ロクでなし魔術講師と無限の剣製   作:雪希絵

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投稿中に充電切れるとか嫌がらせ!?

すみません、またもやギリギリです!

本当はもっと前だったのに……!

申し訳ありません、ごゆっくりどうぞ!


事件勃発

グレンはまず、魔術の大原則『等価対応の法則』の復習を始めた。

 

大宇宙すなわち世界は、小宇宙すなわち人と等価に対応しているというもので、お互いに影響しあっているということだ。

 

つまり、魔術式とは世界に影響を与えるものではない。

 

人に影響を与えるものだ。

 

人の深層意識を変え、世界の法則を変える。

 

「要するに魔術式ってのは超高度な自己暗示っつーことだ。だから、お前らが魔術は世界の真理を求めて〜なんてカッコイイことよく言うけど、そりゃ間違いだ。魔術は人の心を突き詰めるもんなんだよ」

 

つまり、ルーン語とは、自身の深層意識を効率よく改変するための言語なわけだ。

 

「何?たかが言葉ごときに人の深層意識を変えるほどの力があるのが信じられないだって?ったく、あー言えばこう言う奴らだな……おい、そこの白猫」

「だから私は猫じゃありません!私にはシスティーナって名前が────」

「……愛している。実は一目見た時から俺はお前に惚れていた」

「は?……な、……な、なななな、貴方、何を言って────ッ!?」

「はい、注目ー。白猫の顔が真っ赤になりましたねー?見事に言葉ごときが意識になんらかの影響を与えましたねー?比較的理性による制御のたやすい表層意識ですらこの有様なわけだから理性のきかない深層意識なんて───ぐわぁっ!?ちょ、この馬鹿!教科書投げんなッ!?ごふぁ!!?」

「馬鹿はアンタよッ!この馬鹿馬鹿馬鹿───ッ!」

「てか、ルイス!お前の投擲の威力はシャレにならんからやめろぉぉ!」

「黙れ馬鹿グレン。お前の頭蓋を砕くまで投げるのをやめない」

「怖っ!?」

 

ひと騒動あり、顔を腫らした上におでこにアザを作ったグレンがまとめる。

 

「要するに、呪文と術式に関する魔術則……文法の理解と公式の算出方法こそが魔術師にとって重要なわけだ」

 

さすがにやりすぎたと反省し、ルイスは実家特製の治療薬を渡す。

 

それを塗って楽になったグレンは、話を続ける。

 

「で、その問題の魔術文法と魔術公式なんだが……実は全部理解しようとしたら、寿命が足らん……いや、怒るな。こればっかりはマジだ。いや、本当に」

 

ここまで持ち上げておいてなんだと、非難の視線が集まる。

 

「だーかーら、ド基礎を教えるんだよ。これを知らなきゃ上位の文法公式は理解不可能、なんていう骨子みたいなもんがやっぱあるんだよ。ま、これから俺が説明することが理解できれば……んーと」

 

そう言って少しの間考え込み、

 

「《まあ・とにかく・痺れろ》」

 

変な呪文を唱えた。

 

すると、そんな適当な呪文にも関わらず【ショック・ボルト】の魔術が起動した。

 

「あら?威力が思ったより弱いな……。ほれ、ルイスもやってみろ」

 

そして、ついさっき飛んできたルイスの教科書を放り投げる。

 

「あ?ちょっと待て、いきなり過ぎるだろ!」

 

綺麗な放物線を描く教科書を生徒全員が見つめる中、ルイスは頭を回転させる。

 

「えーっと……《とりあえず・向こうまで・吹っ飛べ》!」

 

思いついたグレンと同じような呪文を唱え、左手を突き出す。

 

直後、【ゲイル・ブロウ】の魔術が発動し、教科書を向こう側の壁まで吹き飛ばす。

 

「うーん、範囲がちょっと狭いか?まぁいい、こんな風に即興でこの程度の呪文なら改変することくらいはできるようになるか?大抵精度落ちるからお勧めしないが」

 

ここに来て、生徒達のグレンとルイスを見る目が変わる。

 

「じゃ、これからいよいよ基礎的な文法と公式を解説すんぞ。それと、ルイス。こっち来い」

「んあ?」

 

【ゲイル・ブロウ】の改変について考えていたルイスに、グレンが手招きする。

 

