やはり俺の受けた祝福はまちがっている   作: サキラ

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やはり異世界転生はチーレム無双が王道である。続

 

 

「お、お邪魔しました……」

 

 

サッとカーテンを閉め直す。

うん、アレは治さなくていいな。気まずいから二度と会いたくないし。

見なかったことにして腕利きパーティーの方に向かうとしよう。

 

 

「ちょっと!?汗をふこうとしただけで全然そういうことないから!!」

 

「そ、そうよ!あなたプリーストなんでしょ!?キョウヤの傷癒せるの!?」

 

 

踵を返して去ろうとした時、カーテンが開けられ中にいた女性に掴まった。

なに?癒しちゃっていいの?君たちまだお医者さんごっこ続けなくていいのかよ?

 

 

「正直そのへんの加減はよく分からんけどな。でもこの位ならたぶん上位回復魔法で充分だろ。一応、アークプリーストだし」

 

「「アークプリースト!?」」

 

「駆け出しの低レベルだけどな」

 

 

言いつつ回復魔法をかけようとベッドに近づくと、パーティーの二人はササっと身を引いた。

怪我に手をかざして回復魔法を唱える。

苦し気な表情を浮かべていた勇者候補だったが、魔法が効いてるのか次第にその顔色は良くなっていった。

 

 

「…………ここは?」

 

 

ぐぇっ!?

 

イケメンが目を覚ますのと同時に、取り巻きの二人に弾かれるように押しのけられた。

ちょっと?あんまりじゃありませんかね。せっかく治したってのに……。

 

 

「大丈夫キョウヤ?怪我はもう平気なの?」

「すっごく心配したんだから!もうキョウヤが目を覚まさないんじゃないかって」

 

 

……刷り込みかな?

我先にとイケメンに話しかける取り巻き二人を見て、そんなことを考えてしまう。

卵から孵った雛が最初に見た者を親だと認識してしまう鳥とかに見られるアレだ。もっとも今まさにピーチクパーチク話しかけてる取り巻き二人も鳥のように見えるのだが。

 

 

「心配かけてごめん。フィオ、クレメア。でも、もう大丈夫だよ。ありがとう看病してくれたんだね?」

 

「「キョウヤ~!!」」

 

 

どうやら刷り込みには失敗したようだが、取り巻き二人はイケメンにお礼を言われ感極まったのか抱き付いて泣き始めた。

抱き付かれたイケメンも顔を赤らめながら困ったなという表情で頬を掻いてる。

回復してもらい女の子に抱きつかれてる勇者候補と、片や回復させ女の子に弾き飛ばされ心にちょっとした傷を負った俺……。

……なんだこれ。俺は何を見せられてるんだ。

 

 

「実はね、夢の中で女神様に会ったんだ。そして女神様の癒しの力を感じてね?だから僕が治ったのは女神様のおかげかな」

 

「ざけんな」

 

 

終いには訳の分からないことを口走りだしたイケメンのベッドを蹴る。

その衝撃でようやくこいつは俺のことに気が付いたみたいだった。

 

 

「えっと、君は……?」

 

「お前の怪我を治してやったアークプリーストだが?悪かったな女神様じゃなくて」

 

 

皮肉気味に教えてやると勇者候補は気まずそうな顔を浮かべた。

そしてベッドから立ち上がり頭を下げてくる。

 

 

「すまない。治して貰っておいて知らず知らず君に失礼なことを言ってしまった。許してほしい」

 

 

え?なにこいついい奴じゃん。

ここまで素直に謝られると頭にきていた自分が恥ずかしくなってくる。

 

 

「あー……傷の具合はどうだ?まだ何かあるようなら追加で回復かけるけど」

 

「いや、おかげで大丈夫みたいだよ。ありがとう。僕の名前はミツルギキョウヤ。職業はソードマスターだ。えっと、君の名前を教えてもらっていいかな?」

 

 

