ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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どうも皆様

最近オロナミンCとエナジードリンクを併用し始めた雪希絵です

この組み合わせだと、なかなか長時間起きていられるんですよね

私だけかも知れませんけど(^_^;

それでは、ごゆっくりどうぞ


反撃開始

「だって仕方ないじゃない……。あの位置じゃ、ルミアにも当たっちゃうかも知れないし……。そ、それに、下手な援護したら……ルイスの邪魔になっちゃうかもしれないし……」

 

部屋で一人になったシスティーナが、ぽつぽつと呟く。

 

「へ、下手したら……リィエルだって、死んじゃうかも……しれないし……その……流石に死なせちゃうのは……ね……?そう、仕方ない……仕方ないのよ……うん……あは、はは」

 

小さな声でそう呟き続けて、乾いた笑いを浮かべる。

 

「うぅ……ひっく……!」

 

そして、堪え切れなくなった涙が溢れ出した。

 

「嘘つき……私の嘘つき……!私は、ただ怖かっただけじゃない……!」

 

もしも呪文を唱えたら。

 

もしも呪文一発でリィエルを倒すことができなかったら。

 

あの鈍く輝く分厚い剣が、自分に向かって振り下ろされるのではないか。

 

その恐怖で、システィーナは動くことができなかった。

 

「……う……ぁ……!」

 

自己嫌悪に囚われながら、システィーナは膝を折って座り込んだ。

 

両目からとめどなく涙が流れる。

 

結局自分は、自分可愛さに何も出来なかった臆病者だ。

 

グレンがこんな自分を見たら、どう思うだろうか。

 

ルイスはきっと、何度も何度も自分を慰めようとするだろう。

 

けど、その二人はもう……。

 

「あぁぁ……うぁぁぁぁぁぁぁぁ……!」

 

システィーナが頭を抱えて泣き叫んだその時。

 

バァァン────!

 

「ひぃ……!」

 

猛烈な音を鳴らして、扉が開いた。

 

まさかリィエルが戻って来たのかと思ったシスティーナが悲鳴をあげる。

 

「邪魔をするぞ」

 

扉の向こうには、黒い外套を羽織って誰かを抱えあげるアルベルトと、

 

「システィーナさん!ご無事ですか!?」

 

心配そうな顔で飛び込んで来た、ジャンヌだった。

 

「じ……ジャンヌ……」

「システィーナさん、お怪我は?」

「……ぇ……ぁ……」

「話はだいたい聞いています。ひとまず落ち着いてください」

 

システィーナに駆け寄り、ジャンヌはその両肩に手を乗せる。

 

「……システィーナ=フィーベルだな?俺は帝国宮廷魔導師団特務分室所属アルベルト=フレイザーだ。会うのは初めてだが、俺の顔くらいは知っているはずだ」

 

狼狽えるシスティーナをよそに、アルベルトは淡々と続ける。

 

「帝国軍法第六章、緊急特例四号条項、第三十二条に従い十騎士長権限を発動、お前に協力を要請する」

 

過去の記憶を照合する時間もなく、システィーナは突然の闖入者に狼狽えるばかりだった。

 

「なに……?なんなの……?なんなのよさっきから!」

 

すると、ライトに照らされてアルベルトに背負われた人物が誰か明らかになる。

 

「きゃあああああ────!?先生!?」

 

血の抜けた顔で、大量の血を流したグレンだった。

 

「血を止める処置はした。だが、焼け石に水だ。対象者の回復力を増幅する白魔【ライフ・アップ】ではもう救えん。俗に、死神の手に掴まれた、というやつだ。このままでは、この男は間違いなく死ぬ。……ルイスはどうだ。ジャンヌ=ダルク」

「……出血量は多いですが、内臓には到達していません。こちらは私がなんとかします」

「わかった。任せるぞ」

 

そうして、アルベルトはシスティーナの説得にかかる。

 

ジャンヌはひとまずルイスの服を脱がし、傷口の詳細を確認する。

 

しかし、システィーナは暴れ狂う。

 

パニックに陥り、ヤケになった思考回路は、アルベルトの言葉を飲み込もうとすらしない。

 

その時だった。

 

パァン─────ッ!

