前回の感想、誤字報告等ありがとうございました!
「いや、ほんとお前何してんの?」
そこにいたのはアクアだった。
うちの教団の主神であり、俺に祝福をかけた張本人がでっかい檻の中で体育座りをしながら死んだ目をして震えていた。
「し、知り合いなんですか?」
「いや知らない。こんなやつは知っていても知らない」
ゆんゆんが引き気味で尋ねてきたものだから、つい反射的に否定してしまう。
「……知り合いなんですね」
「いや違うから。ほらアレだ、近所の野良猫とかは知り合いって言わないだろ?それみたいなもんだから」
「えっ言わないんですか?」
「えっ?」
悲しすぎる情報が入ってきたが敢えて何も言わないでおくことにする。
下手に指摘して黒歴史作っちゃうのも可哀相だし。
少女の夢を壊しちゃいけない。
「ひっぐ……ひっぐ……ひっぐ……」
よりゆんゆんに優しくしようと心の中で誓っていると、檻の中のアクアが蹲って嗚咽を漏らし始めた。
檻の中に入れられて泣き始めるうちの教団の女神様……。
敬虔なアクシズ教徒がこの光景を見たらどう思うんだろうか?
ちなみに俺は今、欠片ほどの信仰心をドブに捨てた。
「ほら、ハチマンさんが知らないなんて酷いこと言うから泣き出しちゃったじゃないですか!」
「いやいや、これ状況から見てワニに襲われたショックが今になって溢れだしてきたとかそんな感じだろ」
というかそもそも、こいつ俺達に気づいてないだろ。
しかし目の前のゆんゆんはワナワナと震えだす。
「で、でも私だってそんなこと言われたら……そんなこと言われたら……」
「マジですまんかった。いやめっちゃ知ってる。むしろ大切な恩人なまである」
何か過去のトラウマを刺激されてしまったのか、泣きそうになっていくゆんゆんを見て慌てて謝る。
この状況で彼女まで泣き出したら、いよいよ俺には収拾がつけられない。
「とりあえず、これどうする?」
チラリと横目でアクアを見る。
悲壮感を漂わせて檻の中で泣いてる女神を見ていると、なんだかこっちが泣きたくなってくる。
俺はこんなのに祝福を貰ってたのか……。
「檻はギルドの備品っぽいですし、鍵は……掛かってますね」
「だとするとさすがにぶっ壊すって選択肢はダメだよな」
いや、俺が言ったこれとは檻じゃなくてアクアの方なんだけど。
まぁなんにせよ、下手に壊して弁償とかさせられてもやだし。
それに檻を壊すとすればゆんゆんの魔法になるから、中のアクアの安全までは保障出来ない。
……というか無事だったんだし、もう放っておいてもいいんじゃないかな?
「すいませーん。ちょっといいっすか?」
自分の教団の女神を見捨てようと決意を固めていると、不意に後ろから声をかけられた。
振り返ってみると同じくらいの歳だろうか、少し茶色がかった髪をしたいかにも冒険者と言った身なりをした男と、その後ろにパーティーメンバーだろう魔法使い風のちびっ子と騎士っぽい鎧を着た金髪の……。
「あれ?ダクネス?」「めぐみん!?」
ゆんゆんと二人して声が揃う。
「「え?なに?お前ら知り合い?」」
今度は話しかけてきた男と声がハモった。
気恥しい。こっち見んなこっち。
「この二人とは前にクリスと組んでいたとき、クエストを共にした事があってだな」
「そこでお前が迷惑かけたわけか」
お察しとばかりに男が言う。
同じパーティーメンバーの様だし、彼女の欠点も分かっているんだろう。
「ち、違う!その時はちゃんと作戦通りに動いていた!言われた通り強敵の攻撃を受け続け反撃することも許されず……んんっ!……アレはほんと凄かったぞ……!」
ちょっと?誤解を招くような言い方しないでね?
最初は否定していたダクネスだったが、上位悪魔との一戦を思い出したのか興奮しながら身体をくねくねと悶えさせる。
……相変わらずダクネスの変態性は健在だったようだ。
ほんと勘弁してほしい。
「め、めぐみん!なんでこんなところにいるの!?」
一方でゆんゆんは魔法使い風のちびっ子を問いただしてるようだった。
どうやら知り合いらしいし、ゆんゆんと同じく黒い髪に紅い瞳をしているのを見るに、同郷の紅魔の人間なんだろう。
めぐみんと呼ばれたちびっ子は目の前のゆんゆんの顔をじっと見つめ、目を細めて、首を傾げ……。
「えっと、どちら様でしょう……?」
いや、知らないのかよ。
「ええええ!?ほ、ほら紅魔の学校でいつも勝負してた……!」
「覚えてませんね。私、下は見ない主義なんで」
おっとこれは覚えてますね。
覚えてる上で敢えて遊んでますね。
というかさっきチラッと出てきたトラウマを容赦なく刺激してる辺り、このちびっ子中々の大物だ。
「た、確かにめぐみんが一番で私はいつも二番だったけど……!」
「覚えてませんよ。名乗ってくれたら思い出すかもしれませんけど」
「ええええ!?だ、だけど知らない人の前で恥ずかしいし……あっ」
オロオロしだしたゆんゆんと目が合った。
その目は助けてくださいと涙目で訴えてきている。
「えっと……俺はハチマン、そんでこっちがゆんゆん。二人で旅をしていて、今からアクセルに戻ろうとしてたところだ」
さすがに見ていられなかったので助け舟を出してやる。
まぁ俺の自己紹介のついでだったし。
「ほ、ほらこれで思い出したでしょ!?」
「……あーそういえばそんなのも居ましたね」
「そんなの!?」
そんなの扱いされたゆんゆんが再び泣きそうになる。
どうやらどれだけ助け舟を出しても、ゆんゆんはこの子に敵いそうにないらしい。
「と、とりあえず我々も自己紹介をしていくか。とはいえ私の事は二人も知っているだろうから、私からはそこで泣いてるのを紹介しよう。彼女の名はアクア。ハチマンと同じアークプリーストだぞ?」
俺と同じアークプリースト?というかそもそもなんでコイツがここにいんの?
