俺の名前は藤丸立香。ひょんなことから人理継続保障機関カルデアに就職(?)し、偶然人類最後のマスターになってしまったただの一般人である。繰り返す、ただの一般人である。当然魔術などというファンタジー様な知識や存在を信じてはいなかった。
そんな魔術の基礎の基礎も知らなかった俺も何とかこの過酷な人理修復の旅を生き抜き、第六特異点であるキャメロットを修復することが出来た。その過程で出会ったサーヴァント達に魔術を教えてもらったり、カルデア職員たちが作った魔術礼装を使うことである程度の魔術も使えるようになった。
そんな俺たちにある日、ロマニ・アーキマン、通称Drロマンがある提案を持ちかけて来た。
その内容は第六特異点の修復を祝って祝勝会を開かないか、というものだった。
正直、精神的にも肉体的にもキツイ戦いの連続で疲れきっていた俺たちにとってこの提案は渡りに船、というものだ。ということで提案を快諾し、2日後に祝勝会が開かれることとなった。
――――――――
―カルデア 食堂―
「では、第六特異点も無事修復出来たことを祝って、カンパーイ!」
「「「カンパーイ!」」」
食堂のあちこちからグラスを合わせる音が聞こえ、静かだった食堂が一気に賑やかになる。
2日間の間にとんとん拍子で準備も進行していき、無事に開催することが出来た。特にエミヤはものすごく乗り気で、今も厨房で存分に腕をふるってくれている。もうアーチャーじゃなくてマザーのサーヴァントでいいんじゃないかなあの人。
サーヴァントたちもほとんどの者が快く出席してくれており、とても賑やかな祝勝会になっていた。
そんな中、俺は相棒であるマシュ・キリエライトと一緒に食事を楽しんでいた。
「先輩、そこのお皿とってもらえますか?」
「ん、ああ。はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
マシュ・キリエライト。彼女とはここに来てからずっと共に歩んできたかけがえの無い相棒だ。今まで彼女のお陰でがんばってこれたと言っても過言ではない。彼女は俺にとって、心の支えでもあった。
席について食事をしていると、青の全身タイツに身を包んだ槍兵、クーフーリンが近づいてきた。
「よぉ、マスターにお嬢ちゃん。楽しんでるかい?」
「ん? あぁ、クーフーリンか。楽しめてるよ」
「そうか、なら良かった。今回の主役はお前らだからな。主役が楽しめないなんてことじゃ意味がねぇ」
クーフーリン。彼とも本当に長い付き合いになったものだ。彼はカルデアに召喚されたサーヴァントの中でも最古参のサーヴァントの一人であり、同時期に召喚したエミヤとカルデアの主戦力として共に戦ってきた戦友だ。
彼と話をしていると、突如食堂にけたたましい警報と共に監視をしていたロマンの声が聞こえてきた。
「大変だ! 数分前に何者かが侵入してきた! 侵入者は高速で食堂に向かっている! とにかく迎撃してくれ!」
「何だって!?」
それを聞いた俺が直ぐに戦闘態勢を整えようとした瞬間、食堂の扉が勢い良く吹き飛び、黒い人影が入ってきた。どうやらコイツが件の侵入者のようだ。
侵入者は真っ黒なローブを着込んでおり人相はわからなかい。
するとクーフーリンが人影へ一瞬で接近し首らしき箇所へ武器を突きつける。
「おっと、それ以上動くんじゃねぇぞ。テメェ何モンだ? 見たところサーヴァントじゃねぇみてぇだが」
「おやおや、いきなり物騒なお出迎えだねぇ。君、このサーヴァント達のマスターなのだろう? もう少し躾をしっかりしたほうがいいんじゃないかね?」
「へっ! 何言ってやがる! 他人の家に勝手にあがりこんでくるような奴にゃあ、これで十分だぜ!」
「おや? 心外だな。私もここの住人なんだよ? ―――いや、“私の体は”というべきか」
「はぁ? 訳の分からねぇこと抜かしてんじゃ―――うおっ!?」