 

システィーナの頬から、乾いた音が聞こえてきた。

 

「……泣き叫ぶことが、貴女の今することですか?」

 

ルイスの血に濡れた手で、ジャンヌがシスティーナの頬を叩いたのだ。

 

「そ………それは……」

「……此処で思考を放棄すれば、恐らくお前は一生後悔することになる。それでもこの男を殺したいのなら幾らでも泣き叫べ。俺はそれでも一向に構わん。後は葬儀屋の仕事だ」

「…………」

 

ジャンヌの言葉の後を継いだアルベルトの顔を見ながら、システィーナは押し黙る。

 

そうだ、今自分がすべきことは子供のように泣き叫ぶことではない。

 

「恥じる必要などない、フィーベル。温室育ちのお嬢としては、お前のその無様な狼狽ぶりは至極真っ当。……残念だな、この男が居れば王女の救出が少しは捗ると踏んだのだが……当てが外れたようだ。まぁ、いい。あとはルイスを頼ることにする。葬儀屋の手配はお前に任せた」

「……ま、待ってください……!」

 

システィーナは涙を拭い、真っ赤になった、されども意志のこもった瞳でアルベルトを見つめる。

 

「……わ、私は……何をすれば……いいんですか?」

 

そんなシスティーナの様子を見て、ジャンヌはもう大丈夫だろうて判断する。

 

(あとで、叩いたことを謝らなくていけませんね……)

 

ついカッとなってしまったことを、今になってジャンヌは反省する。

 

「いえ、それよりも……」

 

ジャンヌはルイスに向き直る。

 

先程も見た通り、傷口は大きいがそう深くない。

 

それに、どうやら意識を失う前に手持ちの薬を飲んだらしい。

 

今では血は止まり、薄くはあるが呼吸もしている。

 

(本当に……すごい精神力ですね)

 

それでも失血量が多い。

 

薬が効くまでに流れ出したのだろう。

 

「……諦めませんよ。ルイスさん。あなたを失うくらいなら、私は……!」

 

ジャンヌはルイスの傷口に手を当て、白魔【ライフ・アップ】を発動する。

 

さらに、自分用にと渡されていた薬も全て傷口にかける。

 

ジャンヌの決死の治療は、アルベルトとシスティーナによる【リヴァイヴァー】が終わるまで続いた。

 

───────────────────────

 

「……っ」

 

小さな呻き声をあげ、ルイスは目を覚ました。

 

「目が覚めたか、ルイス」

「……アルベルトさん」

 

視線を向けると、そこには腕を組んでこちらを見下ろすアルベルトがいた。

 

すぐ隣のベッドには、血だらけで寝息を立てているグレンがいた。

 

「……!?アルベルトさん!ルミアは!?」

 

はね起き、痛みに顔をしかめるが、ルイスはそう叫ぶ。

 

「王女は攫われた。リィエルの手によってな」

「……っ!クソッタレ!」

 

ベッドを拳で殴りながら、ルイスは悪態をつく。

 

「傷はどうだ、ルイス」

「……あ、ああ……。ぐっ……あっ……!」

 

ぐるぐると包帯が巻かれた部分に手を当てると、猛烈な激痛が全身を駆け巡る。

 

「……薬は……もうないか」

「治療に全て使った」

「な、なるほど……」

 

痛む傷口を抑えながら、ルイスは辛うじて頷いた。

 

「……グレンは?」

「背中から腹を貫かれた。だが、今は【リヴァイヴァー】で息を吹き返してはいる」

「【リヴァイヴァー】!?あんな大掛かりな魔術、どうやって……!」

 

驚くルイスに、アルベルトは淡々と答える。

 

「そこで眠っている、フィーベルの魔力を使った。この娘、まだまだ未熟だが、潜在的な魔力容量(キャパシティ)は俺やルイス、お前をも超えるだろう」

「ま、マジかよ……」

 

驚いたルイスが感嘆の声をあげていると、

 

「……つっ…うぅ……!」

 

グレンが目を覚ました。

 

「……ふん。息を吹き返したか」

 

