相変わらずのスローペースですがよろしくお願いします。
「そんじゃ改めて、俺はハチマン。職業はアークプリーストだな。さっきルナさんと言い合ってた通り、レベルは1だからあまり期待しないでもらえると助かる。一応回復魔法は使えるから簡単なケガとかなら任せてくれ」
「す、凄いですね……。初期からアークプリーストなんて。それにその目と名前……もしかして親戚に紅魔族の方は居なかったですか!?」
紅魔族?
そういやこの世界に来たばかりの時にクリスにも同じようなことを言われていた気がする。
あの時は余裕なくて気にしてられなかったが。
「すまん。その紅魔族ってのはそもそもなんなんだ?遠い国から来たばっかだから知らない事が多いんだよ」
「あっ……えっと紅魔族っていうのは生まれつき高い知力と強い魔力を持っている部族でして…………紅い瞳と……その、変わった名前の人が多い種族なんです」
……つまりこの目の濁りはその紅魔の血を薄く引いてるからじゃないかって事か。
いや実は末裔でした。って展開なら男子的にはちょっとこう、眠る遺伝子の覚醒的な惹かれる部分があるけど。
生憎、我が父は今日も別世界で小町やお袋を養うためにあくせく働いてるんだろう。
「悪いけど親戚にそんな特長の人間はいないな。この目はアレだ。社畜の血を色濃く引いてるからだと思うぞ」
むしろ過労死してるから色濃く引き過ぎたまである。
やだ俺超優秀な血族じゃん。
「シャチク……?」
どうやら渾身の自虐ネタもぼっち少女には全然通じていないらしい。
これが異世界ギャップってやつか。
いや知らないなら知らない方がいいんだけどね。
「社畜ってのはアレだな。自分の主に命懸けで仕える今風の武士道的なものだな」
心臓を捧げよ!とか言うアレである。いや違うかも、知らんけど。
「えっと、王国の近衛騎士団みたいな方々の事ですか?」
うん。俺はそれを知らない。
異世界ギャップを前に互いのコミュニケーションがうまく運ばない。
でもぼっち同士の意思疎通が難しいのは異世界であろうと変わらないようだ。
なんとも悲しい共通点が世界線を越えていた。
「まぁともかくその紅魔族ってのは親族に居ないな」
というか一家全員生粋の千葉人である。
体はサイゼで出来ている。血潮はマッカン、心は柿ピー。
「す、すみません!かなり失礼なこと言いましたよね!?」
深々とぼっち少女が頭を下げてくる。
俺としてはさほど気にしてない。というか周囲の目がきついのであまり謝らないでほしい。
「いや、そこまで気にしてないから謝ることもないぞ。むしろ今までのヤツらの反応に比べりゃだいぶマシだし」
「ほ、ほんとうですか?『なんて失礼な奴だ!こんなのと関わったのが間違いだった!!』なんて思ってませんか……?」
……この子は過去に何があったのだろうか?
いろいろトラウマを抱えている俺も、さすがにここまで人間不信を拗らせてない。
「いや、思わないから。というか変わった名前くらい思うのは普通だろ。面白半分でからかってる訳じゃないんだし」
「ハチマンさんは名前で笑ったりはしないんですか……?」
「その保証はないけどな。けどまぁ寄ってたかってからかうような真似はしねえよ」
なんてったってそんな寄ってたかれるような友達が居ないからな。
ぼっちは苛めを促進しないのだ。みんなぼっちになれば争いなんて起こらない。
「……そ、それならありがたいです」
当の未だに名前の分からないぼっち少女は、どこか安心したように息を吐いた。
きっとこの子の名前も変わってるのだろう。
それに眼の色も綺麗な紅い色をしている。
「それじゃ、あんたはその紅魔族ってやつなのか?目も紅いし」
「は、はい……。私はすごく変わり者って陰で言われてましたけど」
陰で言われちゃってたのかよ。
しかも本人知っちゃってるじゃねえか。自らの陰口の内容を知ってしまうほど悲しいものはない。
なんかこの子の話を聞けば聞くほど、俺の過去のトラウマまで触発されてとても辛くなってくるんだけど。
「えっと、恥ずかしいだろうけどよければ自己紹介してくれ。何て呼べばいいのか分からん」
「……え?」
そんなやらなきゃダメですか?みたいな目で見られても……。
相当やりたくないようだが、このままぼっち少女と呼び続けるわけにもいかないし。
やがて意を決したのか、ぼっち少女は小さく咳払いをして立ち上がりバッとマントを翻した。
「わ、我が名はゆんゆん!アークウィザードにして中級魔法を操りし者!やがては紅魔族の長となる者!」
…………おう。
「…………おう」
「~~~~っ!!!」
突然の奇天烈な自己紹介に、思った事がそのまま口に出てしまう。
そして名乗った側のゆんゆんは俺の反応に顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「いや、悪い。さすがに今のは予想してなかったから。えっと……今のも紅魔族流ってやつか?」
「は……はいぃ…………紅魔族の自己紹介はカッコいいからってこんな感じです。私は恥ずかしいから嫌なんですけども」
……なんとなく紅魔族の連中が軒並み残念だというのは理解できた。
この子はその中で唯一の常識人だから浮いてたのだろう。
……なんというか不憫な子だ。
「まあおかげで。と言ったら変かも知れんが、名前の方はそんな気にならなかったぞ?えっと、ゆんゆんだったっけ?」
「は、はい。でもやっぱり変な名前ですよね……?」
というよりなんかあだ名っぽい。
由比ヶ浜がつけそうな感じの。
「まあそこは否定しないけどな。でも俺は人の名前とか覚えるの苦手だし、多少変わってる方が覚えやすいまである。ゆんゆんも知り合いに名前間違えて呼ばれるよりマシだろ?」
「そ、そうですね!私もこないだ町で知り合いを見かけたので勇気を出して声をかけたら『えっ……誰?』とか言われて咄嗟に人違いでしたって謝った事があったので、それに比べると全然……!」
おい、やめろ。なんでお前が中学生の時の俺のトラウマ知ってんだよ。
なに?もしかしてこの子は並行世界の俺だったりするの?この世界の俺はTSしてんの?
ひょっとして今『並行世界の自分と出会う時、物語が始まる!』とかなってる状況なの?
「ま、まあともかく今日はよろしく頼むわ。ゆんゆん」
「えっと……その、こちらこそ……す、末永くよろしくお願いしますっ!!」
なんか変に重い返しを受けてしまったが……なんにせよ、ようやくパーティーが決まってくれた。
上位悪魔とやらも気になるし、少しでもレベル上げないとなあ……。
ゆんゆん可愛い。けど書きづらい。
ぼっち同士の会話は難しいです。お前らもっと社交性を持て。
たまにぶっ混むぼっちネタは作者の実体験だったりします。
ゆんゆんは爆焔を!の時間軸では上級魔法を取得していません。とある事情で中級魔法を先に取得しています。
SSだし無視しても良い設定かなとも思ったんですがどうせなら出来るだけ原作沿いで進めたかったので中級魔法にしています。
評価、感想お待ちしております。