ミツルギと名乗ったイケメンは爽やかな笑みを浮かべる。

その名前からして日本から来た転生者なんだろう。

上級職のイケメンで勇者候補。女性にもおモテになる。異世界転生チーレム無双のお手本みたいなやつだな。

 

 

「ハチマンだ。さっき女神がどうとか言ってたけど、アンタ女神に会ったことあるのか?」

 

 

ミツルギは俺の質問にこくりと頷いた。

やっぱ転生者か。良かった。フルネーム教えなくて。特典目当てで付きまとわれても鬱陶しいもんな。

 

 

「誰も信じてくれないんだけどね。僕はアクア様に魔王を倒す勇者に選ばれたんだ」

 

 

そういやアクアは魔剣を特典にしたイケメンを送り出したとか言ってたな。

その時にどうせまた適当な事を言って送り出したんだろう。

それを真に受けちゃってるこいつもこいつだが。

 

 

「まあ、でもまずは上位悪魔からだけどね。必ず僕が街に平和を取り戻してみせるよ」

 

 

その上位悪魔にやられてさっきまで寝込んでた奴が何か言ってるが、水を差さないでおいてやる。

こいつの頭の中では既に自分が悪魔を倒しているイメージが出来上がってるらしい。

頭の中お花畑とはいえ、やる気があるようならなによりだしな。

 

 

「そんじゃ他の奴らも治さなきゃならんし、俺はこれで」

 

「あっ待ってくれ!」

 

 

要件も済ませたので去ろうとするとミツルギに呼び止められた。

……なんだろう。すごく嫌な予感がする。

 

 

「君はアークプリーストだろう?よければ宗派を教えて貰えないかな?」

 

 

ミツルギは何故か期待を込めた眼差しで聞いてきた。

なにを考えているかは分からないが、嫌な予感もするので正直に答えておくとしよう。

頭のおかしい宗派な方のプリーストだって知ったら、こいつも関わろうとはしないだろうし。

 

 

「…………アクシズ教徒だけど」

 

「なんだって!?」

 

 

え?なにこの反応?予想外なんだけど……

てっきりこれまでの冒険者のように頬を引きつらせて足早に去って行くかと思ったら、探し求めてた相棒に出会えたかのような反応をされた。

 

 

「実はアクシズ教のプリーストを探していたんだ!僕の怪我もあっという間に治して貰ったし、君が占われた『大切な存在のアクシズ教プリースト』に違いない!!ぜ、是非とも僕のパーティーに入ってくれないか!?」

 

 

なんてこった!小町ちゃん!お兄ちゃん異世界でイケメンにナンパされちゃったよ!

 

興奮を抑えきれてない目の前のイケメンにバレないように後退りをする。

占い?大切な存在?何イッちゃってんのこの人!?!?

日本で海老名さんが唐突に鼻血噴き出してる様が変に霞んで目に浮かぶ。

もしかして少し泣いちゃってるのかもしれない。ヤバい、戸塚タスケテ……。

 

 

「い……いやお前は良くてもそこの2人はいいのかよ?ほ、ほら見ず知らずのアクシズ教徒がいきなり加入とか不安じゃねえの……?」

 

 

助けを求めて取り巻き二人に話を振る。

見ず知らずの男が自分達の空間に入ってこようとしてるんだ、反対してくれるに違いない……!

 

 

「私はキョウヤがいいって言うなら文句ないよ?紅魔の里の占い師さんからアクシズ教徒のプリーストを勧められたって聞いてるし」

 

「それにまた女の子じゃないだけマシよね。キョウヤの事だからどうせプリーストもウィザードも女の子になるような気がしてたから。男の方が私達的に安心かな」

 

 

俺的にはキョウヤさんには是非とも正規チーレム√を辿ってもらいたいんだけど。

いいの?キョウヤさん男にまで手を出し始めてるんだけど?