「きゃっ!?」
「!? マシュ!」
侵入者の意味深な言動にはどういう意味か問い詰めようとした瞬間、人影の背後から無数の鎖が伸び、目にも留まらぬ速さでサーヴァント達を次々に捕縛していった。
幸いにも離れていた俺と数人のサーヴァントは避けることができたが、あまりにも突然のことでマシュを含むほとんどのサーヴァント達は鎖に捕らえられてしまっている。
「ちょっと何よこれ! 力が――はいらな―――」
「おのれ、雑種風情が―――」
「みんな! くそっ、どうなってるんだ!」
何とか鎖から逃れようともがいていたサーヴァント達だが、この鎖の効果なのかどんどんと衰弱していき、皆一様にぐったりとした様子で動かなくなってしまった。
そんな彼らの姿を見てこの状況を作り出した張本人である侵入者は狂ったように笑い始めた。
「アハハハハハハハハハハハ!! 何が起こっているのか分からないって顔をしているねぇ! それじゃあ説明してあげよう! この鎖はサーヴァントを捕らえた時にのみ、効果を発揮する特殊宝具“
その説明を聞いた俺は驚きを隠せなくなる。ギルガメッシュが似た宝具を所持していたが、あれは神性をもつサーヴァントにしか効果が無かったはずだ。だが、この宝具は捕らえたのがサーヴァントならば例外無く効果を発揮する。まさに対サーヴァント用の宝具だ。
そんな俺をよそに、侵入者は説明を続ける。そして次の説明聞いた瞬間、俺は更なる衝撃をうけた。
「さらに!この鎖にはもう一つ特殊な効果がある!それは捕らえたサーヴァントを強制的に従わせる能力!たとえば、こんなふうに―――」
そう言って侵入者がこちらに人差し指を向ける。そして次の瞬間、灰色の大盾がこちらに振り下ろされるのが見えた。が、それを間一髪のところでクーフーリンが防ぐ。
「…おい壌ちゃん。こりゃいったい何の冗談だ?」
クーフーリンが鋭い殺気を放ちながらマシュに問いかける。それにマシュはとても苦しそうな顔で答えた。
「ッ―――すいません、先輩、体の、自由が、利かなくてっ―――」
マシュは必死に体の自由を奪われまいと抵抗しているようだが、一向に力が弱まる気配はない。このままでは埒が明かないと思ったのか、クーフーリンがマシュの盾を思い切り蹴り飛ばそうとしたその時、いきなりマシュが飛びのいて侵入者の元へ戻っていく。いきなりの事に呆気にとられていると、侵入者が口を開いた。
「ふむ、このまま戦いを続けるのも悪くは無いがここだと君たちは全力を出せないだろう? ひとまず退散させて貰うとするよ。」
「なっ、逃げるのか!?」
「いいや、私は逃げも隠れもしない。あぁ、君のサーヴァント達はもらっていくよ? 返して欲しかったら力ずくで奪ってみなさい。私は君を叩き潰すのが目的だからね。まぁせいぜい頑張ってくれたまえ。」
侵入者はそう言い懐から黄金に輝く杯を取り出した。見間違えるはずが無い。あれは聖杯だ。おそらく奴はあの聖杯を使ってこのカルデアに侵入したのだろう。
侵入者が聖杯を掲げると、奴の体が半透明になっていく。それと同じように鎖に捕らわれているサーヴァント達も半透明になっていた。
「あ、そういえば私としたことが、名乗るのを忘れていたね。私はR。君たちが倒した者の一人だよ」
侵入者は思い出したかのように自らの名前を明かし、今まで被っていたフードを外す。
そして俺達は侵入者の顔に驚愕した。
「しょ、所長!?」
間違いない。Rと名乗った人物の顔は紛れもなく特異点Fで消滅したはずのオルガマリー・アニムスフィアだった。
「ではしばしのお別れだ。次は特異点で会おう。」
そう言い残し、Rはサーヴァント達と共に消えた。
どうも皆さん、作者のミーラウです。
何番煎じかわかりませんが、本作は冬木を舞台にした二次創作になります。
拙い文ではありますが、温かく見守っていただければ幸いです。