やはり俺の受けた祝福はまちがっている   作: サキラ

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第一章
このアンデッドもどきに祝福を!


 

「ようこそ、死後の世界へ。比企谷八幡さん、残念ながらあなたは死んでしまいました」

 

 

は?

 

唐突に朝起きたような感覚に襲われて目を開けると、俺の前には青い髪の美しい女性が立っていた。

無論、初対面だ。さすがに青い髪した女とかいくら俺がぼっちでも覚えている自信はある。

……ん?ぼっち?俺ってぼっちなの?どうも記憶がはっきりしない。

 

 

「どうやら混乱されてるようですね。無理もありません。日本でのあなたの人生は幕を閉じてしまったのですから」

 

 

青い髪の女が心中お察しします、と言わんばかりに俺に告げ、右手を俺にかざす。

すると途端に、俺が死ぬまでの過程というか、それまでの俺の人生すべてが走馬灯のように脳裏に流れ、正直思い出したくない記憶まで鮮明に思い出させてくれた。

 

 

「……にしてもまさか過労死とはなぁ」

 

 

自分の死因に思わず声が漏れてしまう。

まさかクリスマスイベントの企画で死んでしまうとは思わなかった。

こうなるくらいなら最初から雪ノ下と由比ヶ浜に頼んどくんだったな……。

おお……八幡よ。こんな理由で死んでしまうとは情けない。

 

 

「私もこの仕事長いけど、その歳で過労死なんて半世紀ぶりくらいよ?苦労したのね?」

 

 

いや、なんつうかアレは俺の下らない意地の末路なんで、恥ずかしいから言わないでもらいたい。

 

 

「えっと、それであんたは?」

 

「あら言ってなかったかしら?んんっ、私はアクア。若くして死んだ者の魂の導きを行う女神です。比企谷八幡さん、あなたにはいくつかの選択肢があります」

 

 

俺が尋ねると、口調を素っぽいものから丁寧なものに変えてそう名乗った。

なるほど、女神アクアってのか。聞いたことねえな。

 

 

「選択肢っていうとアレか?天国か地獄かっていうよく聞くアレか?」

 

「いやいや、そんなファイナルジャッジメントなものじゃないわよ。まぁ確かにあなたの目は地獄の住人してた方が違和感ないけど」

 

「おいこら。さっきから素が出てるぞ女神」

 

「あなただって女神たる私に敬語使わないからいいじゃない」

 

 

そう言われると反論できない。

まぁいいか、俺としても変に敬語とか使う必要のない分こっちの方が接しやすいし。

 

 

「で、天国か地獄かじゃないなら選択肢って何だ?」

 

「そうそう!忘れてたわ!一つ目が記憶を消して日本で赤ん坊として生まれて一から人生をやり直すこと。メリットとしては、アンデッドさながらのその目とも、別の顔になるから綺麗さっぱりお別れできるわ!」

 

「却下に決まってんだろうが。喧嘩売ってんのか」

 

 

そもそも俺の自我が無くなる時点で論外だろ。あと俺は自分の顔のことをコンプレックスになんか思ってない。むしろ目が腐ってること以外は割と整っている方だと思う。

 

 

「えー私としては一番お勧めなんですけど。あなたホント目がアンデッドそっくりなのよ?私思わず出会い頭に浄化魔法叩き込んじゃったんですけど」

 

「ちょっと?なに物騒なことやってんの?」

 

 

しれっと恐ろしいことカミングアウトしたよねこの神サマ。

咄嗟にペタペタと自分の体に欠けてるところがないか確認する。

というか死んでる身で体の心配というものもおかしい話だが。

 

 

「だ、大丈夫よ!浄化魔法は悪魔やアンデッドにしか効かないから!」

 

 

えっと、なんで俺は死んだ上に神サマにまで罵倒されてるのん?

さすがに生前言われてきた悪口にもそんなレパートリーはなかった……はず?