 

 

「良かった、うちのメンバーに異論はないらしい。一緒に魔王討伐を目指さないか?」

 

「断る」

 

 

無理に決まってんだろうが。

俺の青春ラブコメにホモ√はなくていい。そんなの海老名さんくらいしか需要ないし。やべぇ、だけど誰よりも強く望んでいそう。

心の中で何度も戸塚の笑顔を思い浮かべて心を強く保とうとする。

え?戸塚?戸塚は聖天使√だから。

 

 

「えっ……そ、即答かい……?君はプリーストだろう?アクシズ教は魔王を目の敵にしてなかったっけ……?」

 

「俺はなんちゃって教徒だからな。我が身が心配なんだよ」

 

「そこはチームワークでカバーさ。僕の剣に誓って君のことはしっかり守ってみせるよ」

 

 

ミツルギはそこらの女なら即落ちしそうなイケメン朗らかスマイルで笑いかけて来た。

やめろ、やめろぉ!僕の剣ってなんだよ。考えたくねえよ……。

 

 

「いや、そうやって足引っ張るのもやだし。攻撃職のお前が他のメンバーを守ってやられなんてしたら、それこそどうしようもないだろ」

 

 

俺の言葉にミツルギ一同は押し黙る。

今までパーティーを組んできた中で、思い当たる節でもあったのかもしれない。

その様子を見ていると、今日コンビを組んだばかりの少女の事を思い出した。

 

 

「まぁともかくそういう訳だから、悪いけどメンバーは他あたってくれ。俺も成り行きとはいえ、ようやく仲間を見つけることが出来たばかりだし、他のパーティーに移籍するつもりはそもそもねぇよ」

 

 

もし俺が勝手に加入したらあのぼっち少女はどう思うだろうか?

……仲間になった時と、明日出掛ける約束をした時のゆんゆんが浮かべた嬉しそうな顔を思い出してしまう。

自意識過剰かも知れないがショックを受けるだろう。下手すればトラウマになる。

というか、あれくらいの歳の頃のトラウマが原因で俺はここまで捻くれたまである。

……守らなきゃあの笑顔。

 

 

「……そうか、君にはもう仲間がいるのか。残念だけど一足遅かったみたいだね…」

 

 

本当に残念そうにしているミツルギを見ていると少し申し訳なく思ってしまう。

……待てよ?そういやアクシズ教のプリーストならいらんのが一人いるじゃないか!

 

 

「なんだったら一人知り合いのアクシズ教プリーストがいるけど、紹介してやろうか?ちょうど一緒に来てるし」

 

「本当かい!?是非お願いするよ!」

 

 

計算通り……!

待て……まだ笑うな……こらえるんだ……。

教会内を見渡し知り合いのアクシズ教プリーストことセシリーを探してみると、アイツはテーブルに座りお茶を飲んでいた。

 

 

「ちょっとー?このお茶熱いんですけどー?たくさんヒールかけて疲れた人間にエリス教徒は熱いお茶飲ませよっての?キンキンに冷やしたお茶持ってきなさいよー?」

 

 

……なにやってんだ、アイツは。

 

まぁでも見た感じ、俺が話してる間に随分と回復させていたようだ。

ちょっとくらいの休憩は大目に見てやるべきかもしれない。

なにせもう居なくなるんだからな……!

 

 

「ほら、あそこで休憩してる金髪の姉ちゃんだよ。今呼んでくるから待っといてもらえるか?」

 

「えっ……」

 

 

ミツルギがなにやら固まってるが、かまわずセシリーの方へ向かっていく。

これでうちの問題児の引取先が見つかった!

 

 

「セシリーちょっといいか?」

 

「なーにー?ハチマン君も休憩?ねぇー?冷えたお茶もう一つ追加ねー?さっさと持って来て欲しいんですけど!」

 

「いや、違うから。お前に紹介したいやつがいるんだよ」

 

 

セシリーが「は?」と言いたげな怪訝な顔を浮かべる。

 

 

「紹介したい?もしかして女じゃないでしょうね!?まさかあなた傷を癒すのを口実に口説いてたりしてたんじゃ!?」

 

「するわけねーだろ。てかなんだそれ、チンピラの発想じゃねーか……」

 

「え?アクシズ教の男プリーストはみんなやってるわよ?なんだったら必要以上にベタベタ触ったりする人とかもいるわ」

 

 

ちょっと?異世界の警察は何やってんの?