俺の疑問を置き去りにしたまま自己紹介は続いていく。
「じゃあ次は俺だな。このパーティーのリーダーをやってるカズマだ。よろしく」
「ん?お、おお……」
「よ、よろしくお願いします!」
ゆんゆんが礼儀正しく頭を下げて挨拶を返す。
ゆんゆん程じゃないが、俺もここに来てまともな挨拶をされ若干戸惑っていた。
見た目も日本にいてもおかしくないくらいだし。
まぁ知ってるうちの二人は既に相当なイロモノだから、リーダーくらいはさすがにまともなんだろう。
「そして最後の一人が……」
「我が名はめぐみん!アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法『爆裂魔法』を操る者!!」
カズマの言葉に続けてゆんゆんで遊んでいたちびっ子がバサッとマントを翻し、ビシッとポーズを決めてそう名乗った。
あ、本名なのね。やっぱり紅魔族の名前って変わってるな。人のこと言えないけど。
「ふーん。よろしく」
「反応薄くないですか!?」
いやどうしろっていうんだよ……。
どうやらめぐみんは俺の反応が気に入らないらしい。
とは言ってもなぁ……。
「別に紅魔族ならそんなもんだろ。その口上も似たようなのゆんゆんで聞いてるし」
「そんなもん!?私の自己紹介をそんなもんと言いましたか!?しかもよりによってゆんゆんなんかと一緒にしましたか!?」
やべ、言選ミスったか。
地味になんかと呼びされたゆんゆんがダメージを受けているのだが、気にする素振りもなくめぐみんが詰め寄ってくる。
いや、近い。近いから。
「いいですか!?私はゆんゆんとは比べものにならないほど優秀な魔法使いなんですよ!?今までの勝負だって一つを除いて全て勝ち越してます!」
「お前が優秀?冗談も休み休み言えよ。お前みたいな一発屋と違ってゆんゆんは魔法使っても倒れてないだろ?」
いきり立っためぐみんにカズマが挑発するようなことを言ってしまう。
おいおい勘弁してくれよ。俺としてはどっちが優秀とかどうでもいいんだけど。
ていうか魔法使って倒れるってなに?
「ふ……ふふふ……いいでしょう。そこまで言うなら見せてあげますよ。最強の攻撃魔法……『爆裂魔法』の真の威力を!!」
爆裂魔法……?
聞いたことのない魔法の名前に首を傾げると、泣きじゃくっているアクアを除いた全員がめぐみんを止め始めた。
「おいバカやめろ!このクエストは湖の浄化だろ!ようやく終わりが見えてんのにお前が魔法撃ったら爆音を聞きつけてモンスターが寄ってくるだろ!」
「カズマの言う通りだ!せっかく何事もなかったのにこのままではモンスターに襲われ……るのもいいかも知れないな……」
訂正。一人賛成に回ったみたいだ。
なに言ってんだお前は!?と叫ぶカズマをよそに、めぐみんは詠唱を始め周囲に今まで感じたことのない膨大な魔力が漂い始める。
「め、めぐみん?ここではやめない?ほらここ水辺だし、水飛沫でみんなびしょ濡れになっちゃうし、下手したら地形が変わって怒られるかも……」
「ゆんゆん。そういえばあなたは事あるごとに私に勝負をふっかけてきましたね。それなら今日の勝負は魔法の威力勝負といきましょう。あなたがさっき撃った上級魔法と私の爆裂魔法、どっちが上か見せつけてあげますよ!!」
「ず、ずるい!そんなの勝ち目あるわけないじゃない!!」
ゆんゆんの抗議の声をよそに、周囲の魔力は際限なく濃くなっていく。
おいおい、これ上位悪魔の比じゃないぞ……。
「ハチマンとか言いましたね?結構センスのあるいい名前ですが、紅魔族は売られた喧嘩は大人買いします。見せてあげましょう、私がゆんゆんとは比べものにならないほど優秀な魔法使いということを!」
さりげなく褒められたのかディスられたのかなんかよく分からないことを言われたが、今はそんな事を気にしてる暇はない。
膨大した魔力によって、いよいよ周囲の空気がビリビリと震えだした。
……やばい。なにか知らないが、とてつもなくやばい事が起ころうとしている。
「全てを破壊し消し飛ばす究極の攻撃魔法『爆裂魔法』の一撃を!天を裂き、地を砕く滅びの具現の真名を!刮目せよ!」
「『エクスプロージョン』ッ!!!」
めぐみんが高らかに叫ぶと、湖に一筋の閃光が走った。
直後に雷の何十倍かと思うような轟音が身体を突き抜け、遅れてきた爆風が水飛沫を伴って体を濡らす。
あまりの衝撃に動けなくなっていると、バタリと視界の端でめぐみんが地面に突っ伏した。
そのめぐみんを急いでダクネスが回収する。
何事かと思っていると、不意に俺達の体に影が差した。
見てみると、爆発によって発生した高波が今にも俺達を飲み込もうとして……!?
ようやくカズマさんパーティーを出せました!
初めて書くものだから違和感とかありませんかね?ちょっと不安です。
なんにせよこれでようやくタグ詐欺じゃないと大手振って言えます。
というかこのすばクロス書いてんのに一年以上メインキャラ出ない作品ってどうなの?
誤字報告等よろしくお願いします。