 

 

「……本当に人間には効果ないんだよな?もしかして記憶がとびかけてたのはそのせいじゃないよな?」

 

「……じゃあ次の選択肢を言いますね。八幡さん」

 

「ちょっと?アクア様?」

 

 

固まった後に、女神口調で話し出したアクアに俺も敬虔な信徒のような口調で口を挟む。

二人だけしかいない空間は当事者同士が押し黙ったことにより、当然のように沈黙が生まれた。

 

 

「仕方ないじゃない!うっちゃったんだから!いい!?悪魔やアンデッドは神が決めた理に反する虫けら以下の不燃ごみなの!!視界に入れたら即滅ぼさなきゃならないの!勘違いした私は悪くないわ!!」

 

 

なんつう言い分なんだ。

というか俺は虫ケラ以下の不燃ごみと勘違いされたってわけかよ。

 

 

「勘違いで滅ぼされかけたのなら、もはや記憶の混乱程度で済んで良かったとさえ思えるな」

 

「でしょう!?」

 

「でしょう!?じゃねえよ。頭わいてんのか」

 

「うぐぐぐぅぅぅ……!ゾンビモドキの癖にっ……ニッポンゾンビモドキの癖にっ……!!」

 

「おい、やめろ。人に変な学名つけんな」

 

 

しまいにはぐずり出してしまったアクア。

いま俺の中で神という存在の株価が暴落してる。なんなんだこいつは……。

 

 

「ったく、それで二つ目の選択肢はなんなんだよ?」

 

「……天国に行く」

 

 

こちらを向かない体育座りの背中からぼそっと拗ねた声が聞こえてくる。

一応、あるにはあるんだな天国。

でも実際天国がどんな所かなんて全然想像つかない。

アレだっけ?悟空が修行しに行ったとこだっけ?えっでもセル編であそこのおっさん死んだし……あれ?

 

 

「……天国って何があんの?」

 

「なにもないわよ」

 

「詳しく説明聞いても?」

 

「……」

 

 

……これはアレだな。拗ねて説明する気がないってやつだな。

子どもかコイツは。

 

 

「おい聞こえてんだろ?天国のことについて教えてくれよ」

 

「……謝って」

 

 

……なんですって?

 

 

「日本担当のエリートな私に酷いこと言ったの謝って!ほら早く謝って!!」

 

 

この女、ヒステリー起こしやがった!!

 

どこから取り出したのか、アクアはビー玉やら茶碗や指人形などの何に使うか分からないガラクタをこちらに投げつけてくる。

 

 

「はぁ、悪かった。俺が悪かったからもの投げんな。サクッと教えてくれませんか女神様」

 

 

もはやまともに取り合うのが面倒臭いので、ガラクタを躱しながら形だけでも頭を下げアクアに説明を促す。

 

 

「ようやく反省したようね!えっとそれでね、天国っていうのは本当に何も無いところなの!日がな一日ゴロゴロするしかない所なの!」

 

「ならそれで」

 

「えぇっ!?」

 

 

いや、何で驚いてんだよ。一日ゴロゴロ。素晴らしいじゃないか

 

 

「あのね?一日ゴロゴロ出来ると言ってもそんな素晴らしいものじゃないの。天国にはゲームやマンガ、ネットとかなんにも無いからハッキリ言って暇よ?日向ぼっこしながらモゴモゴ何言ってるか分かんないお爺ちゃん達と世間話するくらいしかする事がないわ」

 

 

おいおい、なんだよそれ……地獄より地獄じゃねえか。

 

 

「……つっても赤ん坊からやり直すなんてしたくないぞ?そうなるくらいなら天国で引きこもっとくまである」

 

 

「でしょう!?でしょう!?でも安心して!選択肢はもう一つあるから!」

 

 

本格的なヒッキーになる覚悟を決めた俺に、アクアがニコニコと笑顔を向けてくる。

この笑顔は新聞の勧誘やテレビショッピングの人の向ける笑顔と同種のものだ。

なんだかすごく嫌な予感がする。

 