さっさとこの悪質宗教団体摘発しちゃえよ。

 

 

「それで?紹介したい女って誰よ?事と場合によっちゃアクシズ教秘伝の聖なるグーが炸裂する事になるわ」

 

「言っとくが紹介したいのは男だぞ?」

 

「なんて事!!よりにもよってまさか男に走るなんて!でもアクシズ教では同性愛も容認されてるし……。ハッ!!まさか教会でお姉さんがあられもない格好で誘惑しても一向になびかないのは元々男しか眼中になかったから……!?」

 

「ざけんな」

 

 

女性扱いしてないからに決まってるだろうが。

だが、そういう俺の思惑は周囲の人間には伝わってないらしくヒソヒソと囁き声が聞こえてくる。

出されたお茶どころか運んで来てくれたプリーストさんの視線まで冷たい気がする!

 

 

「お前を男に紹介するんだよ。なんでもアクシズ教のプリーストを募集している奇特な奴でな。冒険者やっててパーティーメンバー募集してんだと」

 

「えーー?お姉さん的には年下のイケメンで玉の輿狙えるような男にしか興味ないんですけど。収入の安定しない荒くれ冒険者なんてアウトオブ眼中なんですけど」

 

 

なんだろう……少し同意できてしまう自分が悲しい。俺も将来働かずに養われたい。

どこかに貴族の令嬢とか居ないものなのか……。

 

 

「いや、例の勇者候補とか言われてる奴だぞ?装備も高そうなもん持ってたし収入もいいと思うけど。あとイケメンだったな」

 

 

なんて言っても異世界転生チーレム無双そのものの様なやつなんだ。

未来の成功は約束されてる様なものだろ。

 

 

「どこにいるの!?高収入の将来有望株なイケメンはどこなの!?」

 

 

清々しいほど欲望に真っ正直だなこいつ。

いや、俺も養われる気満々でしたね。人の事言えないですね。

 

 

「奥のベッドの方だぞ?ほらあそこの……」

 

俺のやって来た方を指差して教えてやる。

セシリーも指の動きに合わせて視線を動かしていくとその先には……。

 

 

「……誰も居ないんですけど」

 

 

あれ……?

セシリーの言う通りそこには既にミツルギの姿はなかった。

取り巻き含めて綺麗さっぱり居なくなっている……。

あれれー?

 

 

「あ、先程の勇者候補の方々は明日にでも再戦したいとか言って足早に出て行きましたよ?あなたに改めて礼を伝えてくれと頼まれました」

 

 

通りすがったプリーストが教えてくれた。

マジか。いらん話をしているうちに逃げられてしまった。

まぁ、こんなやりとり聞いてたらそりゃ逃げるよね……。

俺だって逃げたい。

 

 

「……悪い。紹介したいって話はなしの方で頼む」

 

「うーん……お姉さん的には今の状況でも割と満足してるんだけどね?仲のいいロリっ子もいるし、養ってもらえてるし」

 

「……そうかよ」

 

 

俺は今の状況に不満しかないんだけどなー。

むしろ俺こそ養われたいのになんでこんなもん養ってるんだろうなぁー?

不思議だなぁー……。

 

 




【補足説明】
爆焔2においてミツルギは紅魔の里で評判のいい占い師からアクシズ教のプリーストを守るよう占われています。アクシズ教プリーストを探していたのはそのせいですね。
更にそのつながりでセシリーとも面識があります。逃げ出したのはその際いろいろあったからなんですよね。詳しくは爆焔2を。

感想評価ありがとうございました!
ミツルギとの邂逅回ですね。相変わらず進みは遅いですが必要かなと思ってねじ込みました。
ミツルギとはいつか声優ネタでも絡ませたいです。

感想評価お待ちしてます。
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