら訊き方を変えよう。その目、まさか……
振り返った無銘の両目は、固く閉ざされている。
不自然に血が流れる後が付着し、無銘の目に何が起こったのかを鮮烈に語っている。
「……君も見ていたんだろう?なら、私の責任の取り方は一つだけだ」
「……ざっけんなよ」
呟き、セリカは急速に無銘に詰め寄る。
歴戦の英雄すら驚く、見事な踏み込みだった。
「お前、魔力の塊みたいなサーヴァントの身体の一部を、生きてる人間に移植しただと!?何が起こるか、私に分からないとでも思うか!?」
胸ぐらを掴みかねない勢いでまくし立てるセリカ。
しかし、無銘は冷静に告げる。
「ならば君は、彼に、自分の愛する者すら一生目にすることが出来ない生活をしろと言うのか?」
「………っ!」
息を呑むセリカに、無銘は続ける。
「たしかに、この先に何があるかは分からない。いや、何が起こってもおかしくはない。だが、君の弟子は、そんなことすら乗り越えられない者か?」
「……そんなわけあるか。あいつなら、私たちが手だしなんかしなくても、乗り越えるはずだ」
「なら、それでいいだろう。それに、どうせ君も手助けするんだろう?」
「当たり前だ。可愛い弟子のためなら、なんだってやる」
「ふっ、頼もしいな」
両の目を閉じたまま、無銘は微かに笑う。
そうして、今度こそ踵を返して、ルイス宅へと帰って行った。
「……ルイス。この先何があっても、私とグレンがお前を助けるからな」
一人丘に残ったセリカは、月夜にそう誓った。
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翌日、ルイスは問題なく目覚めた。
事情を知る両親と無銘から『奇跡的に視力が回復した』という説明を受け、納得。
無銘の目が閉じたままなのは、『新たな鍛錬』だということで納得した。
そうして、日々は足早に過ぎ去っていく。
無銘がやって来てから二週間。
どうにかルイスは【無限の剣製】と双剣術の基礎をギリギリ身につけた。
「……あとは、日々の鍛錬がものを言う。励むといい」
「……ああ。ありがとう、無銘」
別れの時がやってきた。
場所は、無銘とルイスが出会った丘だ。
固く握手を交わし、二人は微笑む。
「最後に見せて貰った武器、どうにか記憶には焼き付いたよ。いつか、投影できるようにしてみせる」
「ああ。楽しみにしているよ」
そして、無銘はくるりと反転する。
「……これで最後になるな。では、師匠らしいことを言わせてもらおう」
「ん?なんだ?」
背中を向けたまま、無銘は告げる。
「その力、誰かを傷つけるのではなく、誰かを守るために使って欲しい。……私には叶わなかったことだ。どうか覚えておいてくれ」
「……何言ってんだよ、当たり前だろ?」
「ふっ……そうだな。いらぬ心配だった」
微かに微笑み、無銘は一歩、また一歩と歩みを進める。
「では、お別れだ、ルイス。またいつか、会えることを祈ろう」
「おう。またいつでも来いよな!」
晴れやかな笑顔で手を振るルイスから、無銘は黙って歩き去った。
しばし歩き、着いたのは人気の全くない、林の中。
「……もう、さすがに限界か」
指先から消えていく感覚に、無銘は自分の終わりを悟る。
「クラススキル様々だな。最初に受け取った魔力だけで、ここまで持つとは」
だが、それも限界だった。
もうじきに、無銘はこの世界に居られなくなる。
「『また会おう』……などと、柄にもないことを言うべきではなかったな」
徐々に光の粒子となっていき、無銘の姿がどんどん薄くなる。
「だが、本当に叶うのなら……いつかまた、この世界に来たいものだな……」
最後に、二週間だけ教え続けた弟子のことを考えながら、無銘は完全に消え去った。
あとには、葉を撫でる風の音だけが、寂しげに囁いていた。
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「……サーヴァントの消滅を確認しました。これで何体目でしょうか……」
暗い、暗い部屋の中。
メイド服に身を包んだ女が、報告するようにそう言った。
「……ええ。その通りですわ。どうやら、今回の召喚は失敗のようです。まさか、サーヴァントがこんな時間差で現れる等とは……」
痛ましそうに、女は頷きながら呟く。
「ですが、ご安心くださいませ。既に手は打っておりますゆえ……。そもそも、我々の悲願のために、万能の願望器を呼び出すなど……少々おかしな話でしたね」
ふふふ……と、上品に、されど妖しく笑う。
そして、両手でスカートを摘み、絵に書いたような礼儀正しい礼をして、
「全ては、『
と、妖艶に微笑み続けた。
文字数8000オーバーとは……時間かかるはずです(^_^;
さて、いかがでしたか?今回の短編『赤い弓兵』
今まで下手くそな伏線で謎にして来たことは、出来るだけ明かしたつもりです
質問等などありましたら、どうぞ遠慮なく!
それでは、また来週水曜日にお会いしましょう!