 

「三つ目の選択肢はね?実は今ある世界がまずい事になってるから、そこの世界に転生して貰いたいのよ」

 

「断るに決まってんだろうが」

 

 

なんでまずい事になってる世界に好き好んで行かなきゃならないんだよ。

それくらいなら平和な日本に赤ん坊として生まれた方がマシだ。

 

 

「まぁまぁそう言わずに話をもうちょっと聞いて?その世界には魔王軍がいて人間が随分と減っちゃってるの。魔王軍を恐れてその世界で死んじゃった人は、その世界に生まれ変わりたがらないし。だからこの際、別の世界で死んじゃった若者を送り込んでしまおうってね」

 

「それ行ったはいいけど、また死んだら意味ねぇだろ」

 

「その通り。でね?だから転生者にはなんでも一つ特典を付けてあげることにしたの。強力なスキルだったり、神器級の装備だったり、身体能力の異常な強化だったりね?どう悪くない話でしょ?」

 

 

いわゆるチート能力か。

チート使って俺TUEEEEは男の子の憧れだしな。

材木座あたりは喜んで飛びつきそうな話だが、生憎と俺はそこまで真っ正直じゃない。

旨い話には裏がある。

中学の頃、当時好きだった女子の委員会の仕事を代わってやって遅くなった帰り道。その娘が不良と二ケツして遊び回ってたのを見てから、俺はいくらメリットを積まれてもデメリットを優先的に考えるようになった。

 

 

「ひとつ聞くけど、そのチート持ちの連中は結構送り出してるのか?」

 

「うん。割とこのプランは人気でね。こないだも1人イケメンを送り出したわ」

 

 

……オッケー、決めたわ。

 

 

「そんならやっぱ天国で」

 

「そうやっぱりチート能力にするわよね!それじゃあこのカタログから……なんですって?」

 

「天国でいいつったんだよ。正直見知らぬ世界に行ってまで危険冒したくないし」

 

 

女神は今まで結構な数のチート能力持ちの転生者を送り出してると言った。

つまりそこまでしても異世界の魔王軍とやらは滅ぼせず強力なのだ。

そんな世界に行くくらいなら天国でヒッキーしとく方がいいだろう。

 

 

「ちょっ……ちょっと待って、いいの?天国には本当に何も無いしエッチな事も出来ないのよ?」

 

 

うっ、うぐ……でもやっぱり自分の命には変えられないじゃん?

うんうん。大丈夫、揺らいでなんかない。これっぽっちも揺らいでないから!

 

 

「それか何か前の世界に心残りは無いの?魔王を倒すとなんでも一つ願いが叶えられるのよ!?」

 

 

心残り……。

心残りか。……そう言えばアイツらは俺が死んだ後、どうなっているのだろうか?

死んだのは俺の手前勝手な意地だし、今更蘇らせてくれなんて都合のいい事は言えないが……。

せめて、アイツらが責任も何も感じずに……。

俺の事は忘れてくれれば俺は……。

 

 

「はぁ……。分かったよ、やってやる」

 

「お願いっ!お願いよっ!いま年末でこのままじゃ自己ノルマに満たないの!査定に引っかかっちゃって昇給なくなっちゃうの!……え?今なんて?」

 

 

もはや女神の言葉というより、営業職の嘆きとしか思えない残念な事を口走ってたアクアの動きがピタッと止まる。

 

 

「異世界に行ってやるよ」

 

「ほんとに!?行ってくれるの!?あなた意外といい人ね!」

 

「そんなんじゃねえよ。魔王討伐したら女神様が願い事かなえてくれんだろ?それ目的だ」

 

「あっ、ふーん。私知ってるわよ。捻デレってやつね!」

 

「おい待て。どこにデレがあったんだよ。言っとくがお前の査定とか知ったこっちゃないからな?」

 