返事をして教壇まで歩くと、グレンがルイスの肩を叩きながら、

 

「こいつはすでに、俺レベルでこの分野を理解してる。というわけで、俺のこの授業の間はルイスも教師役だ。遠慮なく質問してやれ」

「はぁ!?待てよおい!」

「いいだろ?別に」

「……はあ。わかったよ」

 

急な話に反発するルイスだが、仕方なく了承する。

 

「さて、んじゃあ、始めるか。ま、興味ないやつは寝てな。正直マジで退屈な話だから」

 

しかし、この状況で寝ていられる生徒など、やはり誰一人としていなかった。

 

─────────────────────

 

やる気になったグレンの授業は、他の講師とは次元が違った。

 

真の意味でその分野を理解し、その知識をわかりやすく解説する力があるこその実りのある授業。

 

そして、それはルイスも同様だった。

 

グレンが黒板に向かい、生徒全体に解説しているのに対し、ルイスは少しでも遅れている人が居ればすぐに駆けつける。

 

質問されればそれに回答し、解説を求められれば簡潔にわかりやすく解説する。

 

そうして、いとも簡単に追いつかせてしまう。

 

まるで二人の優秀な講師が揃ったかのような授業内容に、生徒達は全員聴き入っていた。

 

この報せは学院中に即座に知れ渡った。

 

今では、立ち見でも授業を受けに来る生徒もいるくらいだ。

 

おかげでルイスは大忙し。

 

あっちへこっちへと走り回り、解説をしていく。

 

断ればそれまでなのだが、ルイスも大概お人好しである。

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

 

結果はこの通り、授業時間の終わりくらいになると、ヘトヘトである。

 

わかりやすく解説こそしているが、理解力は個人で違うし、質問の場所が違うこともある。

 

それら全てに対応するのは、普段とは違う体力を使うのだった。

 

「ルイス君、お疲れ様」

「お疲れ様」

「おう……」

 

授業が終わり、システィーナとルミアがルイスの元に来た。

 

「いつも大変だね。ほかのクラスの人にまで質問されて……」

「出来るなら手伝いたいけど、むしろ私がルイスの解説が必要なくらいだし……。ごめんなさい」

「いいよ、二人が気にすることじゃない」

 

心配する二人に力なく笑いかけ、ルイスは立ち上がる。

 

「おーい、グレン。荷物運ぶの手伝うよ」

「あ、私も手伝います!」

 

そして、十冊ほどの分厚い本を持ったグレンにそう言う。

 

ルミアもまるで子犬のようにグレンに駆け寄る。

 

「ん?ルミアとルイスか。手伝ってくれるなら助かるが、重いぞ?大丈夫か?」

「はい。平気です」

「身体の方はなんともないよ。精神的には疲れたけどな」

「そうか。なら、少しだけ頼むわ」

 

グレンはルミアに本を二冊、ルイスに三冊取って手渡す。

 

普段とは違う穏やか表情に、ルイスとルミアが微笑む。

 

その様子を少し離れたところから見ていたシスティーナはなんだか面白くない。

 

「ま、待ちなさいよ!わ、私も手伝うわよ……二人だけに手伝わせるわけにもいかないでしょうが……」

「……ほう?じゃ、これ持て」

 

ニヤリと笑い、グレンは放り投げるように残りの本全てをシスティーナに押し付ける。

 

「きゃあっ!?ちょ、重い!?」

「いやぁ、あはは、手ぶらは楽だわー」

 

よろけるシスティーナをよそに、グレンは意気揚々と歩き始める。

 

「な、何よコレ!?アンタ、二人と私でどうしてこんなに扱い違うの!?」

「ルミアは可愛い。ルイスは大事な弟弟子。お前は生意気。以上」

「この馬鹿講師……覚えてなさいよ───ッ!?」

 

─────────────────────

 

生徒がすっかり帰宅した放課後、グレンは屋上の鉄柵に寄りかかり、風景を眺めていた。

 

その隣には、同じく風景を眺めるルイス。

 

「なぁ、ルイス」

 

不意に話しかけるグレン。

 

「ん?」

「まぁ、なんつーか。相変わらず魔術は嫌いだけどよ。反吐が出るけどよ。こういう風に講師をやるのは……」

「悪くない、か?」

「うっ……まあ、そうだ」

 