そんなグレンに、いかにも苛立ち混じりのアルベルトの声が投げつけられる。

 

「相変わらず憎々しいほどにしぶといやつだ。お前は」

「……なんだそりゃ。暗に死ねとでも言いたげだな」

「その方がせいせいするんだがな。俺としては」

 

アルベルトのいつもの如くつれない一言に、グレンは懐かしさを覚えた。

 

その後、現在の状況をまとめはじめた。

 

リィエルの『兄』を名乗る人物が現れたこと。

 

それにより、リィエルが天の知恵研究会に寝返ったこと。

 

リィエルの手によって、ルミアが連れ去られたこと。

 

今から、二人でルミアの奪還に向かうこと。

 

盛大にグレンが殴られたりはしたが、ルイスには昔の二人に戻ったように感じられた。

 

(いや、殴ったからこそか)

 

軽く微笑みながら、ルイスはゆっくりと立ち上がる。

 

「俺も行く」

「ルイス、お前は……」

「いいだろう」

 

グレンは咄嗟に止めようとするが、アルベルトが即座に許可を出した。

 

「お、おい、アルベルト!」

「少なくとも、お前よりは使える。どちらも手負いだがな」

「うぐっ……」

 

言い返さずに押し黙り、グレンはため息をついた。

 

「仕方ない……。行くか」

「最初からそう言えよな」

痛む体を引きずり、若干息を荒くしながらも立ち上がった。

 

そうして部屋を出る直前、

 

「また、お前に助けられちまったか……ありがとうな、システィーナ」

 

くしゃりと頭を撫で、グレンは優しい目でそう言った。

 

すると、

 

「せん……せい……ルイ……ス……。ル……ミアを……助けて……お願……ぃ……」

 

システィーナは、かすかに身じろぎをして、そんな寝言を呟いた。

 

「……任せろ」

「当然だ。いってくるよ」

 

ただ一言、二人はそう言い残して、部屋を出た。

 

先行するアルベルトとグレンの背中を見ながら、ルイスは廊下を歩き進める。

 

体は痛むが、動けないほどではない。

 

(どこまで動けるかな……)

 

そんなことを考えながら歩いている時だった。

 

ぐいっ──────!

 

思い切り右手を引っ張られた。

 

何が起きているかも分からず、ルイスはされるがままに引きずられる。

 

誰かを確認する間もなく、壁に背中を押し付けられる。

 

そして、自分の顔の両側に、ドンッと両手が叩きつけられた。

 

 

音は大きくないが、ルイスは両目をパチクリとさせる。

 

「……じゃ、ジャンヌ?」

 

目の前にいたのは、険しい顔をしたジャンヌだった。

 

「どうしたんだ急に……」

「どうしたんだじゃありません」

 

至近距離から睨みつけられ、ルイスは押し黙る。

 

「……そんな怪我でどこに行くつもりですか。まさか、敵地に乗り込むなんて言わないでしょうね?」

「…………」

 

依然沈黙するルイスに、ジャンヌは続ける。

 

「何を考えているんですか!あなたは今、どれだけの大怪我をしてるのか分かっているんですか?」

「……それでも、俺は行くよ。誰がなんと言おうと」

 

ジャンヌに負けない真剣な眼差しで、ルイスはそう言う。

 

「……例え、それが理由で死んでも、惜しくはない」

「……はぁ。……頑固者」

 

ため息をついて、ジャンヌは半ば呆れたように言って、壁から手を離した。

 

「わかりました。ですが、あなただけには行かせません。私も行きます」

「い、いや、それは……!」

「私は行きます。誰がなんと言おうと」

「ぐぬ……」

 

先程自分が言ったことを返され、ルイスは反対できなくなった。

 

「わかった。力を貸してくれ、ジャンヌ」

「はい。……あなたは、私が守ります。あの日あの時、あなたがそうしてくれたように」

「……ありがとう」

 

お礼を言い、二人は並んで歩き始めた。




お読みいただきありがとうございました!

とうとう来ましたよ、ジャンヌの壁ドン!

やっと書けて嬉しい限りです

それでは、また来週お会いしましょう
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