 

というかなんで小町の言ってた謎属性が出てくるかが気になる。

もしかして小町は天界レベルの発想力とか。

やだ。俺の妹容姿だけじゃなく発想まで天使じゃん!もはや天使そのものである。

 

 

「はいはい、そういうことにしとくから。ほら、この中から何か一つ選んでね?」

 

 

微妙に腹立つ言い方しながらカタログを手渡してくる女神。

 

【ゼロから始める異世界生活~冬の大ボーナススペシャル!~】

 

……なんだこの妙に既視感のあるタイトルは。そして表紙を見ただけで小町がよく読んでいた雑誌をどこか彷彿とさせてくる。偏差値低そうだなぁ……。

いろいろ不安を感じながらも、とりあえずざっと目を通していく。

おぉ……どこかで聞いたような聖剣、魔眼、チート能力のオンパレードだなこりゃ。

 

 

「なぁどういうのが人気なんだ?」

 

「うーん……一番人気はやっぱり装備系かしら。特典の装備はその人だけにしか効果ない物が多いし。そういえばこないだのイケメンも魔剣を持って行ってたわね」

 

 

となると武器系は駄目だな。

雑魚無双は出来るだろうけど魔王軍相手には使えないんだろう。それに失った時の代償がデカすぎる。

となると後はチートな固有スキルか。

と言ってもこちらも正直微妙だな。魔眼とか目潰し受けりゃ終わりだし、使えなくなった局面で詰んでしまう。

 

……いっそのこと生存能力に特化した物の方がいいのかもしれない。

 

 

「なんか生存率上がる特典とかないのかよ?」

 

「どういうこと?盾とか鎧とかあるじゃない?」

 

「あるけどお前これ、全部似たようなのばっかじゃねえか。最高の防御力持ったもん多すぎだろ」

 

 

ありとあらゆる物をはじく盾とかまである。もはやさっきのどんなものでも切り裂ける魔剣と競わせたいくらいだ。

 

 

「となると後は回復系統とかになるわね……。あっ!そうそう!女神の祝福なんてどうかしら!?」

 

 

ちょっ!近い近い!!

 

ずずいっと身を乗り出して薦めてきたアクアに思わず後ずさる。

なんか目の色がおかしい気もするが、とりあえず話だけでも聞いておこう。

 

 

「女神の祝福っていうのはね!?ありとあらゆる回復魔法、蘇生、浄化魔法を扱えるようになる特典なの!レア職業のアークプリーストにもなれるからオススメよ!!」

 

 

なんだそれ。結構よさそうじゃないか。

回復役というのは重宝されるだろうし。

 

 

「デメリットとしては?」

 

「失礼ね!女神からの祝福なのよ!デメリットなんてあるわけないじゃない!手先も器用になって芸達者にもなれるようになるんだから!」

 

 

ぷんすかと怒り出す目の前の女神。

芸達者っていうのはよく分からないが、この様子だと嘘は言っていないのだろう。

 

 

「よし、決めた。ならその女神の祝福ってのを頼む」

 

「分かったわ!あなた見た目に反して信心深いようだから、とびっきり強力な本気の祝福をかけてあげる!!」

 

 

大喜びしながらアクアが立ち上がると、俺の周りに神々しい水色の魔方陣が幾重にも浮かび上がった。

 

 

「汝、敬虔なるアクシズ教徒よ。あなたのこれからの活躍と輝かしい未来を願って―――」

 

 

浮かび上がった魔方陣が美しく輝きだす。

目が眩むほどの光の中でその声は高らかにそう告げた。

 

 

「祝福を!!」

 

 




という訳でプロローグです。
最初に言っときます。八幡のチート能力は劣化アクアです。
チート能力と言えど八幡は人間ですしアクアからの祝福なんで本家本元の女神には到底及びません。
そしてタグにはカズマとアクアがいます。後は分かるな?
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