言わんとしたことを拾われ、グレンがバツが悪そうに頬を掻く。

 

そんなグレンを見て、ルイスはクスクスと笑う。

 

「おー、おー、夕日に向かって黄昏ちゃってまぁ、青春しているね」

 

突然背後から冷やかすような声がし、二人は振り返る。

 

「……お、セリカ姉」

「いつからいたんだよ?セリカ」

 

夕日に輝く金髪が照らされ、それが風に靡いて幻想的な光景を生む。

 

「何しに来たんだよ?お前、明日からの学会の準備で忙しいんだろ?」

「おいおい、可愛い弟子と息子に会いに来ちゃダメか?」

「何が息子だ。俺とお前は元々赤の他人だっつーの」

「私はお前がまだこんな、ちっちゃな頃からお前の面倒を見てるいるんだ。母親を名乗る権利はあるはずだぞ?」

「俺はセリカ姉に会えて嬉しいぞ?」

「ほら見ろ、ルイスはこんなに素直で可愛いのに、グレンはこんなにスレた男になって……時の流れは残酷だな」

「ほっとけ」

 

ふてくされるグレンに、セリカはつぶやく。

 

「元気が出たようで……よかった」

「はぁ?」

「ふふっ……」

 

間抜けな声を出すグレンと、わかっているからか一人笑うルイス。

 

「お前、気づいてないのか?最近のお前、結構生き生きしてるぞ?まるで死んで一日経った魚のような目をしている」

「……おい」

「あっははは!」

「お前も笑うな!」

 

ルイスの頭を引っぱたき、

 

「……心配かけたな。悪かったよ」

 

グレンはため息をつき、頭を掻く。

 

「いや、いい。私のせいだからな。その証拠に、お前は魔術を、まだ嫌悪してる」

「……なるほどな。で、魔術の楽しさを思い出して欲しくて、魔術講師か?ったく、俺とお前を結びつけてるのは、魔術だけじゃねーだろ。たしかに魔術は嫌いだが、お前まで嫌いなることはありえねーよ」

「……ほらな、セリカ姉。俺の言った通りだろ?」

「そうか。うん、そうだよな。よかった」

 

グレンとルイスの言葉を聞き、セリカは穏やかに笑う。

 

そこへ、

 

「あ、やっぱりここにいた!先生!」

 

屋上の出入口が開かれ、システィーナとルミアが対照的な表情で現れる。

 

「あれ?アルフォネア教授。ひょっとして、お邪魔でしたか?」

「いいや。気にしなくていい。どうした?グレンに用事か?」

「はい」

 

花のように笑うルミアはグレンに歩みよる。

 

「私たち、図書館で今日の復習をしてたんですけど、どうしても先生に聞きたいことがあるって……システィが」

「ちょ、それは言わない約束でしょ!?」

「ほぅ、このグレン大先生様に聞きたいことがあると?」

「こうなるからこいつにだけは聞きたくなかったのよ……!」

「すみません、このあとお時間ありますか?」

「ああ、悪いな、ルミア。今日の説明は俺も言葉足らずだったから、多分そこだろう」

「なんなら、俺が先に行って教えとくよ」

「悪いな、疲れてるのに」

「だから、私と二人の扱いの差はなんなの……!」

「ルミアは可愛い。ルイスは大事な弟弟子。お前は生意気。以上」

「む、ムキィィィィ!!」

 

そんなふうに慌ただしく騒ぐ四人を、セリカは微笑ましそうに見ていた。

 

そして翌朝。

 

影は、すぐそこまで迫っていた。

 

「ふー……授業時間中にトイレとか勘弁してくれ……」

 

一人呟きながら廊下を歩くルイス。

 

しかし、ここで異変に気づく。

 

教室が静か過ぎる。

 

普通なら、自分のクラスの声がもっとクリアに聞こえるはずだ。

 

感覚を研ぎ澄まし、意識を少し先の教室に集中。

 

「《ズドンッ》!」

 

そんな声とともに、弾ける雷撃の音。

 

「!?」

 

(今のは、【ライトニング・ピアス】!?)

 

聞き慣れた軍用魔術の音。

 

幸か不幸か、彼は巻き込まれずに、この異常事態に気がついた。




次回、戦闘開始です!

お待たせ致しました!

ルイスの活躍の場ですよ!

……次回はギリギリにならないようにします!

次回こそは!
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